あの日喪子がきちんと門限を破らず帰宅すれば、こんなことにはならなかった。
喪子は今、いわゆる座敷牢に軟禁されていた。
赤く塗られた格子状の牢。
少し湿気ていて黴臭い畳。
橙の頼りなさげな灯火の行燈。
そして窓一つない土壁…。
昼夜の判断すらできない状況だ。
もう幾日経ったのかもわからない。
悲観に暮れている喪子だったが僅かな足音が聞こえ体を硬直させた。
足音が大きくなってくると同時に喪子の心臓も早鐘のように鳴り響く。
やがて黒髪の男性が格子の牢の前に姿を見せた。
彼は美味しそうなご飯、そしてオムツを手にしている。
「喪子さん、お加減はいかがでしょうか。」
「っヤン男さん…。」
彼、もといヤン男は喪子をこの座敷牢に軟禁した張本人である
今や喪子はヤン男無しでは満足に食べることも排泄することもままならない…。
以前はとても優しかったのに、突然ヤン男は、喪子が他の男に狙われていると切
羽詰まったように語り出したのだ。
まさか、と喪子は笑って相手にしなかった。
その日が皮切りになったのだろうか。
一緒に住もうとヤン男は言いだした。
ヤン男の家は今時ない程の広い日本家屋で喪子も二つ返事に承諾した。
引っ越すまでの期間、ヤン男はひどく焦燥感に駆られた様子だったが、引っ越しを終えると
「これでもう喪子さんは安心ですね。だって…これからはずっと一緒にいられるんですから。」
そう言って幸せそうにヤン男の笑ったのを喪子は何も考えずに喜んだ。
ある夜、喪子が近くのコンビニに行って来るとヤン男に告げると駄目だと言い張って聞かなかった。
「何を仰るんですか!?もう七時ですよ…!」
「…へ?まだ七時じゃない。」
「駄目です、いけません、こんな時間に外出なんて。」
「大丈夫だよー。すぐ近くだし20分もあれば帰って来るって!」
喪子は財布を片手に家を出る。
コンビニに入るとお馴染みのメロディが店内に鳴り響きいらっしゃいませえ、と間延びした声でやる気の無さそうな、若い男性の店員が声を上げた。
なんとなく喪子は嫌だなと感じながらも目当ての雑誌や菓子類等を抱えレジへ向かった。
さっさと会計を済ませたいと思いながら財布を開けると急に店員に声を掛けられた。
「あの、もしかして喪子…?」
「え?…あ、ああ!リア男くん!?」
「すっげえ久し振りだなー、高校以来じゃん!」
「だねー。バイト?」
「おう。結構時給良くてさー。そうだ今客いねえからちょっと話相手なってくれよ。」
「ええ?もー、しょうがないなあ。」
口ではそう言いながらも喪子は内心嬉しかった。
リア男は高校のときの喪子の数少ない友人であり、少し話かけにくいと言われていた喪子に度々話しかけに来てくれていた。
漫画やゲームが好きという共通した趣味を持っていたので貸し借りも何度かしたことがある。
久しぶりに昔の友人に会えたことにテンションも上がり二人は話が弾んだ。
何分経ったのだろう。
二人の会話は他の客の来店により中断させられた。
またね、と別れの挨拶をして喪子は足取り軽く家路につく。
横開きの戸をガラガラ開けると中は電気も付いておらず真っ暗だった。
「あれ?おかしいな…ただいまー。ヤン男さーん?」
居間に辿り着いたがやはり返事は無く、喪子は首を傾げるばかりだった。
別の部屋だろうか、そう思っていた矢先、背後に気配を感じ喪子は振り向く。
そこに立っていたのはヤン男だった。
薄暗くて、表情がよくわからない…。
「もこさん。おかえりなさい。」
穏やかなヤン男の声に何故か違和感を覚えながらも喪子はヤン男が居たことに安堵する。
「どうしたの?真っ暗にして、びっくりしちゃったじゃな…」
「ねえ喪子さん、喪子さんがさっき話していた男誰ですか?私の把握してる男じ
ゃありませんでした。それも随分親しげでしたよね。あんなに長い間話していた
なんてとっても親しい間柄なんでしょうか?喪子さんたらとても楽しそうで──
─」
喪子の話を遮り急き切って尋ねるヤン男に喪子は戸惑った。
