最終更新:ID:DygMqGiAOg 2015年12月21日(月) 03:38:05履歴
「ぅぐッ……」
二度目の衝撃に、リラは小さくうめき声を漏らした。
一体どれぐらい高いところから落ちてきたのだろう。上を見上げれば、あれだけ巨大だったクモの巣も見えない。
(……どれぐらい高いところから落ちたんだろう?)
さっきまで、あれだけの快感が駆けまわっていたというのに、今はその熱もなりを潜めているらしい。
未だに頭はボーッとしたままだが、それでも微かに残った冷静さで辺りを見渡す。
「森……?」
辺りは一面緑に覆われていた。
光る苔が光合成に必要な光を供給させているのか。それとも何かの仕掛けがあるのか。
ともかく洞窟の中の森というのは、非常に異様な光景だった。
(とりあえず、ここから動かないと)
リラが落ちたのは、空中に張り巡らされたツタの上だった。
しかし、さっきの蜘蛛の巣とは違い、少し身をよじるだけでツタは外れていく。
程なくしてリラの両足は柔らかい地面に着地した。
そして剥かれた服を着なしてから、あたりを見渡す。
(まずは……)
ここにいて、まずいい事はない。
ならば、どこに向かおうか。そう考えていると、リラの耳が微かな音を捉えた。
「水……?」
チャプンという確かな小さな水音。
自然とリラは、そちらの方へと歩き始めていた。
そして、しばらく歩くと、唐突に眼前の緑は開けた。
「い、泉……!?」
いや正確には小さい目の地底湖といったところだ。結構な量の水を湛える泉が、眼前でほのかに輝く水面を揺らしている。
ゴクリと生唾を飲み込みながらリラは恐る恐る泉に近づいた。罠の可能性もあると考えて。
少しずつ近づいて、波打ち際にたどり着くと、片手を水に浸した。
「――――冷たッ!」
地下なのだから当たり前だが、やはり水は驚くほど冷たい。
しかし、それ以外に今のところは何も起こることがなかった。
「…………」
リラはもう一度、喉を鳴らす。
思えば、さっき蟲に口内に侵入され、ひどい目にあった。
体中は蟲に這われ、大量の体液が未だにベタついている。
はっきり言えば、かなり女性として有り得ない状態だ。
「…………」
さらにもう一度、喉を鳴らし、辺りを見回す。
誰もいない。
「……よし」
小さく呟くと、リラは自分の衣服に手をかける。
動きやすさを重視した服装だったため、脱ぐことは容易だ。手早く脱ぐと下着も一緒に脱ぎ去っていく。
確かに逃げることは一番優先しなければならない選択だが、だからといってこの状態も女性としては絶対に嫌なのだ。
すぐさま生まれたままの状態になったリラは、服を軽く洗ってから泉に足を浸からせた。
「――――ひッ!?」
駆け抜けるような水の冷たさがリラを貫く。
やがてなんとか慣れると、さらに深い場所へと移動する。そして、腰を下ろして体に付いた汚れを洗い始めた。
蟲に蹂躙された口内。二の腕。腹。すっかりくすんだ銀色の髪。さんざん弄られ先が赤く腫れた胸。
そして、下半身へ手を伸ばしたとき、リラの手は止まった。
(さすがにここは……いや、でも……)
辺りを見回す。
やはり誰もいない。
『この中』には蟲の死骸が大量にあるのだ。このまま放っておいてしまうのは流石にまずい。
小さく息を吐くと、意を決してそこへと触れた。
「――――んッ……」
弱い電流のような感覚が身体に走る。
しかし、それをぐっと耐えて、さらに指を差し込んでいく。
(これは、間違ってもアレじゃない。蟲を取り除くため、ただそれだけよ)
そう。間違ってもそういう行為ではないのだ。
息を深く吐くと、指で中から蟲を掻き出し始める。
「んッ……はぁ……ん……くぅ」
荒い息が漏れる。
指が動くたびに、頭の中でスパークが弾けた。
(こんなの、全然気持ちよくなんか……)
心の中での否定。
実際リラはそれに該当する行為は、今の今まで一度もしたことがなかった。
だから大丈夫。これはそれじゃない。そう言い聞かせる。
なのに、もう片方の手が、胸の方へと伸びるのは何故なのか。
なのに、秘部が冷水に触れるたび、指が中をこするたびに漏れるこの吐息は何なのか。
「――――ふ、あッ!」
固く口を引き結んでも、溢れるように声が漏れていた。
乳房を掴み、蜜壷に入るものとは違う指が肉豆を弄る。痛みが走ったり、背徳感を感じるその行為。
それでも、行為は止まらない。いや、止められない。
(違う違う違う。これは単に蟲を掻き出すための……)
断じて違う。そのはずなのだ。
これは、蜘蛛のような娘にされたことの事後処理のはずなのだ。
気持ち悪いものを掻き出すだけ。なのに、手は止まらない。
「……ひッぁ……んくぅッ」
いつの間にか、水とは違うぬるりとする感触が、秘部から流れ出していた。
二つの果実の頂点を指でコリコリと弄り、膨らんできた下半身の肉豆を摘む。
弾けるような感覚が体中を駆け巡ると、呼吸も荒くなり、視界が明滅し始める。
(ダメ……こんな所、で……)
こんなところで、してしまう。
そんな酷く羞恥的で背徳的な行為であるはずなのに、リラの手は止まらない。
冷水に使っているというのに身体は熱くなるばかりで、それどころか頭の中も既にぼーっとし始めていた。
「あぅッ……ぁ……く……ぅ」
何かが来るような感覚に、リラはもう抗うことが出来ない。
手の動きはさらに加速し、すでに腰がガクガクと揺れていた。
そして、流されるままに、それはとうとう訪れた。
「……ふぅッく……ッくぅぅぅぅぅぁぁああッ!!」
絶頂。
水の中でもわかるほどの体液が、蜜壷から放出され、身体は痙攣し腰から反り返る。
(……うそ……私……こんな……ところで……)
初めて自慰を行い、しかも達してしまった。
罪悪感。羞恥心。そして未だに残る快感。
それらが混じり合ってリラにのしかかり、どっとした疲労感が生まれた。
