最終更新:ID:RX/kHwvHrw 2018年03月01日(木) 17:40:54履歴
ヤンデレスレ住人に、ヤンデレの幼なじみがいたらという設定で書いてみました
長文、↑からだいぶズレてる、ヲタク喪子、本番はありませんが調教や監禁などの言葉は出てきます
世間は楽しいGW、初日こそ会社のバーベキュー、その後友達と飲みに行ったものの残りの9日間は何も予定がない。
友達は少ない方だけど、独身の友達は海外か彼氏か帰省で近くにいない。地元の幼なじみも、接客業、彼氏と旅行と遊ぶ相手がいないのだ。
「ふん、ここぞとばかりにクソみたいな現実とはおさらばだ」
買い出しに行き、しばらくの料理を作り置き、洗濯を済ませ、飲みまくるのでジムでがむしゃらに動き、お風呂を済ませ、いざパソコンのスイッチオン。
アボカドのチーズ焼き、手羽先のさっぱり煮、チョレギサラダにビールがうまい。
あえてマナーモードにしたスマホが震える。
今からでも絶対に捕まる幼なじみ、ヤン(ただし友達ではない)。
私は着信が治まるのを待ち、数分後に電源をオフし、ヘッドホンをつけた。
気になっていた乙女ゲーのヤンデレキャラ攻略を目指してプレイする。連休前にも買った薄い本は明日には届く。あ、21時になったらテレビ見よう。
ピンポーンピンポーンピンポーン
「喪子ちゃんいるんでしょ?GWなのに暇だから遊びに来てあげたよー」
来た。聞こえるはずがないけど、息を殺し帰ってくれるのを待つ。
「喪子ちゃん?両隣もいないみたいだねー…」
なにそれ怖い。
「先輩と遊んできたんだーキャバ行こうって誘われたけど先輩ケチだし、寧ろお触りなしで喪子ちゃんにご飯奢ってあげる方がずーっといいな」
「明日はフットサル、明後日は温泉に誘われてたけど寂しい喪子ちゃんの為に断ったんだよ?その後の誘いもぜーんぶ。3日は結婚式だから外せないけど…」
フットサルでも温泉でも勝手に行け。寧ろキャバでも風俗でもハマって私に関心をなくして欲しい。
「ふぅ…喪子ちゃん、寂しくなったらすぐ呼んでね。誰かと遊んでてもすぐに来るから」
30分ほどインターホン越しに話しかけてきたヤンは、諦めて帰って行った。ヤンのアパートはうちまで歩いて15分程度、足が早いヤンならまたいつ来るかはわからない。
幸い買い込んだ後なので、私は籠城する事にした。
テレビの後夜中までゲームをし、耳元でブーブーうるさいスマホについ出てしまった。
「……はいぃ…?」
『もしもし、喪子?今アパート?お父さんが帰ってこないのかって聞いてるの』
「…え?帰らないって言ったじゃん…今うちだよ…」
『くすっ、寝ぼけた喪子ちゃんってバカで可愛いね。お義母さんの声真似、全然似てないでしょ?
