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【定義】

慈悲救済を特徴とした菩薩の名前である。漢訳名称には様々なものが確認され、広く知られる観音菩薩・観世音菩薩の他にも、光世音菩薩・闚音菩薩・観自在菩薩などがある。なお、観世音菩薩(観音)というのは、鳩摩羅什訳の『妙法蓮華経』などで一般的になった。また、観自在菩薩は、玄奘三蔵訳の『(摩訶)般若波羅蜜多心経』などで一般的になった。現在の研究では、これら名称の違いは原語の違いによると考えられているけれども、同じ菩薩を指すという。
いま道取する大悲菩薩といふは、観世音菩薩なり、観自在菩薩ともいふ。諸仏の父母とも参学す、諸仏よりも未得道なりと学することなかれ。過去正法明如来なり。 『正法眼蔵』「観音」巻

【内容】

観世音という名称の由来については、以下の一節が有名である。
善男子、若し無量百千万億の衆生あって諸の苦悩を受けんに、是の観世音菩薩を聞いて一心に名を称せば、観世音菩薩即時に其の音声を観じて、皆解脱することを得せしめん。 『妙法蓮華経?』「観世音菩薩普門品」

この菩薩は、インドでも広く知られており、多くの大乗経典に出る。『金光明経』『薬師経』『解深密経』などであるが、それらはその特徴については触れられていない。しかし、『無量寿経』には、阿弥陀仏の極楽浄土に、その脇侍として、観世音・大勢至の二菩薩がいることを説き、『観無量寿経』では観世音菩薩への観法を説くなど、浄土信仰では特に尊重された。
仏、阿難および韋提希に告げたまはく、「無量寿仏を見たてまつること、了々分明なること已りて、次にまたまさに観世音菩薩を観ずべし。この菩薩、身の長八十万億那由他由旬なり。身は紫金色なり。頂に肉髻あり。項に円光あり。面おのおの百千由旬なり。その円光のなかに五百の化仏ましまして、釈迦牟尼仏のごとし。〈以下略〉」 『観無量寿経』

そして、『妙法蓮華経』「観世音菩薩普門品」では、この菩薩の神通力を詳しく説いており、三十三身の変化と、「刹として身を現ぜざる無し」と説いて、慈悲によって、あらゆる衆生の前に身を現してくれることを示している。同経は『観音経』として、単独に流布する事もあり、東アジアの大乗仏教国では、広く信じられた。特に、三十三身の変化から、三十三箇所の「観音霊場」などが定められ、日本では、「西国三十三所」「坂東三十三所」「秩父三十三所(現在は三十四所)」などに結集された。他にも、全国にはかなり多くの観音霊場が出来、しかも、古来から仏教説話にも観音菩薩が多出するなど、霊験譚も非常に多い。

更に『華厳経』では、善財童子の参学を「入法界品」に説くけれども、そこでは、観世音菩薩の住む場所として、南海摩頼耶山中にある補陀落が示され、中国や日本では、その補陀落として、浙江省沖にある普陀山普済寺や、那智山青岸渡寺などの「聖地」が定められ、「補陀落信仰」が生まれた。ただ、それが一刻も早く観音の下に行きたいと願う衆生の自死(特に、海への入水自殺)を誘発することもあった。

密教でももちろん、観音菩薩を説き、「蓮華部の主尊」とされ、『大日経』などにも見える。チベット仏教では、ダライ=ラマは観音の生まれ変わりであるとされるなど、ラマ信仰にも近い菩薩である。

禅宗でも、観音信仰を持つ僧がいる。一指禅で有名な倶胝和尚は、「倶胝観音呪(准底観音呪)」を日夜唱えていたという。特に、日本曹洞宗では道元禅師の初開道場が「観音導利興聖宝林寺(興聖寺)」という名前であり、中国留学時道元禅師は普陀山に参詣した。『正法眼蔵』には「観音」巻を書かれたが、その冒頭では、中国禅宗の雲巖曇晟・道吾円智の兄弟弟子による問答が見える。また、道元禅師には「一葉観音賛」もある。さらに、太祖瑩山禅師の慈母は、観音信仰を持っており、これらに鑑みて宗門開創以来よりその結びつきは強いと断言できる。

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