「…で、今日がどういう日かわかってるのか?」
「うん? 別に、いつもと変わらない普通の日だよ」
「嘘ばっかり…それともあたしに言わせたいとか
 相変わらず意地の悪いこと、考えてるんじゃないだろうな」
「ああー、それいい案だね! じゃぁかずさに言って欲しいなぁ」
「『じゃぁ』ってなんだ『じゃぁ』って。…はぁ、やっぱりあたし、お前が苦手だ」
「そう? わたしは好きだよ、かずさのこと」
「ぐ…っ」
「ふふふぅ」
「なんだよ、その含み笑いは」
「べーつにー? で、今日ってどういう日なんだっけ?」
「……ったく、春希の苦労がほんのちょっぴりだけわかった気がしたよ」
「春希くんは今はここにいないので不正解でーす」
「あのな、雪菜。お前まさか飲んでるのか?」
「ぶー、こんな昼間っから飲んでません! それで、答えは?」
「言うまで終わらないのかこれ…やれやれ、あたしを春希の代わりにしやがって。
 ……今日は2月14日、お前の誕生日だろお姫様」
「ぴんぽんぴんぽーん! かずさ正解だよ、よくわかったね?」
「あほくさ……」

「で、その誕生日にどうしてお前はあたしなんかと2人っきりでいるんだ?」
「えーっと…春希くんが急な出張で暇を持て余してたところかずさが捕まったから、かな?」
「間違ってないがもうちょっと言い方は無いのか」
「生涯の大親友なら、わたしたちの間にオブラートなんていらないよね?」
「…はぁ。だいたい部長や水沢や…柳原、だったよな。ほかにもいるだろうが」
「残念ながら日本人のだいたいの人は平日の昼間なんて時間は仕事してるの
 だからかずさなら暇かなー、って」
「前後に脈絡がないし、多方面に失礼な言い方じゃないか? …特にあたしに対して」
「いまさらそんなこと気にする柄じゃないでしょ?」
「お前…前からそういうところあったけど、ますます面の皮が厚くなったな」
「成長したって言って」
「これのどこが…」
「春希くんを捕まえているには、こんな女になるしかなかったんだよ」
「……」
「ほんと、なんであんな嘘つきで最低な男のこと、好きになっちゃったんだろうなぁ〜」
「……ふふ。そうだな、本当に。あたしも、なんであんなヤツ」
「うふふっ」
「ははっ」

「さて、と」
「ええ〜、もう行っちゃうの?」
「生憎あたしも根っからの暇人ってわけじゃないんでな。そろそろ恋人の下に戻らないと」
「ピアノ?」
「…少しは人間の男の可能性を考えてもいいんじゃないか? …いや、今のは無し。
 それに、あたしがタイマンで雪菜のお祝いなんて、まだちょっと気恥ずかしいというか、な…」
「かずさ…」
「お前は、周囲の誰からも愛されてる。あたしとは違う」
「それは、でも…」
「わかってる。あたしにだって母さんがいるし、師匠もいる。美代ちゃんも
 色々とよくしてくれてるし…」
「春希くんは……」
「ふん。あいつは除外だ除外。ともかく、あたしにだってあたしを愛してくれる人がいる。
 それに気付かせてくれたのは雪菜、お前だ。…………ありがとう」
「かず、さ……ぁ」
「ああ、もう泣くんじゃない、お前の涙だけは勘弁してくれ」
「…そういうこと、不意打ちで言うからさぁ…っ」
「お前には、感謝してる。本当に、心から。だから春希を任せられる」
「かずさ…」
「やっぱりお前とサシじゃ調子狂うよ」
「いいじゃない、だってわたしたち、生涯の…」
「大親友、なんだろ?」
「そうだよ! ねぇ、かずさ。この数年。空白になってるわたしたちのアルバム。少しずつでも埋めて行こうよ」
「……そう、だな。それも悪くない、か」
「うん!」
「仕方ない、今日という雪菜のための日くらい、彼氏は放っておいてもいいだろ。
 一日お前に付き合ってやるよ、雪菜」
「ありがとう、かずさ!」
「ああ、それと言い忘れてたんだけど」
「うん?」
「……誕生日おめでとう、雪菜」

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2019誕生日!

3
Posted by 名無し(ID:c2cBJj/AQg) 2019年02月21日(木) 16:33:13 返信

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