すぐに行ってあげるからね』
呆然とする中、友達に「彼女起こしてる」と言ってのけるイカれた男。
「私、今日は彼氏のところに泊まるから来んな」
『え?喪子ちゃん来るの?うち散らかってるし、昨日俺のためにイ◯ンで買い込んだんでしょ?』
とりあえず電話を切る。
家の外に逃げるなら、今すぐにでも出た方がいい。顔を洗って着替えて財布とスマホがあればなんとかなる。ただしどこのホテルも満室か高額、ネカフェしかない。
仕方ない、籠城だ。
それから1時間ほどで、ヤンはやってきた。私はシカトを決め込み、つまらないテレビを見る。
「喪子ちゃん?喪子ちゃんの為に急いできたからお腹すいたな…喪子ちゃんの手料理が食べたい」
「喪子ちゃん?どうして入れてくれないの?彼氏なのに…これじゃストーカーみたいじゃん…」
「俺、イケメンだし会社は超有名だし、喪子ちゃんを誰より愛してるよ?浮気なんてしてないよ?」
あまりにもしつこいので、ヤンに電話する
「ヤン?私、今日は一人で過ごしたいの。
私を愛してるなら、一人の時間をプレゼントして」
これはヤンの愛を拒絶しない事になるので、一時的でしかない。
『わかったよ…寂しいけど、喪子ちゃんの為なら俺も一人で喪子ちゃんを想うね』
ジャマなヤンを追い払い清々しい気分で、シーツとカバーを洗濯カゴに放り、布団を干す。
お風呂を終えてちょうど薄い本が到着し、買ったばかりの一目惚れしたルームウェアに着替え、ヤンに干渉されずに済むのを祝し昼から酒を飲む。一通り読み終え、次はBLゲーム。
しかしこれからいいとこ、という場面で眠くなる。どうせ明日も休みなんだ、ふかふかのお布団でゆっくりお昼寝でもしよう。
結構寝た気がする。
部屋の電気が点いてる…起き上がると、ヤンがヘッドホンをつけて私のBLゲームをプレイしていた
「…あ、おはよう喪子ちゃん
寂しくてまた来ちゃったんだけど、女の子が鍵開けっぱなしで寝るなんて危ないよー」
「だからって勝手に入らないでよ!」
「だって喪子ちゃんに会いたかったんだもーん」
「会いたかったんだもんじゃない!それにお前…それ…」
いくら幼なじみで、私がヲタクなの知ってて、異性としてなんて全く見てないヤンでも、他人にこの手のゲームを見られてプレイされるなんて恥ずかしくてもう二度と顔を合わせられない。
「あれ?喪子ちゃん泣いてるの?
ごめんね、勝手にゲームしちゃって…喪子ちゃんゲームとマンガばっかりだから、喪子ちゃんの趣味が知りたかったちけでセーブしてないから、ね?」
「そういうことじゃないの!プライバシーってわかってる?!この変態!」
「えー変態って喪子ちゃんに言われても…」
「うるさい!腐ってるのとお前のは…」
今机の周りにある薄い本、やっているBLゲーム、乙女ゲームの目当てもほとんどがヤンデレか、監禁や調教といった系統。しかもほとんど18禁。
泣き出した私にヤンが手を差し伸べる。
手を払われても、次は私を抱きしめる。
振り払おうとしても離してくれない。実家は出入り自由、抱きついてくるのも日常茶飯事だったけど、ここまで頑固なのは初めてだ。
「大丈夫、大丈夫だよ。喪子ちゃんがヲタクで変態だって、そんなとこも含めて大好きなんだから。
ねえ喪子ちゃん、覚えてる?」
今まで何回も告白したのにいつもスルーされてこと。
酔った私を送り、自分からヤンに好きと言っておいて寝てしまい、翌朝全部忘れて怒ってヤンを追い出したこと。
成人式のあとのクラスの飲み会、「喪子ちゃんの彼氏にして」と言われうんって言ったのに、次の日覚えてなかったこと。
大学の卒業式の前にもまた告白されOKし、今度こそ忘れられないと喜んでいたのに、1週間であまりのしつこさに別れた時は三日三晩泣き続けたこと。
「でも喪子ちゃん、本気で俺から逃げたことないよね。大学受験だってわざと落ちればよかったのに。
まぁ大学が違っても、喪子ちゃんは諦めなかったけどね」
今まで告白するたびに私にされた仕打ちを語るヤンは、にこにこと私の髪を撫でている。