✝ ✝ ✝
その後、リラが湖から上がったのは数十分後のことだった。
ずるずると足を引きずるように何とか岸へとたどり着くと、ほど近くにあった岩の上に座り込む。
「…………ハァ」
汚れた身体を洗ったはずなのに、むしろ何か汚れてしまったような気がした。
なんせ、未だにリラの秘部はぬるりとした液が出てきているのだ。
それに未だにリラの体は火照り気味で、座っている岩にすら小さな刺激を感じてしまうほどだった。
今まで鉄面のごとく貞操を守り続けてきたリラにとって、どうしようもない悪夢でしかない。
(何をしてるのよ、私ってば……)
体を洗うためだったはずなのに、何故か自分はいつの間にか自慰行為を始めてしまった。
本当に何をやっているのか。自分への軽蔑と呆れで、深い溜息をつく。
でも、リラはそこで終わらない。
「……とりあえず、動か、ないと」
欝になっても、なんとか残っていた生存本能にすがりつく。
ゆっくりとした動作で衣服を手に取ると、火照った体を隠すように着始めた。
「……ぅ……」
未だに乾いていない衣服は、嫌な湿っぽさを持っていたが、この際は仕方ない。何も着ないでいる方がよほど危険である。
肌に張り付く気持ち悪い感触に、少しリラは身を震わせた。
――――やっぱり気持ち悪い。
火でもあれば乾かすことができるだろうが、こんな鬱蒼とした森にあるわけがないし、残念ながらリラは魔法が使えない種族だ。
仕方ない。そう割り切って重い足取りのまま歩き出そうとした。その時だった。
『あら残念です。せっかくお可愛らしいお姿を拝見できたというのに、もう続きはしてくれないのでしょうか?』
「――――ッ!?」
花を思わせるようなその声に、リラは反射的に辺りを見回した。
泉の方向は――――いない。
木々の方は――――いない。
ならばどこだ? その答えはすぐに現れた。
「どこを見ているのでしょうか。私はこちらですよ」
「え――――きゃあッ!?」
視界がぶれ、世界が反転した。いや、リラの方が宙ずりにされているのだ。急に足元の地面から生えてきた植物の蔦によって。
そして、声の主も地面から現れた。
「初めまして」
声と容姿は滅多に一致しないというが、それは嘘だったらしい。
地面から生えるように現れた巨大なウツボカズラ、その中から現れたのは花精とも言うべき美貌を持つ少女だった。
年の頃は14かそこら。しかし、それは清楚や清純というにはひどく程遠い。
長く明るい色合いの赤みがかった金髪。露出が多い衣服はへそどころか胸の高さまで裂け、スカートに至ってはどうしようもなく短く、見えてはいけない部分が見え隠れしている。
それはどことなく、アトラと名乗っていたあの少女を想起させた。
「私の名はカズーラ。この地下森林の主です」
「……主ってことは、まさか」
「はい、ご想像の通りですよ。私もご主人様に作られた魔法生物蟲惑魔です」
魔法生物。蟲惑魔。そんな単語にリラは身を震わせた。
あのアトラの蟲惑魔にされた光景が脳裏に蘇り、いやな汗を額の方へと垂らす。
「ふふふ……」
「何、を笑って、いるのよ?」
「いえ、やはりお可愛らしい人だと思っただけです。その髪、その顔、その声、どれをとっても良いですね。
もう少し遅かったら、お姉さまが壊してしまっていたでしょう。そうなったら勿体無いというのに」
意味がわからない。
勿体無い。その言葉の意味がリラにはわからなかった。いや、分かりたくなかった。
とにかく言えることは、この状況が非常に危険であることだ。
「その苦悶に満ちたお顔も素敵です。ああ、でも快楽に狂った顔もまた捨てがたいですね」
上気した目で、にやりとほほ笑みを浮かべるカズーラの蟲惑魔。すでに清楚、清廉なんて言葉はどこにも当てはまらない。
身の危険を感じたリラは、この危機的状況を打破しようと、身をよじり始めた。
しかし、食い込むほどにリラの体を縛る蔦は、まるで頑丈なロープのようで外れることはなかった。
「無駄ですよ。その蔦は私の妖力を纏わせているのです。そんな簡単にちぎれたりしません」
「……うる、さい」
「そうですね。あまり待たせるのも悪いですし、そろそろ始めさせてもらいましょうか。
まずは、そうですね……その邪魔な服でも剥いじゃいましょう」
楽しそうにカズーラの蟲惑魔がそう言った瞬間、リラの体はウツボカズラの中に放り込まれた。
数瞬のタイムラグを経て、自分が溺れかけていることに気がついたリラは空気を求めて水面を目指す。
「ダメですよー、その邪魔なお洋服はちゃんと脱ぎ脱ぎしましょー」
(――――!?)
顔を水面に出して、もう一度リラは液中へと引きずり込まれた。
ウツボカズラの底から伸びた触手がリラの両手両足を掴んだのだ。
そうして、もがきながらリラは異変にやっと気がつく。
(……服がっ……!?)
妙にピリピリとする液中の中、リラの衣服にグズグズに崩れ始めたのだ。この液が酸性なのだと、気付いた時にはもう遅い。両手両足を掴まれたままでは、動けるはずがない。
やがて、すでにもうボロボロだった衣服は徐々に形を失っていき、麻布製の衣服も簡素な下着も元から無かったかのように溶けて消えてしまった。
「やっと邪魔な服はなくなりましたね」
服が全て溶けきったと同時に、水面に上半身まで上げられたリラは、荒い息をしながら声の主を睨んだ。
しかし、睨むまでしかできない。未だに両手両足は縛られたままで、体の自由は封じられているのだ。
「あら、反抗的な目ですね。でも、その方が私も楽しめますから」
何かを言い返すことはしなかった。正確には、あのピリピリする液に何かが含まれていたらしく、下手に口を開くと変な声が漏れてしまいそうになるからだ。
ギリギリと両手両足を締め上げる痛みさえ、違う感覚に塗り変わっている。
(何、これ……あの時の、感覚に、似て、る……?)
