つらつら日暮らしWiki〈曹洞禅・仏教関連用語集〉 - 檀信徒喪儀法
【定義】

曹洞宗に於ける檀信徒(在家信者)向けの喪儀法のこと。いわゆる「お葬式」。具体的内容は、授戒菩薩戒血脈が授与される)と念誦、そして引導という三部構成である。また、行法としては、資料的に確認出来ないけれども、曹洞宗成立当初より行われていたと思われる(道元禅師の記録の中に、在家信者の「臨終行儀」を行ったと思われる文脈が1箇所あり、またそれに類する見解を出している箇所が2箇所ある[『正法眼蔵』「大修行」巻、『知事清規』「監院」項]。一部俗説に、道元禅師が在家信者の葬儀を否定したという人もいるが、明確には否定しておらず、謬見である。また、亡僧喪儀法は明らかに修行されている)が、具体的には永平寺5世・義雲禅師小仏事法語の中に、在家信者と思われる2人の大姉に対して引導が行われ、また太祖瑩山紹瑾禅師の編んだ『瑩山清規』(1324年成立)にも、檀信徒向けの供養(喪儀では無い)が入るなどしており、この辺から徐々に明文化し行われるようになったと推定される。

南北朝時代から、室町・戦国期を経て、江戸時代全般にわたって、曹洞宗では檀信徒への喪儀法が全国に敷衍したと思われる。元々は、亡僧喪儀法を転用したものであったらしい。
各宗葬儀各別なりと雖も其鬚髪を剃り法名を附する等、概ね出家得度の式を用ゐ而して後に其葬事を行ふを以て之を亡僧葬送の儀式と謂ふも不可なきなり 大内青巒居士『釈門事物紀原』「○葬礼 第八十二」

また、現在の行法は、『昭和改訂 曹洞宗行持軌範』(1950年)に於いて確立された「檀信喪儀法」を原型としており、(その後若干の文言や名称の修正が行われているけれども)この段階でほぼ現状の喪儀法が確定している。しかも、宗門の公式な文献でなければ、既にその前から行われていたことは明らかである。

【内容】

現行の「檀信徒喪儀法」の項目に書いてある行法をその順番通りに列挙していくと、次の通りである。なお、意味合いの違いを踏まえ、行持の切れ目に一行間を入れる。

臨終諷経遺教経舎利礼文

通夜諷経(経や回向は適宜)

剃髪出家の偈剃髪の偈
授戒懺悔・〈洒水三帰三聚浄戒十重禁戒血脈授与

入棺諷経大悲心陀羅尼
棺前念誦十仏名・舎利礼文)
挙棺念誦(大悲心陀羅尼、鼓鈸三通、行列、大宝楼閣善住秘密根本陀羅尼)
※ここまで内諷経

引導法語大宝楼閣善住秘密根本陀羅尼、鼓鈸三通、引導)
⇒ここで弔辞・弔電
⇒引導の際、仏事師を更に加えて、三仏事などを行う場合がある。
山頭念誦(十仏名・読経〈経は適宜〉、鼓鈸三通)
⇒ここで荼毘(火葬)。ただし、地域によっては喪儀の前、或いは前日などに火葬のみ先に行う「骨葬」と呼ばれる慣習を持つ地域がある。

安位諷経(大悲心陀羅尼)

【檀信徒喪儀法略法】

本来、上記の「檀信徒喪儀法」は、荼毘(火葬)を当日に行うとして、内諷経なども丁寧に行われる必要がある。しかし、現状、葬儀社の会館などを用いる場合、或いは施主家の意向などによって略される場合があり、また、骨葬を行う場合には、「入棺諷経」などの位置付けが曖昧になる。よって、そのための檀信徒喪儀法略法も、『行持軌範』には示されている。

・剃髪
・授戒

・棺前念誦
・棺前諷経
・回向
・鼓鈸一通
・大宝楼閣善住秘密根本陀羅尼

・引導法語
・葬送念誦(山頭念誦)
・葬送諷経
・回向