高2の春、私よりずっと頭のいいヤンが
「喪子ちゃんの志望校、推薦で入れそうだから俺も受けよっかなー。普通に受けても余裕だし、推薦決まれば喪子ちゃんに勉強教えてあげられるし」
と言い出した。
私の為にヤンを実力よりずっと偏差値の低い大学に行かせるわけには行かない、そういう理由で親や先生に散々勉強させられ、家ではヤンと勉強し、ヤンと同じ大学に合格した。
初めは私が入れるなんて、まさか誰も思わなかった大学に入れた。流石にヤンと同じところには就職できなかったけど。
中学のグループで揉めて一人になった時も、休み時間に私とずっと一緒にいてくれたのもヤン。
高校で友達を作るのに出遅れた時も、みんなと話すきっかけを作ってくれたのはヤンだった。
大学に入る前も入ってからも、私が服を買おうとすると大体ついて来て、悔しいが私の選ぶ方は微妙だったり似合わなくて、ヤンが選ぶ方がよかった。店員に彼氏さんって呼ばれるのが癪に触ったけど、とりあえず普通の女に見えるようになったのはヤンのお陰だ。
本気で逃げずヤンをいいように利用しているのは私だ。顔も人当たりも良く、勉強もスポーツもできて、就職先も所謂一流企業。
どう見ても不釣り合いな私を妬む同性から、私に分からないように守ってくれたのもヤン。
そんなヤンを、私から離れるはずがないと平気で傷つけて、同性からの嫉妬に優越感を感じていたんだ。
昔は今みたいに異様に私に付きまとったりしなかった。ヤンをこんな風にしたのは私だ。
「ヤンごめん…ヤンに与えてもらうばっかりで、本当なら感謝しても仕切れない。
私はヤンにひどいことばかりしてきた。だから、もう私から離れて欲しい。ヤンと私は釣り合わない」
「別に気にしなくていいよ?喪子ちゃんが怒るのはいつものことだし。
喪子ちゃんと結婚したいし、でれでれになって欲しいって言えばそうだけど…喪子ちゃんが好きだから勝手にやってるだけだもん。こうしてられるだけでも文句なんてないよ?」
いつもこうだ。私を好きだから、それだけで私が何をしても許し、当然のように愛情を押し付ける。
今まで結果的に私のプラスにはなったけど、ヤンの愛情は一方的で、こうして勝手に家に入ったり、しつこくつきまとうのは自分の気持ちしか考えていない。
離れなくちゃいけない、お互いの為に。
私は精一杯の力でヤンを押し返す。
「ヤン…ヤンのやってることはね、やり過ぎなの。しつこく家に押しかけたり、一日何度も一方的に電話とラインしたり、勝手に家に上がったり…ストーカーと同じだよ。
付き合ってても、ヤンのやってることは女の人が離れちゃうくらいおかしいことなんだよ?」
微笑んでいたヤンの顔が引きつっていく。
「え…喪子、ちゃん?
俺のやってたこと、本当に嫌だった?別れるって言ったあとちゃんと話してないじゃん!まだ別れてるつもりなくて…」
ベッドから降りて、ヤンの財布とスマホを取り、彼の手を引く。
「ごめんね、ヤン。
感謝してることもたくさんあるよ、でもヤンのやる事はおかしいし、重過ぎるから絶対に付き合えない。」
「嘘だよね、絶対になんて、絶対に付き合えないなんてないよね!?そうでしょ喪子ちゃん?」
今度はヤンが涙目で、子供が駄々をこねるように、でも大人の力で縋り付いてくる。妙に冷静に、首を横に振る。ただ一言、絶対だよと。
「嘘だ、嘘だそんなの!そんなに嫌いなら逃げてたし、出張の時に引っ越すのだって、実家のご両親に口止めするのもできたのに喪子ちゃんはしなかった!
大学で抱きついた時に悲鳴をあげることだって、俺がおかしかったなら周りに相談だってできたけど、喪子ちゃんは何もしなかった!」
泣き喚き、自分の愛情を拒絶するなんてあり得ない、嘘だと言って欲しがってる。こんなヤンは初めて見る。
「何が悪かったの?直すから…ねえ喪子ちゃん、俺のどこが悪かった?あと少し背が高ければよかった?顔だって喪子ちゃんの理想の顔に近づけるように整形するよ?収入なら俺頑張るから!
