最終更新:ID:M+2BrIvTRQ 2012年04月02日(月) 20:30:51履歴
以前投稿していた長編Interludeの補完SSです。
「……頼む」
「……本当なのか?」
グッディーズ南末次店。
梅雨明けしたばかりの晴天に似合わない表情の青年二人がテーブルに差向いに座っている。
「……分かってる。俺がお前にこんなこと頼めた義理じゃないのは」
「……ああ。本当だな」
テーブルに手を突いて頼み込んでいるのは、峰城大政経学部四年、友近浩樹。
その向かいで難しそうな表情で腕を組んでいるのは、峰城大文学部四年、北原春希。
「でも、お前しか頼める奴がいないんだ。頼むよ」
「……お前の母親、また具合悪くなったのは、本当なんだな?」
「ああ。去年ほどじゃないんだけどな。入院の必要はないんだけど、週に一度は通院しなくちゃいけないんだ」
「その費用が掛かるって訳か」
「ああ。額自体はさほどじゃないんだけど、すぐに用立てなくちゃいけなくてな」
「あれ〜?どうしたの二人とも?ずいぶんご無沙汰だったけど」
そんな二人に遠慮なく声を掛けたのは、グッディーズのホールチーフの中川和美。
「あれ?中川さんまだここでバイト?短大卒業したんじゃ?」
「そうなんだけど、この就職難でなかなか行先決まらなくて」
「そんなのんびりしたこと言ってると佐藤みたいになるぞ」
「うわ、それ言わないで北原さん。少し自覚あるだけに心に刺さるから」
「もうチーフ。お客様の邪魔しちゃだめですよ」
そこに、さらに同じくバイトの杉浦小春も加わった。ちょうどお昼のピークを過ぎた頃なのでスタッフも多少の暇を持て余しているのだろう。
「でもさ、北原さんも友近さんもホントにご無沙汰なんだもん。もっとここの経営に協力してもいいと思わない?」
「でも北原先輩ならこの間も来たじゃないですか」
「ああ、そうだったっけ?あ、そうそう。そん時彼女連れてきてたんだっけ北原さん」
「そうですよ。その時夏休みに旅行に行く計画を」
「杉浦」
お客そっちのけで始まった看板ウェイトレス二人の会話に、唐突に春希が割り込んだ。
春希のくぐもった声に、小春は思わず黙り込んでしまう。
「お客様のプライベートに口を挟むなって教えたはずだぞ」
「あ、で、でも」
「……」
春希が無言で小春を見上げる。しかも少し眉を吊り上げている。
普段の春希からは見られない表情に、さしもの小春も口をつぐむしかなかった。
女性二人はそのままそそくさと席を離れ、奥へと引っ込んでいった。
「春希、今の話」
「お前には関係ない。今はお前の話だろ」
「チーフ、北原先輩と一緒にいた人」
「ああ、友近さん?あの人も前ここでバイトしてたの。
っていうか、北原さんが連れてきたの。お金に困ってたらしくて、前の店長にねじ込んだのよ」
「友達なんでしょうか?」
「そうじゃない?バイトしてた頃はそれなりに仲良かったし」
「……そうですか?今の雰囲気見る限りそうは見えませんでしたよ」
「そう?まあわたしも詳しくは知らないんだけどね。
でも確かにさっきの北原さん、いつもに比べてずいぶん怖かったもんね」
「そうですね。この間小木曽先輩と一緒だった時とは別人でした」
「小木曽さんっていうんだ?北原さんの彼女」
「え?あ、はい」
「なになに?小春っち、その人知ってるの?」
いつの間にか、二人の話題は友近から雪菜に移っていた。
まあ、年頃の女性二人、男同士の友情より色恋沙汰の方が話が沸く。
「まあ、知っているというか、わたしの付属の頃の同級生のお姉さんなんです」
「でも可愛かったよね。ウチでも絶対即戦力になるくらい」
「まあ、仕事ができるかどうかは別ですけど、確かに美人ですよね」