「そうそう、私たち蟲惑魔は全員が特殊な毒を持ってるんですよね。世間一般で言うとなかなか危ないものらしいと聞いています。
それでですね、その子と私の細胞は全く同じものでできているんです。それって、どういう意味かわかりますか?」
「まさ、か……」
いつのまにか、『沼』に入って来ていた蟲惑魔の左手がおもむろに伸びた。
その手の先にあるのは、むき出しになった小さな山だ。
それを軽く鷲掴みにされた瞬間、リラの脳が揺れた。
「――――ッッッッッ!?」
「これが私の蠱惑劇第二章、蠱楽穴です。快楽の先へ、さぁ参りましょう」
声が出なかったのは奇跡としか言いようがなかった。その代わりに嫌な汗は滝のように流れ、歯はガチガチと震え耳障りな音を出す。
それほどの刺激だった。ただ、胸を掴まれただけで、これだけの刺激だった。
しかもカズーラの蟲惑魔の行為は未だ続いているため、リラの心は休まることがない。
だが、これはまだ序章でしかないのだ。
「ああ、声を必死に我慢する姿もいいものですね。でも――――」
何故か、この沼に入っているというのに、カズーラの蟲惑魔の衣服は溶けていなかった。
その代わり衣服は脱げかけていて、女性として理想的とも言える身体をさらけ出している。
ギュッと山の先端が指に押しつぶされた。
「いッ……ぁあああああああッッッ!」
「そうそう、そういう声です」
声を塞き止めていたダムは、いとも簡単に破壊された。
つぐんでいた口を閉じる暇もなくなるぐらい、快楽の炎はリラに甚大なダメージを与える。
「やめッ……」
「そう言う割にはコリコリとしてきてますよ」
少女の指が果実の頂点を押しつぶす。徐々に固くなってきているのか、指の腹でこすられると変な声が漏れていく。
「感じてるんじゃないんですか?」
(ちが、う……そんな、わけない……こんなの、気持ち、よくなんか)
心ではそう思っていても、少女に責められるたびに視界がチカチカと瞬く。
それでも、鋼の精神で両目を開くと、間近に少女の顔が迫っていた。
「じゃあ、ご褒美です」
「――――ぅんっ……んんッ!?」
本日二度目となる口付けがリラを襲う。
ファーストキスもセカンドキスも少女――――いや、少女の皮をかぶった化け物に奪われ、リラはどうしようもない倦怠感に苛まれた。
しかし、感傷に浸っていられるほど、状況は優しくない。
なんせ、今のリラの身体は泉での自慰でただですら敏感になっていた上、さらに毒によって余計に酷くなっている。水にたゆかうだけでもピリリとした電気が走り、口の中ですらかなり敏感になっているのだ。
他人の、しかも同年代に見える少女の舌が、口内を這い回るたび痙攣が起きる。
「――――んんッ!」
少女の手が、リラの脇腹をくすぐった。
ただそれだけで、抵抗の気力が削がれていく。
「ぷはぁ。中々美味しかったですよ」
リラの唾液をすすりながら、少女の唇は離れていく。
息もたえだえのリラと違い、疲労もまったく感じさせない少女は広角を曲げた。
続けざまにリラのみ耳を、柔らかく生暖かい少女の舌が軽く触れ、生暖かい吐息が当てられる。
「ぃ……ぁッ……ャあッ」
「わぉ、とっても敏感なんですね。普通なら私たちの毒でも、ここまで感じることはないのですが……もしかすると、淫乱の気でもあるんじゃないですか?」
「……ちがッ……うぅ」
「そうですか。ならこちらはどうでしょう」
カズーラの蟲惑魔の頭が視界から消えた。正確には下――――リラの双方の前に移動していた。器用に触手の上に立つ少女は、にっこり笑うとこう囁く。
「美味しそうな果実ですね。少し味見させてもらいましょう」
言うが早かった。ありったけのリラの唾液が染み付いた少女の舌が山の頂上に接触した。
唾液に濡れるざらりとした舌が触れるたび、脳裏に小さなスパークが起きる。
「ひぁッ!」
「ふふふ、指で弄られるのとは全然違うでしょう?」
確かにそうだ。けれど、それをリラは否定した。もし認めてしまったら、もう戻れなくなる。そんな予感がしたのだ。
「くぅ……ぅ、うる……さ……い」
「強情ですね。じゃあこうしてみましょうか」
そう言って、カズーラの蟲惑魔の口は大きく開く。そして、そのまま赤ん坊のごとくリラの乳房に吸い付いた。女性の平均ではやや小さめのリラの胸の、その半分程度が少女の口に含まれ形を変える。
「ひッ……ぃぁッ……くぅッ」
「ふぉらふぉら、ふぉうふぇふふぁ?(ほらほら、どうですか?)」
しゃぶられる。なぶられる。ねぶられる。舐められる。ひねられる。吸われる。
生暖かい口内で蹂躙されるたび、これまた蟲に蹂躙された時とは違う感覚がリラの中で走り回る。
「気持ち良いのでしょう? 身体は正直なんですから、ね」
一度、胸から口を離した少女はそう言うと、果実の先端に噛み付いた。
「――――いぎッ……!」
少女の前歯が硬くなった先端を擦るたびに悲鳴が漏れる。ただですら敏感になっているところへ硬い歯が当たるという責め苦。痛み。だがそれを上回る刺激がリラを苛む。
「もっと可愛らしい反応をしてくださいな」
「誰、が……」
涙目になりながらも反論は諦めない。
そんなリラを見て、噛むことに飽きたらしい少女は、じっとりと汗ばんできた脇に舌を這わせた。
「……んな、ところ……舐め、な……で」
「そのわりには声が震えてますね」
さらりとリラの反抗を流すと、少女は軽く手を振るった。
「じゃあ、少し体勢を変えてみましょうか」
「――――!?」
両手両足を拘束する触手が蠢くと、リラの体が上へと持ち上げられた。
高さは、リラの腰が少女の頭くらいの高さだ。両足を開かされ、ちょうどソレが丸見えになると、リラの顔が赤熱する。
そして、少女の手が伸びると、下半身の入口を開かれた。
「丸見えですねー。貴女の大事な場所も、トロリとしたものが溢れいるのも、全部見えてますよー」
「ぃ……ゃぁ、見る……なぁ」
全部見られてしまっている。自分の恥ずかしい所を化け物にさらけ出してしまっている。それも見せつけるような体勢で。
口で違うといっても、身体は単純だったのだ。股の間から溢れ出すトロリとした液体は、否応なくリラの醜態を晒していた。
「じゃあ、味見をしてみましょうか」
生暖かい少女の舌が蜜壷に触れる。それだけでリラの口から呻き声が漏れた。
だがそれで終わる訳もなく、舌は溢れ出す液を舐め取るように動き出し、ぴちゃぴちゃとイヤラシい音を奏で始めた。
「く、ぁ……ぁぁ」
動き回る舌は、周りを舐めるだけでは飽き足らず、とうとう『中』に侵入を始めた。
抜く。入れる。舐める。そんなコンボに未だ処女であるリラが耐えられるはずはない。
「……んぁッ……やめッ……なさ、い」
言葉は届いたのか、少女の舌の動きが止まる。しかし、それは次の動作を始めるためのものだ。
「それなら、しゃぶってあげましょう」
少女の柔らかい唇が秘部に当たり、やがて口内に収められた。
すするように少女の口が動き、溢れ出す蜜を飲み込んでいく。その都度、少女の細い喉がゴクリと鳴った。
「やめッ……汚、いぃ……」
もちろん蟲惑魔がそれで止めることはない。
しゃぶりながら舌も動かし始めると、既に膨らんでいるリラの肉豆を舌で押しつぶす。
「いぎッ……くぁ、あ……いやぁ……」
それでもやめてくれない。柔らかく生暖かい少女の舌が、熱い肉豆を潰すたび何かが近づいてくるのをリラは感じた。それが近くづくたびに、下の口がきつく締まる。
三度目となる絶頂。それが来るものの正体だ。
(ヤダッ……ヤダヤダヤダヤダヤダ)
ゾッとした。またあの感覚に呑まれる。恐ろしかった。頭の中が真っ白にその感覚が。しかも、意識が朦朧としていた蟲は別として、あの泉での自慰を上回る快楽が身を貫くのだ。どうなるかなど想像もつかない。
