最終更新:ID:XiNH5Yvt8g 2014年05月28日(水) 01:45:53履歴
「雪菜と冬馬へ。放課後、第二音楽室に来てください」
卒業まで後1週間を切った2008年2月22日金曜日。
非常に中途半端な時期に俺は雪菜と冬馬をメールで呼び出した。
メールを送った時、教室の隣席に冬馬がいたのだが、怪訝な顔をしているのが気配で分かった。
しかし、俺は敢えて何も反応はしなかった。
この時期、卒業を控えた3年生にとって授業らしい授業もほとんどなく、昼過ぎには放課後となる。
本来ならば、青空が見えるはずの時間帯だが、生憎とこの日は灰色の雲から降る雪しか見えなかった。
それが、俺にはちょうど良いと思えた。
夢の中では、常に大事な出来事は雪の日に起きていた。
これから俺がしようとしていることを考えると、雪の日こそが相応しいと思っている。
その日、帰宅時刻となると、俺は速やかに教室を飛び出し、第二音楽室に向かった。
おそらく、冬馬はその行動をポカンとして見ていたのかもしれない。
なお、戸締りについては、体調不良ということにして他のクラスメイトにお願いしてある。
第二音楽室に着くと、まだ誰もいなかった。
おそらく、数分の内に、雪菜と冬馬がやってくる。
辺りを見渡し、一人でいる間に、この数ヶ月で起こった出来事を思い出していた。
雪菜と出会い、冬馬と本当の意味で出会い、三人で練習し、二人の色々な魅力溢れるところを知って、三人での絆を深め、ステージに立ち、三人の関係は変わらないと信じながらも、テスト勉強したこと、冬馬の卒業が確定したことを三人で喜び合んだこと、旅行に行って三人ではしゃいだこと、練習する冬馬を雪菜と一緒にサポートしたこと、その冬馬が音大の推薦を手にでき三人で喜び合ったこと、雪菜の誕生日を三人で祝ったこと、たった数ヶ月だが非常に濃密な出来事があった。
まるで走馬灯の様に、俺の頭をよぎっていく。
そして、
三人の今の奇跡の様な環境を
俺は
今から
壊す
…………
……
…
第二音楽室の扉が開く。
雪菜「あれ?春希くん、先に来てたんだ」
かずさ「用があるなら教室で言えば良いのに呼び出しやがって。一体何の用だ?」
途中で合流したのだろう、雪菜と冬馬が二人で入ってきた。
春希「ああ、突然の呼び出しでごめん。もしかして用事があった?」
雪菜「ううん、別に無いよ」
かずさ「あたしも無いけど…。何だよ、北原、新しい詩でも考えたのか?」
新しい詩か…。そんな内容だったらどんなに良いか…
雪菜「え?本当?確かに、最近色々と忙しくて軽音楽同好会としての活動をしてなかったもんね。新曲で大学デビューしちゃう?」
この楽しい雑談もこれで最後かと思うと止めることが名残惜しくなってきたけど、でもやるって決めたんだ…。
春希「いや、作詞をしたとかの話じゃないんだ」
かずさ「なんだよ、音楽室に呼び出すから、新曲に関係した何かかと思ったぞ」
ここで、俺は一息つき、真剣に二人を見つめて言った。
春希「話があるんだ。どうしても言わなくちゃならない、大事な…」
かずさ「?音楽室に関係した話か?」
春希「ある意味関係しているな」
だって、この音楽室から三人が集まって、俺たちが始まったんだから
雪菜「よく分からないんだけど、音楽室に関係した話なの?」
春希「ああ。前にも言ったかもしれないけど、俺たち三人ってさ、この第二音楽室から始まっただろ?俺がギターを弾いて、冬馬がピアノを合わせて弾いてくれて、雪菜が合わせて歌ってくれてさ。そこから二人が軽音楽同好会に入ってくれただろ。だから、この第二音楽室こそが始まりの場所だと思うんだ」
かずさ「?まぁ、そうとも言えるかな…?」
雪菜「…」
