それからのことを少し話そう。
卒業から2年が過ぎた。
これで2度目のWhite Albumの季節が終わった頃だった。

2010年5月

先に言っておくと、まず、俺たち三人の関係は信じられないことに良好だった。
三人で遊びに行ったりもするし、旅行にも行く。
三人で情事に至ることも…その…ちょくちょくある。
三人でだとあまりに異常なので、どちらかのみと情事に至ることもあるが、雪菜もかずさもお互いに隠していないので、三人の関係に影響を与える様なことも無い。
というか、二人で情報共有して俺の弱いところを研究するのはやめてくれませんかねぇ…。
ちなみに、大学一年と二年のときのクリスマスは、例の温泉に行き、軽音楽同好会の同窓会の第一回第二回を開いた。
なお、今年のクリスマスは、別のところに行ってはどうかと現在提案中である。
そして、恋人としての関係だけではなく、軽音楽同好会としての活動も一年の一度のペースで行っている。
2回目の学園祭を大成功に納めた。
雪菜もかずさも学園祭に出ようという話になると、自分のことを想った新曲の作詞を迫ってくる。
何だか、企業が一定期間毎に業績を振り返るサイクルに似ているとぼんやり思うも、作詞の作業そのものは実を言うとそんなに大変じゃない。
雪菜もかずさも一緒にいればいるほど新たな魅力を俺に見せてくれる。
そんな魅力と、その魅力をどの様に俺が感じたかを文章にする。
ただ、俺が行ったことはそれだけだったが、不思議なことに雪菜はともかく、専門家であるかずさは一度も俺の作った詞に対して修正を迫ったりしなかった。
ちなみに、学園祭で有名になった俺たち三人ではあるが、三人の関係を知っているのはほとんど居ない。
よく隠すことができているなと自分でも思うのだが、正確には暴露する暇が無いといった方が正しいかもしれない。
というのも、三人とも、やることが色々と忙しすぎて、プライベートで付き合う人間関係があまり無いためである。


では、一人一人について、どういったことで忙しいかも含めて話そう。

まずは、俺、北原春希について。
今の俺の目的は唯一つ「三人で幸せになること」である。
結局、俺たち三人は、卒業の後も友人として恋人としてあり続けた。
雪菜もかずさも俺が壊したままだった。
確かに、大学に入った初期の頃は、二人が冷静になって俺のことを嫌いになって人として正しい道に戻ってくれるかも…と淡い期待があったのかもしれない。
でも、今の俺に迷いは全くない。
俺が壊した二人を"壊したまま"幸せにしてみせると覚悟を決めている。
いや、決めているというよりは、2年の間で徐々に覚悟が固まったというべきだろうか。

雪菜とかずさを幸せにするために、必要なものは何かと考えたとき、まずは「能力」だと思った。
二人の女性を養う必要があるため、社会人としての事務能力、営業能力から金儲けの能力までが必要だと思った。
そのために、様々なバイトや経験を現在進行形で体験している。
ファミレスのバイトから、塾講師、雑誌編集、ベンチャービジネスの立ち上げの手伝い、某新鋭ピアニストのマネジメント、株や為替による資金運用etcと本職は本当に学生か?と自分でも疑いたくなる様な経験をしていた。
おかげで、社会人としての基礎的な能力には自信がある上に、学生としては十分な財産を貯めることをできた。
まぁ、財産の方はかずさから見れば、大したことは無いかもしれないのだが…。

次に、必要なものは社会的地位を確立する手段であると考えた。
重婚は現在の日本では犯罪である。
ならば、三人で一緒にいるにはどうすれば良いのか?
一番手っ取り早い方法が一夫多妻制の国に移住することだが、それは最後の手段とした。
まずは、日本で三人で生活したい。
実現する手段について見当が付かなかったが、過去に同じ悩みを持った人がどういった解決方法を取ったのかを調べた。
いわゆる、過去事例の調査である。
すると、意外にもこういった関係でも幸せになっている人が今の日本には居る事が分かったので、直接会いに行った。
俺が見聞きできた範囲では理想的な幸せな家庭を築いていると感じた。
これは俺が求めている幸せが過去に類似例があることを意味し、非常に頼もしく感じた。
具体的な方法だが、
・どちらかと結婚し、どちらかを養子にする
・どちらも養子にする
の2通りの方法だ。
どちらにしても世間に対して肩身が狭いかもしれないが、こればかりはしょうがないと思っている。

