コタツの話


 北国の神王四人がコタツを囲み、眠り、戯れ、騒ぐ話 三話

  『眠りに落ちる人々』  …次々に睡魔に敗れゆくこと

  『起こさないで下さい』 …寝ている者にいたずらすること

  『ちゃぶ台返し』    …怒りに任せてコタツをひっくり返すこと



眠りに落ちる人々



(ヴェイ・ルース、ベルナ神王、ジィーア神王、デフィスの4人、コタツに入ってまったりしている。)


ヴェイ:
  (かなり眠そう。)

ベルナ:
  「何か…今にも沈没して眠っちゃいそうですよね…」(小声)

ジィーア:
  「眠りに落ちるまで見てみる?」(小声)

デフィス:
  「何分で寝るか測ってみるか。」(小声)


 (計測開始。)



 (5分経過)


ヴェイ:
  (相変わらず眠そうだが一応まだ起きている)

ベルナ:
  「意外と寝ませんねー…」

ジィーア:
  「うーん…」

デフィス:
  「結構しぶといな…」



 (10分経過)


ヴェイ:
  (まだ眠りに落ちてはいない)

デフィス:
  「………眠い。寝る!!(ばたっ)」
  (いきなり沈没)

ジィーア:
  「え?!」

ベルナ:
  「そっちですか?!」(驚愕)

デフィス:
  (返事の代わりに寝息が聞こえ始める)



 (15分経過)


ヴェイ:
  (眠そうだがまだ目を閉じてはいない)

デフィス:
  (よく眠っている)

ベルナ:
  「…だめだ、ねむい……」

ジィーア:
  「頑張れ、寝ちゃ駄目だ…!」(ちょっと眠くなってきた)

ベルナ:
  「ごめんなさい、寝かせてください……」(ずるずると沈没)



 (25分経過)


ヴェイ:
  (とても眠そうなのにまだまだ眠りはしない)

デフィス:
  (完全に熟睡)

ベルナ:
  (いい寝顔でぐっすり)

ジィーア:
  「…うう、…限界……(どさっ)」
  (眠気に敗北、沈没)



 (30分経過)


ベルナ:
  (沈没)

ジィーア:
  (沈没)

デフィス:
  (沈没)

ヴェイ:
  「……。」
  (周り3人が眠っているのを確認してから、横になって寝る。)


(そして皆寝てしまった…。)



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起こさないで下さい



ヴェイ: 
  (コタツで寝ている)

デフィス:
  (紙切れに何か書き、ヴェイのおでこにこっそり貼り付ける)

ヴェイ:
  (気付かずに寝ている)

デフィス:
  「よし、気付いてないな…」
  (いたずらが成功したことに満足して、自分もコタツで寝る)



 (数十分が経過する。)



ヴェイ:
  「……ん…?」(目覚める。そして異常に気付く)

  (おでこに貼られた紙切れをはがして見る。
   そこには『起こさないで下さい』と書いてある。)

ヴェイ:
  「……やられた……」

デフィス:
  (犯人はぐっすり寝ている)

ヴェイ:
  (紙を捨てようとして、ふと思いとどまる。
   別の紙切れを持ってきて何か書き、デフィスのおでこに貼り付ける。)

デフィス:
  (気付かずに寝ている)

ヴェイ:
  (自分の枕もとに『起こさないで下さい』の紙を置き、寝なおす)



 (さらに数十分が経過する。)



ヴェイ:
  (寝ている)

デフィス:
  (寝ている)

ベルナ:
  (コタツにやってくる。二人の様子を見て、デフィスに貼られた紙に目を留める)
  「…えーと…。
   もしもーし、起きてくださいー。」

デフィス:
  (安眠していたところを揺さぶり起こされる)
  「んぁ…?……何か…??」(眠い)

ベルナ:
  「いえ、紙に書いてあったとおりに。」

デフィス:
  「 ?! 」
  (おでこに貼られた紙切れに気付き、引っぺがす。
   そこには、『眠っていたら起こして下さい』と書かれている。)