喪子ちゃんはそんなことで俺を判断しないって分かってるんだよ!だから教えてよ!どうすればちゃんと付き合ってくれるの喪子ちゃん!」
「…顔とかスペックは、はっきり言って私にはもったいない位だよ。中身だよ。それとね、もう今更私とヤンは付き合うとかできないの。帰って?」
ヤンの荷物を持たせようとするが、それを振り払い、飛ばされ床に落ちる音がした。
「嫌だ絶対嫌だ!帰ったら喪子ちゃんはどこかに隠れて、次からは本気で逃げるに決まってる…
ねえ喪子ちゃん、もしかして好きな男でもできた?誰かに言い寄られてるの?俺が見張ってたのに、知らない間に彼氏ができたの?」
私の両手を握りしめ、血迷ったように問いかけてくる。
否定しても、痛いからやめてと言っても聞いてくれない。
「いや無理、絶対許さない!他の奴が喪子ちゃんと付き合うなんて絶対許さない!
喪子ちゃん、どうしたの?ちゃんと答えてよ。ひどいよ、ずっと我慢して、喪子ちゃんと無理矢理やろうなんて絶対しなかったのに。他に男ができたの?そいつとはどこまでしたの?」
興奮したヤンの異様さに、言葉に詰まる。私の震えに気付いて背中をさすってくれるが、それも恐怖でしかない。
「大丈夫だよ、喪子ちゃん。浮気してても喪子ちゃんは、許してあげるから。
今回は俺の言うこと聞いて。他の男に何かされたの?」
なんと言えばいいのか分からないが、本当にいないものはいないと言うしかない。
「彼氏なんて、いない…私は、ヤン以外の男の人に、告白されたことも、したこともないよ。だから、付き合ったことも、それ以上も、ない…」
私を抱きしめ、よかったと呟く。
「じゃあなんで?なんで急に俺から逃げるの?」
無言の私に、さっきと同じことを問うヤン。
「だからそれは…ヤンが好きだからってやる事が私には、重いし、しつこいし、自分の気持ちの押し付けだから苦痛なの!今してることも、引いてるから…これ以上嫌いになる前に、お願いだからもうやめて」
「嫌い?」
その言葉と同時に、ヤンの腕の力が抜け、呆然と固まってしまった。
「……ヤン?」
「嘘だよ。
幼稚園の頃から喪子ちゃんだけを愛してた。他の女の子なんて興味ない。喪子ちゃんだって受け入れてくれてたのに、今更絶対付き合えないとか、嫌いとかそんなの嘘だよね。」
突然笑顔になったヤンは、私をベッドに引きずり、強引にキスをする。舌を噛んでやろうと考える私の性格を知ってか、それはしてこない。
「ごめんね喪子ちゃん」
「謝るならこんなことしないで!離してよ!」
「本当はね、喪子ちゃんがヤンデレっていうのが大好きで、俺が喪子ちゃんにしたい事そのまますればいいのも分かってたんだ。
喪子ちゃんが無理矢理やられるのとか、監禁とか調教が好きなのも知ってたけど、実行して喪子ちゃんが傷付くかもしれないって思ってきちんと段階を踏もうと思ってた」
「だから、そう思うならこんな事…」
ヤンが私の服に手をかける。
「今日のわがままも、こうして欲しかったんだよね…昨日のうちにお掃除して、今日一度帰った後お風呂に入って、ふかふかのお布団も初めて見る可愛いパジャマも、全部準備しててくれたんだね。
さっき喪子ちゃんのゲームとマンガで見たみたいに、連休中は喪子ちゃんをここに閉じ込めてあげるね。
喪子ちゃんはツンデレだし、ずっとこうして焦らして俺が我慢できなくなるの待ってたんだよね…喪子ちゃんとキスしたのも、20年ぶりくらいかな。気付いてあげれなくてごめんね」