「でもさぁ、今まで数々の女の子たちを振ってきた女泣かせの北原さんに、ついに彼女がねぇ」
「でも、小木曽先輩だと何だか納得しちゃうんですよね。釈然としませんけど」
「谷っちも小春っちの友達も、あの娘が相手じゃ敵わなかったか」
「でも先輩たち、今の様子だとずいぶん切羽詰まった感じでしたよね」
「どうしたのかな?あ、ひょっとしてその北原さんの彼女に友近さんが手を出したとか?」
「そんな。まあ仮にそうだとしても小木曽先輩が北原先輩以外の人に、ということが想像つかないんですよね」
「う〜ん、でもホントどうしたんだろうね?」
結局、二人の話題は先に行きつくことはなかった。
春希の表情から、友近が無理を頼み込んでいることは想像がつく。
でも、それが何かに辿り着かない。
しかしそれも無理もないことだった。
どんなにこの場で二人が考えたとしても。
雪菜を知らない和美が。友近を知らない小春が。
春希達の間に何があったか、その真相に辿り着くことはないのだから。
……一ヶ月後。
「……お疲れ」
「……お互いにな」
八月も半ばに差し掛かろうとしていたある週末、二人はとある居酒屋で酒を酌み交わしていた。
「しかし、この一月の間はずいぶん疲れたな」
「仕方ないだろ。この短期間で必要額貯めるにはやっぱガテン系しかないからな」
二人はこの一月、土方のバイトで友近の母親の通院費を稼いでいた。
稼ぎがいいのと即日で給金が手に入る、この二つを満たすのに手っ取り早いのはやはり肉体労働という訳である。
前期試験の途中から週末、試験終了後はほぼ毎日入り、通院費用を二人で貯め込んだ。
慣れない勤労で筋肉痛に苛まれながらも、何とか一月でそれなりの額を稼ぎ、そして今日、こうして労いの杯を交わしている、という訳である。
「……本当にすまないな春希。お前も休みの予定があっただろ?」
「気にするな。何とか出発には間に合ったんだ」
「そうか。いつだ?」
「明日の夜。夜行バスでな」
「どこ行くんだ?」
「京都」
「北海道でも、沖縄でもないのか?」
中高の修学旅行でもあるまいし。
そんな感情が言葉の端に引っ掛かっているのが友近自身も自覚してはいたが、それにしても京都とは。
「いや、付属の頃の友達があっちの大学に行っててな。
この間電話したら卒業・就職前にせめて一度会いたいって話になって。向こうの方色々案内してくれるってことで」
「そうか。良かったな」
春希のグラスにビールを注ぎ、友近は表情を綻ばせる。
「で、他には誰と」
「……別に、誰とでもいいだろ」
「まあ、話の中身で付属の頃の奴らと一緒ってことは分かるからいいけどな」
「……」
やはり“誰”に関して春希は決して口に出さない。友近の方もそれ以上の詮索をするつもりはなかった。
「それはそうと春希。今回のバイト代だけどな」
「この前も言っただろ?お前の好きに使え。返さなくてもいいから」
「そうはいかない。俺はお前に」
「……友近」
春希の声のトーンが明らかに低くなる。友近も口をつぐんだ。
「去年も言ったよな。俺はお前を二度と許さないと」
「ああ、聞いたよ」
「俺たちはもう友達じゃない、とも」
「ああ」
「だからお前が俺に義理立てする必要は」
「だったら、尚更だろ?」
「え?」
友近の反論が意外だったのだろうか、今度は春希の方が口をつぐむ。
「友達じゃない“赤の他人”から借りた金を返さないなんてできるか。
俺の方にどんな理由があろうとも、そんな他人からの施しをためらいなく受け取れるほど俺は傲慢じゃない」
「友近……」
「春希。お前は俺を友達じゃない、って言ったな」
「……ああ」
「なら、そういうことだ。
お前が受取ろうが受け取るまいが、俺はお前から借りた分は必ず返す。