デフィス:
  「やられた…
   もう少し寝るつもりだったのに……」

ベルナ:
  「あ、自分で書いて貼ったんじゃなかったんですか?」

デフィス:
  「 ?!
   いたずらだと気付いてなかったのか!?」

ベルナ:
  「はい? …全然さっぱり。」

デフィス:
  「…そうか…。
   …何で俺だけ起こしてヴェイは起こさなかったんだ?」

ベルナ:
  「え、紙に書いてあったとおりに…」
  (ヴェイの枕もとの、『起こさないで下さい』の紙を指差す)

デフィス:
  「ベルナの行動とボケを読んだ上での仕返しか…」

ヴェイ:
  (犯人はぐっすり寝ている)

ベルナ:
  「一緒に起こしたほうが良かったですか?」

デフィス:
  「いや、いい…」
  (微妙な敗北感を抱きつつ、起きることにする)


 (完)


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ちゃぶ台返し



ベルナ:
  「やった、上がったー!」

ジィーア:
  「ぐっ…また負けた…!」

デフィス:
  「…これで8連敗目か?」(ひそひそ)

ヴェイ:
  「9連敗目。」(ひそひそ)


(コタツに入り、トランプで遊んでいる4人。
 勝つのは大抵ヴェイ・ルースかデフィス、
 ごく稀にベルナ神王が勝ち、ジィーア神王はひたすら負け続けている。
 そんな勝負が何時間も続いたのち。)


デフィス:
  「あー、いい加減疲れたな…」(おやつのエビせんをぽりぽりつまむ)

ベルナ:
  「長時間やってましたしねー。」(ひざの上で寝ている猫をなでる)

ジィーア:
  「何故だ、なぜ勝てない〜…」(ぶつぶつ言いながら突っ伏す)

ヴェイ:
  「…そろそろ片付けるか。」(すっかり冷めた緑茶を飲む)

デフィス:
  「そうするか…」(だらだら)

ベルナ:
  「…あれ? そういえばジィーアさんだけ1回も勝ってないんじゃ…?」

ジィーア:
  「 !! 」(がばっ)

 
(ジィーア、しなくてもいい指摘をされ険悪な表情ではね起きる)


デフィス:
  「あー、言われてみれば。

   …可哀相だから、もう一回やるか?」(優しい微笑み)

ジィーア:
  「(ぶちっ。)
   余計な同情はいらんわーッ!!」(戦神発動)


  (がしゃーん!)


(馬鹿にされたと思ったジィーア、怒りに任せてコタツをちゃぶ台返しする。
 上に載っていた湯のみ、エビせんなどが正面に座っていたデフィスにぶちあたり、床に散らばる。
 その音に驚いて、ベルナのひざの上にいた猫が目を覚ます)


デフィス:
  「…てめぇ…っ」(頭にかかった茶がぽたぽた垂れる)

ジィーア:
  「あ?!」

デフィス:
  「食い物ひっくり返すたぁどういうつもりだッ!ふざけんじゃねぇ!!」(氷虎発動)


  (がたーん!)


(デフィス、コタツを勢いよく跳ね除けながら立ち上がる。
 ひっくり返ったコタツは左隣に座っていたベルナにぶつかる。
 ひざの上の猫、びっくりして逃げだす)


デフィス:
  「ちょっとツラぁ貸しやがれ!その腐れた根性一から叩きなおしてやらぁ!!」

ジィーア:
  「はっ、受けて立とうじゃないの…表に出ろ!!」

ヴェイ:
  「…二人とも少し落ち着」(制止を試みる)

ベルナ:
  (さえぎって怒鳴る)「それ以前に二人ともっ!
   猫が怖がって逃げたじゃないですか!!」(白虎発動)


  (がたーん!)


(ベルナ、腹を立ててコタツをちゃぶ台返しする。
 ひっくり返されたコタツは正面に座っていたヴェイ・ルースにぶつかり、止まる。)


ヴェイ:
  「……っ…」

ベルナ:
  「せっかく安眠してた子になんてひどいことを!!」

デフィス:
  「あぁ?!今はんな事問題じゃねぇんだよ!!」

ジィーア:
  「ベルナはすっこんでて!!」

ベルナ:
  「すっこめるわけ無いですよ!!」


(3人、くだらない喧嘩を相当な勢いで始める)


ベルナ:
  「アラナダの社会は猫への優しさってものが欠けてるんですよ!根本的に!!」

ジィーア:
  「だから何?!そもそも余分なこと言い出したのはあんたらでしょ!!」

デフィス:
  「黙れ!飢えの苦しさも知らねぇくせに!!
   大体ジィーアの国は毎年収穫多すぎんだよ・・・うッ?!」


(ふいに、部屋の空気がすっと冷たくなったような殺気が流れる)


ジィーア:
  「え……」

ベルナ:
  「あ……」

ヴェイ:(殺気の源)


  (ガダンッ!!)


