妄想鋭意垂れ流し中。

地球から遠く離れた宇宙のどこかで
大型の黒い母艦と多数の艦載機と紅い機体が戦闘を行っていた。
紅い機体は敵の多さにどんどん劣勢になっていく。
止めを刺さんとばかりに母艦の主砲が発射されたその時
紅い機体は間一髪でワープ空間へ逃げ込んでかわし
ワープ空間へと飛び込んでいく。
通常なら同じワープ航法で追いかけるところだが
母艦は艦載機を収納しそのまま前進を進める。
一方紅い機体がワープした先には青い惑星があった。

場面は変わってここは地球。
真夏の見晴らしのいい田んぼ道を
女子高生が一人自転車で走っていた。
赤みがかった髪をした彼女の名は緋山暁奈
ここから30分ほど行ったところにある高校に通っている。
今は夏休みなので部活を昼で終えて帰ってきたところだ。
橋を渡ろうとしたとその時
空から紅い光が降ってきて川に落ちた。
突然の出来事に自転車を止めると川岸に男が一人流れ着いていた。
興味本位で近づいてみると男は
全身鈍い赤タイツに紅いマントという奇天烈な格好をしていた。
顔の左側には傷があり、左耳には謎の機械を装着している。
「…(もしかしてちょっと危ない人系?)」
息が上がっているところを見るとひどく疲れているようだ。
放ってはおけなそうなので暁奈は恐る恐る近づき話しかけた。
暁奈は鞄からおにぎりを出して男に渡した。
部活に行く時親に朝食として渡されて食べ損ねた物だ。
男はおにぎりを受け取ると驚異的な勢いでたいらげ
暁奈に感謝の言葉を述べた。
とりあえず危ない人ではなさそうなので暁奈は安心した。
しかし男は
「私と一緒にいると厄介なことに巻き込まれる。
早くここから離れた方がいい」
と残すと驚異的な跳躍力でその場から去っていった。
暁奈は呆然と立ち尽くしていたがとりあえずその場を後にした。
そしてその一部始終を見ていた者がいた。
「この星の人間と接触したな…
自分から巻き込むとは馬鹿な奴だなぁ…イグニス」
あの母艦のリーダーの黒マントの男だった。
そして男がイグニスと呼んだ暁奈が助けた男は
彼が追いかけていた紅い機体のパイロットに他ならなかった。

その晩、暁奈が家の屋根の上で夜空を見ていると
暁奈のそばを黒いものが横切った。
それに気づいた次の瞬間には彼女は気を失っていた。
イグニスの言った「厄介なこと」は確実に暁奈に近づきつつあった。

暁奈は気がつくと草むらに寝かされていた。
幼い頃に何度も来たことがある場所だ。
そして彼女は目の前に異様なモノが立っていることに気づいた。
虫のような姿をした二足歩行の生き物。
その姿を見て暁奈は叫び声をあげようとしたが
「下手なことをしたら殺される」という彼女の直感をそれを押さえた。
よく見ると数体いるその化け物の中央には
とりあえずは人間に見える黒マントの男が立っていた。
暁奈と目が合うと男は「イグニスはどこだ」と問いかけてきた。
彼女は戸惑いながら男が何者なのかと問いかけると
男は自らをスティンガーと名乗り、もう一度イグニスの居場所を聞いてきた。
「そんなの知らない」と暁奈が答えようとしたその時
何者かが飛び込んできて化け物の一匹が吹っ飛んだ。
月明かりに照らされてなびく真紅のマント。
間違いなく昼に助けたあの男。
黒マントの男がイグニスと呼んだ男だった。
「スティンガー!この人は関係ない!!」
「関係なくはねぇぜ。お前が接触したからには十二分に関係あるっつーの。
だから貴様を呼び出すのに利用させてもらったまでよ」
どうやら二人は知り合いであるようだった。
スティンガーの呼びかけで化け物が一斉にイグニスに飛びかかった。
イグニスは懐から光の剣を取り出し化け物を切り捨てていく。
そこへ今度はスティンガー自らが懐から光の剣を取り出してイグニスに襲いかかった。
月明かりの下で煌めく2本の刃と舞踊る二つのマント。
一見すると互角のようだが
スティンガーの光の剣は光線銃としても使用でき
イグニスは劣勢に立たされていく。
スティンガーの放った光線のをイグニスがジャンプしてかわす。
イグニスが空中で無防備になったその瞬間をスティインガーは逃さなかった。
「もらった!」
スティンガーの斬撃を彼はマントに隠していた左腕で受け止めていた。
その左腕は機械のような鎧で覆われていた。
よく見るとその腕は仄かな紅い光で覆われている。
「マシンアーム。俺が切り落としてやった左腕の代わりに付けた物か。
ククク…前の腕よりイかすんじゃねぇかぁ!?」
どうやらそれは機械でできた義手のようだった。
「貴様っ!!」
左腕を馬鹿にすることはイグニスにとっては禁句のようだった。
イグニスは左腕でスティンガーの攻撃を押し返すと
そのまま紅い光を纏った拳で殴りつけた。
「バニシング・フィストッ!!」
直撃を食らったスティンガーが吹っ飛ぶ。
だがさっきイグニスが斬った化け物のように死んだわけではないようだ。
ダメージを受けたせいなのかスティンガーの体は
ところどころ化け物のように変質していた。
スティンガーは捨て台詞を残して去っていた。

