最終更新:ID:mVFWndKXiQ 2012年03月07日(水) 10:15:19履歴
「・・・だぞ、・・ろ、・・さ」
愛しいあいつの声を聞こえる、気配が近づいてくる。
「もう朝だ、起きろ、かずさ」
「・・・すぅぅ」
・・・寝たふりをわざとする。
こうしてるとこいつは、あたしがしてほしいことをしてくれるから・・・
「仕方ないやつだな、全く・・・」
そう言いつつ、その人の手があたしの前髪を軽く梳いて・・・
「ん・・・」
「ん・・・」
そうして・・・唇が触れ合った・・・朝のノルマ達成
「おはよう、春希」
「おはよう、かずさ」
いつも通りの、幸せに満ちて、気持ちの良い朝だった。
・・・・・・
朝食を二人で一緒に食べたあと、春希が自分の分とあたしのために甘いコーヒーを入れてくれる。
あたしが入れようとすると、「ピアニストがそんなことしないの!俺がいれるから」とか言って、怒るからな・・・
その後、リビングで二人してくつろぐ。
ソファーには春希が座っていて、あたしが春希に少し足を開かせて、その間に座りながら、コーヒーを飲み始める。
背中に感じる春希の暖かさとか匂いとか感触を確かめながら、テレビを見ながら、二人してコーヒーを飲むのは、本当にリラックス出来る・・・
「春希〜、今日は仕事休みだよな?」
「あぁ、昨日で先週のコンクールに関わる仕事は、ほぼ片付いたからな〜。
3,4日は確実に休みで、そこから先はまだ分からん」
「そっか・・・」
という事は、数日は一緒にゆっくり出来るな・・・
ピアノでも弾いてやろうかな?春希のためだけに。
「先週のコンクールさ、春希は客席にいなかったよな?」
「うん、かずさへの取材とインタビューの申し込みとその整理で、どうしてもやらなくちゃならなかったから・・・
あの時、こなしてなかったら、今は、こうして休み取れてたかわからん」
「ごめんな、行けなくて・・・」
春希の声が、本当に申し訳なさそうだ・・・
「気にしてないし、心はいつも繋がってる・・・そうだろ?」
お前がそう言ってくれたよな、あたしに。
「・・・ありがとう、かずさ」
春希が、あたしを抱いてる腕に、少し力を込めてそう言った。
「良いよ・・・でさ、地下のスタジオで、先週のコンクールのやつ、お前のために弾こうか?今から」
もう・・・あたしのピアノは春希が関係ないなんて事は、ないから・・・
お前を幸せにしてやるために、あたしはいくらでも弾いてやるから・・・
あたしがお前を守ってやるから・・・
これからも、いつまでも・・・ずっと一緒だから・・・
「ん〜、それはすごく魅力的な提案だけど・・・明日にでもしてくれ」
「・・・明日にでも?」
何と!? あたしのピアノの熱狂的なファンが、今じゃなくても良いとな?
「・・・理由を聞こうか?」
「今日は、二人で一緒にしたいことがあるんだ」
「ほぅ・・・」
「だから、あとで俺の部屋に来てくれ?」
「春希の部屋?二人の部屋じゃなくてか?」
「もちろん」
基本的に春希は、仕事も、着替えも、睡眠も、二人の寝室でするのに。
一応、春希だけの部屋も、こっちに来て・・・帰って来てから、用意したけど・・・
あの部屋は、数は多くないけどあっちから持ってきた二人分の家具とか必要なものが、置いてあるだけの物置じゃなかったっけ・・・?
・・・何を考えてるんだ?春希。
「別にいいけど・・・」
「オッケー、コーヒー飲み終わったら、先に行って準備するから、
俺が呼んだら来てくれ」
「分かった」
それから、コーヒーを飲み終えた春希は、あたしの髪を軽く撫でて、自分だけの部屋に行った・・・
・・・・・・・
春希に呼ばれて、あたしは春希の部屋の扉の前に来た。
「入るぞー!」
「どうぞ〜」
返事が返ってきたので、扉を開ける。
扉を開けると、そこは・・・やっぱり物置だった・・・
持って帰ってきた物は少ないはずだけど、以前より片付いている・・・?