お前が俺を友達だって言うなら“友情”として理由はつくだろうがな。
俺はそれでもダメだって思ってるのに、友達じゃないやつから借りた金をそのままにしたくない。
俺にだってプライドはある。お前に比べれば陳腐なもんかもしれないけどな」
一気に捲し立てる友近に、春希は俯きながら深く溜息を吐いた。
「……好きにしろ」
「ああ。そうさせてもらうぜ」
ここでようやく友近は表情を崩し、グラスを煽った。
「春希」
「……何だよ」
「……ありがとな」
「何だよ急に」
「お前が俺をどう思ってるか分かってる。それでも俺の気持ちは変わらない。
だから言いたかった」
「訳分からん。こんな俺に何で礼なんか」
「お前がいなかったら、今の俺は決していなかった。
お袋のことも、俺のことも、お前がいなかったらって思うと本当に感謝してるんだ」
「いいだろ別に。俺は俺がしたいようにやっただけだ」
「だからこそ、だよ。本当のお節介でここまで親身になれる奴なんて、俺の知る限りお前だけだ」
「友近……」
「……だからなのかな?そんな風に誰にでも自分の事のように行動できる奴だから、小木曽もお前を」
「やめろ」
「……っと、悪い。余計なこと言っちまったな」
「……ふん」
「まあ、俺が言いたいのは、お前が俺をどう思っていても、俺はお前には感謝しきれないくらい感謝してるし、俺はお前を親友だと思ってるってことだ」
「……」
「本当に、ありがとな、春希」
友近は新たに注文し、しばらくして二人分のジョッキが届く。
「じゃあ、改めて飲むか」
「……友近」
「何だ?」
少し考え込むようにしてから、春希は顔を上げた。
「……」
「……春希?」
「……母親のこと、大事にしろよ」
「ああ、分かってる。ありがとな」
……俺の分まで、な。
その言葉を飲み込んで、春希は友近のジョッキに乾杯した。
「……頼む」
「……本当なのか?」
グッディーズ南末次店。
梅雨明けしたばかりの晴天に似合わない表情の青年二人がテーブルに差向いに座っている。
「……分かってる。俺がお前にこんなこと頼めた義理じゃないのは」
「……ああ。本当だな」
テーブルに手を突いて頼み込んでいるのは、峰城大政経学部四年、友近浩樹。
その向かいで難しそうな表情で腕を組んでいるのは、峰城大文学部四年、北原春希。
「でも、お前しか頼める奴がいないんだ。頼むよ」
「……お前の母親、また具合悪くなったのは、本当なんだな?」
「ああ。去年ほどじゃないんだけどな。入院の必要はないんだけど、週に一度は通院しなくちゃいけないんだ」
「その費用が掛かるって訳か」
「ああ。額自体はさほどじゃないんだけど、すぐに用立てなくちゃいけなくてな」
「あれ〜?どうしたの二人とも?ずいぶんご無沙汰だったけど」
そんな二人に遠慮なく声を掛けたのは、グッディーズのホールチーフの中川和美。
「あれ?中川さんまだここでバイト?短大卒業したんじゃ?」
「そうなんだけど、この就職難でなかなか行先決まらなくて」
「そんなのんびりしたこと言ってると佐藤みたいになるぞ」
「うわ、それ言わないで北原さん。少し自覚あるだけに心に刺さるから」
「もうチーフ。お客様の邪魔しちゃだめですよ」
そこに、さらに同じくバイトの杉浦小春も加わった。ちょうどお昼のピークを過ぎた頃なのでスタッフも多少の暇を持て余しているのだろう。
「でもさ、北原さんも友近さんもホントにご無沙汰なんだもん。もっとここの経営に協力してもいいと思わない?」
「でも北原先輩ならこの間も来たじゃないですか」
「ああ、そうだったっけ?あ、そうそう。そん時彼女連れてきてたんだっけ北原さん」
「そうですよ。その時夏休みに旅行に行く計画を」
「杉浦」