化け物の死体は時間が経つと煙を出しながら溶けていった。
その後イグニスと暁奈は名前を名乗りあい
ここから何百光年もの彼方に惑星イグニスという星があること
自分がそこのレッカという国の王子であったということ
その国がある日突然侵略者が襲われて占領されてしまったこと。
その侵略者がそばにある惑星バイオスのヴィオ帝国の者だということ。
自分がその戦いで家族と左腕、左目を失いここまで逃げ延びてきたことを教え
暁奈が翌日イグニスを
スティンガーが襲うであろう街まで案内することになった。
その後イグニスが暁奈を送り届け、二人は再び会うことを約束して分かれた。
そしてその帰り。
「イグニス様。あの異星人の娘には」
「言うな。これ以上アキナ殿を巻き込むわけにはいかん。」
暁奈の体には何やら秘密があるようだった。

宣言通りスティンガーは街を狙ってきた。
海沿いの地方都市の町並みに
洋上に現れたスティンガーの母艦バグスマザーより
発進された多数の艦載機が迫る。
そしてそれをビルの上で待ち構える2つの人影。
イグニスと暁奈だ。
安全なところに隠れているように暁奈に促すイグニス。
しかし彼女はそれを拒否した。
暁奈は昨日一晩かけて自分が考えたことを告げる。
自分がイグニスと出会ったのは
ただの偶然ではないのではないかということ。
自分にはこうして街まで案内する以外にも
何か出来ることがあるのではないかということ。
むしろそれをやらなければいけないと自分の中にある
「何か」が教えている気がすること。
するとイグニスは観念したように暁奈に真実を告げた。
それは惑星イグニスの人間のほとんどは
身体機能の保持などのためにナノマシンを仕込んでおり
その型には個人個人で僅かの差がある。
そしてそれはマシンアーマーと呼ばれる兵器を使用する際の
生体認証の役目をするということであった。
つまり暁奈の体はイグニスと同じ型のナノマシン適性を持ち
彼は地球に到着した際それに誘導されて彼女の元にやってきたということだった。
しかしそれを明かし、力を貸してもらうことは
暁奈を本当の意味でこの戦いに巻き込むことになるし、
マシンアーマーの操縦は体力を消耗する。
故にイグニスはナノマシン適性のことを彼女に隠していたのだった。
すると暁奈は「街を守るための力があるならば迷わず使いたい」と言った。
暁奈の言葉を聞いたイグニスは力を借りることを決意し
左手を空に向けてかざした。
手甲部分にはめられた赤い宝玉が輝きだす。
「サモン、イグナイトビークル!イグニッション・ゴォォオオ!!」
そう叫ぶと左腕の宝玉から2つの光が飛び出し
空中と地上に2機の紅い機体が現れた。
片方は戦闘機、もう片方は戦車に似た姿をしている。
すると2人はそれぞれの機体から伸びた光に包まれ
イグニスは戦闘機、暁奈は戦車へと吸い込まれていった。
気が付くと暁奈は地上の機体のコックピット内にいた。
いつの間にか今朝家を出る時来た服ではなく
イグニスの服と似た衣装のスーツを着せられていた。
「ちょっ…何この服…」
「機体の操作を円滑に行うためのものだ。
いざという時は防護服の役目もしてくれるし機体を降りれば元の服にも戻る。」
服が元に戻ることを聞いて暁奈は一安心する。
その瞬間、街にたどり着いた敵艦載機の攻撃が始まった。
悲鳴を上げる暁奈だが機体が揺れただけで特にダメージはなかった。
イグニスからの通信によると暁奈の乗った機体は頑丈に作られているようだった。
操縦方法を聞くとそれはコンソールの紅い宝玉に
手をかざして念じるだけという簡単なものだった。
暁奈は攻撃方法を教わりながらどんどん敵を落としていく。
攻撃が終わると暁奈の体には微妙な疲労感があった。
暁奈はマシンアーマーを動かすことの意味を納得した。
一方戦闘機型ビークルイグニファイターに乗り込んだイグニスは
マシンキャノンとミサイルを使ってどんどん艦載機を落としていく。