「なんでこの部屋に呼んだんだ?」
「それは、ある物をかずさと一緒にしたくてな」
「?」
そう言ってから、あたしの前に立っている春希が、その体を退けた。
春希が体を退けたその先には・・・見覚えがある、隣同士で並び立つ2台のテレビがあった。
あれって、日本に居た時の・・・
「あのテレビって、持って帰ってきたやつだよな?」
「そうだよ。それよりテレビの前を見てくれ」
「テレビの前・・・?」
そうして、テレビの前に目をやると、なにやらケーブルがふたつの黒のBDレコーダー?に、それぞれテレビから繋いである・・・
「何だ?あの黒いの」
「ゲーム機だよ」
「・・・ゲーム機だと?」
・・・どういう事なんだ?
「理由は?」
「かずさと一緒にしたいから」
「・・・別に良いし、それはうれしいけどさ・・・ゲームって普通、一人でするもんじゃないか?」
「俺もそう思ってたけど、最近のは二人どころか、インターネットを介して、
世界中の人達と出来るのが普通らしいぞ」
「すごいな、それ」
どんだけハイテクなんだよ!?。全然知らなかった・・・
「で、春希はゲームするやつなのか?」
「いや、全く。かずさもないよな?」
「ほとんどないな」
たしか、町で、少しやったことがあるくらいか・・・
「そっか・・・それは良かった」
「・・・それは良かった?」
「だって、互いにゲームに関しては、ろくに経験も知識もない。なら、
同じスタートラインで始めることが出来るからな」
「・・・たしかに」
春希とあたしが、同じスタートラインから始めるわけか・・・
なんか興味出てきたな・・・
「それに、誰かとゲームするのは、かずさが初めてだな」
「そうなのか?いや、そうか、するタイプに見えないもんな、春希」
あたしが・・・お互いが・・・初めて・・・か・・・
「そのとおりだけど・・・一緒にしてくれるか?かずさ」
「やろうか、春希」
二人が・・・初めてするのか・・・楽しそうだ。
・・・・・・
・・・
春希は、ゲーム機本体と同時に、二人で出来るゲームソフトをいくつか、二本ずつ買ってきてたらしく、
お互いが、どんなジャンルが好きか嫌いかさえ分からないので、春希のメジャーらしいやつからする提案を採用。
そして、プロフィール?などの設定も終えて、いざ、開始したわけだが・・・
「なぁ、いきなり仲間が主人公を助けに来て、しかも場所が刑務所って」
「唐突すぎるよな。ってかゲームのグラフィックが予想をはるかに超えてる」
「本当にな、なんか映画見てるみたいだ」
・・・
「うわ!なんか人っぽいの出てきたぞ」
「どうやらあれを左のトリガーで、狙いをつけてから、右トリガーで撃つらしい」
「つまりあれが敵ってことか・・・春希、ふたりで撃とう」
「分かった」
・・・
「あたしが先に行くから、春希はついてこいよ」
「え?ちょっと、おいてかないでくれ。操作がおぼつかないんだけど」
「知るか、ついてこれないやつが悪い」
「ひどいぞ」
・・・
そんなこんなで、たしか、小さい敵がいっぱい出てくる所を越えたあたりで、春希が「少し休憩しよう。飲み物とお菓子持ってくる」と
言って部屋を抜けて、あたし一人・・・
これまでのプレイを省みるに、若干あたしの方が、春希よりうまいらしい。
で、あたしがそれをダメ出ししつつ、あたしが先に一人で進んで、
春希があとを必死で追いかけてきたり、時には、春希にぴったりついて手助けして、二人でゲームを進めていく・・・
二人でゲームするのは楽しいけど、なぜか・・・懐かしい気持ちもするんだよな・・・
・・・何でだ?
・・・・・・・・・・・
・・・・・・
あぁ・・・分かった、この懐かしさはあれだ。
二人で壁越しの伴奏してたり、春希にギターを教えてた時のそれだ。
あの時は・・・3人じゃなかった・・・二人だけの時間だったんだ。
たしか4月辺りから、周りが騒がしくない、二学期の後半までの、二人だけの・・・
「かずさ、どうした?」
「ひゃ!?春希か!脅かすな」
「はいはい、さっきから呼びかけてるのに、反応がないから心配したのに。
はい、飲み物とお菓子」
「・・・ありがとう」
「どういたしまして」
「春希、これからもずっと一緒にゲームしてくれるか?」
「どうした、いきなり?別にかまわないよ」
「そっか・・・ありがと」
「・・・変なかずさ」
二人でセッションする事はもう無いと、思ってたけど・・・
まさかこんな形で実現するとは・・・
春希と一緒にしていくなら、ゲーム・・・好きになれそうだ。
「春希、二人でゲームって楽しいな」
「間違いない」
二人だけの、なつかしさを感じさせる、幸せな時間が過ぎて行く・・・・・・
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