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  【作:てきとう怪獣】

※:ここはクリプトン社のキャラクター『ボーカロイド』を使用した二次創作小説のページです。

☯ 登場キャラクター ☯
◆電波初音
◆常識人レン
◆明るいリン
◆ほがらか戒人
◆おおらか迷子



【電波小説】3人の探求者:第33話


海の中、穏やかな顔で漂う鏡音レン・・・。
その腕を、固く掴むものがいた。
レンが目を開けて見ると、初音ミクが視界いっぱいに映った。
自分の人生に満足し、死を受け入れようとするレン少年の目を、じっと見つめていた。
『初音か・・・俺を引き戻しにきたのか・・・?』
ぼんやりとしたレンと、マントを脱ぎ捨てて海に飛び込んだ初音は、一瞬ネズミの群れの中で見つめ合った。
少年の腕を握る初音の手に、さらに力がこもる。
『・・・俺に、まだまだ“世界”を見せてくれるというんだな』
本来それは、溺れた者の、単なる思い込みになるはずだった。
しかし、確かに何かが、初音に伝わったようだ。
証拠もない、根拠もない。
しかし、この時レン少年は確信していた。
声にならない初音の言葉を・・・。
『俺に生きて、神秘を見続けろと言うのか・・・? それも、いい!!』
レンは初音の笑顔を、見たことがなかった。
だからこの時、初音がかすかに笑ったように見えたのは、たぶん気のせいだろう。
『死ぬのはいつでも出来るさ! よし、初音・・・いっしょに行こう!』
少年は、不敵に笑った。
気がつくと、すでに海面近くまで上昇している。
初音が片方の手でつかんだロープを、上の連中が引っ張ってくれたからだ。
海面に出ると、荒波は収まっていて、目の前に船が見えた。
ロープをたぐり寄せる戒人や、5人の音楽家たちが、のぞき込んでいる。
心配していたのだろう、上がって来たレンを見て喜びの声をあげていた。
『良かった・・・皆んな、無事だったのか・・・』
彼らに対し、笑顔で応えたレンは、そのまま初音の腕の中で気を失った・・・。

ゆらりゆらりと船は揺れる。
ゴデュラが飛び込みをした大波の第一波がおさまるまでの短い時間・・・。
海中で長い長い時間を旅したように思ったレン少年だが、じっさいに沈んでいたのはそんな短い時間だったようだ。
たいして水も飲んでおらず、少年はすぐに元気になった。
ややふらつくが、気を失っていたのも一瞬だったらしい。起き上がったレンが船の前方を見ると、まだ遠くにゴデュラの後ろ姿が見える。
今はもう海面を走らず、鴨のように泳ぎながら時々頭を海中に突っ込み、海上に出た時には数メートルはありそうな巨大な海老やらカニやらをくわえている。
空は来た時にはなかったたくさんの白い雲で覆われていたが、これらは全て、ゴデュラが巻き上げた水煙なのだろう。
天候を変えるなど、まったく神の業に等しかった。
巨大なコジュラは潜ってはエサを穫りながら、だんだん沖の方へと去ってゆく・・・。

