2009年夏 横浜の片隅に生まれた小さな森がありました。つながりの森は、人と人とのつながりの中で新しいものを生み出そうとする人たちが暮らす場所。人々はその場所を「Y150ヒルサイド・つながりの森」と呼び、歌い、作り、育て、奏で、走り、語り、そして笑いました。このページは、そんな「つながりの森」の住民達の語りを後世に残し、新たなつながりの森へとつなげていくために作られました。

「緑と花のトンネル、真夏の日のオアシス」と「花のスタードーム&はなぐるま-夏の花園」。
棚田・段々畑ののどかな風景に、
なた豆、ゴーヤ等の美しい緑と花のトンネルを出現させた辻さん。
トンネル内にはお手製のベンチが設置され、
暑い夏の日に、ヒルサイド来場者が一休みする素敵なスペースとなりました。
また、手作りの「はなぐるま」も展示。ヒルサイド会場を色鮮やかに彩りました。



―まずは、出展お疲れ様でした!
いろいろ伺いたいことがあるのですが…
最初に、辻さんが市民創発に参加したきっかけを教えてください。

そうですね。
タイミング的に、人生のギアチェンジの時期というか、
仕事から家族・地域へと向く、良いタイミングだったようです。
多世代との出会い…10代から70代、各世代に友人を作りたいと思って参加しました。
あとは知的好奇心ですかね。
Y150というわくわく感、創発を通じて自己実現をする、ということに惹かれました。

―なるほど、とても多くの思いを持って参加されていたのですね。
辻さんは、事前準備から出展本番まで、
本当に多くの時間をヒルサイドに費やされて活動をされていたように思います。
たくさんの思い出があると思うのですが、中でも印象的だったことはどのようなことですか?

本当にたくさんの思い出があります。
私は初期の創発支援プログラムで「美術室」※に所属していましたが、
その後の出展にもつながる、様々な方との出会いがありました。
みんなで意気投合したというか、
ヒルサイドの創発支援プログラムのあと、決まってみんなで若葉台のおそば屋さんに打ち上げに行っていましたね。
懐かしい思い出です(笑)。

はなぐるまプロジェクトを構想したきっかけは、
創発支援プログラムで行った、自分の過去を振り返るワークショップ。
この時に、以前住んでいたオランダアムステルダムで、はなぐるまを見たことを思い出したのです。
はなぐるまでまちに彩を添えて、
花を楽しみに人が集まり、集まった人同士が交流するような、
「交差点」のような場所が作れたら、楽しいし、面白いな、と思いました。



プロジェクトの構想ができてからは、試行錯誤の日々でした。
私は、それまで花を育てたことがなかったので、遊休地を借りて実際に花を育てることから始めました。
雑草は生えるし、水・肥料なども分からないことだらけ。悪戦苦闘したのを覚えています。
また、ヒルサイドの一年前からは会場を彩るはなぐるまの試作にも励みましたが、
3か月かけてようやく1台できる、という具合に非常に時間がかかりました。

その後、プロジェクト運営のメンバー集めを行いました。
都岡や保土ヶ谷などで説明会を行って、40名以上の方の協力を得るに至りました。
仲間が増えたことで、はなぐるま制作もスピードアップ。
最初は花を育ててもらうために仲間集めをしたのですが、
竹の縁台づくりや緑のトンネル内の気温を測るワークショップなど、
それぞれのアイディアが膨らんで、プロジェクト内容の幅が広がっていくのはとても楽しかったですね。



創発支援プログラムはとても勉強になりました。
デザインや小物づくりのワークショップ、東京ガスへの見学会など、
好奇心をくすぐられるものばかりでした。
創発メンバー仲間のひとりは、東京ガスへはその後もなんども通っているそうですよ。
横浜開港150周年協会の会議室で行った創発スタジオ
(創発メンバーが交代で講師となって自分のプロジェクトの紹介やワークショップなどを行った)も
非常に良かったと思います。
自由なサロン的な雰囲気の中で、
講師も参加者も一緒に会話をかわしながら、様々な分野のことを知ることができる、一種の勉強会でした。
こういうセミナーものは、またぜひ参加したいですね。

―本当にたくさんの思い出が詰まっていますね!
辻さんにとって、「市民創発の成果」はどのようなものだったと思われますか。

想いを形にする思考方法や行動の仕方、ノウハウが学べたことは大きな成果です。
知識として学べただけでなく、実践して体で体験できたことが、良かった。
初めてのことを実現する体験は、感動的で新鮮でした。
緑のトンネルを作ったときは、ただ日陰を作る目的だったのに、
実際に作ってみるとトンネルの中が外よりも涼しかった。
メンバーに元大学の物理の先生がいて、
葉っぱの持つ気化熱の効果で、トンネル内の温度が外よりも3℃ほどさがることがわかった。
せっかくなので葉っぱの温度を測るワークショップなども行いました。
自分の思っていた以上のことを生み出せたときは「創発」の素晴らしさを感じましたね。
ヒルサイドを通じて素晴らしい仲間やスタッフと仲良くなり、ネットワークが出来たのも、大きな財産です。



―今後の展開についてはどのようにかんがえていらっしゃいますか?

ヒルサイド終了後、緑と花のトンネルは、多くのボランティアの方が住んでいる都岡町に譲渡しました。
今後は、実際にまちの中にはなぐるまをおけるように、
設置できる場所と世話をする人、継続できるビジネスモデルの構築ができたら良いな、と考えています。
また、ヒルサイド終了後にみんなが集まる場がなくなってしまったのは寂しいですね。
自主参加のワークショップやセミナーなど、サロン的にできたら良いな、と思います。

―ヒルサイドで蒔かれた種は芽をだし、着実に大きく育っているのですね。
最後に、市民創発を通じて変化を感じた人はいますか?

自分自身成長できたことは大きな変化です。
創発だからこそ体験できたことがあり、
今まで知らずに過ごしてきたことがこんなにも多かったのか!と驚きました。
また、「市民」の時代が来ているのだということも肌で感じました。
これからは、市民のお祭りやイベントも、ただ与えられて楽しいだけでは物足りないのではないでしょうか。
知的好奇心を満足させ、社会や世代間で共感が持てる内容
…準備時間やスキルが必要となる内容が求められていると感じています。
創発メンバーがOBとして引っ張っていけたら良いですね。

※創発支援プログラムは、旧若葉台西中学校という廃校を活用して行われました。
約300人の創発メンバーは、
「木工室」「理科室」「金工室」「被服室」「美術室」の5つの教室に別れ、
それぞれの教室のファシリテーターのもと様々なワークショップを行いながら、
各自の出展プログラムを深めていきました。

<了>

【ふくまめ】

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