「落ち着いてよ、急にそんな…!」
「やっぱり喪子さんを外に出すのは失敗でした。」
暗くてよく見えないが喪子はヤン男が着物の袂からなにかロープのようなものを
取り出したのを確認した。
「あまり手荒な真似などしたくはありませんが…仕方ありません。喪子さんがい
けないんですよ。」
何が起きたのかわからなかった。
喪子はえも言われぬまま押し倒され後ろ手で縛りあげられてしまった。
「二十分で帰ってくる?どの口がそんなこと仰ったんでしょうかねえ…。ああ、
このお口でしたか。」
気付きませんで…そう言ってヤン男は喪子の口に手を差し入れた。
嘔吐するぎりぎりまで喉の奥に指を突っ込んだり、人差し指の爪で舌や頬の肉を
引っ掻いたりヤン男は遠慮などさも知らないかのように喪子の咥内を荒らした。
「ぐ…うぐっ。」
「苦しいですか?痛いですか?」
「うむぅっ…!」
「そうですか。嬉しいです。」
軟禁生活が始まったのはその日からである。
喪子は牢屋越しにヤン男を眺める。
いや、眺められているのは喪子だ。
ヤン男は小さな机に手荷物を置きその場に腰を落ち着けた。
片膝を抱えたヤン男は御馳走を残さず食べ尽くすように、喪子の頭の先から爪先
を貪る。
これではまるで動物園だと喪子はその都度嫌な気分にさせられていた。
しかし食事を得る為に、ここを出る為に、最低限の生活ができるよう、喪子はヤン男に懇願する。
なるべく同情を買えるよう媚びた声で必死にオネガイをするのだ。
何度もヤン男の名前を呼び
「おねがい、おねがい…。」
と強請る。
そうしてやっとヤン男を満足させることができれば格子の牢越しに食べ物を食べさせてくれる。
「はい、あーんしてください。」
「あ…。」
これは役がではないだろうか。
ヤン男はどことなく嬉しそうだ。
手に棘が刺さるのも厭わず喪子は牢屋に縋り付いて食べ物をヤン男に食べさせてもらう。
甲斐甲斐しくもヤン男は食後喪子の口の周りを優しく丁寧に拭いてくれる。
このような行為に喪子は毎度混乱させられる。
酷いのに、優しい。
どちらが本当のヤン男なのかわからない。
喪子はこの差は一体何なのだろうかと悩み続けていた。
食事が終ると今度はオムツを換える時間だ。
やっとヤン男は牢内に入ってくる。
ヤン男は喪子の襦袢の裾をひらげてオムツに手をかけウエストのテープを大きな音を出させながら剥がした。
牢内の構造なのか音はよく響く。
羞恥心からか喪子は頬に朱を散らせた。
心なし目許も潤んでいるようで、ヤン男はその表情を引き出すためにわざとそのようにするのだ。
秘部を露わにされウエットティッシュで拭き取られる。
死んでしまいたいと思うほど恥ずかしかった。
こんな歳でオムツを替えられるというのは屈辱以外のなんでもないだろうと、喪子は後に考える。
替えられている最中は頭が真っ白で固く目を瞑って耐えているせいで何も考えられないのである。
だが今日は違ったようだ。
ヤン男の「おや…。」という声に反応し、薄目でヤン男を捉える。
まんぐりがえしの格好でまじまじと人に晒さない部分を観察され自らの手で押さ
えつけている太股が痙攣したように一度だけピクリと動く。
もちろんヤン男に命じられこんな格好をしている。
このような恥ずかしい体勢でなくともオムツはきちんと替えられるのに、やはり
ヤン男は底意地が悪かった。
「少しだけですが、お尻の辺り、かぶれているみたいですね。」
「…え、あっ。ああ。ちょっと、痒いなって思ってた…。」
軟禁され、しかもこのような状態で何普通に会話しているのだろうか。
案外自分は図太いのかもしれないと喪子の頭の片隅でそんなことが浮かぶ。 小気味よい音はやはり牢内でこだました。
痛みより何より驚きの方が大きく勝った。
柔和な表情で手を振り上げるヤン男。
次の衝撃に備え喪子は体を硬くさせるも衝撃はやってこない。
代わりに生温いぬめった何かが喪子の皮膚を撫ぜる。
「やめてよ!何してるの!?」
