ようこそ横田市へ - 『艶は匂へど』
『艶は匂へど(いろはにほへど)』は鏑木遊星による漫画作品。

概要

連作伝奇アクションに分類される青年漫画作品。
人間、或いは人外を相手どった陰惨な戦いに身を投じる女性を主役に据えており、グロテスクなまでの過激残虐描写と、
成年漫画出身の作者の艶のあるキャラクター造形でカルト的な人気を誇っている。
現在まで第二部が完結しており(後述)、数年の時を経て第三部『狂ゐ咲き部隊』が現在連載中。
全体的に日本の雰囲気を重視したキャラクター設定(現代・文明開化・明治〜大正?)と艶かしい女性キャラクター、
ゴア度の高いスプラッター描写に二転三転し続けるストーリーライン(荒唐無稽とも称される)、を作風としている。
読者からの評価は真っ二つに別れ、サブカル系読者からの評価は高い。


第一部『魔剣油蟲』(全9夜、18回)
現代日本。
毎日をつまらないと感じ、怠惰に生きていた青年、西河渉は夜道で眼帯をしたセーラー服の女生徒と、彼女の持つ大飯喰らいの魔剣『油蟲』と出会う。
鬼に逢っては鬼を斬り、神に遭っては神を斬る、その彼女の運命に憧れ、渉は協力を申し出るも、その残酷かつ絶望的な運命にやがて引き摺られて行く事となる。
掲載中に掲載誌ギリギリの背徳的な描写と過激な人体破壊描写が話題を呼び、そのクライマックスで罪の無い一般市民を惨殺し、自らの剣に両腕を引き千切られ、
血まみれの凄惨な姿の主人公の姿に多数反響と批判が寄せられたため、掲載誌を変えざるを得なくなったという、曰くつきの作品である。
(実際には以前から内容が相応しくないとの理由で同社の掲載誌移動のタイミングが重なっただけの話なのだが)
そのインパクトが強烈だったため、今でもコアなファンが存在するカルト作品である。


第二部『独眼お龍』(『龍の巣』改題 全3夜、8回)
『龍馬太夫』は異人の血を引く見目麗しい遊郭の女だった。彼女には左腕がなく、右眼には眼帯をしていた。
誰がかような片輪の身の上を案じようか。ましてや、ここは人を人とも思わぬ遊郭という名の地獄。
袂には拳銃。簪には寸鉄。帯には懐剣。龍馬太夫は静かに動く。そして、自分の部屋―『巣』には、幾数もの罠を潜めていた。
凶悪な人外との凄惨な戦いを描いた第一部と対象的に、遊郭の廻りに起きる謀略に静かにスポットを当て、
アクションシーンは一切の台詞を排し、効果音すら書き込まないサイレント形式に絞られ、拳銃と懐剣の遣い手である龍馬太夫に因る一方的な殺戮シーンに限られている。
(例外として最終夜の戦闘シーンのみ激しい効果音と龍馬太夫の独白によって進行する)
殺害した敵と混じり合うように自らの血溜りに伏して死んでいる龍馬太夫の姿をロングショットで捕らえたカットで物語は終わっており、何とも後味の悪い終わり方で結末を迎えている。
障害者の売春、および過剰な殺害シーンが話題と批判を呼び、一部の人間(漫画批評家)などから痛烈な批判を受ける事となった。
作者は「『人間』の生き方を描いているつもりであり、描き直しを行うつもりは全くない」「ハンディのある人間が健常者を殺すのなら、いささか過剰にやらないと不自然である」
と反論した上で自主的にこの第二部の『原稿の採録禁止』を発表している。


第三部『或る部隊の結末』(『狂い咲き欠月部隊』改題 現在5夜、10回)
身体欠損や特殊事情による止むを得ない理由などで引かざるを得なかった退役軍人によって結成された『欠月部隊』。
歴史の暗部で暗躍した彼らは、戦争の終わった世界で、余生を暮らしていた。
だがある日、引き千切られた窪井伍長の頭蓋が、半分抉り取られた形で新聞社の軒先に叩きつけられたのをきっかけに、
部隊の面々はおぞましく残虐極まりない手段で一人ずつ殺害されていく。
部隊の中核人物であった上枝曹長は自衛の為に犯人捜査に乗り出すが・・・果たして犯人の正体は?


番外編『命くれない』
第二部開始前に予告として掲載された番外編。龍馬太夫が遊郭の女となった過去が匂わせる形で描かれる。
ゴアシーンは通常連載分と比較すると少なめだが、拷問シーンがおよそ5分の1を占めるという、別の意味での問題作。


番外編『逸殲一夜』
作画・櫻野蜜月による第三部『或る部隊の結末』同世界観のスピンオフ作品。短期集中連載の番外編として掲載された。登場する『欠月部隊』の結成までが描かれている。
血糊のうねる様なサスペンス&スプラッタータッチの本編とは別に、冷たく乾いた世界観で淡々と描かれており、その渋いタッチで好評を得た。