感染症
病理学総論
感染症は細菌・リケッチア・真菌などの病原性微生物やウイルス・異常プリオンなど病原体が体内に侵入し発症する疾患で宿主組織の炎症反応や免疫応答が複雑に関与しています
感染症研究は19世紀後半の二人の偉大な細菌学者ロベルト・コッホとルイ・パスツールにより飛躍的に発展しました.コッホは炭疽菌,結核菌,コレラ菌を発見し細菌の純粋培養法を確立.ヒトの体内に侵入した微生物が感染症の原因(病原体)であることの証明としてコッホの原則を提唱しました.
''コッホの原則(Koch's Postulates )''
パスツールは微生物が自然にわいて出るものではなく、腐敗は微生物の混入であることを実験で証明した.
微生物はヒトや動物の体内に感染すると結論した彼は消毒法の基礎概念を確立した.
彼の名前は「殺菌」の英語名、pasteurizationパスツリゼーションとなっている.
感染症のメカニズムを考えるには
1. 各感染症病原体の独自の特徴と
2. 病原体への宿主(感染を受ける動物)の反応を考える必要があります.
ヒトに感染する病原体は多種にわたりそのサイズもまちまちです.(表1)
偏性細胞内寄生:別の生物の細胞内でのみ増殖可能で、それ自身が単独では増殖できない微生物の性質のこと。生きた細胞を使用しないで人工的に単独で培養することが出来ず、リケッチア、クラミジア、ウイルスがその代表例である。
通性細胞内寄生:細胞内と細胞外の両方で増殖可能なもの。
ウイルスの構造
赤痢アメーバ症
ジアルジア症
血液感染性原虫
トキソプラズマToxoplasma gondii
感染症は細菌・リケッチア・真菌などの病原性微生物やウイルス・異常プリオンなど病原体が体内に侵入し発症する疾患で宿主組織の炎症反応や免疫応答が複雑に関与しています
感染症研究は19世紀後半の二人の偉大な細菌学者ロベルト・コッホとルイ・パスツールにより飛躍的に発展しました.コッホは炭疽菌,結核菌,コレラ菌を発見し細菌の純粋培養法を確立.ヒトの体内に侵入した微生物が感染症の原因(病原体)であることの証明としてコッホの原則を提唱しました.
''コッホの原則(Koch's Postulates )''
- その病気の病巣には常にその微生物が見つけ出される
- その微生物が個体培地の上に単一のコロニーとして分離できる
- この培養分離物を実験動物に接種して病変を作り出せる
- 実験動物の病変からその微生物を再現できる
パスツールは微生物が自然にわいて出るものではなく、腐敗は微生物の混入であることを実験で証明した.
微生物はヒトや動物の体内に感染すると結論した彼は消毒法の基礎概念を確立した.
彼の名前は「殺菌」の英語名、pasteurizationパスツリゼーションとなっている.
感染症のメカニズム
感染症のメカニズムを考えるには
1. 各感染症病原体の独自の特徴と
2. 病原体への宿主(感染を受ける動物)の反応を考える必要があります.
ヒトに感染する病原体は多種にわたりそのサイズもまちまちです.(表1)
病原体 | サイズ | 増殖部位 | 病原体の例 | ひきおこされる疾患 |
ウイルス | 20-30nm | 偏性細胞内 | ポリオウイルス | ポリオ |
クラミジア | 200-1000nm | 偏性細胞内 | クラミジアトラコマチス | トラコーマ |
リケッチア | 300-1200nm | 偏性細胞内 | R.prowazekii | チフス熱 |
マイコプラズマ | 125-350nm | 細胞外 | M.pneumoniae | 異型肺炎 |
バクテリア | 0.8-15μm | 皮膚 | 表皮ブドウ球菌 | 傷の化膿 |
粘膜 | Vibrio cholerae | コレラ | ||
細胞外 | 肺炎球菌 | 肺炎 | ||
通性細胞内 | Mycobacterium tuberculosis | 結核症 | ||
真菌 | 2-200μm | 皮膚 | Trichophyton sp. | 足白癬 |
粘膜 | Candida albicans | 鵞口瘡 | ||
細胞外 | Sporothrix schenkii | スポロトリコーシス | ||
通性細胞内 | Histoplasma capuslatum | ヒストプラズモーシス | ||
原虫 | 1-50μm | 粘膜 | G.lamblia | ジアルジアーシス |
細胞外 | Tripanosoma gambiense | 眠り病 | ||
通性細胞内 | Tripanosoma cruzi | シャーガス病 | ||
偏性細胞内 | L.donovani | カラ・アザール | ||
寄生虫 | 3mm-10m | 粘膜 | Enterobius vermicularis(蟯虫) | Oxyuriasis(蟯虫症) |
細胞外 | Wuchereria bancrofti(バンクロフト糸状虫) | フィラリア | ||
細胞内 | Trichinella spiralis | Trichinosis(旋毛虫病) |
偏性細胞内寄生:別の生物の細胞内でのみ増殖可能で、それ自身が単独では増殖できない微生物の性質のこと。生きた細胞を使用しないで人工的に単独で培養することが出来ず、リケッチア、クラミジア、ウイルスがその代表例である。
通性細胞内寄生:細胞内と細胞外の両方で増殖可能なもの。
感染病原体の特徴
ウイルス
- すべてのウイルスは自身の複製を宿主細胞の代謝系に依存しており自身では複製ができません.