そう、最後ぐらいは自分の本音をぶちまけよう。誠実を貫き通そう。
春希「この数ヶ月、本当に楽しかった。今までの俺の人生って特に何も目的も無くぼんやりと生きてきただけだったけどさ、この数ヶ月は色々な目的があって、それにひたすらがんばってさ、生きてる充実感ってのが感じられた」
かずさ「え?」
雪菜「春希くん?」
春希「俺の人生においてさ、こんなにも幸せな充実感を感じたことは無かったんだ。でもさ、そんな充実感を得ることができたのって、やっぱりこの三人だったからだと思うんだ。他の誰でも無い、雪菜と冬馬だからこそ、俺も幸せだったんだと思う」
そうなんだ。本当に俺は幸せだったんだ。だから…
春希「だからこそ、俺は二人に伝えなきゃいけないことがある」
と、俺はここで、雪菜に視線を向け名前を呼ぶ。
春希「雪菜」
雪菜「は、はい…」
雪菜は、心なしか少し緊張している様に見えた。
次は、冬馬に視線を向け名前を呼ぶ。
春希「"かずさ"」
かずさ「っ!!!」
俺は、この時、初めてかずさのことを名前で呼んだ。
名前で呼ばれたかずさは、少なからず動揺している様にも見えた。
二人を正面に捕らえ、俺は決定的な一言を放った。
春希「二人とも、好きだ!」
雪菜・かずさ「「っ!!!」」
春希「二人とも、大好きだ!」
もう、俺の方が限界だった。
このままでは目から涙が溢れることが分かった。
俺は、正面の二人に歩み寄り、全く動けないでいる二人を同時に抱きしめた。
春希「愛してる」
俺の目からとうとう涙が出始めた。
春希「離れたくない」
二人の耳元で囁いているため、二人がどんな顔をしているのかも分からないが、俺の告白は続く。
春希「だから…」
覚悟を作り直した。
春希「だから、二人とも、俺のものになってくれ」
卒業まで後1週間を切った2008年2月22日金曜日。
非常に中途半端な時期に俺は雪菜と冬馬をメールで呼び出した。
メールを送った時、教室の隣席に冬馬がいたのだが、怪訝な顔をしているのが気配で分かった。
しかし、俺は敢えて何も反応はしなかった。
この時期、卒業を控えた3年生にとって授業らしい授業もほとんどなく、昼過ぎには放課後となる。
本来ならば、青空が見えるはずの時間帯だが、生憎とこの日は灰色の雲から降る雪しか見えなかった。
それが、俺にはちょうど良いと思えた。
夢の中では、常に大事な出来事は雪の日に起きていた。
これから俺がしようとしていることを考えると、雪の日こそが相応しいと思っている。
その日、帰宅時刻となると、俺は速やかに教室を飛び出し、第二音楽室に向かった。
おそらく、冬馬はその行動をポカンとして見ていたのかもしれない。
なお、戸締りについては、体調不良ということにして他のクラスメイトにお願いしてある。
第二音楽室に着くと、まだ誰もいなかった。
おそらく、数分の内に、雪菜と冬馬がやってくる。
辺りを見渡し、一人でいる間に、この数ヶ月で起こった出来事を思い出していた。
雪菜と出会い、冬馬と本当の意味で出会い、三人で練習し、二人の色々な魅力溢れるところを知って、三人での絆を深め、ステージに立ち、三人の関係は変わらないと信じながらも、テスト勉強したこと、冬馬の卒業が確定したことを三人で喜び合んだこと、旅行に行って三人ではしゃいだこと、練習する冬馬を雪菜と一緒にサポートしたこと、その冬馬が音大の推薦を手にでき三人で喜び合ったこと、雪菜の誕生日を三人で祝ったこと、たった数ヶ月だが非常に濃密な出来事があった。
まるで走馬灯の様に、俺の頭をよぎっていく。
そして、
三人の今の奇跡の様な環境を
俺は
今から
壊す
…………
……
…
第二音楽室の扉が開く。
雪菜「あれ?春希くん、先に来てたんだ」