そんなこんなで自分の欲望と夢のために、切磋琢磨している。


…………
……


次に、かずさだ。
如月音楽大学に進学し、ピアノの腕を磨いている。
何でも、かずさを直接指導している先生が曜子さんの昔のライバルだそうだ。
本人もその先生が気に入っている様で、指導には素直に従っているらしい。
やはり、今でも1日10時間のレッスンを守っている。
ただし、俺たちが絡むと、10時間のレッスン時間を確保できない日もあるので、それは申し訳ない。
が、そんなに悪い訳ではないらしく、一度かずさの師匠から言われたことがある。
「別にピアノだけをやっていれば良い訳じゃないの。技術はレッスンで磨くことができる。でもね、同じくらい"心"も大切なの。今のかずさの心にはいつも色々な感情が溢れているわ。それはレッスンだけじゃ得られないもの。溢れる感情がピアノに現れるから演奏の幅も広がるの。…あなたたちが、あの子の心に感情を宿しているんじゃないのかしら?」
そう言ってもらえたことは俺にも雪菜にとっても嬉しいことだった。
かずさ本人はふてくされていたが…。

また、最近では新鋭のピアニストとしても活躍を開始している。
このため、マネジメントを行う人が必要で、最初は俺が担当していたが、最近は雪菜が主に担当している。
まだ回数は少ないが、俺と雪菜も巻き込んで海外に行って国際コンクールに参加したこともある。
そうそう。つい先日、ヨーロッパの大きなコンクールで準優勝を果たした。
もちろん、俺と雪菜は本人に抱きつく勢いで喜んだが、本人は優勝じゃなかったことに不満があるみたいで、すぐに師匠と今後のレッスン方針について協議を行っていた。

そんなこんなでピアニストとして大成するための修行中といったところだ。



…………
……



次は、雪菜だ。
雪菜は、学生兼かずさのマネージャーとしてがんばっている。
大学の授業が終わると、よく如月音楽大学に飛んでいく。
たまに、俺への愛情よりかずさへの愛情の方が強いだろ…と突っ込みたくなるほどだ。
本来ならば、俺がかずさのマネージャーを全面的に担当したいところなのだが、雪菜本人の希望、俺も他にやっておきたいことがあること、かずさもまんざらでも無いことから、雪菜がマネージャーとしてがんばっている。
特に、俺とは違い、ファッションのセンスや音楽のセンスを発揮している様だった。
学生のかずさに対してマネージャーなんて必要なのか?との疑問があるかもしれないが、かずさ本人と師匠の希望らしくコンクールの予定をかなりの頻度で入れているため、色々と雑務が増えている。
そのため、雪菜のマネージャー能力は必要不可欠となっていた。
時々、大変そうだと思った場合には、俺も手伝うが。
また、かずさが海外のコンクールに参加したことから、最近では英語やドイツ語を本気で勉強し始めている。
大学で学ぶ単位を取得するための勉強ではなく、ビジネスで活用できる英語やドイツ語だ。
語学力については、元々相性が良かったのかどんどん成長していることが分かる。
そういえば付属時代、英語だけは雪菜に勝てなかったな…。

そんなこんなで、大好きな人のために切磋琢磨している。


…………
……


そうだった。
俺たち三人の関係に少し影響を与えることが最近あった。
かずさが、曜子さんに大学卒業後はウィーンに来ないか?と誘われたのだった。
この誘いを打ち明けたかずさに対して、俺と雪菜は、かずさの気持ちを優先するべきだと答えた。
かずさがウィーンに行くなら、俺と雪菜はかずさのマネージャーとして一緒に行く覚悟だと言った時の、かずさの顔は今でも忘れられない。
最終的な判断は、かずさに委ねるとして、俺のやるべきことが増えたことが間違いなかった。
まず、ドイツ語と英語の本格的な勉強、そしてウィーンの法律の勉強である。
大変だが、俺たち三人のためにもやるしかない。


…………
……



俺たち三人以外についても語ろう。
まずは武也だ。
正直言って、武也は変わっていない。
依緒が好きな癖に他の女の子に手を出している様も付属時代のそれである。
ただ、俺たち三人に対して変わらず接してくれることは非常にありがたい。
だが、武也と二人きりになった際に、三人の関係について言われることはある。
それも1年が過ぎた辺りからどこか諦めている様にも見えてる。
最近では、慣れてしまっているのか、依緒を含めた5人でいる時に俺たち三人の関係をネタにすることもある。
何と言うか、三人の関係を認めてはいないけど、拒絶もしないといったスタンスらしい。