船は無事、岸に付いた。
一年で最も日の長い時期である。まだまだ夕方と言うには早すぎる時間だった。
巨大タカアシガニの甲羅の一部が、船に突き刺さっていたので、5人の男たちは船の近くで、ノコギリやヤスリなどで一生懸命それを8等分していた。
金属のように硬く、しなやかな甲羅だった・・・。
他にも肉片が大量に波間に浮かんでいたと言う事で、カニ鍋を造っている者もいた。
船には初音とレンと戒人が残っている。
レン少年は完全に回復していた。
初音が、海の方を見やりながらふたりに説明していた。
「昔から世界各地で、ネズミが突如大量発生した話はあるわ・・・中には漁師の網にかかった話もね。それらはきっと事実だった・・・ネズミは、海中を大移動して時として海岸沿いの街にやってくるのよ」
「そ、そうか・・・じゃあもしかしてレミングの大量投身自殺も、海底大移動のために・・・?」
「レミングはただの都市伝説よ。昔、ねつ造されたフィルムもあって、それで誰もがこの手の伝説や迷信に疑い深くなっているの。今回のネズミ海底移動は、まさしくその心理を逆手に取った作戦ね」
「いや、ネズミに裏をかくつもりはないと思うけど・・・」
「しかし、哺乳類が水中でどうやって活動しているのだろうね」
戒人が首をかしげる。
彼も、水中を走る群れを海上から目撃しているのだ。
「わからないわ・・・説明もつけられない。でも事実が先にあるのだから、きっといつか、解明されるはず」
「そうか・・・いつか、か・・・」
レン少年は、妙に嬉しそうに目を細め、空を見上げた。
しばらく黙っていたが、やがて視線を初音に戻す。
「なあ、初音はまたいづれ、冒険の旅に出かけるんだろう?」
「もちろん」
「たまには俺も誘ってくれよな・・・」
「急にしおらしくなったわね。巽音君はいろいろ頼りになるから、いつでも参加歓迎よ」
「ああ!・・・冒険って素晴らしいな!」
「何言ってるのよ。当たり前じゃない」
いつも通りの遠い目つきをした初音がそこに居た。
鏡音レン少年の名前もまだ覚えていない相変わらずの彼女。
しかし、今では初音や戒人とは、何かが通じ合っているような気がする。
いや、通じ合っていた。
数々の神秘を共有して来た冒険の仲間たち。
かけがえのない仲間たちだった。

やがて、カニ鍋のいい匂いが船まで漂って来た。
港の倉庫前で、鍋を作っていた横浜の楽器屋が手を振っている。
料理ができたようだ。
戒人が何も言わず、ふたりの肩を叩くと、3人は船を降りて歩き出した。


 いくつかの些細ないきさつがあるが、それから数日後。
けっきょく、船は初音が買い取る事になった。
普段は釣り船として機能し、初音の両親がオーナーと言う事に書類上はなっているが、それ以外の日は初音の旗艦として海岸からさほど離れない近海への冒険に、多くの冒険家を乗せて旅立ち、親しまれたのはさほど遠くない未来の記憶である。
ちなみにこの時の支払いがアルファイバーカードであり、レン少年は初めて、カードの価値が意外に高い事を知った。
5人の音楽家はタカアシガニの甲羅を8等分して、それぞれ持ち帰った。
命がけになった冒険、そして手に入れたタカアシガニの甲羅を使ったコーティング剤で完成する、デジタルピアノの音・・・。
考えてみればモデルとなったグランドピアノの音の方が、繊細さを秘めている分、優れているわけだ。
すでに存在する音と同等のものを小さなデジタルピアノで出すために、皆苦労して来た事になる・・・しかし、8人は不本意だとは思っていなかった。
人の夢とは、概してそういうものなのではないだろうか・・・。
手に入れたのは向こう10年分くらいの量なのだが、初音が
『足りなくなったら、数年に一度木更津あたりに“大海乱”が起こるから、その時にまた巨大タカアシガニに出会えると思うわ』
と言ったのには、さすがに全員が凍り付いて、軽々しく同意できなかったのであるが・・・。

彼らはそれぞれ、自分のデジタルピアノを改造して満足していた。
こうして、『音』をめぐる冒険は、ひとつ幕を閉じたのであった。





【電波小説】3人の探求者:最終話


5人のバンド仲間の中で、迷子は一番弱い。
身長と体格だけは女性にしては立派で、少年である鏡音レンよりも長身なくらいだったが、体力がなく、腕力もか細かった。
そんな彼女を心配して、弟の戒人は姉を北海道にいる拳法の達人の元へ養行のために送り出した。
渡航費用などをひねり出すために、戒人は手持ちの楽器、機材などを全て売り払ってしまった。
一度は全てを手放したが、当然すぎる結果として困る事になった。
しかし戒人の思考は単純だ。
『だったら、もう一度入手すれば良い』
ここから、戒人と初音ミク、そして鏡音レンの冒険が始まった・・・。