かずさ「用があるなら教室で言えば良いのに呼び出しやがって。一体何の用だ?」
途中で合流したのだろう、雪菜と冬馬が二人で入ってきた。
春希「ああ、突然の呼び出しでごめん。もしかして用事があった?」
雪菜「ううん、別に無いよ」
かずさ「あたしも無いけど…。何だよ、北原、新しい詩でも考えたのか?」
新しい詩か…。そんな内容だったらどんなに良いか…
雪菜「え?本当?確かに、最近色々と忙しくて軽音楽同好会としての活動をしてなかったもんね。新曲で大学デビューしちゃう?」
この楽しい雑談もこれで最後かと思うと止めることが名残惜しくなってきたけど、でもやるって決めたんだ…。
春希「いや、作詞をしたとかの話じゃないんだ」
かずさ「なんだよ、音楽室に呼び出すから、新曲に関係した何かかと思ったぞ」
ここで、俺は一息つき、真剣に二人を見つめて言った。
春希「話があるんだ。どうしても言わなくちゃならない、大事な…」
かずさ「?音楽室に関係した話か?」
春希「ある意味関係しているな」
だって、この音楽室から三人が集まって、俺たちが始まったんだから
雪菜「よく分からないんだけど、音楽室に関係した話なの?」
春希「ああ。前にも言ったかもしれないけど、俺たち三人ってさ、この第二音楽室から始まっただろ?俺がギターを弾いて、冬馬がピアノを合わせて弾いてくれて、雪菜が合わせて歌ってくれてさ。そこから二人が軽音楽同好会に入ってくれただろ。だから、この第二音楽室こそが始まりの場所だと思うんだ」
かずさ「?まぁ、そうとも言えるかな…?」
雪菜「…」
そう、最後ぐらいは自分の本音をぶちまけよう。誠実を貫き通そう。
春希「この数ヶ月、本当に楽しかった。今までの俺の人生って特に何も目的も無くぼんやりと生きてきただけだったけどさ、この数ヶ月は色々な目的があって、それにひたすらがんばってさ、生きてる充実感ってのが感じられた」
かずさ「え?」
雪菜「春希くん?」
春希「俺の人生においてさ、こんなにも幸せな充実感を感じたことは無かったんだ。でもさ、そんな充実感を得ることができたのって、やっぱりこの三人だったからだと思うんだ。他の誰でも無い、雪菜と冬馬だからこそ、俺も幸せだったんだと思う」
そうなんだ。本当に俺は幸せだったんだ。だから…
春希「だからこそ、俺は二人に伝えなきゃいけないことがある」
と、俺はここで、雪菜に視線を向け名前を呼ぶ。
春希「雪菜」
雪菜「は、はい…」
雪菜は、心なしか少し緊張している様に見えた。
次は、冬馬に視線を向け名前を呼ぶ。
春希「"かずさ"」
かずさ「っ!!!」
俺は、この時、初めてかずさのことを名前で呼んだ。
名前で呼ばれたかずさは、少なからず動揺している様にも見えた。
二人を正面に捕らえ、俺は決定的な一言を放った。
春希「二人とも、好きだ!」
雪菜・かずさ「「っ!!!」」
春希「二人とも、大好きだ!」
もう、俺の方が限界だった。
このままでは目から涙が溢れることが分かった。
俺は、正面の二人に歩み寄り、全く動けないでいる二人を同時に抱きしめた。
春希「愛してる」
俺の目からとうとう涙が出始めた。
春希「離れたくない」
二人の耳元で囁いているため、二人がどんな顔をしているのかも分からないが、俺の告白は続く。
春希「だから…」
覚悟を作り直した。
春希「だから、二人とも、俺のものになってくれ」
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このページへのコメント
まじっすか!!!
ちょっと、この、、、if、、、は、思いつかなかった。
おまえ!おとこだっ!
凄いです。この台詞を口に出来た男は、それだけで幸せだと思います。ちょっとシビレました。