依緒も相変わらずだ。
武也との関係も付属時代のそれと変化無しだ。
俺たち三人の関係については、特に何かを言われた記憶は無い。
だが、大学に入学した初期の頃には、何となく俺に対する依緒の態度が冷たいものになっていたことは覚えている。
おそらく、三人の関係について知った直後だったのだろう。
女性である依緒から見れば俺のことを友人としても受け入れがたいのは当然だ。
それでも俺と縁を切ろうとまではしなかったことには感謝している。
そんな依緒だったが、結局、半年ほどで徐々に軟化していった。
おそらく、5人で集まった時に、俺たち三人が余りに普通だったことも依緒の毒気を抜く切欠となったかもしれない。

武也と依緒については、そんなところだ。
ちなみに、たまにだが、5人で遊ぶこともある。
3月には、5人でスキー旅行にも行った。
多分、武也と依緒としては俺たち三人を見極めておきたいと思ったのだろうが、別に普段と変わらないぞ。


…………
……




そうそう、曜子さんだ。
曜子さんは、一年に何回かは日本に帰ってきている。
ちなみに、長年培った観察眼は伊達ではないらしく、大学1年の夏に再びお会いしたが、俺とかずさと雪菜の関係についてはすぐにバレた。
ただ、のっけから否定はされなかったことは有難かった。
三人で曜子さんに会った後、一対一で話す機会があったのだが、こんなやり取りをした。