お客そっちのけで始まった看板ウェイトレス二人の会話に、唐突に春希が割り込んだ。
春希のくぐもった声に、小春は思わず黙り込んでしまう。
「お客様のプライベートに口を挟むなって教えたはずだぞ」
「あ、で、でも」
「……」
春希が無言で小春を見上げる。しかも少し眉を吊り上げている。
普段の春希からは見られない表情に、さしもの小春も口をつぐむしかなかった。
女性二人はそのままそそくさと席を離れ、奥へと引っ込んでいった。
「春希、今の話」
「お前には関係ない。今はお前の話だろ」
「チーフ、北原先輩と一緒にいた人」
「ああ、友近さん?あの人も前ここでバイトしてたの。
っていうか、北原さんが連れてきたの。お金に困ってたらしくて、前の店長にねじ込んだのよ」
「友達なんでしょうか?」
「そうじゃない?バイトしてた頃はそれなりに仲良かったし」
「……そうですか?今の雰囲気見る限りそうは見えませんでしたよ」
「そう?まあわたしも詳しくは知らないんだけどね。
でも確かにさっきの北原さん、いつもに比べてずいぶん怖かったもんね」
「そうですね。この間小木曽先輩と一緒だった時とは別人でした」
「小木曽さんっていうんだ?北原さんの彼女」
「え?あ、はい」
「なになに?小春っち、その人知ってるの?」
いつの間にか、二人の話題は友近から雪菜に移っていた。
まあ、年頃の女性二人、男同士の友情より色恋沙汰の方が話が沸く。
「まあ、知っているというか、わたしの付属の頃の同級生のお姉さんなんです」
「でも可愛かったよね。ウチでも絶対即戦力になるくらい」
「まあ、仕事ができるかどうかは別ですけど、確かに美人ですよね」
「でもさぁ、今まで数々の女の子たちを振ってきた女泣かせの北原さんに、ついに彼女がねぇ」
「でも、小木曽先輩だと何だか納得しちゃうんですよね。釈然としませんけど」
「谷っちも小春っちの友達も、あの娘が相手じゃ敵わなかったか」
「でも先輩たち、今の様子だとずいぶん切羽詰まった感じでしたよね」
「どうしたのかな?あ、ひょっとしてその北原さんの彼女に友近さんが手を出したとか?」
「そんな。まあ仮にそうだとしても小木曽先輩が北原先輩以外の人に、ということが想像つかないんですよね」
「う〜ん、でもホントどうしたんだろうね?」
結局、二人の話題は先に行きつくことはなかった。
春希の表情から、友近が無理を頼み込んでいることは想像がつく。
でも、それが何かに辿り着かない。
しかしそれも無理もないことだった。
どんなにこの場で二人が考えたとしても。
雪菜を知らない和美が。友近を知らない小春が。
春希達の間に何があったか、その真相に辿り着くことはないのだから。
……一ヶ月後。
「……お疲れ」
「……お互いにな」
八月も半ばに差し掛かろうとしていたある週末、二人はとある居酒屋で酒を酌み交わしていた。
「しかし、この一月の間はずいぶん疲れたな」
「仕方ないだろ。この短期間で必要額貯めるにはやっぱガテン系しかないからな」
二人はこの一月、土方のバイトで友近の母親の通院費を稼いでいた。
稼ぎがいいのと即日で給金が手に入る、この二つを満たすのに手っ取り早いのはやはり肉体労働という訳である。
前期試験の途中から週末、試験終了後はほぼ毎日入り、通院費用を二人で貯め込んだ。
慣れない勤労で筋肉痛に苛まれながらも、何とか一月でそれなりの額を稼ぎ、そして今日、こうして労いの杯を交わしている、という訳である。
「……本当にすまないな春希。お前も休みの予定があっただろ?」
「気にするな。何とか出発には間に合ったんだ」
「そうか。いつだ?」
「明日の夜。夜行バスでな」
「どこ行くんだ?」
「京都」
「北海道でも、沖縄でもないのか?」