ヤンは本当におかしくなってた、そう思った途端にまた涙が溢れた。
「怖がらなくていいよ…大丈夫…俺も初めてだし、やっと喪子ちゃんとえっちできるから嬉し過ぎてやばいけど、優しくするから」
私が身勝手でなければ、私達はもっと早くに、普通の恋人になれてたのかもしれない。ヤンは私ではない、もっと自分にふさわしい女性と恋人になり、普通の愛し方をしていたのかもしれない。
泣きながら何度もごめんと繰り返す私の顔中に、ヤンがキスをする。
「あ、3日は喪子ちゃんお留守番だね…食べ物も喪子ちゃんの本にあったのも買ってくるよ。
結婚式も、新婦の希望全部叶えたらしいから喪子ちゃんの為によーく見てくるね」
終わりって書くの忘れてました
すみません
長文、↑からだいぶズレてる、ヲタク喪子、本番はありませんが調教や監禁などの言葉は出てきます
世間は楽しいGW、初日こそ会社のバーベキュー、その後友達と飲みに行ったものの残りの9日間は何も予定がない。
友達は少ない方だけど、独身の友達は海外か彼氏か帰省で近くにいない。地元の幼なじみも、接客業、彼氏と旅行と遊ぶ相手がいないのだ。
「ふん、ここぞとばかりにクソみたいな現実とはおさらばだ」
買い出しに行き、しばらくの料理を作り置き、洗濯を済ませ、飲みまくるのでジムでがむしゃらに動き、お風呂を済ませ、いざパソコンのスイッチオン。
アボカドのチーズ焼き、手羽先のさっぱり煮、チョレギサラダにビールがうまい。
あえてマナーモードにしたスマホが震える。
今からでも絶対に捕まる幼なじみ、ヤン(ただし友達ではない)。
私は着信が治まるのを待ち、数分後に電源をオフし、ヘッドホンをつけた。
気になっていた乙女ゲーのヤンデレキャラ攻略を目指してプレイする。連休前にも買った薄い本は明日には届く。あ、21時になったらテレビ見よう。
ピンポーンピンポーンピンポーン
「喪子ちゃんいるんでしょ?GWなのに暇だから遊びに来てあげたよー」
来た。聞こえるはずがないけど、息を殺し帰ってくれるのを待つ。
「喪子ちゃん?両隣もいないみたいだねー…」
なにそれ怖い。
「先輩と遊んできたんだーキャバ行こうって誘われたけど先輩ケチだし、寧ろお触りなしで喪子ちゃんにご飯奢ってあげる方がずーっといいな」
「明日はフットサル、明後日は温泉に誘われてたけど寂しい喪子ちゃんの為に断ったんだよ?その後の誘いもぜーんぶ。3日は結婚式だから外せないけど…」
フットサルでも温泉でも勝手に行け。寧ろキャバでも風俗でもハマって私に関心をなくして欲しい。
「ふぅ…喪子ちゃん、寂しくなったらすぐ呼んでね。誰かと遊んでてもすぐに来るから」
30分ほどインターホン越しに話しかけてきたヤンは、諦めて帰って行った。ヤンのアパートはうちまで歩いて15分程度、足が早いヤンならまたいつ来るかはわからない。
幸い買い込んだ後なので、私は籠城する事にした。
テレビの後夜中までゲームをし、耳元でブーブーうるさいスマホについ出てしまった。
「……はいぃ…?」
『もしもし、喪子?今アパート?お父さんが帰ってこないのかって聞いてるの』
「…え?帰らないって言ったじゃん…今うちだよ…」
『くすっ、寝ぼけた喪子ちゃんってバカで可愛いね。お義母さんの声真似、全然似てないでしょ?