曜子「ギター君、あなた、ハーレムでも築くつもりなの?」
春希「いいえ、俺が欲しいのは、かずさと雪菜の二人だけです」
この人相手に誤魔化しは通じない。直球で返すしかない。
曜子「開き直ってるわね…。この間見た時は、そんな子じゃなかったのに。半年で変わっちゃったわね」
春希「はい、申し訳ありません」
曜子「堂々とし過ぎよ」
春希「ここで刺されても文句は言いません。黙って受け入れます」
曜子「そんなことしたら、かずさはどうなるの?雪菜ちゃんもどうなるの?もっと自分を大切にしなさい」
春希「…ありがとうございます」
曜子「でもね、母親としてあなたたちの関係を簡単に認める訳にはいかないわ。今の関係は、学生の間は良いかもしれない。でも、これから社会人になって、結婚するとしたらどうするのかしら?あなた、うちの子を選ぶの?捨てるの?」
春希「俺が選ぶのは両方です」
曜子「一夫多妻の国にでも移住するのかしら?」
春希「それは最後の手段です。まずは、国内で社会的地位を確立することを目標にして、三人で過ごすことができる体制を構築できないか法律を勉強中です」
曜子「どんな手段があるのかしら?」
春希「今のところ、養子縁組の手段が一番現実的だと考えています」
曜子「…100歩譲って、一緒に過ごすことができても、子供が生まれたら、母親が二人いることになる家でちゃんと面倒見ることができるのかしら?子供には何て言うの?それに世間からどんな風に見られるのかしらね?」
春希「子供は全員、俺の子供として分け隔て無く育てます。戸籍上は孫かもしれませんが。子供の教育方針と、世間との付き合い方については、現在検討中です」
曜子「メッキが剥がれてきたわね。でも、もう一つ、忠告をしておいてあげる。かずさは今後、ピアニストとして活躍していくわ。そんな中で、あなたたちの関係は世間に知られたらどうなるのかしらね?私も結構派手な人生を歩んできたけど、あなたたち程、外れていなかったわ」
春希「それは想定しています。もし、かずさがピアニストとして活動できなくなっても、俺が養います。そのための能力を磨いています」
曜子「それはどんな能力かしら?言っておくけど、あなたたちの関係が世間に知られるということは、ギター君にも影響があるのよ。言い換えると、普通の会社員だった場合、どうなるか分かってる?」
春希「はい、一般的な組織には属せません。もし属しても一時的なものです。ですので、一人、もしくは少人数でもお金を稼ぐことができる能力を磨いています」
曜子「…そこまで考えてるのね…。全く…」
と、ここで曜子さんは大きく息を吸い、言葉を続けた。
曜子「あのね、これは冬馬曜子オフィスの社長として言うけど、ギター君も雪菜ちゃんも、うちのオフィスに欲しい人材なのよ。だから、余計にあなたの言うことが腹立たしいわ」
春希「え?」
曜子「あなたの、ううん、あなたたちの事務能力は非常に高いと思ってるわ。それに、かずさの信頼を得ている。だから、うちの事務所として絶対に欲しい人材よ。正直言って、来日する前はあなたたちの関係に不都合が無ければ、大学卒業後は正式にかずさのマネージャをやってみないかと言うつもりでもあった」
春希「そ、それは…」
それは、寧ろこちらからお願いしたい話です!と言いたかったのだが、曜子さんに止められてしまった。
曜子「でも、まさか三人がこんな関係になっているとは夢にも思って無かったわ。全くの想定外よ。だから、ギター君と雪菜ちゃんを冬馬曜子オフィスへ誘うことはできません」
春希「曜子さん…」
曜子「と、すぐに断言できれば楽なんだけど、今の状況で貴方たちから、かずさを引き剥がしたらどうなるか想像したくないわ。それぐらい、今のかずさは貴方たちに依存し切っている。あの子は、本質的には色情狂だけど、人として最低限の常識は兼ねていると思っていたわ。…ギター君、よくもうちの娘を壊してくれたわね」
その顔は、確かに恨みもこめられていたと思ったのだが、喜び、不安、色々な感情に溢れていたと俺には思えた。
春希「も、申し訳ありません!」
曜子「そんなに謝らなくてもいいわ。切欠は君なのだろうけど、かずさも考えての選択だったのでしょう?とにかく誰が悪いかの論点は置いておくとして、今のかずさを貴方たちから引き剥がしたらの話に戻りましょうか?もし、そんなことをすれば、かずさはどうなってしまうのか全く想像できないわ。下手をすれば、二度とピアノを弾かなくなるかもしれない。2度と恋もできない可能性もある。2度と友達を作ろうとしない可能性もある。そんな事態だけは流石に避けたいわ。それにね、もう一つ確実に言えることは、うちのオフィスに必要な人材を二人も逃すことなの。…全く、あなた、最低ね。2重の意味で人質を取るなんて」
春希「……かずさの幸せと、俺と雪菜という人材の面で…2重の人質ですか…。人質なんて…そんな…」
曜子「ごめんなさい。ただ、ちょっと貴方に恨み言を言いたかっただけよ。話を少し戻しましょうか?」
と、ここで曜子さんは俺を見つめ直した。
曜子「ギターくん」
春希「は、はい…!」
ここまで真剣な表情の曜子さんを見たのは初めてだった。
曜子「あなたがさっき言ったことをまとめると、かずさを壊したまま、幸せにしてくれるっていったのよね?雪菜ちゃんと一緒に」
春希「はい!」
曜子「もし、かずさがスキャンダルの所為でピアニストとしての道を断たれても幸せにするっていうのよね?」
春希「はい!」
曜子「……どんな夢物語よ……」
春希「そう言われても仕方が無いと思っています」
曜子「…でも、今はギター君の言ってることが単なる夢物語と決め付けることができないわ」
春希「そ…それって…」
曜子「だって、あなたたちには能力がある。時間がある。つまり、可能性がある。その可能性を全て、三人の幸せのために賭けたならどうなるか、私にも分からない。その結果、人として間違っていても、ピアニストとしての道を断たれても、かずさが幸せになれるのなら認めない訳にはいかない」
春希「み…認めて頂けるんですか?俺たちの関係を?」
曜子「娘が人として間違った道を歩もうとしているのを、簡単に認めるなんてできる訳ないじゃない…」
春希「す、すみませ…」
曜子「でも、反対もできる訳ないじゃない。娘が生まれてから今までで一番の幸せに浸っているのに」
春希「曜子さん…」
曜子「だから、私としては言えることは、ギター君が今後、少しでも頼りなくなったら、無理矢理にでもかずさを引き離すから覚悟しておいてねってことだけね」
春希「…はい」

