第36話



春希 4月8日 金曜日



ついにNYまで来てしまった。
青春の勢いって怖いなって、あとで苦笑いしてしまうかもしれない。
長時間乗っていた飛行機から降りて最初に考えてしまった事は、
本当にどうでもいい内容だった。
NY時間18時30分到着のJFK空港。
降り立った空港を見渡せば、当然ながら日本人はあまりいない。
一緒の飛行機に乗ってきたはずの日本人は、すでに各々の目的地に向かっている。
多種多様な人種が混ざり合った空港ロビーにおいて、俺は他の例にもれず、
人の中に埋もれてしまっていた。
視界を人の波で隠されてしまった俺は、とりあえずその場にとどまり、
腕時計で時間を確認する。
飛行機の中で時差は調整しているので正確な時間を示しているが、
秒針が進むごとに心細さが積み上がって来てしまった。
飛行機は予定通りに到着しており、待ち合わせの場所にも時間通りに来られたと思う。
しかし、初めて来た俺が目印を見つけられないのを防ぐために指示された場所は、
他の待ち合わせ客もよく利用するような目立つ場所であった。
その分人が混み合って、人の中に埋もれてしまうデメリットは避けられなかったが。
さすがに待ち合わせの場所と指定されているので、出会う事ができないとは思えないが、
若干心細くなってしまうのは致し方ないはずだ。
一人で来たNYで、気遅れしているわけではないのだけれど、
どうもアウェー感を感じてしまうのは、自分が島国から来た日本人だからだろうか。
しかし、そんな劣等感は、わずかな時間だけしか思いめぐらすだけだった。
だって、俺の目の前にいる人が、俺の意識を全て奪い去っていったから。
ずっと会いたいと思っていた人が、目の前にいる。
俺がどうでもいいような劣等感を感じている間に、
この人は息を切らせながら俺を探してくれていた。
こんな俺の為に、一生懸命動いてくれていたことが、
どうしようもなく愛しく思えてしまった。

春希「来てしまいました」

俺の声が届いているはずのなのに、麻理さんは返事を返してはくれない。
俺が呼ぶ声で、肩を少し震わせて反応していることから、
麻理さんは俺の声をしっかりと聞こえてはいるはずだった。
それとも、英語に慣れ過ぎて、久しぶりに聞いた日本語では、
反応が遅れてしまうのだろうか?

春希「麻理さん?」

再び名前を呼びかけて、数歩前に詰め寄る。
俺達を一万キロ以上隔てていた距離は、今や50センチほどまで縮まっている。
相手の表情どころか、息遣いさえ感じ取ることができるところまできていた。

春希「麻理さん?」

もう一度呼びかけても、返事はなかった。
麻理さんの長いと思っていたまつ毛は、小刻みに揺れ動き、
コートの上からでも息を整えようとしているのがわかるくらい胸を上下させていた。
けれど、俺を捉えた視線だけは動かない。
瞬きをする1秒に満たないほんのわずかな瞬間でさえ惜しむように俺を見つめてくれていた。

春希「麻理さ・・・」

さらにもう一度呼びかけてみようとしたところで、変化が生じた。
俺と麻理さんとの距離は、一瞬でゼロセンチまで縮まっていた。
麻理さんが俺の胸に無言で飛び込んできた。
飛び込んできたっていうのは、大げさか。
俺の心証としてはあっているのだけれど、実際は、それが当然の成り行きのごとく
俺の胸に静かに収まったという方があっている気がした。
麻理さんは、一歩俺の元へ踏み込むと、俺を放すまいと腰に腕をまわしてくる。
けっして力が入っているわけではないのに、俺はこの腕から逃れられないと実感した。
ただし、俺が自らこの腕をふりほどくことなどけっしてないが。
俺は、ゆっくりと現状確認の為に視線を下を向ける。
ちょうど麻理さんの頭のてっぺんしか見えないはしない。
黒くしなやかな髪が日本にいた時と同じように後頭部で束ねられていた。
今目にしている視覚情報のみならば、麻理さんは日本にいた時と同じと言える。
だけど、俺の腕から伝わってくる麻理さんの情報は、
明らかに日本にいた時の麻理さんとは違うと伝えてくる。
けっして抱き合った事があるわけではない。
麻理さんとリビングのソファーで寄り添ってのんびり過ごしたことはあっても、
抱き締め合う所まではいった事はない。
それでも、俺の体が記憶している風岡麻理の体つきが大きく変化している事だけは読みとれた。
キャラメル色のロングコートに隠された体であっても、
抱きしめてしまえば、コートの上からでも痩せてしまったとわかってしまう。
日本にいた時から細い細いと思っていた滑らかな曲線を描いていた腰は、冗談でもなく、
よくある比喩表現でもなく、
ほんとうにほんの少し力を強く入れてしまうと折れてしまいそうであった。
俺としては、俺の胸にうずめた顔を強引にでもひきあげて、
早く麻理さんの顔を見たいところでもある。
しかし、俺の存在を確かめるようにぴったりと頬を胸に張り付かせているわけで、
その行為を中断させる気にはならなかった。
だから俺は、麻理さんの鼓動を俺に刻みつけようと、
腕や胸から伝わってくる麻理さんの熱と息遣いを感じ取ることだけに全神経を動員した。



