2009年夏 横浜の片隅に生まれた小さな森がありました。つながりの森は、人と人とのつながりの中で新しいものを生み出そうとする人たちが暮らす場所。人々はその場所を「Y150ヒルサイド・つながりの森」と呼び、歌い、作り、育て、奏で、走り、語り、そして笑いました。このページは、そんな「つながりの森」の住民達の語りを後世に残し、新たなつながりの森へとつなげていくために作られました。

自身もコスプレイヤーとして活躍されている園田さんは、
コスプレという分野での日本で初めてNPO法人「コス援護会」を立ち上げた張本人でもあります。
コスプレの正しい社会的認知と、コスプレイヤー当事者自身の社会的接点を目指し、
コスプレの内と外を繋げるパイプとしてヒルサイド出展を実施しました。



―園田さんは、そもそも何故、このY150ヒルサイドに出展しようと思ったのですか?

コスプレイヤー(コスプレに興じている人)さん達のセーフティネットを作るためにNPO法人を立ち上げたのですが、
その当時、ミッションの啓発、発信の手段が分からなかったのです。
そんな時、かながわコミュニティーカレッジで偶然協会の方からヒルサイドの話を伺い、
もしかしたら企画出展ができるのかな?と思い、申し込むことを決めました。

また、博覧会という公的なイベントに出展するということで、
コスプレそのものの社会的な見え方を変えられるんじゃないかという期待もありました。
それと、コスプレ自体は華やかな見た目とは裏腹に非常に閉塞的な分野なので、
コスプレイヤーである当事者自身も外の世界に触れることによって、
本人達も視野を広げる良い機会になると固く信じていました。


―なるほど。自分の団体の事のみならず、コスプレを取り巻く様々な状況も含めて、出展を決めた訳なんですね。

コスプレの世界は基本的に市場主義によって成り立っているんです。
コスプレイヤー達は様々なモノに高い金銭を払いながら、衣装を用意して、業者の提供するイベントに参加する。
こうした搾取する側、される側の関係性によって成り立つ業界を、外部の違う力で変えていきたいと思ったんです。



―出展を通じて何が一番思い出深かったですか?

私自身が市民創発に申込んだ当初は、自分が何をしたいのか、
コスプレを知らない相手にも分かるように、自分の言葉できちんと説明ができない状況にいました。
出展の準備は同時に、自分の中の思いを整理整頓する作業でもありました。
それを乗り越えると、相手に自分の言葉で思いを伝えられる力が身に付きました。
その結果、出展の内容を詰めていく段階にあって、もともとは一人で始めたことなのに、
準備から汗を流して一緒に運営してくれる仲間ができました。
それが何よりも一番大きかったですね。
そして後に思えば、実は一緒にやろうという気持ちを持ってくれていた人はいたんです。
自身が気づかなかっただけだということも分かりました。

結果的に、150人近い人達が、呼びかけに賛同してヒルサイドでボランティアとして参加してくれたのですが、
そもそも自分本位でやっているコスプレイヤーが、ボランティアでこれだけ多く来てくれるなんてあり得ない事だったんですよ。
ホント、ずっと自分は一人だと思い込んでいたのに、
共感してくれる仲間がこんなにいたんだという事に気づいた事は、かけがえのない出来事でした。


―そうでしたかー。しかし、出展に向けて色々と大変な思いもされていましたが、どんな苦労がありましたか?

いやー、全てにおいて苦労しました(笑)。
とにかく何から何まで全く分からなかった状態だったので、
段取りや出展の考え方、企画書の書き方、スケジュールの立て方、広報の方法など、全てが勉強になりました。
創発プログラムで学んだひとつひとつが大きな糧になったと思います。



―ですよねー。でも、そんな苦労も、
出展を通じて色々な成果となってあらわれたんじゃないですか?

そうですね!成果としては大きく2つ上げられると思います。

1つ目は、外に発信する為の論理的な基礎が出来たという事です。
これまで、なかなか自分の伝えたいメッセージを上手に伝えることができなかったのですが、
出展を通じてきちんとした言葉の整理が出来たと思います。
来場者の人が納得するするような説明や出展を完成させる事が出来たおかげで、
行政の人や他の市民団体、企業の人達と、共通な言語で対等にお話することができるようになりました。
そして、まちづくりや福祉、教育に国際協力など、様々な分野に活動範囲を拡げることができたのは、大きな成果です。

2つ目は、自分自身が楽しむだけだったコスプレ活動が、
第三者にも楽しめるような活動に展開することが出来たという事です。
これまで、コスプレは内輪の盛り上がりに過ぎなかったのですが、
出展を通じて、コスプレにこれまで関わることのなかった人でさえも楽しめるような活動に、
敷居を下げることが出来たと思います。
コスプレ趣味の人のみならず、多様な参加者を受け入れるような見せ方や考え方、
プログラムパッケージを提供できた事で、
今後の自身の活動方針を考えるのに大変大きな成果となりました。



―最後に、園田さん自身の今後の活動の展開について教えて下さい。

思いを同じにする人達とともに連携し、発信をしていきたいと思っています。
その為にNPO法人をきちんと組織化して、事業を少しずつ展開していきたいと思っています。

また、これまで一定の距離を置いていたコスプレ業界にも少しずつ歩みよりながら、
より当事者に近いところで活動を拡げていきたいと思っています。
ゆくゆくは、コスプレイヤーさん達を含むコミュニティハウスみたいなものを創ることが僕の夢です。


<了>

【シヅカマサノリ】

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