- ウイルスの表面タンパク質が宿主の細胞表面に接着することで感染が始まり, 宿主細胞機能を利用して自己のRNAあるいはDNAを複製,殻を合成し,細胞を破壊して増殖する。このようにウイルスは生きた細胞内でしか増殖できない.
ウイルスの構造
- ウイルスの基本構造は核酸のDNAかRNAのどちらか一方と,それを保護する殻蛋白(カプシドcapsid)で成り立っている
- RNA,DNAの遺伝子は一本鎖,二本鎖,直線状や環状などさまざまで,数も3個しかないものから数百の遺伝子をもった複雑なものまである
- 殻蛋白は多数のサブユニットから構成されておりラセン状もしくは正20面体様の規則正しい配列となっている(icosahedral or helical)
- 脂質を含むエンベロープと呼ばれる膜に包まれるウイルスとエンベロープを持たない小型球形ウイルスに分類される
- エンペロープの有無は消毒薬に対する抵抗性に関与し,エンベロープ有りのウイルスは消毒薬に対して感受性があり不活性化を受けやすい
- エンベロープが無いウイルスは加熱処理に対しても抵抗性であり小型であるため濾過による除去も困難である
- 多くのウイルスは56℃,30分でカプシド蛋白が変性して不活性化される
細菌-バクテリアBacteria
- 細菌は原核生物((顕微鏡で見て核がある生物を真核生物とよび核のないものを原核生物といいます.細菌と藍藻以外は真核生物です))とよばれます.膜構造を持つ細胞小器官としての核がなくDNAはまとまりをつくり細胞質に浮かんでいます.ミトコンドリアや小胞体などの細胞小器官も欠く.
- 細菌細胞壁はペプチドグリカン層と二重リン脂質層から形成されています
- ペプチドグリカン層がリン脂質層にサンドイッチされているのはグラム陰性菌です.
- ペプチドグリカン層が一層のリン脂質層に裏打ちされているのはグラム陽性菌です.
- 細菌は
- グラム染色(陰性・陽性)
- 形態(球菌・桿菌)
- 呼吸様式(好気性・嫌気性)の3つの因子で分類される--例)嫌気性グラム陰性桿菌
- 主要な病原細菌?
リケッチア・クラミジア・マイコプラズマ
- 他の細菌同様二分裂し,抗生物質が効く
- しかし, 一部の器官や代謝機能を欠いている(クラミジアはATP合成ができない)
- マイコプラズマは小さく(125-300nm),単独で生きていかれる最も簡単な生物
- 濾過滅菌ではミクロン以下の孔の膜を変形して通り抜けてしまうことがある
- マイコプラズマには細胞壁がない.(細胞膜はある)
- 肺炎マイコプラズマMycoplasma pneumoniaeはエアロゾルが気道上皮細胞に付着して,ヒトからヒトにうつる
- Mycoplasma pneumoniae==>異型肺炎;細気管支周囲のリンパ球・形質細胞浸潤が特徴
- ureaplasma(mycoplasma類)==>性感染して非淋菌性尿道炎をおこす
- クラミジアとリケッチアは偏性細胞寄生をする.