・・・再会から数分が過ぎ去ったと思う。
ハグが日常の一部分となっているアメリカであっても、俺達の抱擁は限度を超えていた。
さすがに日本でやっていたら目立ちまくっていたと思う。
まあ、アメリカであっても目立っていたが・・・。
一応、別れと再会の広場である空港であることが幸いだったと言えるのだろうか。

春希「麻理さん。・・・そろそろ俺に顔を見せてくれると助かります。
   こうやってずっと抱きしめていたい気持ちも強いのですけど、
   それと同じくらい麻理さんの顔を見たいんですよ」

俺の声に反応して、俺の胸にこすりつけていた頬の動きが止まったのだから、
一応は俺の声が麻理さんの耳まで届いてはいるようだった。
しかし、いっこうに麻理さんは顔をあげてはくれない。
佐和子さんの話によれば、佐和子さんがNYで麻理さんと再会した時も、
麻理さんは自分が痩せてしまった事を隠そうとしていたらしい。
ただ、今は俺に知られてしまっているわけで、今さら隠す事はない気がする。
まあ、こんな考えばかり浮かんでしまうから、
女心に疎いって言われてしまうのかもしれないけれど。

春希「麻理さん・・・、お願いですから」

強制はしない。強制はしないけれど、甘えるように語りかける。
その甘えが麻理さんにとっては、
どんな命令よりも過激な強制力をもっているなんて、俺は知らなかった。

麻理「うん、わかってる。・・・でも、もうちょっとだけ、お願い」

久しぶりに聞いた生の麻理さんの声は、俺が記憶している声と重なる。
それは、本人の声なのだから、当たり前といったら当たり前だ。
わかっているけど、確かめずにはいられなかった。
麻理さんは、俺の腰にまわした腕の力を緩めると、
ぴたりとはりつけていた頬も俺の胸から放す。
そして、俺の脇の下のあたりの服を握りしめ、やっとあげてくれると思っていた顔は、
おでこを胸に押し当てられる事によって、お預け状態が維持された。

春希「・・・麻理さん」

落胆の声が混じっていたとしても、俺は責められないはずだ。
だって、それだけ期待していたのだから。

麻理「気がついたんだけど」

春希「はい、なんでしょうか?」

麻理「私達って今、すっごく目立ってない?」

春希「そうですね。いくらアメリカだとしても、こんなにも長時間、空港ロビーの
   ど真ん中で抱き合っていたら、目立ちますよ」

俺の冷静を装った事実を聞き、俺を掴む手の力が強まる。
俺だって今すぐこの場から立ち去って、せめてタクシーの中に逃げ込みたい。
麻理さんを置いて行くことなんて論外だから、こうして一人顔をあげて
この場を通り抜けていく多くの人々の視線から耐えていた。

麻理「どうしようぉ・・・」

麻理さんは、ようやく俺の胸の中から顔をあげてくれたと思ったら、
可愛い悲鳴をあげてくる。
その顔つきがいつも見ている編集部での顔とかけ離れていて、20歳くらい幼く見える。
それがあまりにも俺の心をくすぐり、愛おしく感じさせてしまう。

春希「大丈夫ですよ。堂々としていればいいんです」

麻理「そうかしら?」

春希「それに、他人の抱擁なんて見たって、一瞬呆れて、数秒微笑ましく思うだけですって。
   しかもここは空港なんですから、俺たち以上の抱擁をしている人たちだって
   いるはずです」

