【定義】
卍山道白師が記した、
禅戒論を展開する著作。全1巻、元文5年(1740)に刊行された。
【内容】
この著作は、卍山師が
本師である
月舟宗胡の『
教授戒文』に賦した偈を元に、行った
普説があったのだが、この普説をさらに、卍山の弟子の
三洲白龍が編纂したものである。内容は、
菩薩の
大戒をもって、
禅門の
一大事とし、大小乗の戒の優劣を論じて、さらに天台宗の円頓戒との異同を弁じたものである。
禅戒に関する著作としては、
道元禅師以降に記された初めてのものとなり、江戸時代の宗学復古の下行われた禅戒論の嚆矢でもある。
指月慧印の『
禅戒篇』、
瞎道本光の『
宗伝戒文試参請』、
万仭道坦の『
禅戒鈔』は全て、この卍山の意志を嗣ぐ労作である。さらに、卍山の
法系に連なる
卍海宗珊は、この著作への註釈を行い『
禅戒訣註解』(全3巻)を著している。
テキストは、『卍山広録』巻47(『
曹洞宗全書』「語録二」所収)、または『大正蔵』巻82などで見ることができる。