ミカンの話
―――コタツの上に、ミカンがひとつだけ残っている。
< 場合その1 ジィーアとデフィスの場合 >
(ジィーア、デフィス、同時にミカンに手を伸ばす)
ジィーア、デフィス:
「「 あ。 」」
ジィーア:
「………」(ゆずらぬ構え)
デフィス:
「………」(にらみ合い)
ジィーア、デフィス:
「「 ジャンケンホイ!! 」」
ジィーア:
「よっしゃ!」(勝利)
デフィス:
「っあ゛ーー……」(敗北)
ジィーア:
「……4分の1、食べる?」(もぐもぐ)
デフィス:
「………………」
(しばし迷ったのち、結局うなずくデフィスであった。)
< 場合その2 ジィーアとベルナの場合 >
(ジィーア、ベルナ、同時にミカンに手を伸ばす)
ジィーア、ベルナ:
「「 あ。 」」
ジィーア:
「………」
ベルナ:
「…えーと…」
デフィス:
「ミカンってこれ以上残ってなかったよな?」
ヴェイ:
「もう無い。」
ジィーア、ベルナ:
「「 ジャンケンホイっ!! 」」
デフィス:
「あー、やっぱジャンケンになるか…」
ベルナ:
「 あっち向いてホイ!! 」
(ジャンケンに勝利したベルナ、勢いよく上を指差す!!)
デフィス、ヴェイ:
「「 ?! 」」
ジィーア:
「 っ!! 」
(ジィーア、必死で別方向に首を向ける!)
ベルナ:
「くっ…」(かわされてちょっと悔しげ)
ジィーア:
「…ふっ。」(ニヤリと不敵な笑みを浮かべる)
ジィーア、ベルナ:
「「 あいこでしょッ!! 」」
デフィス:
「…どういう決め方だ、これ…」
ヴェイ:
「……。」
(少々呆れ顔の2人が見守る横で、延々と『あっち向いてホイ』の勝負が繰り広げられる)
ベルナ:
「…なかなか勝負がつきませんねー…」
ジィーア:
「…なんか疲れてきた…」
ベルナ:
「…いっそもう、半分こにします…?」
ジィーア:
「そだね…。」
(…結局、仲良く半分こ。)
デフィス:
「お前ら、無駄に労力使ったよな…」
ジィーア:
「うん。知ってる。」(もぐもぐ)
ベルナ:
「丸く収まったからいいんですよ。」(もぐもぐ)
< 場合その3 デフィスとヴェイ・ルースの場合 >
(デフィス、ヴェイ・ルース、同時にミカンに手を伸ばす)
デフィス:
「 あ。 」
ヴェイ:
「……。」
(ヴェイ、ミカンをひょい、と手に取り、デフィスの前に置く。
そして何事もなかったように、読んでいた本に目を戻す。)
デフィス:
「は? …いや、半分食えよ。」
(デフィス、ミカンを真っ二つに分け、半分をヴェイの前に置く)
ヴェイ:
「…4分の1でいい。」
(ヴェイ、半分のミカンをさらに二つに分け、片方をデフィスの前に戻す)
デフィス:
「……俺だけ4分の3も食うってのもなー…」
(デフィス、ふと、傍らでコタツに浸かりながらひっくり返って寝ているベルナとジィーアに目をやる)
デフィス:
「この二人の分もちょっとだけ取っておくか。」
ヴェイ:
(うなずく)
(デフィス、4分の1になったミカンをさらに半分に分け、寝ている二人の分として8分の1ずつ置いておく)
(ベルナとジィーア、そんなやりとりのことは露知らず、すやすや眠り続ける)
デフィス:
「こいつらの呑気な寝顔見てると、ミカンを口に押し込んだりしてみたくなるよなー…」(もぐもぐ)
ヴェイ:
「…それは喉に詰まらせるからやめた方がいい。」(もぐもぐ)
(ヴェイ、至極真っ当な意見を述べつつ、8分の1のミカンをさりげなくベルナの額の上に置く)
デフィス:
「そう言われりゃそうか。」
(デフィス、8分の1のミカンをさらに2つに分け、ジィーアのまぶたの上に一切れずつこっそり置く)
(ベルナとジィーア、そんないたずらをされているとは露知らず、すやすや眠り続ける)
デフィス;
「…ベルナもジィーアも全然気づいてねぇな…。
ひょっとして、ほっといたらこのまま寝続けるのか?」
ヴェイ:
「おそらく…
…起きたときに色々と文句を言われるだろうな。」
デフィス:
「あー、そうだな。
『寝てるところに何するんですか!』とか。」
ヴェイ:
「『ミカンがぬるくなった!』とか。」
デフィス:
「言われそうだな。」
(…数十分後、デフィスとヴェイの予想は見事に的中したという。)
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2008年08月28日(木) 21:21:02 Modified by li_mei