他心通を修得してのちにも、さらに凡夫のごとく発心し修行せば、おのづから仏道に証入すべし。ただ他心通のちからをもて仏道を知見することをえば、先聖みなまづ他心通を修得して、そのちからをもて仏果をしるべきなり。しかあること、千仏万祖の出世にも、いまだあらざるなり。すでに仏祖の道をしることあたはざらんは、なににかはせん、仏道に不中用なりといふべし。 『正法眼蔵』「他心通」巻