し、しまった。そう思ってももう後の祭りだった。
親父に会社での仕事の話を聞かせつつ、横目で貴司を盗み見ると、
サイアク。ものすごい不機嫌そうにしてる。
どうにもアイツは勘が鋭くて怖い。
「これなんだろうね?」
キノコみたいなものを箸でつまみ上げ、お袋と談笑する貴司は傍目からは
そう見えていなくても、俺にはその不機嫌さがバシバシと伝わってくる。
「なんだろうね。きのこみたいだけど。」
ここは里美に聞いたんじゃないってことを、いやむしろ里美はカノジョと
かじゃ全然ないってことを貴司に説明したいと思ったが、話の糸口はつか
めそうにない。
「それで、いつごろ家をでるんだ?」
おーまいがっ!親父、なんでこのタイミングでそんなことをっ!!
−カチャン−
音のしたほうに目を向けると、貴司が大きなめをさらに見開き、片方の箸を
落としたことも気が付かない様子で固まってしまっていた。
「貴・・司・・・」
「えっ、あっ、ごめんなさい。箸落としちゃった。」
「アパートはもう見つけたのか?彼女とか遊びに来るんだったら小奇麗な
ところにしておけよ」
もうだめだ、酔いの回った親父はこれでもかってくらいに爆弾発言を続け、
貴司の不機嫌さは臨界点を突破しそうな勢いだ。

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