- 上皮細胞膜に結合した空胞や内皮細胞の細胞質内で増殖する
- Chlamydia trachomatisは卵管狭窄をきたして女性不妊の第一の原因となる他角膜混濁や瘢痕をきたす
- リケッチアは内皮障害をおこし出血性血管炎を起こし紅斑を形成する
- 流行性発疹チフス,ブリル-ジンサー病(再発型の流行性発疹チフス),発疹熱, 恙虫病 , ロッキー山紅斑熱,東半球ダニ媒介性リケッチア症,リケッチア痘, Q熱
- エールリヒア症は,ダニによってヒトへ伝播されるリケッチア様の細菌であるエールリヒアにより起こされる。
- 節足動物(ダニ・ノミ・シラミ)により媒介される
真菌
- 真菌は真核生物でキチンを含む細胞壁とエルゴステロールを含む細胞膜を持っています
- 発芽するイースト(yeast)かフィラメント状の菌糸(hyphae)として成長する
- 菌糸は有隔または無隔であり,隔壁の有無は臨床的診断に役立つ
- 病原性真菌の多くは温度により形態を変え,室温では菌糸型,体温ではイースト型となる
- 真菌は表在・深在性感染をきたす
- 表在性感染は皮膚・爪・体毛
- 表皮表層にに感染する真菌は皮膚糸状菌とよばれ白癬tineaに部位をつけてよぶ ~
- 一部の真菌は皮下組織に浸入し膿瘍や肉芽腫をつくる(sporotrichosisやtropical mycosis)
- 深在性真菌症は免疫低下患者において全身性播種,臓器浸潤をきたす
- 免疫正常患者では治癒するか不顕性感染となる
- 深在性感染真菌には地理限定の種類がある 例:コクシディオイデスCoccidioides 北アメリカ南西部
- カンジダ・アスペルギルス・ムコール・クリプトコッカスなど日和見感染真菌は通常疾患の原因とならずに皮膚・腸管に常在する
- 免疫抑制患者にはこれらの真菌が生命を脅かす日和見感染を引き起こす
- 炎症の弱いまたは炎症のない組織壊死・出血・血管閉塞が認められる
- AIDS患者は日和見真菌のニューモチスティス・カリニPneumocystis carini感染をおこしやすい
- 免疫防御能低下;一般的には血液悪性疾患,リンパ増殖性疾患,癌の化学療法,AIDSなどにおける細胞性免疫の障害がある場合に疾患を引き起こす。
- HIV感染患者の約30%にAIDSと診断する最初の症状としてニューモシスチス-カリニ肺炎がみられる
- AIDS患者の80%以上に経過中いずれかの時点で,予防薬が与えられない場合にこの感染がみられる。
- HIV感染患者は,CD4ヘルパーT細胞数が200/μL未満になるとニューモシスチス-カリニ肺炎にかかりやすくなる。
原虫プロトゾアProtozoa
- 原虫は単細胞真核生物で発展途上国の疾病・死亡原因となっています
- 原虫はいろいろな細胞の内部で複製が可能であり泌尿生殖器・腸管・血液では細胞外での増殖が可能です
- 最も流行している消化管感染原虫は赤痢アメーバとGialdia lambliaで2つの型が存在する
- (1)motile trophozoites: 腸管上皮に接着侵入する
- (2)immobile cysts:経口感染時,胃酸に抵抗を示す
赤痢アメーバ症
- ジアルジア症と並んで海外からの輸入感染症に位置付けられているが、国内発生例も多くホモセクシャル間に多発していることから性感染症STDとしての認識が固まってきた。
- WHO の勧告では、組織侵入性又は赤血球捕食性のあるものだけを&(red){Entamoeba histolytica}と呼ぶこととし、非病原性のものは &(blue){Entamoeba disper} として治療を行わないことにしている。
- 2003年4月に施行される改正感染症法において赤痢アメーバは4類として扱われるが、近年大腸アメーバ症の約半数がアメーバ性肝膿瘍に移行するなど重症化傾向にあることから、今後も継続して注意を払うべき感染症といえよう。
- 国内の養豚場で豚の赤痢アメーバ症の集団発生(1991年香川県)が報告されており、食品衛生法・と畜場法上の問題点として本症に対する関心が高まっている。
ジアルジア症
- 1945年代以後も水道管と下水道管の誤接続による水系感染が度々起こったが、現在ではもっぱら発展途上国での汚染された水、氷及び食品の喫食による感染が多い。
- 1996年の調査で都市型下水処理場9カ所の流入生下水の全例から Gialdia lamblia が検出されており、健康保菌(虫)者が多いと考えられる。
- 膣トリコモナスtrichomonas vaginalisは性感染症で膣, 男性尿道で増殖します
血液感染性原虫
- マラリア原虫 plasmodium,トリパノソーマTrypanosoma,リーシュマニアLeishmaniaがある
- 昆虫内で増殖したのちヒトに感染する
トキソプラズマToxoplasma gondii
- 感染した子猫からoocystの感染や生肉からの感染がある
2007年02月25日(日) 21:34:27 Modified by youkyon76885117
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