「ほら、智、ホットポー淹れてきてやったぞ」
智が横になっているベッドサイドにホットポーを置いて、顔を覗き込んだ。
「・・ん、にぃ、さんきゅ」
熱のせいか、少し上気した頬がはんなりと愛らしく、潤んだ瞳に弟とはいえドキリとさせられる。
「ほらよっ」
俺はその思いを打ち消そうと、身体を起こすのを手伝ってやる。
「ほんと、智ってば、とーちゃんとかーちゃんがいないときばっかり具合悪くなるよな」
春になれば中学生になるってのに、少年然とした姿は二次性徴なんてどこ吹く風だ。
「面倒ばっかかけて、ごめん」
「気にすんなって、俺のかわいい弟だからな、面倒でもなんでもないさ」
殊勝にも視線を落としてシュンとする智の頭をクシャクシャとなでてやる。
「どれ、熱はさがったかな?」
智の前髪を掻きあげ、おでこをつけて熱の具合を確かめようと顔を近づけたとき、
伸ばされた両手が俺の頭を挟み込んだ。
「ん?ど・」
(うした?)そう続けようとした俺の唇を柔らかな感触がついばむ。
目の前には目をギュっと閉じた智の顔があって、不意を疲れた俺は身動きもできず、
『こんなにやわらかくて、あったかいのは熱のせいかな』なんてことを考えていた。
いったいどれだけ経ったろう、智の前髪を押さえた手がすっと汗ばみはめた頃
俺の頭から両手が離された。
「・・・・ごめんっ」
やっと聞き取れるくらいの声で謝ったさとしは再び横になり頭から布団をかぶってしまった。
「にぃ、ごめん、僕どうかしてた、ホントごめん、頼む忘れて」
くぐもった智の声がわめきつづける。
「マジ僕どうかしてる、ハハハ、風邪の菌が脳にまでまわったみたい、頼む忘れて・・」
「ストップ、ストップ、ストップ」
放っておけばずーっとわめき続けそうな智を遮る。
「どうしたって言うんだ、急に」
「はぁ〜」
布団越しに盛大なため息が聞こえたあと、ひょっこりと目まで頭を出した。
「ごめんなさい。きしょく悪かった?」
「いや、きしょくわるくは無かったが、正直びっくりした」
俺は相変わらず智の前髪を掻き揚げた位置に手を浮かせたまま、見下ろすかっこだ。
「ぶっちゃけ、俺、にぃのこと、その、好き、みたいなんだ」
「・・・ぶっちゃけすぎだな」
俺のつぶやきに一瞬目を見開いた智は顔の両脇で布団をつかんでいた手を離し顔を覆った。
「そうだよね、兄弟だし、僕男の子だしね、気持ち悪いよね」
両手の隙間からか自嘲気味な、今まで聴いたことも無い智の声がもれ聞こえてくる。
「ちがうって、そうじゃないって」
「いいよ、いいよ、わすれて、なんか今日の僕おかしいみたいだ」
「ちょっと、聞けって」
「もう、なんで、こんなこといってんだろう、僕」
智は全然俺の話を聞こうともせず、恥ずかしいのか、わめき続ける。
「あぁー、もうっ、俺の話をきけっつーの」
俺はベッドの上の智に馬乗りになると、智の顔を覆った両手を乱暴に剥がすと
そのまま両手を押さえつけ、今度は俺が聡の唇を塞いだ。できるだけそっと。
間近に見る智の目は薄っすらと涙ぐんでいて、俺は自分の理性が衝動に打ち負かされた
ことを悟らざるを得なかった。
理性のぶっ飛んだ俺を止めるものはすでに無く、『智を味わいたい』だたそれだけが
頭の中を占め、智の唇を割るようにして俺の舌は『何か』を求めて蠢動していた。
「・・んっ」
鼻梁から漏れ出た智の声にようやく少しだけ理性が働きだした俺は、ようやく唇を離
した。それでも、酷く後ろ髪を引かれる。
酷く耳が熱い。激しく赤面しているであろうことが、自覚された。
「・・・話を聞けって・・・」
静かにうなずく智の、僅かに開いた唇を見ると再び強い衝動に襲われそうになるが、
俺は今だけはそれをこらえてやり過ごさなければならなかった。