楽器は普通、買うものだ。
だが、普通では満足しない者がひとり居た。それが初音だ。
彼女に従って、レンや戒人は素晴らしい音を出すと言うデジタルピアノを求め、多くの手順を踏みながら、邁進した。
壮絶な冒険の末、行き着いたのは江ノ島沖の海だった。
そこで起こった神秘の数々は、想像を絶するものばかりだった。
そして・・・鏡音レン少年はそこで真実にたどり着いた。
 自分は音楽家であると同時に、冒険家であるという真実に・・・。
 冒険家の魂を、この身に宿していたという真実に・・・。


 6月のある晴れた休日・・・。
鏡音リンは、戒人のガレージでデジタルピアノを弾いていた。
横には初音が居て、彼女の方が一日の長があるので、教わっていたのだ。
ひととおりのレッスンを終えた後、通称『楽屋』と呼ばれる元事務所に下駄を鳴らしながらリンが入って来て、戒人とパソコンを見ていた兄・レンに話しかけた。
「や〜、初音ちゃんがいると違うわねえ〜。やっぱり若い娘は溌剌としてていいね〜、なんだかこう、エネルギーを分けてもらってる感じがするねえ〜」
「そうか。彼女17と言っていたから、お前より3つ年上だがな」
「あ、この前の演奏、動画サイトにアップしているんだ〜。どれどれ、あたしにも見せてごらん」
「今、アップロードが終わるところだと思う・・・お、アップされたぞ」
パソコンに、彼らの演奏動画が上映された。
以前に造った曲のピアノアレンジであり、ピアノ自体は戒人の腕が発揮されて、バンドの呼吸もあっていて、アマチュアらしい荒削りさもあるが、かなり良い演奏だったと皆、自負している。
 アマチュアバンドが演奏し、プロモーションビデオのように動画化して動画サイトに投稿する・・・よくある事だ。
そして、アマチュアバンドが機材に恵まれないのも、これまたよくある話だ。
レン少年はほおづえをついて、ノートパソコンの後ろにあるオーディオを操作していた。
「まあ、完成したビデオは見たから、出来栄は知っているけどね・・・。動画サイトに投稿すると、やや音質は劣るだろうか。いや、もうどうでもいいね、音質は・・・それよりもだ、音の迫力は伝ってる?」
戒人は朗らかに笑いながら、自分の意見を言ってみた。
「音が何となく違うのは、伝わると思うよ・・・ラジカセ録音にしてはね。もちろん、肝心のデジタルピアノのあの音は、正確に再現しようがないんだけど」
「ラジカセ録音じゃあねえ・・・」
レン少年は、かっくりうなだれた。
とんでもない冒険を繰り広げ、デジタルピアノでグランドピアノ並の圧倒力を出す秘伝の業を受け継いだ彼らは、さっそくそれを試し、成功した。
今でもそのデジタルピアノはこのガレージにあり、さっきまでリンが弾いていた。
音は確かに、強く、速くなった。
だが、彼らは肝心な事を忘れていたのだ・・・録音するための機材を、全て売り払った後である事を・・・。
スタジオ、機材を借りる予算は、もうない。
冒険のための準備、食料、ガソリン代などで赤字なくらいだった。
あの日以来、地下社会ではアルファイバーカードが流通しすぎて、機材と物々交換に行っても、逆にカードを買わされそうになるという・・・。
レンのレッドデッキとブルーデッキは、初音が大事に保存しておくように言うので、少年はその通りにしていた。
来週には機材を所有する戒人の友人たちが応援に駆けつけてくれるが、今はとにかく、楽器以外なにもない状態だった。
 とりあえず彼らは鏡音家に先代から伝わるラジカセを物置から引っ張りだし、カセットテープを使って録音した次第。
旧いラジカセではあったが、それでも戒人のパソコンや、初音のメモリー型レコーダーより録音品質は良かった。
画質が悪いのは、携帯電話で撮影した演奏動画だから仕方がないが、音楽家として音質が悪いのはどうにも納得がいかなかった。
せっかく手に入れた『音』が、人々に伝わらない・・・。