(やだ……イキたく、ない)
頭の中で嫌がっても、それが来るのは止まらない。押し寄せるソレに目を塞ぎ、これから来る衝撃に備える。
しかし。
「――――残念ながら、イカせてあげません」
ピタリ、と少女の行為が止まる。
思わず呟いていた。
「何、で……?」
「この毒には術がかけてあるんです。私がイクなって思ったら、どんなに貴女が感じてもイケないんです。つまりは、どんなに身体がそれを求めても、私が許さない限りそこにはたどり着けないってですね。それに、簡単に貴女がイっちゃたら、私が面白くないでしょう?」
少女は恍惚としながら、言葉を続けた。
「そうですね。貴女がもしもイカせてって言ってくれるのなら、お手伝いしてあげてもいいですよ」
何故か、その言葉を聞いて残念に思ってしまう自分がいた。達したくなかったはずなのに。
そして、それはあの最も狂おしい感覚に、何度も達してしまうことを示している。
それを考えるだけで、身体が震え、ムズムズとした感覚が近づいてくる。しかし、達せない。
「ぅ、そ……」
「どうかしましたか? そんな残念そうな顔をして?」
「……なん、でも……ない、わよ……」
「本当ですか?」
わざと、分かっているだろうに蟲惑魔はニヤニヤと笑う。そうして笑いながら、細い人差し指を震える蜜壷に突き入れた。
「ぅぁッ……ぁ、ぁぁ」
「わぁ、キッツイですね。貴女の中って」
引っ掻き回すように指が動く。さらには中指も進入し、大げさに出し入れがなされた。
敏感になりすぎた身体は、無理やりなそれをも快感と受け取る。しかし、やはり達することはない。
「んぁッ……やぁ……壊れ、る……」
「壊したりなんかしませんよ。そんなことしたら勿体無いじゃないですか」
膨らんだ肉豆を、左手の親指と人差し指の腹に押しつぶされる。乱雑にして繊細な所業でさえ、凄まじい快楽に変わるが、それでも達しない。
(なに……これ……)
赤熱した感情がどっと波のように荒れ狂う。なのにギリギリで達しない。
まるで、底に小さな穴が空いた容器に、水を流し込んでいるかのようだった。
容器から水が溢れそうになっても、結局底の穴から流れ出てしまうために、ギリギリの位置で水位は止まっている。
「ふふふ……。どれ私も少し楽しんでみましょうか」
気がつけば沼の中ではなかった。正確には、ウツボカズラの底から何かが盛り上がり、ベッドのような陸地が現れたのだ。
そのままリラは、仰向けに寝かせつけられた。
そこへ、元から薄い服を脱ぎ捨てた少女の白い身体が、リラに覆いかぶさる。
そのまま、少女の唇がリラの唇に落ちた。
「んッ、んんっ」
3度目となる口付け。ゆっくりと伸びた少女の柔らかい腕が敏感になった随所に、触れるか触れないかの位置で動いていく。
それだけで、狂ったように体は火照り、頭の中が薄いピンクに包まれた。
「ちょうどいいくらいに、ヌルヌルですね。これなら……」
「ひあッ」
蟲惑魔の豊かな二つの果実が、リラの果実にこすりつけられて思わず声が漏れた。
女同士で、こんな行為をしている。それに自分は抗えないでいる。それだけでぐらりと精神の柱が揺れてしまう。
「おや? もう、イキそうなんですか?」
「誰、が……」
「なら、もう少しキツめにしましょう」
さらにキツく胸が押し付けられ、双方の果実のの形が大きく歪む。
先端の硬くなった花弁が、触れ合い擦れ合うたびに、リラの精神ギリギリの境界線を行き来した。
しかし、リラはそこまでだ。そこに辿り着く権利は目の前の少女に握られている。
「んっ……これは中々。じゃあ、こっちも擦りつけてみましょうか」
甘い声を漏らした蟲惑魔が、濡れた秘所をリラのものにあてがった。
男女でないため、入るものは存在しないが擦ることはできる。少女の膨らんだ肉豆が、さんざん弄り回されたリラの肉豆に擦れ合うたび、頭が真っ白に染まりかけた。
(……こんなの……耐え、れるわけ、が)
上半身と下半身。両方の最も敏感な場所を責められているというのに、達せない。
どこまでも、それが続き、もどかしい気持ちが心を掻きむしった。
未だ男女の行為をしたことのないリラには、この苦行は耐えられるはずのないものだった。
「……せて……」
「何か、言いましたか?」
「……か、せて」
「もう一回言ってくださいな。今度はもっと大きな声で」
意地悪く、決して行為は緩めずに、少女は笑いながら言った。震える声を何とかまとめて、リラは吐き出した。
「……いか、せて」
「もっと、はっきりと」
グン、と指が蜜壷に突き込まれた。気絶しそうになっても、気絶できない。今度こそ、リラは震える唇を噛みながら言った。
「――――イカ、せて! こんなの耐えられない!」
屈辱的だった。毒を盛られたからといって、自分の口からこんな言葉が出ることが、果てしなく屈辱的なことだった。
快楽。屈辱。恥辱。怒り。あらゆる感情が入り混じったリラの表情を見て、蟲惑魔は今までにない笑みを浮かべる。
「じゃあ、どこをどうして、イカせて欲しいですか? 指でさしてくださいな」
またもや、屈辱的な行為をそそのかす言葉。
だが、これ以上は耐えられるはずがない。今でも腹の底から這い上がるような感覚がリラを苛んでいるのだ。
震える指で『そこ』を差すと、カッと顔が赤くなる。
「こ、ここ……」
「どこですか? 『ここ』じゃ、わかりません。名称で言ってください」
「…………ッ」
さらなる屈辱。それでも震える口で、何とか紡ぎ始めた。紡ぐたびに、ジュンとそこが濡れ、愛液が漏れ出す。
「お……」
「お?」
「おま、んこ……をめちゃくちゃに、して……」
悪夢のような言葉だった。なのに言った瞬間、さらに下半身が疼く。
答えは、満面の笑みで返ってきた。
「よーく、言えました。まずは術を解いてあげましょう」
瞬間、さっきまであった違和感が無くなり、代わりに塞き止められていた波が押し寄せ始めた。湿った空気が肌に触れるだけで身体中が疼き、視界が明滅する。
耳に暖かい吐息がかけられた。
「術を解いただけで、イキそうになるなんて、やっぱり淫乱なんですね」
「ちがっ……」
「そうですか? じゃあ、続きをしてみましょうか」
少女の口づけが首筋に落ちる。もはや手足を縛るものは不要だった。リラの銀髪と蟲惑魔の金髪が入り混じり合い、二人の少女が乱れ合う。
さらに激しく。さらにキツく。花弁が花弁が擦れ合い、下の花は触れ合って、愛液を撒き散らす。
(だ、だめ……頭が、真っ白に、なる……)
しかし、もうブレーキなんて効かなかった。歯止めを失った身体は快楽を求め、自身から動き出している。
「ふぁっ……ぁっ……ぃっ」
考えることは無理やり放棄された。頭の中が真っ白になりながら、リラの身体が大きく脈打つ。
「――――ひぁっああああああ!?」
絶叫を上げながら、リラは思考を闇の中に沈ませる。
艶のある少女達の嬌声は、しばらくの間、途切れることはなかった。
✝ ✝ ✝
「いやぁ、楽しませてくれました」
行為が終わった後、カズーラは誰かにそう言った。
銀髪の少女は、何度も達した結果、すでに気絶しているため、違うものであることは確かだ。
「――――」
「……む、わかってますよ。交代の時間ってことですよね」
はぁ、とため息をつくと、カズーラは少女に向き直った。
「それじゃあ、名残惜しいですが、これでさようならです。良い蠱惑の夢を」
そうして、少女はさらなる深い場所に沈んでいく。
闇の中ではカサカサと人ではない何かが、辺りを這いまわっていた。
二度目の衝撃に、リラは小さくうめき声を漏らした。
一体どれぐらい高いところから落ちてきたのだろう。上を見上げれば、あれだけ巨大だったクモの巣も見えない。
(……どれぐらい高いところから落ちたんだろう?)