「・・俺もだ。家族とか、弟とかじゃなく、智がいうのと同じ意味で、、その、好きだ」
押さえつけていた両手を離し、左手で自分をささえつつ、右手を智の額にあてがう。
「熱も下がったようだな」
「にぃ」
急に抱きついてきた智に唇を塞がれ、俺の理性はあっけなく瓦解した。
ベッドの中に潜り込んでしまって、俺はもう何のためらいも持ってはいなかった。
時折、智の鼻梁から漏れ出る声は俺の衝動をとことん煽り続ける。
俺の舌は智の口の中を這いずり回り、今まで一度も思ったこともないのに、
智の唾液を貪欲に求め続けた。
唇を合わせたまま智のパジャマのボタンに手を掛けると、さすがに一瞬驚いた様子を
見せた智だったが、俺がまごついていると自分からボタンを外した。
「怖いか?」
俺はそっと唇を離すと、智の目を覗き込んだ。
「・・・ちょっとだけ恥ずかしい」
そういうと節目がちに視線を落とす。
見ると智の耳も真っ赤で首筋から全身に掛けて色づいている。
俺は智の身体に腕をまわすと首筋に唇を這わせた。
「はっ、はっ、はっ、んくっ〜、はぁぁぁ」
智の呼吸は徐々に浅くなり、時折何かをこらえるように息を止め、深く息を吐き出した。
それでも俺は執拗に智を味わい続け、首筋に、腕に、むなじに俺を刻み込んだ。
時折智の顔を覗き込むと、焦点の定まらない瞳が何かを求めるように彷徨い動き、
軽くひらかれた唇からは声とも息ともつかない音が漏れ続けている。
そんな無防備な智を見ていると俺はますます強い想いが沸き起こるのを実感していた。
「はっ、はっ、はっ、うぐっ、、」
それは俺の舌が耳の後ろからうなじの方に移動しているときだった。
それまで軽く俺の身体にまわされていた智の腕が俺を締め付けてきた。
「にぃ、、もう、、ダメ」
そう言うと同時に、ぎゅっと抱きつかれた俺にも智のそれが伝わってきた。
最初は『クッ、クッ、クッ』と早い周期で伝わってきたそれも徐々に遅いものに
なっていき、同時に智の腕からも少しずつ力が抜けゆく。
俺は動かしていた舌をとめ、そっと抱きしめ続けてやった。
五分ほどそうしていただろうか、智がそっと話だした。
「・・・にぃ」
「ん?」
「ごめん、僕」
「ちょっと刺激が強すぎたな」
俺は右腕を智の下から引き抜くと、しずかに智の頭をなでてやった。
「僕だけ気持ちよくって、、にぃは、、」
「俺か?ん〜、今日は智を感じられたからな」
身体を起こし、智を再び見下ろす格好のまま言った。
「でも、」
それでも言い募る智に軽く口づける。
「気にすんなって。今は智が満足するのを見てて十分嬉しいんだって。
満足できたんだろ?」
「うん、とっても」
そう言った智に満面の笑みがこぼれ、この笑顔があればいいやと本当に
思わずにはいられなかった。
「下着んなか、気持ち悪くないか?」
「うん、実はちょっと。。。」
「俺が拭いてやろっか?」
「いいよ、もうっ、はずかしいっ」
そういって智は俺の身体を押しどけると、すばやくベッドからすべりでた。
「僕、シァワー浴びてくる」
そそくさと部屋を出て行く智を見送りつつ、『一線を越えたのだな』と
ぼんやり思っていた。
『俺に後悔はあるだろうか?するだろうか?』そうした思いが頭の隅を
掠める。

「にぃ、いっしょに入らない?」
戻ってきてドアから顔を覗かせている智を見たとき、俺には少しも後悔の
念が無いことを実感できた。
「ひさしぶりに、一緒に入るか」
俺はベッドから離れ、智が待つドアの向こうに向かって歩きだした。

そうだ、俺は智を好きなんだ。
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