見てわからないのかとヤン男は喪子を一瞥し行為を続ける。
荒れた部分のみに入念に舌を這わせられピリピリとした痛みに喪子は身を捩りながら耐える。
ずっとそうされているとやがて痛みの感覚がなくなった。
次に襲って来たのはくすぐったいような快感だった。
思わず抵抗しそうになったが寸でのところで喪子はそれを押し留めることに成功する。
以前抵抗した際に酷い目に遭わされたのだ。
喪子は自分の学習能力に感謝した。
舌は徐々に喪子の中心に近付いていく。
割れ目を下から上へ焦らすようにゆっくり舐め上げられると喪子はついあられもない声を上げてしまった。
「声も我慢できないなんてはしたない。」
今まで撫でられていた右太股を張られた。
不可抗力で力が入ってしまい喪子の蜜壺からは愛液がトロリと尻穴にまで伝ってしまう。
情けなさに泣いてしまいそうだったがヤン男の穿いていた足袋を口に突っ込まれた上、指で豆のようなそれを転がされそれどころでなくなってしまった。
「それでも噛んで我慢してなさい。」
「ぅん…うぁ、くぅうんっ。」
「啼き方がまるで犬ですね。」
「くうっ…ん。」
「お似合いですよ。とっても。今度首輪でも買ってきて差し上げます。」
「あうふぁろうおらいあふぅっ。」
「おや犬が喋った。」
おどけて笑いながらもヤン男の指は忙しなく動いておりまもなく喪子は達してしまう。
「掻いてはいけませんよ?もっと荒れてしまいますから。痒いときはこうして――」
喪子の柔らかな尻に衝撃が走った。
「叩けばいいんですよ。ね…?」
小気味よい音はやはり牢内でこだました。
痛みより何より驚きの方が大きく勝った。
柔和な表情で手を振り上げるヤン男。
次の衝撃に備え喪子は体を硬くさせるも衝撃はやってこない。
代わりに生温いぬめった何かが喪子の皮膚を撫ぜる。
「やめてよ!何してるの!?」
見てわからないのかとヤン男は喪子を一瞥し行為を続ける。
荒れた部分のみに入念に舌を這わせられピリピリとした痛みに喪子は身を捩りながら耐える。
ずっとそうされているとやがて痛みの感覚がなくなった。
次に襲って来たのはくすぐったいような快感だった。
思わず抵抗しそうになったが寸でのところで喪子はそれを押し留めることに成功する。
以前抵抗した際に酷い目に遭わされたのだ。
喪子は自分の学習能力に感謝した。
舌は徐々に喪子の中心に近付いていく。
割れ目を下から上へ焦らすようにゆっくり舐め上げられると喪子はついあられもない声を上げてしまった。
「声も我慢できないなんてはしたない。」
今まで撫でられていた右太股を張られた。
不可抗力で力が入ってしまい喪子の蜜壺からは愛液がトロリと尻穴にまで伝ってしまう。
情けなさに泣いてしまいそうだったがヤン男の穿いていた足袋を口に突っ込まれた上、指で豆のようなそれを転がされそれどころでなくなってしまった。
「それでも噛んで我慢してなさい。」
「ぅん…うぁ、くぅうんっ。」
「啼き方がまるで犬ですね。」
「くうっ…ん。」
「お似合いですよ。とっても。今度首輪でも買ってきて差し上げます。」
「あうふぁろうおらいあふぅっ。」
「おや犬が喋った。」
おどけて笑いながらもヤン男の指は忙しなく動いておりまもなく喪子は達してしまう。
「堪え性もない牝犬ですか…。」
「あう…。」
未だ付きまとう快感に喪子は頭をぼうっとさせながらもこの座敷牢からの脱出を
僅かに考えていた。
鉛のような手で口から足袋を取り出す。
「ヤン男さん。」
「どうしましたか。」
「ここから出してください。ヤン男さんの言いつけは絶対守るし、もう家からは出ません。それにお風呂…お風呂入りたい、です。だから―――」
「それ、自分の要望を通したいからそんな物わかりの良い事を仰ってるんでしょう。」
訝しむかのようにヤン男は喪子をねめつける。
お前が言うなと喪子は怒鳴りつけたかった。
舌先まで出かかっていた言葉を飲み込んで否定する。
「違うよ。どうしてそんなこと言うの?私のこと信じられないの?」
