管理人さんが帰ってくるまでの仮まとめです


【バンパイヤン喪子視点】

「喪子ちゃん、開けて」

窓をこつこつ叩く音を聞いて、私は慌てて窓に駆け寄った。
「ヤン君、いらっしゃい」
窓を開けて、今夜もヤン君を部屋に招き入れる。

今日も変わらず来てくれたことが嬉しくて、顔がにやけるのを抑えられない。

ヤン君は不思議な男の子で、屋敷の庭に忍び込んだのを助けて以来、毎晩遊びに来てくれる大好きな友達だ。
正直、毎日夜更かしは辛いけど、家に閉じ込められた私にとってたった一人の友達は貴重なのだ。

どうせずっとベッドの上なのだから、神様もこれくらいのわがままは許してくれていいと思う。

「ヤン君、今日はなんの話をしてくれるの?」
「私、ヤン君のしてくれる外の話、大好きなんだ」
「早く体を治して、学校に行ってみたい」

いつもの他愛ないやり取り。

でも、「内緒で外に出れないかな」と言った途端、何故か隣の空気が変わってぞわっと鳥肌がたった。

「じゃあ、僕が連れていってあげるよ」

驚いて隣を見るとヤン君がニコニコ笑っている。いつものヤン君だ。

でも、なんでだろう、なんで笑ってるのに怖いんだろう。

「でも、外に出たら怒られちゃうよ」
「すぐ戻れば大丈夫だよ、学校行ってみたくない?」
「夜は怖いから、明日の昼に行こうよ」
「昼間は執事が見張ってでられないじゃないか」
「でm「喪子ちゃんは僕のこと、嫌い?」

「僕は好きだよ。でも嫌ならやめる。もうここには来ない」

…向こうを向いて、そんな悲しそうな声で言われたら私に拒否権なんてなくて。

それから彼に連れられて私は初めて外に出た。
裸足で踏む土は冷たくて、世界の全てが敵になった気がする。
なにこれ、 怖い、怖い、助けて、誰か
後ろにいるヤン君に助けを求めようとした瞬間、

「やっと捕まえた」

背後からいきなり低い哄笑が聞こえて、私は首に何かを突き立てられ意識を失った。
…意識が消える寸前、大好きだった友達が嬉しそうに何かを言っていたけど、それすらも、すぐに視界の端に消えた…。



【バンパイヤン視点】

暗い闇の中、じぃっと窓の中を凝視する。
中にはそわそわと俺を待っている美味しそうな喪子。俺だけの小鳥。

「喪子ちゃん、開けて」

しばらく眺めた後、窓をこつこつ叩いて合図を送った。
これを初めてからもうずいぶん経つのに、未だにはしゃぐ喪子が可愛い。

「ヤン君、いらっしゃい」
いつものはにかんだ笑顔、なんの疑いもなく窓を開けて俺を招き入れる無邪気さが何よりも愛しくて愚かしい。
俺を何者とも知らないで、適当についた嘘を未だに信じて全幅の信頼を置いている。

なぁ喪子、俺はお前が見つけるずっと前から、お前を見ていたんだよ。
知らないだろう、お前が生まれる前から、どんなに俺がお前を欲していたか。

二人でベッドに腰掛け、外の話をする。
こんなに近くにいるのに触れることができないのは辛い。
人間如きに興味を持つことが憎くて仕方ない。
今すぐ白い首筋にかぶりついて、屋敷に連れ帰ることができたなら、この家さえ無ければすぐに俺のものに出来るのに……
……あぁ、喉が渇く。細胞の一つ一つが「これ」が欲しいと叫んでいるのに。

……まぁ、それも今日で終わりだろう。
喪子の外への憧れは充分強くなった筈だ。後は自分から望むのを待てばいい。

「ヤン君、今日はなんの話をしてくれるの?」
 ―さぁ喪子、望みを言え

「私、ヤン君のしてくれる友達の話、大好きなんだ」
 ―ここから出たいと早く

「早く体を治して、学校に行ってみたい」
 ―まだ駄目なのか…?

