今諸方に永平門下と称する皆是れ師の門葉なり。是の如く法火熾然として遠く顕はるるが故に、越州大野郡に或人夢みらく、北山に当りて大火高く燃ゆ。人ありて問て曰く、是れ如何なる火なれば、是の如く燃るぞと。答て曰く、仏法上人の法火なりと。夢覚て人に尋ぬるに、仏法上人といひし人、うさかの北の山に住して、世を去て年遥かなり。其門弟、今彼の山に住すと聞て不思議の思を為し、わざと夢を記して恣参しき。実に開山の法道を伝持して永平に弘通すること、開山の来記に違はざる故に、児孫今に及びて宗風未だ断絶せず。 『伝光録』第52章