すぐに行ってあげるからね』
呆然とする中、友達に「彼女起こしてる」と言ってのけるイカれた男。
「私、今日は彼氏のところに泊まるから来んな」
『え?喪子ちゃん来るの?うち散らかってるし、昨日俺のためにイ◯ンで買い込んだんでしょ?』
とりあえず電話を切る。
家の外に逃げるなら、今すぐにでも出た方がいい。顔を洗って着替えて財布とスマホがあればなんとかなる。ただしどこのホテルも満室か高額、ネカフェしかない。
仕方ない、籠城だ。
それから1時間ほどで、ヤンはやってきた。私はシカトを決め込み、つまらないテレビを見る。
「喪子ちゃん?喪子ちゃんの為に急いできたからお腹すいたな…喪子ちゃんの手料理が食べたい」
「喪子ちゃん?どうして入れてくれないの?彼氏なのに…これじゃストーカーみたいじゃん…」
「俺、イケメンだし会社は超有名だし、喪子ちゃんを誰より愛してるよ?浮気なんてしてないよ?」
あまりにもしつこいので、ヤンに電話する
「ヤン?私、今日は一人で過ごしたいの。
私を愛してるなら、一人の時間をプレゼントして」
これはヤンの愛を拒絶しない事になるので、一時的でしかない。
『わかったよ…寂しいけど、喪子ちゃんの為なら俺も一人で喪子ちゃんを想うね』
ジャマなヤンを追い払い清々しい気分で、シーツとカバーを洗濯カゴに放り、布団を干す。
お風呂を終えてちょうど薄い本が到着し、買ったばかりの一目惚れしたルームウェアに着替え、ヤンに干渉されずに済むのを祝し昼から酒を飲む。一通り読み終え、次はBLゲーム。
しかしこれからいいとこ、という場面で眠くなる。どうせ明日も休みなんだ、ふかふかのお布団でゆっくりお昼寝でもしよう。
結構寝た気がする。
部屋の電気が点いてる…起き上がると、ヤンがヘッドホンをつけて私のBLゲームをプレイしていた
「…あ、おはよう喪子ちゃん
寂しくてまた来ちゃったんだけど、女の子が鍵開けっぱなしで寝るなんて危ないよー」
「だからって勝手に入らないでよ!」
「だって喪子ちゃんに会いたかったんだもーん」
「会いたかったんだもんじゃない!それにお前…それ…」
いくら幼なじみで、私がヲタクなの知ってて、異性としてなんて全く見てないヤンでも、他人にこの手のゲームを見られてプレイされるなんて恥ずかしくてもう二度と顔を合わせられない。
「あれ?喪子ちゃん泣いてるの?
ごめんね、勝手にゲームしちゃって…喪子ちゃんゲームとマンガばっかりだから、喪子ちゃんの趣味が知りたかったちけでセーブしてないから、ね?」
「そういうことじゃないの!プライバシーってわかってる?!この変態!」
「えー変態って喪子ちゃんに言われても…」
「うるさい!腐ってるのとお前のは…」
今机の周りにある薄い本、やっているBLゲーム、乙女ゲームの目当てもほとんどがヤンデレか、監禁や調教といった系統。しかもほとんど18禁。
泣き出した私にヤンが手を差し伸べる。
手を払われても、次は私を抱きしめる。
振り払おうとしても離してくれない。実家は出入り自由、抱きついてくるのも日常茶飯事だったけど、ここまで頑固なのは初めてだ。
「大丈夫、大丈夫だよ。喪子ちゃんがヲタクで変態だって、そんなとこも含めて大好きなんだから。
ねえ喪子ちゃん、覚えてる?」
今まで何回も告白したのにいつもスルーされてこと。
酔った私を送り、自分からヤンに好きと言っておいて寝てしまい、翌朝全部忘れて怒ってヤンを追い出したこと。
成人式のあとのクラスの飲み会、「喪子ちゃんの彼氏にして」と言われうんって言ったのに、次の日覚えてなかったこと。
大学の卒業式の前にもまた告白されOKし、今度こそ忘れられないと喜んでいたのに、1週間であまりのしつこさに別れた時は三日三晩泣き続けたこと。
「でも喪子ちゃん、本気で俺から逃げたことないよね。大学受験だってわざと落ちればよかったのに。
まぁ大学が違っても、喪子ちゃんは諦めなかったけどね」
今まで告白するたびに私にされた仕打ちを語るヤンは、にこにこと私の髪を撫でている。
高2の春、私よりずっと頭のいいヤンが
「喪子ちゃんの志望校、推薦で入れそうだから俺も受けよっかなー。普通に受けても余裕だし、推薦決まれば喪子ちゃんに勉強教えてあげられるし」
と言い出した。
私の為にヤンを実力よりずっと偏差値の低い大学に行かせるわけには行かない、そういう理由で親や先生に散々勉強させられ、家ではヤンと勉強し、ヤンと同じ大学に合格した。