麻理「うぅ〜ん・・・」

春希「それとも、俺とはいやですか?」

麻理「そんなことはない」

春希「だったら、もういいじゃないですか」

麻理「そうね」

春希「麻理さん、約束通りNYまで来ましたよ」

麻理「うん」

春希「我慢できなくて、来ちゃいました」

麻理「うん」

春希「麻理さん?」

麻理「うん」

麻理さんの瞳には、薄っすらと涙の膜が出来ている。
やや肉がそぎ落とされた頬も、麻理さんの美しさに陰りを与える事はなかった。
これは不謹慎だと重々承知している発言だが、やつれているのが見え隠れする顔色さえも
艶っぽく感じてしまうほど、今の麻理さんは輝いていた。

春希「ただいま、麻理さん」

意識して発言した言葉ではない。麻理さんに見惚れていたら、つい出てしまった言葉だ。
声に出した後、麻理さんの元に戻ってきたのだから、ただいまもあながち
間違った言葉ではないと自己分析する。
どうも後付けくさい解説だけれど、感動の再開に理由なんていらない。
必要なのは、俺の腕の中に麻理さんがいるっていう事だけだ。
俺の「ただいま」発言に、麻理さんは目を見開き軽く驚きはした。
しかし、再び頬笑みを浮かべ、すんなり俺の言葉を受け入れてくれたようだった。

麻理「おかえりなさい、北原」

幸せを噛み締めるように語りかけるその声に、とうとう俺は降参して、
麻理さんを力強く抱きしめてしまった。
可愛い吐息が聞こえてきたが、麻理さんの腰が折れる事はなかった。
もはや空港ロビーから聞こえてくる雑音は一切俺の耳には届かない。
俺の耳は、麻理さんの鼓動とささやき声しか受け付けなくなってしまった。
あんなにも気にしていた周りからの視線も、気にならなくなっている。
これもまた、麻理さんだけを見つめていれば問題なかった。
もちろん麻理さんも、俺の要求を拒絶する事はない。
俺の脇の下あたりを掴んでいた麻理さんの手は、
自分の居場所を探るべく俺の腰へと回される。
そして、自分の居場所を見つけたその手は、自分の居場所を主張すべく
力強く俺を抱きしめてきた。
俺は加熱した俺の心が常温に戻るまで、腕の中に舞い降りた幸せを抱きしめ続けていた。
・・・ただし、タクシーの中で可愛い非難をずっと聞き続けなければならなかったが。







麻理「北原って、見かけによらず情熱的な所があるのよね」

タクシーを降りて、途中夕食の材料を買い、そして麻理さんのマンションについてもなお、
麻理さんの抗議は続いていた。
抗議は抗議だが、ニコニコして話しているのを見れば、誰だって怒っていないと判断できた。
ここに佐和子さんがいたら、いつまでもデレまくっているんじゃないわよって、
つっこみがあったはずだ。

春希「抑え込まれていた感情が、誰かさんのおかげで溢れ出てしまっただけですよ」

俺の反省の色が全く含まれていない弁も、タクシーの中で何度も繰り返されていたものだ。
何度も繰り返してきたやり取りなのに、俺達は飽きずに繰り返す。
ゆっくりと、ゆっくりと、今ある幸せを手さぐりで確かめていた。
時刻は既に夜の9時になろうとしていた。
空港についたのが6時30分頃。
道路はそれほど渋滞していなかったので、1時間もかかっていないはずだ。
あとはスーパーでの買い物も、買うものが決まっていたし、
本格的な買いだしは明日行く予定だから、時間がかかるはずもない。
だから、これらを考慮すると、
それなりの時間を割いて抱き合っていたことが示しだされていた。