さっきまで、あれだけの快感が駆けまわっていたというのに、今はその熱もなりを潜めているらしい。
未だに頭はボーッとしたままだが、それでも微かに残った冷静さで辺りを見渡す。
「森……?」
辺りは一面緑に覆われていた。
光る苔が光合成に必要な光を供給させているのか。それとも何かの仕掛けがあるのか。
ともかく洞窟の中の森というのは、非常に異様な光景だった。
(とりあえず、ここから動かないと)
リラが落ちたのは、空中に張り巡らされたツタの上だった。
しかし、さっきの蜘蛛の巣とは違い、少し身をよじるだけでツタは外れていく。
程なくしてリラの両足は柔らかい地面に着地した。
そして剥かれた服を着なしてから、あたりを見渡す。
(まずは……)
ここにいて、まずいい事はない。
ならば、どこに向かおうか。そう考えていると、リラの耳が微かな音を捉えた。
「水……?」
チャプンという確かな小さな水音。
自然とリラは、そちらの方へと歩き始めていた。
そして、しばらく歩くと、唐突に眼前の緑は開けた。
「い、泉……!?」
いや正確には小さい目の地底湖といったところだ。結構な量の水を湛える泉が、眼前でほのかに輝く水面を揺らしている。
ゴクリと生唾を飲み込みながらリラは恐る恐る泉に近づいた。罠の可能性もあると考えて。
少しずつ近づいて、波打ち際にたどり着くと、片手を水に浸した。
「――――冷たッ!」
地下なのだから当たり前だが、やはり水は驚くほど冷たい。
しかし、それ以外に今のところは何も起こることがなかった。
「…………」
リラはもう一度、喉を鳴らす。
思えば、さっき蟲に口内に侵入され、ひどい目にあった。
体中は蟲に這われ、大量の体液が未だにベタついている。
はっきり言えば、かなり女性として有り得ない状態だ。
「…………」
さらにもう一度、喉を鳴らし、辺りを見回す。
誰もいない。
「……よし」
小さく呟くと、リラは自分の衣服に手をかける。
動きやすさを重視した服装だったため、脱ぐことは容易だ。手早く脱ぐと下着も一緒に脱ぎ去っていく。
確かに逃げることは一番優先しなければならない選択だが、だからといってこの状態も女性としては絶対に嫌なのだ。
すぐさま生まれたままの状態になったリラは、服を軽く洗ってから泉に足を浸からせた。
「――――ひッ!?」
駆け抜けるような水の冷たさがリラを貫く。
やがてなんとか慣れると、さらに深い場所へと移動する。そして、腰を下ろして体に付いた汚れを洗い始めた。
蟲に蹂躙された口内。二の腕。腹。すっかりくすんだ銀色の髪。さんざん弄られ先が赤く腫れた胸。
そして、下半身へ手を伸ばしたとき、リラの手は止まった。
(さすがにここは……いや、でも……)
辺りを見回す。
やはり誰もいない。
『この中』には蟲の死骸が大量にあるのだ。このまま放っておいてしまうのは流石にまずい。
小さく息を吐くと、意を決してそこへと触れた。
「――――んッ……」
弱い電流のような感覚が身体に走る。
しかし、それをぐっと耐えて、さらに指を差し込んでいく。
(これは、間違ってもアレじゃない。蟲を取り除くため、ただそれだけよ)
そう。間違ってもそういう行為ではないのだ。
息を深く吐くと、指で中から蟲を掻き出し始める。
「んッ……はぁ……ん……くぅ」
荒い息が漏れる。
指が動くたびに、頭の中でスパークが弾けた。
(こんなの、全然気持ちよくなんか……)
心の中での否定。
実際リラはそれに該当する行為は、今の今まで一度もしたことがなかった。
だから大丈夫。これはそれじゃない。そう言い聞かせる。
なのに、もう片方の手が、胸の方へと伸びるのは何故なのか。
なのに、秘部が冷水に触れるたび、指が中をこするたびに漏れるこの吐息は何なのか。
「――――ふ、あッ!」
固く口を引き結んでも、溢れるように声が漏れていた。
乳房を掴み、蜜壷に入るものとは違う指が肉豆を弄る。痛みが走ったり、背徳感を感じるその行為。
それでも、行為は止まらない。いや、止められない。
(違う違う違う。これは単に蟲を掻き出すための……)
断じて違う。そのはずなのだ。
これは、蜘蛛のような娘にされたことの事後処理のはずなのだ。
気持ち悪いものを掻き出すだけ。なのに、手は止まらない。
「……ひッぁ……んくぅッ」
いつの間にか、水とは違うぬるりとする感触が、秘部から流れ出していた。
二つの果実の頂点を指でコリコリと弄り、膨らんできた下半身の肉豆を摘む。
弾けるような感覚が体中を駆け巡ると、呼吸も荒くなり、視界が明滅し始める。
(ダメ……こんな所、で……)
こんなところで、してしまう。
そんな酷く羞恥的で背徳的な行為であるはずなのに、リラの手は止まらない。
冷水に使っているというのに身体は熱くなるばかりで、それどころか頭の中も既にぼーっとし始めていた。
「あぅッ……ぁ……く……ぅ」
何かが来るような感覚に、リラはもう抗うことが出来ない。
手の動きはさらに加速し、すでに腰がガクガクと揺れていた。
そして、流されるままに、それはとうとう訪れた。
「……ふぅッく……ッくぅぅぅぅぅぁぁああッ!!」
絶頂。
水の中でもわかるほどの体液が、蜜壷から放出され、身体は痙攣し腰から反り返る。
(……うそ……私……こんな……ところで……)
初めて自慰を行い、しかも達してしまった。
罪悪感。羞恥心。そして未だに残る快感。
それらが混じり合ってリラにのしかかり、どっとした疲労感が生まれた。
✝ ✝ ✝
その後、リラが湖から上がったのは数十分後のことだった。
ずるずると足を引きずるように何とか岸へとたどり着くと、ほど近くにあった岩の上に座り込む。
