つらつら日暮らしWiki〈曹洞禅・仏教関連用語集〉 - 清規
【定義】

禅宗寺院に於いて、住持から、各知事頭首学人にまで至る全修行僧の生活軌範や、様々な禅宗独自の儀礼の進退作法差定などを示した著作。実質的な「戒律」に相当する。「清規」は、「清浄大海衆規矩準縄」を意味しており、禅宗寺院にて安居する修行僧が守るべき規則である。

【内容】

中国の禅宗は、8〜9世紀になると、修行僧が増えてきたために、独自の教団規則が必要になったという。そこで、南嶽下の百丈懐海(748〜814)によって初めて『百丈清規』が成立したとされる(実質的な清規はなかったともされ、『禅門規式』或いは『禅苑清規』巻10に収録される「百丈規縄頌」などの精神的なものだけだったともされる)。

百丈に依れば、清規制定の精神は、大乗戒・小乗戒の別なく大胆に取り入れられて、中国の風土にあった修行中心の生活実践を目指した、プラグマティックな思考である。だからこそ、その後も、時代や社会状況、経済状況などの背景から影響を受けながら、様々な改訂作業が行われている。

現存している最古の清規は、宋代の『禅苑清規』(1103年)であり、『勅修百丈清規』(1335年)などとともに日本の清規に影響を与えている。道元禅師瑩山禅師にも『禅苑清規』或いは、同時代の『入衆日用』などの影響が見える。

また、禅宗での興隆を見ながら、他宗派でも天台宗の『教苑清規』(1347年)や、南山律宗の『律苑事規』(1325年)などが成立した。

日本曹洞宗では、道元禅師が制定した『永平大清規』、瑩山禅師が制定した『瑩山清規』が古く、その後江戸時代になると、黄檗宗の影響を受けた『椙樹林清規』、そして曹洞宗本来の清規に復古しようとした『僧堂清規』『永平小清規』などが成立していくことになる(古規復古運動)。現在の『行持軌範』も広い意味で、「清規」の精神を受け嗣ぐ軌範と考えて良い。
おほよそ仏祖の制誡をば、あながちにまぶるべし。叢林の清規は、ほねにも銘ずべし、こころにも銘ずべし。 『重雲堂式

【日本・中国で編集された主な清規】

清規の名前と、編者・撰者と刊行年代、そして巻数などを示す。

●中国
・『禅苑清規』(長蘆宗賾編、1103年、全10巻)
・『入衆日用』(無量宗寿撰、1209年、全1巻)
・『入衆須知』(撰者不明、成立年代不明、全1巻)
・『叢林校定清規総要』(惟勉撰、1274年、全2巻)
・『禅林備用清規』(沢山弌咸撰、1311年、全10巻)
・『幻住菴清規』(中峯明本撰、1317年、全1巻)
・『勅修百丈清規』(東陽徳輝編、1338年、全4巻)

●日本
・『永平大清規』(永平道元撰、1237〜1249、全6編)
・『瑩山清規』(瑩山紹瑾撰、1324年、全2巻)
・『大鑑禅師小清規』(清拙正澄撰、1327年、全1巻)
・『大鑑禅師広清規』(清拙正澄撰、1332年)
・『諸回向清規』(天倫楓隠編、1566年成立、1657年刊、全5巻)
・『黄檗清規』(高泉性潡編、1672年、全1巻)
・『小叢林略清規』(無著道忠編、1684年、全3巻)

【『曹洞宗全書』『続曹洞宗全書』「清規」巻】

それぞれに収録されている「清規」を列挙しておく。

『曹洞宗全書』「清規」巻

・『洞上規縄
・『釈氏洗浄略作法?
・『洞上僧堂清規行法鈔
・『洞上僧堂清規考訂別録
・『吉祥山永平寺小清規
・『永平小清規翼
・『椙樹林清規
・『青原山永澤寺行事之次第
・『橘谷内清規
・『橘谷大洞指南?
・『万松山清規?
・『広沢山普済寺日用清規
・『三足鼎儀軌?
・『太平山諸寮日看?
・『興因寺首座寮定規覚
・『永渓山典座寮指南記
・『増福山授戒直壇指南?
・『授戒会侍者曁直壇指南?
・『授戒会室侍私記?
・『洞上伽藍諸堂安像記
・『洞上伽藍雑記
・『禅苑清規

『続曹洞宗全書』「清規・講式」巻

・喪記集(喪記
 『徹通義介禅師喪記?
 『瑩山紹瑾禅師喪記?
 『明峰素哲禅師喪記?
 『峨山紹碩禅師喪記?
 『通幻寂霊禅師喪記?
 『月泉良印禅師喪記?
 『大徹宗令禅師喪記?
・『正法清規?
・『龍泰寺行事次序?
・『清規古規録?
・『最乗輪住大日鑑?
・『海会堂日用毘奈耶?
・『寿山清規?
・『副寺寮日鑑?
・『寿昌清規?
・『橘谷進山並開堂式?
・『円通応用清規?
・『祖規復古雑稿
・『妙高庵清規?
・『鑑寺寮日要記?
・『日用内清規?
・『江湖指南記?
・『侍者寮指南記?
・『同行訓
・『粥飯日用鉢式?
・『開戒会焼香侍者指揮
・『伝戒受戒道場荘厳法
・『大戒直壇指南?
・『直壇寮意得之事?
・『施餓鬼作法
・『祈雨法壇儀規?
・『仏祖袈裟考?
・『釈氏法衣訓
・『法服正儀図絵略釈?
・『伝衣象鼻章巴歌?
・『法服格正?