管理人さんが帰ってくるまでの仮まとめです

彼女の就寝は遅い。ベッドに入るまでが、横になって寝付くまでが。日付けを跨ぐことなんてしょっちゅうだ。
彼女が完全に眠りにおちるまで、それまでぼくはじっと息を潜めている。
明かりの消えた室内で、秒針の音と彼女の寝息、時々どこか遠くの方で車の走る唸り声のような音が聞こえる。耳元ではずっと耳鳴りがしている。
徐々に暗闇に目が慣れてくると、ぼくはゆっくりゆっくり立ち上がって、眠っている彼女を枕元から見下ろした。
掛け布団の下で彼女の胸が静かに上下している。
今夜はとても冷えるから、彼女は少しだけ体を丸めて、顔の半分を布団の中に隠してしまっている。
きゅううっと、ぼくの心臓が音を立てた。
かわいい、なんてかわいいんだろう。
身体中の熱を逃がすように一度ため息をつくと、堰を切ったように次々とため息が零れ出て、ハア、ハア、という大きな呼吸音が他の全ての音を呑み込んでいく。

しばらくそうやって、何時間か寝顔を見つめた後、ぶるぶる震える指先で一度だけ掠めるように彼女の唇に触れた。
あたたかい。柔らかい。寝る前にリップクリームを塗ったから、少ししっとりと濡れている。
彼女の唇に触れた指を徐に口元へ上げて、その指で自身のそれを、撫でた。
乾燥してカサカサした冷たい唇が、ほんのちょっぴり指先が触れただけで、ぶわっと熱を持ちはじめる。
ぼくはもう堪らなくなって、その指先をパクッと口に含んだ。
彼女の唇に触れた指……。
ああ、ああ!、ああ!、ああ!
指先をベロベロと丹念に舐めまわしながら、彼女の寝顔を見下ろす。

「ハア、ハア、ン……あ、愛してる……ハア……愛してる……アア……」

寝苦しそうに彼女が寝返りを打った。閉じた瞼の上で、睫毛が小さく震えている。
それを間近に見下ろしながら、無造作に広がる髪を一房手に取り、べろりと舐めたり、口に含んだりして、ぼくの唾液を絡めていく。
ちらりと時計へ目をやると、ああ、もうすぐ彼女が起きる時間だった。

「またね……またね、また後でね……あ……愛してるよ……」

彼女の寝顔を目に焼き付けて、静かに彼女のそばを離れる。ぼくは再び、いつもの場所へ身を潜めた。
同時に、ほら、アラームの音が聞こえる。

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