この喪子の言葉はかなり利いたようだ。
少々渋ったもののヤン男は了承してくれた。
「いいですよ。じゃあ、一緒に出ましょう。お風呂沸かしますね。」
「うん。ありがと…。」
どうやら今は夜のようだ。
ヤン男がお風呂を沸かしに行ってる間に逃げよう…。
それであのコンビニに行ってリア男くんに助けてもらおう。
薄暗い石畳の廊下を通りギシギシと悲鳴を上げる相当古いであろう階段を登りながら喪子は逃げる算段をつけていた。
嬉しさを少しでも表に出さないように細心の注意を払いながら。
居間で待っててくださいね、という言葉を聞き風呂場に向かうヤン男を見届け、足音を立てないようゆっくりと廊下を進んだ。
しかし喪子は急遽行先を変更する。
あのヤン男のことだから玄関から出ると待ち構えていて、なんてことになりかねない。
勝手口から出よう。
気がついて良かった、などと考えているうちにもう勝手口へと着いてしまった。
薄い戸を開けると喪子の考え通りやはりヤン男はいなかった。
吹いてきた風に少し肌寒さを覚える。
ドアノブを捻って体を震わせながら外に出る。
やっと自由になれるのだ。
喪子はドアノブから手を放した。
そうするとゆるゆると勝手に戸が閉まるのである。
元の位置に収まろうと喪子の視界から戸が消えていくと共に出現する何か。
「おでかけでもするんですか。こんなじかんに。やっぱりあなたはいけないこですね。」
現われた何かは、絵画の中の少女のように優しげに微笑んだヤン男だった。
完全に予想外の出来事だ。
喪子は恐怖や疑問で頭が混乱する。
「どうして。」
どうして。とたった一言尋ねるのが今の喪子にできる最大限である。
言えたことすら奇跡に近いかもしれない。
笑顔のままずっと表情の変わらないヤン男。
「どうして。ですか?あなたの考えることはみんなわかります。
だって私はあなたを世界で一番好きなんですから。」
顔をほころばせヤン男は続ける。
「でも、あなたは違うんですね。あなたは私のことが好きじゃない。」
「それは…正直、わからない。だって前はあんなに優しかったのに、
今は全然別の人みたいに変わって…。」
辺りが静まりかえる。
風に揺られた葉の音だけしか聞こえない。
「もう、本当にどうでもよくなってきました。」
「え?」
「たとえ喪子さんが私をどう思っていようがいまいがもう構いません。
あなたがどんな状態であってももうどうでもいい。
ただ僕のそばにさえいてくれたらどうでもいい。」
ヤン男は力強く腕をひっぱり喪子を抱えあげる。
喪子は僕というヤン男が口にしたことのない一人称に疑問を抱いた。
そして見間違いだろうか。
喪子を抱えあげた瞬間のヤン男の目には何か光るものがあった気がしたが、
何も聞くこともできず二人の影は家の中へと消えていった。
廊下の壁に飾られた二人で撮った写真が喪子の視界の隅でスライドしていく。
額縁の中の喪子とヤン男は幸せそうだ。
あの頃はよかったなあ、などと少し感傷的な気持ちになる。
喪子の小さい頃のアルバムを中睦まじく肩を並べて覗き込んでいた情景が瞼の裏で流れた。
ヤン男は小さい頃の喪子の話を聞きたがった。
喪子が話してやると喜んだ。
でも喪子はヤン男の子供の頃を知らない。
思い返せばヤン男は自分自身のことをあまり語りたがらなかった。
喪子が思考に耽っている間に目的の場所へ着いたのかヤン男はいきなり立ち止まる。
「お風呂場…。」
「ええ。そうですよ、喪子さんお風呂入りたいって仰ったでしょう?」
嫌な予感がした。
「私が綺麗に洗って差し上げます、よっ。」
喪子は湯船に放り投げられた。
大きな水しぶきはあちこちを濡らす。
これが冷水なら喪子は心臓麻痺を起してもおかしくない状況だ。
腰を打ちつけた喪子の体は痛みで動きが鈍った。
頭にヤン男の手が乗せられる。
「や、止めて!」
「やめません。」
喪子の髪を鷲掴みにし、ヤン男は容赦無くその手に力を込める。
ぐん、と頭皮が引っ張られる感覚。