(ヴェイ・ルース、すさまじい勢いでコタツをひっくり返す。
 コタツは完全に裏返しになり、ベルナ神王がまともにその下敷きとなる。)


デフィス:
  「・・・・・・」

ジィーア:
  「・・・・・・」

ベルナ:
  (気絶)

ヴェイ:
  (3人には一瞥もくれずに、無言で部屋を出て行く)


  (バタン。)


(デフィスとジィーア、しばし茫然として言葉も出ずに閉められたドアを見つめる)


ジィーア:
  「……えー…っと…」

デフィス:
  「…一番怒らせちゃいけない奴を怒らせたな、俺ら…」


(我に返って部屋の状況を見渡してみれば。
 床には湯のみが転がり、茶がこぼれ、エビせんが散らばっている。
 ひっくり返ったコタツの下ではベルナ神王が伸びたままになっている。)


(デフィス、ジィーア、顔を見合わせる)


デフィス:
  「とりあえず、片付けるか…」

ジィーア:
  「そだね…」


(二人とも戦意喪失。そして片付けが始まる。)


デフィス:
  「あ。ベルナはどうする。」

ジィーア:
  「その辺に寝かせておけばそのうち目覚めるっしょ。」






 おまけ。 コタツを囲む懲りない面々。


(片付け後)

デフィス:
  「猫ー、猫ー。さっきは悪かった…こっちに来るか?」


(猫、呼ばれてのそのそとデフィスのひざに乗り、丸くなって寝始める。)


ジィーア:
  「…懲りないっていうか図太い子だなぁ、この子…。誰でもいいの?」
  (ちょっと呆れる)




(さらに1時間ちょっと後。コタツが再設置され、茶とお菓子とベルナも復活している)


ベルナ:
  「よしっ!」

デフィス:
  「くそっ、ババだったか…あと1枚なのに…!!」

ジィーア:
  「あはは、2人とも頑張れー。」

デフィス:
  「先に上がったからって無責任な応援するな!」


  (がちゃ。)

(ヴェイ・ルース、ドアを開けて部屋に戻ってくる。)

ジィーア:
  「あ、ヴェイさんおかえり。
   …えーと、さっきはごめん。」

(ヴェイ、返事をしようとしたところで大声にさえぎられる)


デフィス、ベルナ:
  「「 わーーーーッ!!? 」」(絶叫)

ベルナ:
  「やった、あがったー!!」

デフィス:
  「くっそー…っ!! また負けか…!」

ジィーア:
  「あ、もう決着ついた?」

ベルナ:
  「えーと、これでジィーアさんの3連勝でデフィスさんの…」

デフィス:
  「黙れ!!」

ヴェイ:
  「…3人とも何を…」

ベルナ:
  「え?見てのとおりトランプですよ。」

ジィーア:
  「寝てるのも退屈だったから。」

デフィス:
  「…負けると気分悪ぃけどな。」

ヴェイ:
  「(3人とも、懲りてない…)」



デフィス:
  「…で、この後どうする?」
  (ヴェイが来たからもうトランプは止めたほうがいいだろう、と内心思っている)

ジィーア:
  「うーん…」
  (トランプ以外で何かないか考えている)

ベルナ:
  「ヴェイさんもトランプやりますか?」(カードを片付けるつもりで集めながら、いちおう訊いてみる)

ヴェイ:
  「……」(ちょっと考え、うなずく)

ベルナ:
  「え? …えーとじゃあ配りますねー。」

ジィーア:
  「(…ヴェイさん…懲りてない…?!)」

デフィス:
  「(それでいいのか…?!)」

ベルナ:
  「(いいんですか…?!)」


(―――そしてまた、意地をかけた勝負が始まる―――)


  (完)


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2008年08月28日(木) 21:19:41 Modified by li_mei




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