麻理「その誰かさんって、誰の事なのかしら?」

春希「さあ?」

お互いわかりきっているのに、笑みを振りまき、とぼけながら部屋の奥へと進んで行く。
以前初めて日本の麻理さんの部屋に来た時の印象とは違い、
部屋の中は綺麗に片づけられている。
玄関には脱ぎ散らかした靴は一足もないし、今だって脱いだ靴は綺麗に並べられた。
そして、部屋の隅に積み上げられるはずの洋服は、何一つ存在していなかった。
他の部屋を見てみなければわからないが、おそらく他の部屋に行っても
片付けが出来ていない部屋はないと思われる。
また、部屋を飾るインテリアも必要最低限のもので抑えられているようにも感じられた。
一見マンションのモデルルームと勘違いしそうなリビングルームであったが、
それでもテーブルに積み上げられている書類の山を見ると、
麻理さんの部屋であると認識できた。
ようやく見つけ出すことができた麻理さんの鼓動に、俺は隠れて安堵する。
たしかに佐和子さんから麻理さんが部屋の片づけをしっかりするようになったとは
聞いていたが、極端すぎる変化に驚きを隠すのが難しかった。
けっしては悪い変化ではなく、むしろ部屋を綺麗に使っているのだから良い変化で
あるはずなのに、その変化の原因を知っている俺からすれば、素直に喜べないでいた。
俺が綺麗好きで、自分の部屋を綺麗にしていたから麻理さんはまねてしまった。
なにもない、俺の足跡一つないNYのマンションに、俺の気配を無理やり生み出そうと、
少しでも俺の温もりを感じ取ろうとした結果が、今の部屋の状態だ。

麻理「荷物はその辺にでも置いておいてね」

麻理さんは、俺に指示を出すと、自分はキッチンに行き、買ってきた食材をテーブルに置く。
俺も手伝おうと荷物を邪魔にならないように指示通りの場所に置き、
急いでキッチンに向かうが、すでに麻理さんはリビングの方に戻って来ていた。

麻理「とりあえず、コート脱ごうか。暖房もすぐに効いてくると思うし。
   でも、アメリカのエアコンって、非効率よね。
   家全部を暖めようとするんですもの。
   日本みたいに個別にエアコンを設置すればいいと思わないのかしら?」

麻理さんは、自分のコートをハンガーにかけると、俺のコートもかけてくれた。

春希「ダイキンも、一度は日本のエアコンをアメリカで売ろうとして失敗しましたけど、
   今度は念入りに準備をして再チャレンジするそうですから、
   今度こそ売れるんじゃないですか?
   省エネも強く意識される時代にもなりましたし」

麻理「そもそも部屋を暖める概念が違うのよ。家全部を一辺に暖めようってするのが
   いかにもアメリカって感じがするんだけどね」

春希「そうですね」

キャラメル色の仕立ての良いのがよくわかるロングコートを脱いだ麻理さんは、
よく観察したとしても服の上からは痩せた事を感じさせない。
服装はいたってシンプルで、ゆったりとした白いハイネックのセーターに、
こげ茶色のロングスカート。
黒いタイツを履いて、ちょっとこの部屋には似つかわしくない可愛らしいもこもこの
スリッパを履いているいるのが俺の心を和ませてくれた。
俺のスリッパも色違いの物なので、冬用に買いそろえた物なのだろうか。
毛並みがしっかりしていて、温かさを感じさせてくれていた。
たしかに麻理さんの頬の肉は落ちたが、かろうじて健康体を主張できる顔つきではある。
しかし、俺は知っている。
空港で抱きしめた時に、麻理さんは痩せてしまったとわかっている。

麻理「あのさ、北原」

春希「はい」

麻理「近くにホテルあるけど・・・、部屋、どうしようか?」

俺に選択権を与えてくれてはいる。くれてはいるけど、仕事では先を読んで
事前準備をしっかりとこなすあの麻理さんが、
ホテルを予約してあるとは言ってこなかった。
仕事であれば、確実にホテルの予約が取れていなければ、お説教ものの失態である。
つまりは、今回の麻理さんの意図はそういうことなのだろう。

春希「部屋が余っているのでしたら、ここに泊めてくださると助かります。
   これでも学生なので、出費はできるだけ抑えたいんですよ。
   春休み期間中ずっと編集部にいたので、自分が大学生だっていう感覚は
   薄れてしまいそうでしたけど」

麻理「あいつらは、北原があくまでもバイトだっていう事を忘れているだろ」

春希「一応内定貰いましたので、来年からは正社員になりますよ」

麻理「それでもだ。北原は私が鍛えたのだから信用しているわよ。
   でも、だからといってどんな仕事でも押し付けていいわけではないのよ。
   いくら有能だとしても、まだまだ期待できる新人でしかないんだから、
   しっかりとかじ取りしてあげなければいけないのに、そっせんとして先輩が
   こき使ってどうするのよ」