初めは私が入れるなんて、まさか誰も思わなかった大学に入れた。流石にヤンと同じところには就職できなかったけど。
中学のグループで揉めて一人になった時も、休み時間に私とずっと一緒にいてくれたのもヤン。
高校で友達を作るのに出遅れた時も、みんなと話すきっかけを作ってくれたのはヤンだった。
大学に入る前も入ってからも、私が服を買おうとすると大体ついて来て、悔しいが私の選ぶ方は微妙だったり似合わなくて、ヤンが選ぶ方がよかった。店員に彼氏さんって呼ばれるのが癪に触ったけど、とりあえず普通の女に見えるようになったのはヤンのお陰だ。
本気で逃げずヤンをいいように利用しているのは私だ。顔も人当たりも良く、勉強もスポーツもできて、就職先も所謂一流企業。
どう見ても不釣り合いな私を妬む同性から、私に分からないように守ってくれたのもヤン。
そんなヤンを、私から離れるはずがないと平気で傷つけて、同性からの嫉妬に優越感を感じていたんだ。
昔は今みたいに異様に私に付きまとったりしなかった。ヤンをこんな風にしたのは私だ。
「ヤンごめん…ヤンに与えてもらうばっかりで、本当なら感謝しても仕切れない。
私はヤンにひどいことばかりしてきた。だから、もう私から離れて欲しい。ヤンと私は釣り合わない」
「別に気にしなくていいよ?喪子ちゃんが怒るのはいつものことだし。
喪子ちゃんと結婚したいし、でれでれになって欲しいって言えばそうだけど…喪子ちゃんが好きだから勝手にやってるだけだもん。こうしてられるだけでも文句なんてないよ?」
いつもこうだ。私を好きだから、それだけで私が何をしても許し、当然のように愛情を押し付ける。
今まで結果的に私のプラスにはなったけど、ヤンの愛情は一方的で、こうして勝手に家に入ったり、しつこくつきまとうのは自分の気持ちしか考えていない。
離れなくちゃいけない、お互いの為に。
私は精一杯の力でヤンを押し返す。
「ヤン…ヤンのやってることはね、やり過ぎなの。しつこく家に押しかけたり、一日何度も一方的に電話とラインしたり、勝手に家に上がったり…ストーカーと同じだよ。
付き合ってても、ヤンのやってることは女の人が離れちゃうくらいおかしいことなんだよ?」
微笑んでいたヤンの顔が引きつっていく。
「え…喪子、ちゃん?
俺のやってたこと、本当に嫌だった?別れるって言ったあとちゃんと話してないじゃん!まだ別れてるつもりなくて…」
ベッドから降りて、ヤンの財布とスマホを取り、彼の手を引く。
「ごめんね、ヤン。
感謝してることもたくさんあるよ、でもヤンのやる事はおかしいし、重過ぎるから絶対に付き合えない。」
「嘘だよね、絶対になんて、絶対に付き合えないなんてないよね!?そうでしょ喪子ちゃん?」
今度はヤンが涙目で、子供が駄々をこねるように、でも大人の力で縋り付いてくる。妙に冷静に、首を横に振る。ただ一言、絶対だよと。
「嘘だ、嘘だそんなの!そんなに嫌いなら逃げてたし、出張の時に引っ越すのだって、実家のご両親に口止めするのもできたのに喪子ちゃんはしなかった!
大学で抱きついた時に悲鳴をあげることだって、俺がおかしかったなら周りに相談だってできたけど、喪子ちゃんは何もしなかった!」
泣き喚き、自分の愛情を拒絶するなんてあり得ない、嘘だと言って欲しがってる。こんなヤンは初めて見る。
「何が悪かったの?直すから…ねえ喪子ちゃん、俺のどこが悪かった?あと少し背が高ければよかった?顔だって喪子ちゃんの理想の顔に近づけるように整形するよ?収入なら俺頑張るから!
喪子ちゃんはそんなことで俺を判断しないって分かってるんだよ!だから教えてよ!どうすればちゃんと付き合ってくれるの喪子ちゃん!」
「…顔とかスペックは、はっきり言って私にはもったいない位だよ。中身だよ。それとね、もう今更私とヤンは付き合うとかできないの。帰って?」
ヤンの荷物を持たせようとするが、それを振り払い、飛ばされ床に落ちる音がした。
「嫌だ絶対嫌だ!帰ったら喪子ちゃんはどこかに隠れて、次からは本気で逃げるに決まってる…
ねえ喪子ちゃん、もしかして好きな男でもできた?誰かに言い寄られてるの?俺が見張ってたのに、知らない間に彼氏ができたの?」
私の両手を握りしめ、血迷ったように問いかけてくる。
否定しても、痛いからやめてと言っても聞いてくれない。
「いや無理、絶対許さない!他の奴が喪子ちゃんと付き合うなんて絶対許さない!
