生徒会や運動部関係の一部の生徒のみが知っている事だが、屋上の鍵は壊れている。
チェーンも巻いてあるのだが、長年の錆びとイタズラのせいであまくなっていた。
ジャラ・・とチェーンをはずし鍵の壊れたドアノブに手をかける。
ここの事を教えてくれたのは相沢で、たまに授業を抜け出して隠れたり
放課後にパンを食ったりするために2人で数回忍び込んでいた。
こんな思いを抱えている時でさえ、結局相沢が教えてくれた情報を利用している。
「はぁ・・。」
今はここに隠れるしかないんだけど・・。
こんな頼りない俺に相沢みたいな完璧な人間が相談してくれるわけがない。
授業をサボる場所すら相沢を頼りにしているなんて。
そう思うとさっきより落ち込んできてしまった。

ギィ・・・ッと錆び付いた重い音を立ててドアが開く。
屋上に足を一歩踏み出した瞬間、
「おいっ!!」
と声をかけられた。
ビクッ!!!!!
心臓が破裂するかと思うほど飛び上がって驚く俺。
振り向くと相沢が息を切らしながら立っていた。
「おま・・なんで・・ここに・・。」
もう、わけが分からない。
混乱した頭だとロレツまで回らなくなるらしい。
しかし屋上への最後の階段を上ってくる相沢を見た瞬間、
とっさに俺は屋上に出てドアを閉めようとしていた。
だが運動神経のいい相沢には勝てるはずがない。
一瞬で階段を上りきり、ドアの隙間に片手をはさみこむ。
「危ない!」
相沢の手をはさみそうになってドアノブを引いた瞬間、あいつは身体を滑り込ませてきた。

「・・・・・・・・!!」
「あっぶねぇなあ。ドア閉めんなよ。」
冷静になって、頭を冷やしてからきちんと謝ろうと思っていたのに。
ゆっくりドアを閉め直し、屋上の真ん中までノロノロと移動する。
そんな風にうろたえている俺を見て何かを察したのか、
「拓海・・その・・大丈夫か・・・?」
と相沢が声をかけてきた。
「あ・・あぁ。何でもない・・ょ。」
そうだ。
そういえばこんなにうろたえる必要なんてないはずだ。
うっかり相沢の手をはらったのは悪かったけど、それだって
普通に謝れば済むはずだ。

”ちょっと考え事してて驚いた。”
これだけ言って謝ればいいじゃないか。
・・・・なんでこんなにオロオロしてるんだ、俺?
凹んでる事だってわざわざ言わなければ分からないはずだ。
がんばれ俺!さりげなく謝るんだ!
「あのさ、相沢。・・さっきの事なんだけど・・。」
「あ・・・?あぁ・・。」
「俺・・・さっき相沢の・・その・・。」
やっぱり上手く話せない。
なんて情けないんだ俺は。
もう1度言い直そうとした時、今度は相沢が話しだした。
「拓海ーーあの・・さ。」

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