ある晴れた昼下がりだった。
「うは、DQ7おもすれー」
窓からは陽光が、電気をつけなくても十分なほど降り注ぎ、
床に散らばった汚れた衣類がおかしな匂いを漂わせていた。
俺は汚いものを退けて作ったスペースに腰を下ろし、
先日買って来たばかりのゲームを楽しんでいた。
来年高校2年になる俺に残された時間はあまりにも短かい。
その短い時間を有効かつ有意義に使うため、日曜の朝からゲームの電源を入れたのだ。
「あきらは朝から遊び行ったし、父さんと母さんは泊りがけ…」
あきらというのは今年小5になった弟だ。頭が俺の胸にやっと届く程度のちび助だが、
最近の子供は情報が溢れているせいか妙に生意気で、
低学年まで鬱陶しいほど懐いていたあきらも最近では風呂も一緒に入ってくれなくなった。

「ただいまー!」
階下で元気な声がした。
玄関を勢いよく閉めて、慌しく階段を上る足音が聞こえてきた。
「にいちゃんただいま!」
すごい速さでドアが開いて、あどけない少年が顔を出した。
「おかいも」
俺は振り向きもせずにおきまりの挨拶を返した。
「お昼なに?」
「ラーメン。のっける野菜、フライパンにあるけど俺がやってやるからちょっと待っとけ」
手で、下にいって待っていろの合図を出して部屋から追い出す。
「はやくしろよなー」
去り際に言う一言も最近になって畏敬の念が薄れている気がする。
1年そこらで生意気になったなとおもいつつ、
きりのいい所でコントローラーを置いて部屋を出た。

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