租税判例のデータベース。

平成16年度税制改正で行われた土地等譲渡損失の損益通算廃止を巡る事件。

事件の概要

平成16年1月末に行われた土地の譲渡について、納税者が譲渡損失の損益通算の適用があるとして行った更正の請求に対し、更正すべき理由がないとした通知処分がされたことによる通知処分取消請求事件。
納税者は、平成16年度改正措置法の附則は、年の途中である4月1日に施行された改正措置法を年の開始時の1月1日に遡って適用する趣旨のものでありながら、開始前には一般にほとんど周知されず、仮に知り得たとしてもその期間は7日間程度で予測可能性はあったとはいえないとして、同附則は憲法84条に違反すると主張。

判決要旨

千葉地裁民事第3部、堀内明裁判長はまず、所得税の納税義務が成立する以前に行われた本件の譲渡についても改正措置法を適用する旨を定めた附則は、厳密にいえば租税法規の遡及適用には該当しないとした。所得税は期間税であり、納付義務は暦年の終了時に成立、譲渡所得の計算は個々の譲渡の都度されるものではなく、1歴年を単位とした期間で把握されるものだからである。
また、改正法が立法裁量を逸脱・濫用したものかについては、平成16年分所得の課税開始以後の譲渡に適用する必要性が高かったことなどから、立法目的は正当であると判断、措置内容の合理性についても、分離課税方式が採用されていることとの整合性を図り、損益通算による不均衡の解消に応えるもので合理性があるとした。
そのうえで、納税者が特に問題としている1月1日に遡って適用するとした附則の合理性については、還付が受けられないという予期しない不利益があることは明らかであることから、予測可能性についての検討が行われた。
この点については、平成16年度税制改正の数年前から、政府税調で既に度々指摘されていたもので、税制改正大綱に盛り込まれて日刊紙にも掲載されたことから、その周知の程度は完全なものとはいえないまでも、納税者において予測できる状態になったということができるとされた。
そして、税制改正大綱が年の開始前に公表され、開始後1ヶ月程度で改正措置法案が国会へ提出され可決決定していることから、こうした場合に、改正法が年の開始時に遡って適用される可能性は否定できないもので、過去の改正にも同様のケースがあることからすると、所得税のような期間税では、租税法規が納税者に不利益に変更される可能性が立法の必要性如何によってはあり得ることを納税者としても全く予測できないとはいえないとした。
遡って適用しなければならないとするまでの合理性・必要性については、東京地裁の判断内容と同様に、土地取引と株式取引との不均衡是正の観点からは、損益通算の廃止と税率引下げを1つのパッケージとし、その改正を早期に実施する必要があり、翌年まで遅らせれば節税を狙った不当な低価による土地取引が横行しかねず、資産デフレをもたらすとの懸念によるもので肯定できるとした。
そして、「その公益性と原告等の納税者にもたらされる不利益とを比較した場合、明らかに納税者の不利益が上回るということは言えず、少なくとも、本件改正附則の内容が立法目的に照らして著しく不合理であるということはできない」と判示することとなった。

検索情報

参考文献・資料

『週刊税務通信』No.3018(平成20年5月26日)P.15-16

関係法令等


裁判情報


事件番号
事件名
裁判年月日
法廷名
裁判種別

原審・上訴審

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類似/参考判例等

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