「…………ハァ」
汚れた身体を洗ったはずなのに、むしろ何か汚れてしまったような気がした。
なんせ、未だにリラの秘部はぬるりとした液が出てきているのだ。
それに未だにリラの体は火照り気味で、座っている岩にすら小さな刺激を感じてしまうほどだった。
今まで鉄面のごとく貞操を守り続けてきたリラにとって、どうしようもない悪夢でしかない。
(何をしてるのよ、私ってば……)
体を洗うためだったはずなのに、何故か自分はいつの間にか自慰行為を始めてしまった。
本当に何をやっているのか。自分への軽蔑と呆れで、深い溜息をつく。
でも、リラはそこで終わらない。
「……とりあえず、動か、ないと」
欝になっても、なんとか残っていた生存本能にすがりつく。
ゆっくりとした動作で衣服を手に取ると、火照った体を隠すように着始めた。
「……ぅ……」
未だに乾いていない衣服は、嫌な湿っぽさを持っていたが、この際は仕方ない。何も着ないでいる方がよほど危険である。
肌に張り付く気持ち悪い感触に、少しリラは身を震わせた。
――――やっぱり気持ち悪い。
火でもあれば乾かすことができるだろうが、こんな鬱蒼とした森にあるわけがないし、残念ながらリラは魔法が使えない種族だ。
仕方ない。そう割り切って重い足取りのまま歩き出そうとした。その時だった。
『あら残念です。せっかくお可愛らしいお姿を拝見できたというのに、もう続きはしてくれないのでしょうか?』
「――――ッ!?」
花を思わせるようなその声に、リラは反射的に辺りを見回した。
泉の方向は――――いない。
木々の方は――――いない。
ならばどこだ? その答えはすぐに現れた。
「どこを見ているのでしょうか。私はこちらですよ」
「え――――きゃあッ!?」
視界がぶれ、世界が反転した。いや、リラの方が宙ずりにされているのだ。急に足元の地面から生えてきた植物の蔦によって。
そして、声の主も地面から現れた。
「初めまして」
声と容姿は滅多に一致しないというが、それは嘘だったらしい。
地面から生えるように現れた巨大なウツボカズラ、その中から現れたのは花精とも言うべき美貌を持つ少女だった。
年の頃は14かそこら。しかし、それは清楚や清純というにはひどく程遠い。
長く明るい色合いの赤みがかった金髪。露出が多い衣服はへそどころか胸の高さまで裂け、スカートに至ってはどうしようもなく短く、見えてはいけない部分が見え隠れしている。
それはどことなく、アトラと名乗っていたあの少女を想起させた。
「私の名はカズーラ。この地下森林の主です」
「……主ってことは、まさか」
「はい、ご想像の通りですよ。私もご主人様に作られた魔法生物蟲惑魔です」
魔法生物。蟲惑魔。そんな単語にリラは身を震わせた。
あのアトラの蟲惑魔にされた光景が脳裏に蘇り、いやな汗を額の方へと垂らす。
「ふふふ……」
「何、を笑って、いるのよ?」
「いえ、やはりお可愛らしい人だと思っただけです。その髪、その顔、その声、どれをとっても良いですね。
もう少し遅かったら、お姉さまが壊してしまっていたでしょう。そうなったら勿体無いというのに」
意味がわからない。
勿体無い。その言葉の意味がリラにはわからなかった。いや、分かりたくなかった。
とにかく言えることは、この状況が非常に危険であることだ。
「その苦悶に満ちたお顔も素敵です。ああ、でも快楽に狂った顔もまた捨てがたいですね」
上気した目で、にやりとほほ笑みを浮かべるカズーラの蟲惑魔。すでに清楚、清廉なんて言葉はどこにも当てはまらない。
身の危険を感じたリラは、この危機的状況を打破しようと、身をよじり始めた。
しかし、食い込むほどにリラの体を縛る蔦は、まるで頑丈なロープのようで外れることはなかった。
「無駄ですよ。その蔦は私の妖力を纏わせているのです。そんな簡単にちぎれたりしません」
「……うる、さい」
「そうですね。あまり待たせるのも悪いですし、そろそろ始めさせてもらいましょうか。
まずは、そうですね……その邪魔な服でも剥いじゃいましょう」
楽しそうにカズーラの蟲惑魔がそう言った瞬間、リラの体はウツボカズラの中に放り込まれた。
数瞬のタイムラグを経て、自分が溺れかけていることに気がついたリラは空気を求めて水面を目指す。
「ダメですよー、その邪魔なお洋服はちゃんと脱ぎ脱ぎしましょー」
(――――!?)
顔を水面に出して、もう一度リラは液中へと引きずり込まれた。
ウツボカズラの底から伸びた触手がリラの両手両足を掴んだのだ。
そうして、もがきながらリラは異変にやっと気がつく。
(……服がっ……!?)
妙にピリピリとする液中の中、リラの衣服にグズグズに崩れ始めたのだ。この液が酸性なのだと、気付いた時にはもう遅い。両手両足を掴まれたままでは、動けるはずがない。
やがて、すでにもうボロボロだった衣服は徐々に形を失っていき、麻布製の衣服も簡素な下着も元から無かったかのように溶けて消えてしまった。
「やっと邪魔な服はなくなりましたね」
服が全て溶けきったと同時に、水面に上半身まで上げられたリラは、荒い息をしながら声の主を睨んだ。
しかし、睨むまでしかできない。未だに両手両足は縛られたままで、体の自由は封じられているのだ。
「あら、反抗的な目ですね。でも、その方が私も楽しめますから」
何かを言い返すことはしなかった。正確には、あのピリピリする液に何かが含まれていたらしく、下手に口を開くと変な声が漏れてしまいそうになるからだ。
ギリギリと両手両足を締め上げる痛みさえ、違う感覚に塗り変わっている。
(何、これ……あの時の、感覚に、似て、る……?)