戒人が、再生される演奏動画を見ながら言った。
「まあ、せっかく手に入れた音だけど、ラジカセじゃこんなものだね」
レン少年が、力なく言った。
「ああ・・・機材さえあればなあ」
リンが、兄を励まそうとした。
「元気出しなよ〜、若いんだからさ〜」
そこへ初音が『楽屋』に入って来て言った。
「次があるわよ。今度はプロが使っているマイクロフォンを手に入れるわよ」
「いや、それが手に入ったとして・・・接続する機材も相応のものでないと」
「じゃあ、それも手に入れるだけ」
かつてはこのガレージに存在してた機材たち・・・その有り難みがよく分かる。
手に入れ直そうとすると、大変なのだ。
しかし初音は歩みを止めるつもりはないようだ。
レン少年は、そんな初音を頼もしく想うようになっていた。
「そうだな、全部取り返せばすむ事だな!」
「分かって来たじゃないの。じゃあ行くわよ」
「え?行くってどこに・・・」
「ディオノグロッドと録音機材を交換してもいいって人がいるのよ」
「ディオノグロッドって何だー!?」
「とにかく行きましょう、青木ヶ原樹海に」
「あたしも行くー!」
「じゃあさっそく、車を出すよ」
「ディオノグロッドって、一体何なんだー!!??」
賑やかな名もないバンドは、赤い迷子のフォルクスワーゲンに次々と乗り込んで、静岡目指して突然の冒険へと旅立って行った。

 これが、数々の発見で世界の歴史を変えたと評される伝説的冒険家・鏡音レンの、若き日の物語である・・・。




4人がフォルクスワーゲンで出かけた、その同時刻・・・江ノ島付近の海岸。
今日も、のどかな行楽日和だった。
人々は海岸で戯れ、楽しそうだ。
海から少し離れた高台で、その様子を見つめている白い鳩がいた。
鳩はしばらく人々の営みを観察していたようだった。
やがて、海辺の平和に満足したように、大空へ飛び立つ。
その鳩に注意を向けた者は、誰も居なかった。

数日前に、大海狂で封鎖された海岸だったが、今ここにその時の海を知る人間はいなかった。
街の者たちの間では沖の方から雷鳴が聞こえていたので、『大海狂とは天候が悪くなる現象である』という認識が、育まれつつあった。
3人の冒険家と5人の音楽家は、それぞれ横浜、東京へ戻って居ない。
大海狂の日、この海で起こった神秘の数々が明かされるのは先の事になりそうだ。
その神秘は人類にとっても、大切な物語になるだろう。

今、ここであの日の真実を知っているのは・・・。
全てを見下ろしていた眩しい太陽と青い空。
そして忘れられた1羽の鳩だけだった。








終わった・・・終わりました〜!
徹夜して終えました!
まあ仮眠たっぷりとってるけど!

読んでくれた方々、ありがとうです!
さて、次は何を書こう・・・。
あ、校正はまだ続くかも。
そして、挿絵も考えておきます。

by黒はとP@てきとう怪獣

  ◆◆もくじ◆◆

【電波小説】3人の探求者-第1-4話
【電波小説】3人の探求者-第5-8話
【電波小説】3人の探求者-第9-12話
【電波小説】3人の探求者-第13-16話
【電波小説】3人の探求者-第17-20話
【電波小説】3人の探求者-第21-24話
【電波小説】3人の探求者-第25-28話
【電波小説】3人の探求者-第29-32話
【電波小説】3人の探求者-第33話-最終話

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