麻理さんは、すぐには自宅に泊めてくれるとは言ってこなかった。
俺の方も、回答をせかしはしない。
麻理さんのタイミングで切り出してくるまで待つことにした。

春希「その辺は浜田さんが調整してくださっているので、今のところ問題ないですよ。
   麻理さんがNYへ行く前に、何度も言われたことですから、しっかり自分の方でも
   調整しています」

麻理「そうかしら? 北原って、仕事に関しては自分の限界を気にしない所があるのよね。
   もちろん自分が出来ることと出来ない事の分別はできているけど、
   だからといって、出来ない事を他人に丸投げなんてしないじゃない」

春希「出来ない事は、出来ないですよ。だから、フォローといいますか、
   アシスタントくらいはしますよ。
   でも、出来ないままでは今後の支障になりますから、覚えるようにはしていますけど」

呆れた表情を匂わす麻理さんの顔は、
編集部で見せていた頼りになる麻理さんを存分に発揮している。
麻理さんがいなくなってからの編集部を、そして、今麻理さんが所属しているNY支部を、
お互いの知らない隙間を埋めたいと欲してしまう。

麻理「そうね。・・・・あっ、泊まる部屋だったわね。
   ちょうど一部屋空いているから、そこを自由に使ってくれてかまわないわ」

春希「ありがとうございます。遠慮なく使わせてもらいます」

今思いだしたかのような表情で提案する麻理さんの申し出に、
俺はその流れにのっかって申し出を受け入れる。
きっと佐和子さんが言っていた部屋なのだろう。
麻理さんが、俺の為に用意してあった普段は使っていない部屋。
麻理さんがこの話を切り出す時、麻理さんの体がわずかにこわばり、
そして、顔には緊張感が漂っていたことは、注意深く麻理さんを見つめていた俺には
読みとる事はたやすかった
もちろん麻理さんは、なんでもないような風を装おうとしていて、
表情を作りこんでいた、
お互い騙し合っているわけではないけど、
お互いを支え合う為には見ないふりをすることも必要だって、俺は知っている。

麻理「そうね。遠慮なんてしなくていいわよ。
   せっかく荷物置いたばかりで悪いのだけど、部屋に案内するわ」

春希「はい、お願いします」

俺の荷物を一つ持って扇動する麻理さんの背中は、
色恋沙汰に疎い俺であっても、浮かれているって変わるほど弾んでいた。
俺はその背中を見て、顔をほころばせずにはいられなかった。

麻理「どうしたの? 行くわよ」

俺の足音が聞こえない事に不審に思って振り返った麻理さんの顔は、
予想通り笑顔が満ち溢れていた。
そして、俺の笑みを見つけると、さらなる笑みをそこに付け加えた。






第36話 終劇
第37話に続く








第36話 あとがき



ダイキンの話は、実話です。
今度は販売網を買い取ってからの再出発ですから、
うまく日本型のエアコンが売れればいいですね。
とくに意識してエアコンネタを入れたわけではないのですが、
書いていて、エアコンをつけるシーンがあったので、
あぁそういえばって感じで書いた次第です。



来週も、火曜日、いつもの時間帯にアップできると思いますので
また読んでくださると、大変うれしいです



黒猫 with かずさ派

このページへのコメント

ようやく麻理さんが出てきて再会しましたね。長かったです。
麻理さんとここまで感動的な再会をし甘い言葉を囁きあったあと、かずさとどんな再会をするか今から楽しみです。
今回以上に感動的なイチャラブが見られるのか、ストラスブールのときみたいに気まずい再会になるか、それとも修羅場になるのかw

0
Posted by N 2015年03月06日(金) 20:40:00 返信

更新お疲れ様&ありがとうございます。ダイキンネタ面白いです。私はかずさ→麻里さん→千晶の順に好きですので、麻里さんネタは最高ですこれからもファンとして読ませて頂きます

0
Posted by バーグ三世 2015年03月03日(火) 23:28:05 返信

更新お疲れ様です。
空港での抱擁の場面は麻里さんがどれほど春希が来るのを待ち焦がれていたかが良く分かりますね。
良かったと思う反面、ここまで一途になっている麻里さんと離れてかずさの元へ戻ることが春希に出来るのかちょっと心配になりますね。
次回も楽しみにしています。

0
Posted by tune 2015年03月03日(火) 03:05:06 返信

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