その様子を遠くから伺うスティンガー艦。
イグニス達が艦載機に気を取られている隙にと主砲のチャージが始まった。
彼はいち早くそれに気づくと
暁奈に艦載機を引き付けるように言ってスティンガー艦へと向かい
正面から突っ込んで行った。
「イグナイトフィールド全開!」
イグニファイターが紅いフィールドで包まれ火の鳥のような形になる。
「イグナイトフェニックス、アターック!!!」
火の鳥となったイグニファイターがスティンガー艦の主砲発射口に突っ込み
そのまま貫通して反対側から飛び出す。
「そういう手があったか…俺はギルザードで出る!
生き残りたければ自分達でどうにかしろ。」
スティンガーは部下が致命的なダメージを受けたと告げるのを他所に
格納庫へと向かっていった。

炎を上げて海に落ちていくスティンガー艦。
安心する暁奈だがマシンアーマーの反応は消えてない。
そして燃え上がるスティンガー艦からひとつの影が海に降り立つ。
艦の爆発をバックにそのシルエットが浮かび上がる。
巨大なトカゲのような体に各部に装備された鎧。
ひときわ目を引く鎧に覆われた巨大な腕。
「くくく…こいつの名はギルザード
お前を殺すために用意した切り札ってヤツだ…」
スティンガーは格納庫に行ったのはこれに乗り込んで脱出するためだった。
すかさず暁奈はレッグスマッシャーを発射した。
ギルザードは両腕でそれを防御する。
光線が止むとその腕には傷ひとつ付いていない。
ビークル状態では限界があるようだ。
そしてイグニスはこの事態を予測していたようだった。
何か手は無いのかと聞く暁奈。
イグニスはあるにはあるが
それは暁奈の体力を大きく消耗させると不安そうに答えた。
だが暁奈の決意は揺るがない。
「この2体のビークルは合体させることによって真の姿、
1体の巨大なマシンアーマーへとなる。
合体の方法は簡単だ。コンソールの中央にある水晶、そこに手をかざして
『チェンジイグニカイザー、イグニッションゴー』と叫べばいい。
頑丈に出来ているので殴りつけても大丈夫だ。」
「掛け声は必須なの…?」
「いざという時のシステムだから音声認識も同時に行う必要がある」
「…わかったわ」
暁奈は渋々納得する。
そして2人の叫びが重なる。
「「チェンジイグニカイザー!イグニッション・ゴォォオオ!!」」
その叫びを受けてイグニファイターの機体下部、
イグニランダーの機体上部が接続されて1機の巨大なビークルが完成し
次第に腕、脚、背中が変形し頭部がせり出し
大型の紅いマシンアーマーが完成した。
「烈火合体、イグニ!カイッ!ザァァアアア!!」
2つの巨体が対峙する。
「ロボットになった…?」
「2つのイグナイトビークルがその身を一つにする時完成する
炎を纏い一振りの剣を持つ紅の武神。
それがこのイグニカイザーだ」
「ようやくそっちも切り札を出したか…いや、出せるようになったということか。
こいつは楽しめそうだ…なぁ、イグニス…」

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