喪子ちゃん、どうしたの?ちゃんと答えてよ。ひどいよ、ずっと我慢して、喪子ちゃんと無理矢理やろうなんて絶対しなかったのに。他に男ができたの?そいつとはどこまでしたの?」
興奮したヤンの異様さに、言葉に詰まる。私の震えに気付いて背中をさすってくれるが、それも恐怖でしかない。
「大丈夫だよ、喪子ちゃん。浮気してても喪子ちゃんは、許してあげるから。
今回は俺の言うこと聞いて。他の男に何かされたの?」
なんと言えばいいのか分からないが、本当にいないものはいないと言うしかない。
「彼氏なんて、いない…私は、ヤン以外の男の人に、告白されたことも、したこともないよ。だから、付き合ったことも、それ以上も、ない…」
私を抱きしめ、よかったと呟く。
「じゃあなんで?なんで急に俺から逃げるの?」
無言の私に、さっきと同じことを問うヤン。
「だからそれは…ヤンが好きだからってやる事が私には、重いし、しつこいし、自分の気持ちの押し付けだから苦痛なの!今してることも、引いてるから…これ以上嫌いになる前に、お願いだからもうやめて」
「嫌い?」
その言葉と同時に、ヤンの腕の力が抜け、呆然と固まってしまった。
「……ヤン?」
「嘘だよ。
幼稚園の頃から喪子ちゃんだけを愛してた。他の女の子なんて興味ない。喪子ちゃんだって受け入れてくれてたのに、今更絶対付き合えないとか、嫌いとかそんなの嘘だよね。」
突然笑顔になったヤンは、私をベッドに引きずり、強引にキスをする。舌を噛んでやろうと考える私の性格を知ってか、それはしてこない。
「ごめんね喪子ちゃん」
「謝るならこんなことしないで!離してよ!」
「本当はね、喪子ちゃんがヤンデレっていうのが大好きで、俺が喪子ちゃんにしたい事そのまますればいいのも分かってたんだ。
喪子ちゃんが無理矢理やられるのとか、監禁とか調教が好きなのも知ってたけど、実行して喪子ちゃんが傷付くかもしれないって思ってきちんと段階を踏もうと思ってた」
「だから、そう思うならこんな事…」
ヤンが私の服に手をかける。
「今日のわがままも、こうして欲しかったんだよね…昨日のうちにお掃除して、今日一度帰った後お風呂に入って、ふかふかのお布団も初めて見る可愛いパジャマも、全部準備しててくれたんだね。
さっき喪子ちゃんのゲームとマンガで見たみたいに、連休中は喪子ちゃんをここに閉じ込めてあげるね。
喪子ちゃんはツンデレだし、ずっとこうして焦らして俺が我慢できなくなるの待ってたんだよね…喪子ちゃんとキスしたのも、20年ぶりくらいかな。気付いてあげれなくてごめんね」
ヤンは本当におかしくなってた、そう思った途端にまた涙が溢れた。
「怖がらなくていいよ…大丈夫…俺も初めてだし、やっと喪子ちゃんとえっちできるから嬉し過ぎてやばいけど、優しくするから」
私が身勝手でなければ、私達はもっと早くに、普通の恋人になれてたのかもしれない。ヤンは私ではない、もっと自分にふさわしい女性と恋人になり、普通の愛し方をしていたのかもしれない。
泣きながら何度もごめんと繰り返す私の顔中に、ヤンがキスをする。
「あ、3日は喪子ちゃんお留守番だね…食べ物も喪子ちゃんの本にあったのも買ってくるよ。
結婚式も、新婦の希望全部叶えたらしいから喪子ちゃんの為によーく見てくるね」
終わりって書くの忘れてました
すみません