管理人さんが帰ってくるまでの仮まとめです

「喪子」
「ヤン先輩」

こちらを見て笑顔を浮かべているヤンに、喪子は照れた笑みを返した。
しかし、ヤンのファンともいえる女の子たちの視線が突き刺さってくるのに気付き、喪子は萎縮して肩をすぼめる。
「ねえ、今日のお弁当は何? 俺それだけが楽しみで毎日を生きてるようなものだから」
大げさですよ、と喪子が笑うと、ヤンはいやいや本気で、と手を振って笑う。
そのまま並んで屋上へ向かう。ちらほらと人の姿は見えるが、中庭などに比べると、静かで居心地のいい場所だ。
「まずかったらごめんなさい」
お弁当の包みをヤンに渡しながら、うつむいて喪子が言う。
その台詞に、ヤンはむっとした顔をした。
「その台詞禁止。喪子の弁当ならたとえまずくても食い物じゃなくても食べるよ」
「またそんなこと言って」
喪子が笑う。ヤンは満足したように微笑むと、いただきまーす、と言ってお弁当を食べ始めた。
なぜこんな幸せな時間が過ごせるようになったのか、喪子は今でも不思議に思う。
ヤンは部活の先輩だ。日々の練習を共に行ううちに、いつの間にか仲良くなっていた。
ヤン先輩とはなぜか不思議と趣味や好きなものなどが合うため、喪子が心を開くようになるのも時間はかからなかった。
そのうちヤンが、喪子のお弁当が食べたいと言い始めた。
最初はその唐突な申し出に驚いたものの、料理の練習台にでもしてよ、というヤンのいつもの笑顔に、つい頷いてしまった。
その次の日から、こうして喪子の手作り弁当をヤンは食べるようになったのであった。
「そういえば、なんで昨日はお弁当作ってくれなかったの?」
「え……。……わ、忘れちゃって……」
ヤンの目が、じっと自分を見つめてくる。
喪子は、忘れてしまったんです、ごめんなさい、と急いで言った。
なんだか本当の理由がヤンにばれてはいけない気がしたからだ。
しかし、ヤンは口元に笑みを浮かべたまま、後ろ手に何かを取り出した。
喪子は目を見開いた。それは確かに自分が昨日作ったお弁当だったからだ。
「ど、どうしてそれを……」
「旧校舎のゴミ箱に捨ててあるのを発見しちゃった」
「……」
喪子がうつむいたのを見て、ヤンの目が細くなった。
けして喪子には見せないその表情。
喪子が顔を上げたときには、もういつもの明るくて優しいヤン先輩の姿があった。
「なんてね、嘘。俺、見ちゃったんだよね」
ヤンのクラスの女子が、喪子の弁当を捨ててるのを発見した。
喪子は悲しそうにうつむいた。
「……私、生意気ですよね。すみません、ヤン先輩に誘われて、調子に乗って浮かれてしまったんです」
「何それ」
ヤンの声が不穏さを帯びる。喪子はふと顔を上げ、ヤンの顔を見た。
「俺から喪子の弁当が食べたいって言ったんだよ。将来のために」
「え?」
「喪子の将来のために、ってこと」
にっこりと笑い、ヤンは汚れてしまった昨日の弁当箱を示すと、これも食べていい? と聞いた。
「ダ、ダメです! お腹壊しちゃいますよ!」
「えーでも喪子がせっかく作ってくれたお弁当……」
心底残念そうにお弁当を見るヤンの姿がなんだかおかしくて、喪子は吹き出してしまった。
「ん?」
「い、いえ、ヤン先輩って本当に優しいんですね」
「んー、大好きな子にはね」
「え?」
「あ、お昼休み終わっちゃうね。じゃ、教室に戻ろっか」






喪子の弁当を捨てた奴。さあて、どうしてやろうかな。
せっかくこうやって喪子と二人きりになれて、しかも手作りの弁当まで食べられるチャンスが来たんだ、
邪魔する奴は消すのが利口というものだろう。
今日、もしも喪子が、一緒に弁当を食べるのを止めませんか、なんて言い出したらどうしようかと思った。

ヤンは手に持ったペットボトルをぐしゃぐしゃに握り潰すと、ゴミ箱に放り込んだ。

喪子の料理を毎日食べられるようにするためなら、どんなことでもするよ。
ねえ、僕だけの喪子。



終了です。
駄文失礼いたしました。もっとヤンデレ道を精進いたします。

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