…………
……



雪菜の家族については変わらずだ。
小木曽家には、たまにお邪魔することもあるが、俺と雪菜の関係にはついては誤魔化している。
こればっかりは心苦しいが、仕方ない。
が、多分、お母さん辺りは気付いているんじゃないかと思うことはある。
今は、俺たち三人の関係をいつ告白するか、それが悩みの種になっている。
もちろん、最初は認めてはくれないだろう。
でも、雪菜がこんなに素晴らしい家族と縁を切る事態になることだけは、極力避けたいと考えている。
最悪の場合、俺とかずさのことは認めなくても良いから、雪菜とは縁を切らないで下さいと土下座でも何でもする覚悟である。
今の俺にそんなことをお願いできる資格があるのかは甚だ疑問ではあるが…。
ただ、それだけにどのタイミングで告白するかが重要となってくる。
早いタイミングだと、かずさのマネジメントの仕事に影響が出る可能性がある。
遅いタイミングだと、かずさに付き合ってウィーンに行く場合、説得する時間が確保できない。
ベストなのは、大学4年になる前後くらいかな…と今は思っているが、これは逃げだな…。
この告白は、できちゃった結婚を報告するよりもタチが悪いと自覚している。
殴られるぐらいなら良いのだが刺されなきゃいいな…と不安を覚えることはある…。
そんな訳で小木曽家については、後ろめたさしかない。

…………
……



朝日がカーテンの隙間から俺を照らし、俺は目が覚めた。
ここは、南末次に俺が一人暮らしで住んでいるマンションだ。
大学入学直前から住み始めて、もう2年になる。
必要最低限のものしか置かない主義だったはずだが、最近では雪菜とかずさが色々と持ち込んでいるせいで、物が増えている。

一人暮らしの身としては、やや豪華な部屋だが、取り立てて変わった箇所は無い。
俺の両隣で寝ている二人の最愛の人以外は。

雪菜もかずさもいい寝顔だった。
先に起きて、朝食を用意したいところだが、もう少し二人の感触を全身で味わっていたい。
でも、今のうちに用意しておけば、今日一日の時間が有効に使える。
本能と理性が戦っている間に、雪菜もかずさも眠そうな顔で目を覚ました。

かずさ「ん…朝か…」

春希「おはよう、かずさ」

かずさ「ああ…おはよう…」

雪菜「ん〜〜。あ、春希くんにかずさだ〜」

春希「ああ、おはよう、雪菜」

雪菜「う〜ん、大好き〜」

かずさ「暖かくなっても朝に弱いな、雪菜は」

春希「だな」

雪菜「うーん」

と、俺の胸に頬をスリスリさせている雪菜の頭を撫でながら、俺はかずさに話しかけた。

春希「なぁ、かずさ」

かずさ「ん?」

春希「今、幸せか?」

俺の唐突な質問に対して、一瞬大きく目を開いたかずさは、

かずさ「…うん、幸せだよ」

幸せに満ち足りた表情でそう答えた。

春希「そっか…」

かずさの頭を空いている手で撫でながら、今度は若干寝ぼけ気味な雪菜に聞いた。

春希「なぁ、雪菜」

雪菜「う〜ん?」

春希「今、幸せか?」

雪菜「う〜ん。幸せ〜」

と、目がトロンとしながらも、満面の笑みで答えてくれた。

かずさ「春希はどうなんだよ…?」

雪菜「春希くんは〜どうなの〜?」

二人の問いに、

春希「ああ、幸せだよ」

笑顔で答えた。





あとかぎ


というわけで、まさかのハーレムエンドとなりました。
最初に言っておきます。申し訳ありません!
ファンタジー要素を追加したばかりかハーレムエンドにするとはWhite Album2を愚弄しているのか!、などの非難轟々を覚悟の上です。
ただ、ファンタジー要素や色々な要素を追加して、ようやくハーレムエンドが可能となったと考えると、やはり本編ではありえないので、そこまで愚弄していることにはならないのでは?とも考えています(言い訳をして申し訳ありません)
White Album2関連のSSはできるだけチェックしたのですが、当方で把握している限り、ハーレムエンドになったSSは確認できませんでした(2014/5現時点)。
それだけ、皆さん、White Album2の本編の内容を尊重されていると考えているのですが、そんな中、空気を読まないSSにしてしまい、申し訳ありませんでした。



一応、何でこんなSSを書くに至ったかについてを書かせて頂きます。
まず、ICをプレイして気になったのが、
・結局、IC内で春希はどういった行動を取れば良かったのか?
という点です。
物事の基本的な反省方法に、
「問題が発生する前に記憶を持っていくことができれば(所謂タイムリープ)、問題にどう対処するのか?」
といったことを考える方法があると考えています。
もちろん、現実にタイムリープなんてことは不可能ですが、反省の第一歩として、タイムリープを考えることで、知識が不足していたとか、判断力が足りなかったとか、準備が足りなかった等の問題点を探ることができると想定しています。問題点を明らかにすることができれば、次に活かすための反省に移行することができると思っています。
ですが、この反省方法をICの春希に当てはめた時、どうすれば良かったのか全く分かりませんでした。
本編からの反省だけなら、「かずさに告白する」がベストだと思っていました。
ですが、「Twinkle Snow夢想」を読んで「かずさに告白しても、雪菜との距離に気を遣わないとダメじゃん!」ということに気が付きました。雪菜との距離に気を遣えば、問題ないのかもしれませんが、春希と雪菜は、同じ大学の同じ学部に進むことを考えると危険すぎます。
そこで、本当に三人でいることができないかを考えた結果が本SSとなりました。
さすがに、タイムリープを実施してもらう訳にはいかないので、別ルートのことを夢で知ってもらうという形なら、ギリギリWhiteAlbum2の世界観を壊さないかな?と甘い期待を持って本SSとしました。