「内緒で外に出れたらいいのにね」

―あぁ、その答えを待っていた…!

待ちわびた言葉への喜びに顔が歪んだ途端、下を向いていた喪子の体がびくりと跳ねる。

「じゃあ、僕が連れていってあげるよ」

顔を即座に戻し、いつもの笑顔で喪子を見る。
怯えている顔を見るのは久しぶりだが、もう遅い。
長かったがもう少しだ。喪子、哀れな喪子、俺が檻から出してやろう。

「でも、外に出たら怒られちゃうよ」
「すぐ戻れば大丈夫だよ、学校行ってみたくない?」
「夜は怖いから、明日の昼に行こうよ」
「昼間は執事が見張ってでられないじゃないか」
「でm「喪子ちゃんは僕のこと、嫌い?」
言葉を強引に被せ、切札を出す。
「僕は好きだよ。でも嫌ならやめる。もうここには来ない」

隣で狼狽える気配。顔を背けて嘲笑った口元を隠し、肩を震わせる。
お前は優しいから、こうすれば拒否なんてしないだろう?

喪子、喪子、喪子…!あぁ、この時をどれだけ待ったことか…!
愛おしく哀れで愚かしい喪子、あぁ…

 「やっと捕まえた」

窓から喪子を出してすぐ、首に牙を突き立てる。
甘く、温かい血が喉を伝い落ちるのが惜しくて、強く抱き締め、何度も哄笑いながら愛してると叫び続けた。

あはっ、あははは…!
なぁ、外だぞ、出たかったろう、喪子、見てみろ、もう見えないか?
大丈夫、日の光が見れなくても、学校とやらに行けなくても、俺がいてやる。
これからは永遠に二人で暮らそう!あはは、嬉しいなぁ、なぁ喪子!?

―お前はもう、俺のものだ。






185(3): 彼氏いない歴774年 11/01/19 12:05 ID:pgUqooje(3/3) AAS
長くてすみませんすみませんこれで終わりです。

★バンパイヤン設定

喪子は300年前にバンパイヤンに愛された聖女の生まれ変わり。
ヤンは生まれて初めて人を愛するが、聖女は美しいヤンの誘惑を拒否し、真っ向からヤンの愛を否定する。
しかも神の加護を受けているから無理矢理想いを遂げるのも不可能。
手に入らない愛に飢え、ヤンデレ発症したバンパイヤンは街の住人達をそそのかし、聖女を魔女裁判で火刑にかけることに。
ただ、ヤンの計画では燃やされる寸前に契約を持ちかけ助ける筈が、聖女は「主と同じ死に方ができる」とそのまま生き絶えてしまう。
聖女はその後何度も生まれ変わり、ヤンも毎回探しだしアプローチするけど、攻略がハードモードの為その都度失敗。

ここら辺でヤンは彼女が生まれてからでは計画が遅いと考え直す。
なので今回は喪子が生まれる前から親(本当は血縁ない教会関係者)や執事(エクソシスト)にバレない程度に毒素を混ぜ、力を弱め、小さい内から彼女に取り入る準備をした。
それでも結局喪子が生まれた途端家が聖域になって呼ばれないと入れないし、触れないハードモードなんだけど、逆に喪子が聖域を出たいと望めば神の庇護から出たということでやりたい放題できる。

それゆえの光源氏計画。
喪子はこのあとヤンの眷族にされてお持ち帰りされる予定です。

ヤンデレの傾向はほとんど外(安全)→家(ヤンデレが束縛)だから、
家(安全)→外(ヤンデレが束縛)という逆バージョンやってみたかったんですすみません。

…ところで苛烈なヤンデレと関西ヤンデレ好きなんだけど、書き手さんは皆ヤンデレの元に行ってしまったんだろうか

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