中高の修学旅行でもあるまいし。
そんな感情が言葉の端に引っ掛かっているのが友近自身も自覚してはいたが、それにしても京都とは。
「いや、付属の頃の友達があっちの大学に行っててな。
この間電話したら卒業・就職前にせめて一度会いたいって話になって。向こうの方色々案内してくれるってことで」
「そうか。良かったな」
春希のグラスにビールを注ぎ、友近は表情を綻ばせる。
「で、他には誰と」
「……別に、誰とでもいいだろ」
「まあ、話の中身で付属の頃の奴らと一緒ってことは分かるからいいけどな」
「……」
やはり“誰”に関して春希は決して口に出さない。友近の方もそれ以上の詮索をするつもりはなかった。
「それはそうと春希。今回のバイト代だけどな」
「この前も言っただろ?お前の好きに使え。返さなくてもいいから」
「そうはいかない。俺はお前に」
「……友近」
春希の声のトーンが明らかに低くなる。友近も口をつぐんだ。
「去年も言ったよな。俺はお前を二度と許さないと」
「ああ、聞いたよ」
「俺たちはもう友達じゃない、とも」
「ああ」
「だからお前が俺に義理立てする必要は」
「だったら、尚更だろ?」
「え?」
友近の反論が意外だったのだろうか、今度は春希の方が口をつぐむ。
「友達じゃない“赤の他人”から借りた金を返さないなんてできるか。
俺の方にどんな理由があろうとも、そんな他人からの施しをためらいなく受け取れるほど俺は傲慢じゃない」
「友近……」
「春希。お前は俺を友達じゃない、って言ったな」
「……ああ」
「なら、そういうことだ。
お前が受取ろうが受け取るまいが、俺はお前から借りた分は必ず返す。
お前が俺を友達だって言うなら“友情”として理由はつくだろうがな。
俺はそれでもダメだって思ってるのに、友達じゃないやつから借りた金をそのままにしたくない。
俺にだってプライドはある。お前に比べれば陳腐なもんかもしれないけどな」
一気に捲し立てる友近に、春希は俯きながら深く溜息を吐いた。
「……好きにしろ」
「ああ。そうさせてもらうぜ」
ここでようやく友近は表情を崩し、グラスを煽った。
「春希」
「……何だよ」
「……ありがとな」
「何だよ急に」
「お前が俺をどう思ってるか分かってる。それでも俺の気持ちは変わらない。
だから言いたかった」
「訳分からん。こんな俺に何で礼なんか」
「お前がいなかったら、今の俺は決していなかった。
お袋のことも、俺のことも、お前がいなかったらって思うと本当に感謝してるんだ」
「いいだろ別に。俺は俺がしたいようにやっただけだ」
「だからこそ、だよ。本当のお節介でここまで親身になれる奴なんて、俺の知る限りお前だけだ」
「友近……」
「……だからなのかな?そんな風に誰にでも自分の事のように行動できる奴だから、小木曽もお前を」
「やめろ」
「……っと、悪い。余計なこと言っちまったな」
「……ふん」
「まあ、俺が言いたいのは、お前が俺をどう思っていても、俺はお前には感謝しきれないくらい感謝してるし、俺はお前を親友だと思ってるってことだ」
「……」
「本当に、ありがとな、春希」
友近は新たに注文し、しばらくして二人分のジョッキが届く。
「じゃあ、改めて飲むか」
「……友近」
「何だ?」
少し考え込むようにしてから、春希は顔を上げた。
「……」
「……春希?」
「……母親のこと、大事にしろよ」
「ああ、分かってる。ありがとな」
……俺の分まで、な。
その言葉を飲み込んで、春希は友近のジョッキに乾杯した。
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わるくないっす!
少し、ハードボイルド調な?春樹君。
お疲れ様です