「そうそう、私たち蟲惑魔は全員が特殊な毒を持ってるんですよね。世間一般で言うとなかなか危ないものらしいと聞いています。
それでですね、その子と私の細胞は全く同じものでできているんです。それって、どういう意味かわかりますか?」
「まさ、か……」
いつのまにか、『沼』に入って来ていた蟲惑魔の左手がおもむろに伸びた。
その手の先にあるのは、むき出しになった小さな山だ。
それを軽く鷲掴みにされた瞬間、リラの脳が揺れた。
「――――ッッッッッ!?」
「これが私の蠱惑劇第二章、蠱楽穴です。快楽の先へ、さぁ参りましょう」
声が出なかったのは奇跡としか言いようがなかった。その代わりに嫌な汗は滝のように流れ、歯はガチガチと震え耳障りな音を出す。
それほどの刺激だった。ただ、胸を掴まれただけで、これだけの刺激だった。
しかもカズーラの蟲惑魔の行為は未だ続いているため、リラの心は休まることがない。
だが、これはまだ序章でしかないのだ。
「ああ、声を必死に我慢する姿もいいものですね。でも――――」
何故か、この沼に入っているというのに、カズーラの蟲惑魔の衣服は溶けていなかった。
その代わり衣服は脱げかけていて、女性として理想的とも言える身体をさらけ出している。
ギュッと山の先端が指に押しつぶされた。
「いッ……ぁあああああああッッッ!」
「そうそう、そういう声です」
声を塞き止めていたダムは、いとも簡単に破壊された。
つぐんでいた口を閉じる暇もなくなるぐらい、快楽の炎はリラに甚大なダメージを与える。
「やめッ……」
「そう言う割にはコリコリとしてきてますよ」
少女の指が果実の頂点を押しつぶす。徐々に固くなってきているのか、指の腹でこすられると変な声が漏れていく。
「感じてるんじゃないんですか?」
(ちが、う……そんな、わけない……こんなの、気持ち、よくなんか)
心ではそう思っていても、少女に責められるたびに視界がチカチカと瞬く。
それでも、鋼の精神で両目を開くと、間近に少女の顔が迫っていた。
「じゃあ、ご褒美です」
「――――ぅんっ……んんッ!?」
本日二度目となる口付けがリラを襲う。
ファーストキスもセカンドキスも少女――――いや、少女の皮をかぶった化け物に奪われ、リラはどうしようもない倦怠感に苛まれた。
しかし、感傷に浸っていられるほど、状況は優しくない。
なんせ、今のリラの身体は泉での自慰でただですら敏感になっていた上、さらに毒によって余計に酷くなっている。水にたゆかうだけでもピリリとした電気が走り、口の中ですらかなり敏感になっているのだ。
他人の、しかも同年代に見える少女の舌が、口内を這い回るたび痙攣が起きる。
「――――んんッ!」
少女の手が、リラの脇腹をくすぐった。
ただそれだけで、抵抗の気力が削がれていく。
「ぷはぁ。中々美味しかったですよ」
リラの唾液をすすりながら、少女の唇は離れていく。
息もたえだえのリラと違い、疲労もまったく感じさせない少女は広角を曲げた。
続けざまにリラのみ耳を、柔らかく生暖かい少女の舌が軽く触れ、生暖かい吐息が当てられる。
「ぃ……ぁッ……ャあッ」
「わぉ、とっても敏感なんですね。普通なら私たちの毒でも、ここまで感じることはないのですが……もしかすると、淫乱の気でもあるんじゃないですか?」
「……ちがッ……うぅ」
「そうですか。ならこちらはどうでしょう」
カズーラの蟲惑魔の頭が視界から消えた。正確には下――――リラの双方の前に移動していた。器用に触手の上に立つ少女は、にっこり笑うとこう囁く。
「美味しそうな果実ですね。少し味見させてもらいましょう」
言うが早かった。ありったけのリラの唾液が染み付いた少女の舌が山の頂上に接触した。
唾液に濡れるざらりとした舌が触れるたび、脳裏に小さなスパークが起きる。
「ひぁッ!」
「ふふふ、指で弄られるのとは全然違うでしょう?」
確かにそうだ。けれど、それをリラは否定した。もし認めてしまったら、もう戻れなくなる。そんな予感がしたのだ。
「くぅ……ぅ、うる……さ……い」
「強情ですね。じゃあこうしてみましょうか」
そう言って、カズーラの蟲惑魔の口は大きく開く。そして、そのまま赤ん坊のごとくリラの乳房に吸い付いた。女性の平均ではやや小さめのリラの胸の、その半分程度が少女の口に含まれ形を変える。
「ひッ……ぃぁッ……くぅッ」
「ふぉらふぉら、ふぉうふぇふふぁ?(ほらほら、どうですか?)」
しゃぶられる。なぶられる。ねぶられる。舐められる。ひねられる。吸われる。
生暖かい口内で蹂躙されるたび、これまた蟲に蹂躙された時とは違う感覚がリラの中で走り回る。
「気持ち良いのでしょう? 身体は正直なんですから、ね」
一度、胸から口を離した少女はそう言うと、果実の先端に噛み付いた。
「――――いぎッ……!」
少女の前歯が硬くなった先端を擦るたびに悲鳴が漏れる。ただですら敏感になっているところへ硬い歯が当たるという責め苦。痛み。だがそれを上回る刺激がリラを苛む。
「もっと可愛らしい反応をしてくださいな」
「誰、が……」
涙目になりながらも反論は諦めない。
そんなリラを見て、噛むことに飽きたらしい少女は、じっとりと汗ばんできた脇に舌を這わせた。
「……んな、ところ……舐め、な……で」
「そのわりには声が震えてますね」
さらりとリラの反抗を流すと、少女は軽く手を振るった。
「じゃあ、少し体勢を変えてみましょうか」
「――――!?」
両手両足を拘束する触手が蠢くと、リラの体が上へと持ち上げられた。
高さは、リラの腰が少女の頭くらいの高さだ。両足を開かされ、ちょうどソレが丸見えになると、リラの顔が赤熱する。
そして、少女の手が伸びると、下半身の入口を開かれた。
「丸見えですねー。貴女の大事な場所も、トロリとしたものが溢れいるのも、全部見えてますよー」
「ぃ……ゃぁ、見る……なぁ」
全部見られてしまっている。自分の恥ずかしい所を化け物にさらけ出してしまっている。それも見せつけるような体勢で。
口で違うといっても、身体は単純だったのだ。股の間から溢れ出すトロリとした液体は、否応なくリラの醜態を晒していた。
「じゃあ、味見をしてみましょうか」
生暖かい少女の舌が蜜壷に触れる。それだけでリラの口から呻き声が漏れた。
だがそれで終わる訳もなく、舌は溢れ出す液を舐め取るように動き出し、ぴちゃぴちゃとイヤラシい音を奏で始めた。
「く、ぁ……ぁぁ」
動き回る舌は、周りを舐めるだけでは飽き足らず、とうとう『中』に侵入を始めた。
抜く。入れる。舐める。そんなコンボに未だ処女であるリラが耐えられるはずはない。
「……んぁッ……やめッ……なさ、い」
言葉は届いたのか、少女の舌の動きが止まる。しかし、それは次の動作を始めるためのものだ。
「それなら、しゃぶってあげましょう」
少女の柔らかい唇が秘部に当たり、やがて口内に収められた。
すするように少女の口が動き、溢れ出す蜜を飲み込んでいく。その都度、少女の細い喉がゴクリと鳴った。
「やめッ……汚、いぃ……」
もちろん蟲惑魔がそれで止めることはない。
しゃぶりながら舌も動かし始めると、既に膨らんでいるリラの肉豆を舌で押しつぶす。
「いぎッ……くぁ、あ……いやぁ……」
それでもやめてくれない。柔らかく生暖かい少女の舌が、熱い肉豆を潰すたび何かが近づいてくるのをリラは感じた。それが近くづくたびに、下の口がきつく締まる。
三度目となる絶頂。それが来るものの正体だ。
(ヤダッ……ヤダヤダヤダヤダヤダ)
ゾッとした。またあの感覚に呑まれる。恐ろしかった。頭の中が真っ白にその感覚が。しかも、意識が朦朧としていた蟲は別として、あの泉での自慰を上回る快楽が身を貫くのだ。どうなるかなど想像もつかない。