多分、ここまで読んで下さった方の中には、こう考えている方もいらっしゃるかと思います。
「どのルートでも、一夫多妻なんて考えを思いつきもしなかった春希なのに、こんなルートになるなんておかしい」
確かに、本SSでは、思いついた切欠は悪魔の囁きみたいなもんです。
ですが、かずさトゥルーの春希の無茶苦茶っぷりは、本SSに近いものがあるのでは?と当方考えています。
という訳で、如何だったでしょうか?
よろしければ、感想を頂ければ幸いです。

PS:本当のPDCAは、本SSで春希が考えている様なサイクルではありませんのであしからず(本SSではCheckとActがほとんどだったような…)。
ちなみに、当方、かずさ派 → 雪菜派 → (現在)かずさ派と雪菜派の間で反復横飛び中 といった感じです。
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このページへのコメント

返信ありがとうございます。
チョイ考えてみますが、、、読み直すと、楽しい話ではないのは勿論、だけでなく、、、辛い話だけど自己肯定感を与えることの出来る?カズサトゥルーとも真逆な嫌な話だと気が付きました。
楽しんで書けそうもないので、辞めとくことにします。

0
Posted by のむら。 2017年04月12日(水) 04:44:56 返信

ご意見を読む限り、既にプロットは完成されている様に見えます。
いざ、執筆してみると結構楽しいですよ。
ちなみに、私の場合本SSの概略執筆からuploadまで約1.5ヶ月の期間となりました。

0
Posted by TakeTake 2017年03月01日(水) 02:20:58 返信

「ハーレムエンドになるSSが一つくらいあってもいいんじゃないかな〜」→「一つもないや」→「んじゃ、自分で書く?そんなバカな。SSなんて書いたことないじゃん」→「書かないにしてもどうやったらハーレムエンドになるんだろう?」→「〜〜な条件や〜〜な選択さえあれば」→「プロットというか全体の概略だけでも書いてみるか」→「冗談でもいいや。1章だけでも書いてみるか。どうせ完成する訳ないけど」→「あれ?1章だけだけどできちゃった。ま、とりえあず続きを少しだけ書いてみるか」→「あ〜疲れた。書きたいところだけ先に書いてしまおう」→「あれ?なんかできちゃった…。全体的に誤字脱字等を修正だ」→「キリが無いな。あ…かずさの誕生日だし、uploadしてしまうか(誤字脱字が少し残っているのはこの所為)」
とこんな流れでした(笑)。

0
Posted by TakeTake 2017年03月01日(水) 02:20:40 返信

そこで、のむら。さんへ
御自身で書いてみてはどうでしょうか?
私も本SSを執筆し始めた時は冗談みたいなつもりでした。

0
Posted by TakeTake 2017年03月01日(水) 02:19:57 返信

のむら。さんへ
リクエストということでしょうか?
本編から設定を大胆に変えられている構想でびっくりしました。
しかし、これはこれで興味深いテーマですね。
本編では男性1人女性2人の三角関係でしたが、男性2人女性1人にするだけで全く異なる印象の話になりますね(単に私がギャルゲーに浸透し過ぎているだけかもしれませんが)。
ただ、構想を読む限りだと雪菜の株が大暴落しそうで怖いですが…。

リクエストについては大変申し訳ありませんが、技量面も含めてちょっと私には書けそうもありません。
というか、本SSを書いたのが既に3年近く前ですが、このSSを書いただけで頭の中のスタミナが尽きてしまってもう何も書けない状態だったりします…。
一応、SSをもう一つ書いてみようかな〜と思ってた時期があったのですが、オチが思い浮かばず執筆が2年ばかし止まっている状態だったりします。

0
Posted by TakeTake 2017年03月01日(水) 02:18:40 返信

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