先日読んだ本は青い花。一応URLもはっておこう。
ほれ つttp://d.hatena.ne.jp/asin/4778320050
まあ、内容はって言うと一言で言うと百合だ。
万城目ちゃんっていうのが女の子を好きになっちゃう女の子なんだけど、
部活見学にいった先の先輩に一目ぼれしちゃったり、昔好きだった幼馴染の女の子に再会したり。
毎日毎日中学で”あたりまえ”の恋愛模様について考えたり見たりするのには非常に飽きた。
だからといってアブノーマルに走ったりだとか恋愛についてネガティブになったりするわけじゃないんだけど
なんていうか、普通じゃやだって言うか、もうちょっと言うとスパイスがほしいというか。
昨日食った暴君ハバネロぐらいきついやつ。
そんな空想も学ラン着てかばん背負って中学に通う毎日じゃあ埋もれてしまってたかもしれないな。
こんなはっきりと意識上に上ってきたのって、やっぱりあのことがあったからだ。
青い花と、市川さゆり。
さゆりはすんげーお嬢様学校に通うやつで、お嬢様学校っつーことはつまり女子中学。
シスター、とか、ごきげんよう、とかって、最初ここ通うって聞いたときは思いっきり笑ってやったけど、いまじゃ
ものすごくうらやましい。
何がかって、あんな雰囲気溢れる校舎とか、美人の先輩とか、君の名前を教えてくれないかとか。
うわー、興奮する。興奮する。だって、今度さゆりの制服着てこの学校の門をくぐるんだぜ!
スカートは思いっきりスースーするけど、女ばかりの花園に飛び込んでいくと思うと、それだけで十分だ。

さゆりからの頼みごとなんて、衛星軌道中のスペースシャトルが高度を1メートル落とすぐらいどうでもいいことなんだけど
やっぱり小さいころから知ってるやつだし、家も近くだし、無視するわけには行かない。
普通、幼馴染だったら惚れただの腫れただのそんなんじゃねーよバカ、テレとかじゃなくて。
こんなおしとやか過ぎるのは俺の肌には合わない。
こんなつつましいのは虫唾が走るって、さゆりには内緒だ。
大体こいつはウチの姉貴が好き・・・言っちゃった。そ、つまりそういうこと。
今回の聖シガーデル女子中、通称シガ女に行くのもそういう用事。
まったく、俺の通う公立地元中学は年に一度のありがたい創立記念日だって言うのに、
何で俺はこいつの百合恋愛沙汰のスパイみたいなことをしなきゃなんないんだって実は内心ギブアンドテイク。
めっちゃ楽しみ。
坂を上るとまるで油絵のように淡色也とも鮮やかなりし幾年経た校舎。
行き交う人もまたそこに溶け込んでいくようで青春を一つの絵画に仕上げてしまうようなところ、シガ女。
「おはようございます。」
あ、おはようございます。声変わりぎりぎりで何とか大丈夫。だけど挨拶一つにも仰々しいところだな。
赤茶色のレンガ造り、年代物の校舎の階段を登っていくと、黒く色が慣れた木の廊下。
窓の外には噴水、校庭、ケヤキの枯れ木。
クスノキ、その下では午後の読書に契りを交わすのだろうか。
麗しい風景に感動するのもつかの間、シガ女の授業は鬼難しい。
ノートだけは絶対書いてねっていうさゆりの気持ちもわからなくない。
さゆりの氏名は右斜め前。髪長、脚長、背丈長の、すらっとした黒髪美人。
まあ、確かにわからんでもない、ウチの姉貴を1ランク下げた感じ、妥協したなあいつ。
何が不思議かって、何で先生にばれないんだよ。

と、思ったらやっぱりちゃっかりばれちゃってるわけで、だけどそこはキリスト様の思し召し、追求はされなかった。
「あんた誰?」
これは別にすり替えがばれたから、というわけではない。
「三原たかの、さーちゃんの幼馴染よ。」
「へー、きれいね。なかなか。」
事情を知ってる隣のちょっとふくよかな子はこの質問者に対して「ちょっと、よしなさい。ほほほ、ゆっくりしてらして。」
なんていってやがる。
「その言葉遣いはやめたら?シガ女の生徒らしくおしとやかにしなさいよ。」
「うるせーな。」
清楚に可憐。上空から見たらそんな字がでかでかと書いてあるんじゃないかと思えるこの学校にも、こんなやんちゃな女の子もいるんだななんて。
色素の薄い紙に眉毛、切れ長の目。すらっと伸びてはいるけど目立たない鼻。青磁器のような白い肌。
挑戦的なような、誘うような、そんな視線がものすごく魅力的で、つまりタイプ。
でも俺は女装してるわけで、その俺に色目を使うわけだから、うーん、後日紹介してもらっても脈はないか。
「あなた名前は?」
「俺?北野光。」
「俺って・・・?」
「だから、何度言ったらわかるのよ!一人称は私かワタクシ!」
「どっちでもいーじゃんか。」
ウチの中学にもこういう言葉遣いの女はたくさんいるけど、そういうやつは並べてアウト。
こいつはど真ん中。
ヤバイ、この状態でこいつのこと好きになったら百合なのかな。
隣の子豚ちゃんは親切にも「たかの・・さん?校舎の中ご案内して差し上げますわ。」だと。
「光さん・・・に、お願いできますか?」
「俺が?めんどくせー。」
そういいながらもこの美少女の目のおくには妖しい光。
サキュバスににらまれた旅人のように、俺はその目に吸い込まれていった。

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