(やだ……イキたく、ない)
頭の中で嫌がっても、それが来るのは止まらない。押し寄せるソレに目を塞ぎ、これから来る衝撃に備える。
しかし。
「――――残念ながら、イカせてあげません」
ピタリ、と少女の行為が止まる。
思わず呟いていた。
「何、で……?」
「この毒には術がかけてあるんです。私がイクなって思ったら、どんなに貴女が感じてもイケないんです。つまりは、どんなに身体がそれを求めても、私が許さない限りそこにはたどり着けないってですね。それに、簡単に貴女がイっちゃたら、私が面白くないでしょう?」
少女は恍惚としながら、言葉を続けた。
「そうですね。貴女がもしもイカせてって言ってくれるのなら、お手伝いしてあげてもいいですよ」
何故か、その言葉を聞いて残念に思ってしまう自分がいた。達したくなかったはずなのに。
そして、それはあの最も狂おしい感覚に、何度も達してしまうことを示している。
それを考えるだけで、身体が震え、ムズムズとした感覚が近づいてくる。しかし、達せない。
「ぅ、そ……」
「どうかしましたか? そんな残念そうな顔をして?」
「……なん、でも……ない、わよ……」
「本当ですか?」
わざと、分かっているだろうに蟲惑魔はニヤニヤと笑う。そうして笑いながら、細い人差し指を震える蜜壷に突き入れた。
「ぅぁッ……ぁ、ぁぁ」
「わぁ、キッツイですね。貴女の中って」
引っ掻き回すように指が動く。さらには中指も進入し、大げさに出し入れがなされた。
敏感になりすぎた身体は、無理やりなそれをも快感と受け取る。しかし、やはり達することはない。
「んぁッ……やぁ……壊れ、る……」
「壊したりなんかしませんよ。そんなことしたら勿体無いじゃないですか」
膨らんだ肉豆を、左手の親指と人差し指の腹に押しつぶされる。乱雑にして繊細な所業でさえ、凄まじい快楽に変わるが、それでも達しない。
(なに……これ……)
赤熱した感情がどっと波のように荒れ狂う。なのにギリギリで達しない。
まるで、底に小さな穴が空いた容器に、水を流し込んでいるかのようだった。
容器から水が溢れそうになっても、結局底の穴から流れ出てしまうために、ギリギリの位置で水位は止まっている。
「ふふふ……。どれ私も少し楽しんでみましょうか」
気がつけば沼の中ではなかった。正確には、ウツボカズラの底から何かが盛り上がり、ベッドのような陸地が現れたのだ。
そのままリラは、仰向けに寝かせつけられた。
そこへ、元から薄い服を脱ぎ捨てた少女の白い身体が、リラに覆いかぶさる。
そのまま、少女の唇がリラの唇に落ちた。
「んッ、んんっ」
3度目となる口付け。ゆっくりと伸びた少女の柔らかい腕が敏感になった随所に、触れるか触れないかの位置で動いていく。
それだけで、狂ったように体は火照り、頭の中が薄いピンクに包まれた。
「ちょうどいいくらいに、ヌルヌルですね。これなら……」
「ひあッ」
蟲惑魔の豊かな二つの果実が、リラの果実にこすりつけられて思わず声が漏れた。
女同士で、こんな行為をしている。それに自分は抗えないでいる。それだけでぐらりと精神の柱が揺れてしまう。
「おや? もう、イキそうなんですか?」
「誰、が……」
「なら、もう少しキツめにしましょう」
さらにキツく胸が押し付けられ、双方の果実のの形が大きく歪む。
先端の硬くなった花弁が、触れ合い擦れ合うたびに、リラの精神ギリギリの境界線を行き来した。
しかし、リラはそこまでだ。そこに辿り着く権利は目の前の少女に握られている。
「んっ……これは中々。じゃあ、こっちも擦りつけてみましょうか」
甘い声を漏らした蟲惑魔が、濡れた秘所をリラのものにあてがった。
男女でないため、入るものは存在しないが擦ることはできる。少女の膨らんだ肉豆が、さんざん弄り回されたリラの肉豆に擦れ合うたび、頭が真っ白に染まりかけた。
(……こんなの……耐え、れるわけ、が)
上半身と下半身。両方の最も敏感な場所を責められているというのに、達せない。
どこまでも、それが続き、もどかしい気持ちが心を掻きむしった。
未だ男女の行為をしたことのないリラには、この苦行は耐えられるはずのないものだった。
「……せて……」
「何か、言いましたか?」
「……か、せて」
「もう一回言ってくださいな。今度はもっと大きな声で」
意地悪く、決して行為は緩めずに、少女は笑いながら言った。震える声を何とかまとめて、リラは吐き出した。
「……いか、せて」
「もっと、はっきりと」
グン、と指が蜜壷に突き込まれた。気絶しそうになっても、気絶できない。今度こそ、リラは震える唇を噛みながら言った。
「――――イカ、せて! こんなの耐えられない!」
屈辱的だった。毒を盛られたからといって、自分の口からこんな言葉が出ることが、果てしなく屈辱的なことだった。
快楽。屈辱。恥辱。怒り。あらゆる感情が入り混じったリラの表情を見て、蟲惑魔は今までにない笑みを浮かべる。
「じゃあ、どこをどうして、イカせて欲しいですか? 指でさしてくださいな」
またもや、屈辱的な行為をそそのかす言葉。
だが、これ以上は耐えられるはずがない。今でも腹の底から這い上がるような感覚がリラを苛んでいるのだ。
震える指で『そこ』を差すと、カッと顔が赤くなる。
「こ、ここ……」
「どこですか? 『ここ』じゃ、わかりません。名称で言ってください」
「…………ッ」
さらなる屈辱。それでも震える口で、何とか紡ぎ始めた。紡ぐたびに、ジュンとそこが濡れ、愛液が漏れ出す。
「お……」
「お?」
「おま、んこ……をめちゃくちゃに、して……」
悪夢のような言葉だった。なのに言った瞬間、さらに下半身が疼く。
答えは、満面の笑みで返ってきた。
「よーく、言えました。まずは術を解いてあげましょう」
瞬間、さっきまであった違和感が無くなり、代わりに塞き止められていた波が押し寄せ始めた。湿った空気が肌に触れるだけで身体中が疼き、視界が明滅する。
耳に暖かい吐息がかけられた。
「術を解いただけで、イキそうになるなんて、やっぱり淫乱なんですね」
「ちがっ……」
「そうですか? じゃあ、続きをしてみましょうか」
少女の口づけが首筋に落ちる。もはや手足を縛るものは不要だった。リラの銀髪と蟲惑魔の金髪が入り混じり合い、二人の少女が乱れ合う。
さらに激しく。さらにキツく。花弁が花弁が擦れ合い、下の花は触れ合って、愛液を撒き散らす。
(だ、だめ……頭が、真っ白に、なる……)
しかし、もうブレーキなんて効かなかった。歯止めを失った身体は快楽を求め、自身から動き出している。
「ふぁっ……ぁっ……ぃっ」
考えることは無理やり放棄された。頭の中が真っ白になりながら、リラの身体が大きく脈打つ。
「――――ひぁっああああああ!?」
絶叫を上げながら、リラは思考を闇の中に沈ませる。
艶のある少女達の嬌声は、しばらくの間、途切れることはなかった。
✝ ✝ ✝
「いやぁ、楽しませてくれました」
行為が終わった後、カズーラは誰かにそう言った。
銀髪の少女は、何度も達した結果、すでに気絶しているため、違うものであることは確かだ。
「――――」
「……む、わかってますよ。交代の時間ってことですよね」
はぁ、とため息をつくと、カズーラは少女に向き直った。
「それじゃあ、名残惜しいですが、これでさようならです。良い蠱惑の夢を」
そうして、少女はさらなる深い場所に沈んでいく。
闇の中ではカサカサと人ではない何かが、辺りを這いまわっていた。
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