喪子の顔はお湯に勢いよく沈み込む。
もがいても喪子の手はただ空を掻くばかり。
大小の水泡が出来てはまた消えていく。
数十秒で喪子は再び新鮮な空気を吸うことができるようになった。
鼻から水が入ったのか咳込み苦しそうだ。
「喪子さん、私とずっといっしょにいてくれますか?」
誰がこんなことをする人と一緒にいたいと思うんだ。
喪子の唇はいいえの形を作ろうとした。
だがヤン男は喪子の口が横の形になるのをすぐさま捉え手に力を入れた。
水面を叩く軽快な音が風呂場に何度も何度も響く。
お互い切れ切れに息を切らしている。
「ねえ…喪子さん、一緒に、いてくれますよね…。」
「は、い。」
ストックホルム症候群を例に出すと、人間は自分の身が危険だと判断すると
身を守るため危険だとされる対象者に対して無意識に好意を持ってしまう。
喪子の返事は上記の作用なのか、それとも根負けによるものか、どちらなのだろう。
もしかしたらこれらの二つでは無い全く想像もつかない別物かもしれない。
しかしやっと頷いた喪子にヤン男は強張っていた表情を緩めた。
「本当ですね、本当ですね。もう嘘吐いたらだめですよ。約束ですよ。」
「はい。」
「じゃあ体きれいにしましょうか。上がってください。」
「はい。」
言われた通りに湯船から這い出た喪子の水を含んで重たくなった襦袢をヤン男は剥ぎ取った。
「着衣も捨てがたかったんですが、洗うのには邪魔ですから。」
「そうだね、ありがと。」
「やけに素直ですねえ。私とても嬉しいです。」
ヤン男に促され喪子はプラスチックの風呂椅子に座る。
シャンプーのボトルを何度かプッシュし喪子の髪を洗い始めた。
ヤン男は自分の衣服が濡れてもお構いなしのようだ。
十分泡立った髪をシャワーで洗い流しコンディショナーもさっさと済ませてしまった。
「あの、体は自分で洗う…。」
白い固形石鹸を持つヤン男の腕を恥ずかしそうに喪子は掴んだ。
細く見えた腕だったが握ってみると喪子の手では回りきらない太さだった。
すると喪子は急にヤン男に抱きつかれた。
やや驚きながら問う。
「どうしたの?服濡れちゃうよ。」
「本当に喪子さんは可愛い方だ。良い子にはゴホウビをあげなければ。」
目を細めてヤン男は石鹸を掌で泡立てる。
そうして喪子の耳朶を甘噛みし犬のようにべろんと舐めだした。
「まずは首から洗っていきましょう。」
耳元で吐息たっぷりの低い声で囁かれる。
唇を吸われると小鳥の鳴いたようなリップ音がした。
ヤン男は両手で喪子の首を包み込む。
ゆるゆると動く手は洗うというよりも愛撫の手つきだ。
泡で滑りやすくなるそれはいつもより余計に喪子を感じさせてしまう。
胸、背中、腹、足へと骨ばった手は這いまわる。
ただし一番喪子が感じるところは徹底的に避けているようである。
そのあたりにヤン男の意地の悪さが伺えるだろう。
「今は声、我慢しなくてもいいんですが…。まあでも喪子さん耐えるのすきですもんね。いいですよ好きにしてください。」
「あっ、はいぃ…。っく。」
「そろそろ触ってほしいところあるでしょう?」
「くぅんっ。は、いっ。ちくび、触ってくださっ…あ、ひあっやあ…。」
乳首の周りを撫でていたヤン男の指は喪子の乳首をきゅっと摘まむ。
指で転がし爪を立て胸全体を円を描くよう揉み砕く。
空いている胸は舌を尖らせ突いたり吸ったり好き放題だ。
「素直な喪子さん、大好きです。でももっと他にありますよね。教えてください。」
「ああぁんっ、はああ。ここぉ…。」
ヤン男の今まで太股を撫でていた手を取り自らの茂みに導く。
「ふふ、喪子さんのいんらん。どこでそんな誘い方覚えてきたのやら…。」
「ヤン男さんが―――。」
「ああすっかり忘れてました。そうでしたね、私が教え込んだんですよね。その体に。」
ヤン男は立て掛けていたビニールでできたマットを床に敷いた。
このヤン男の用意周到なところはどこからくるのだろうか。
離れていく体温に寂しさを覚えながらもぼおっと喪子は一連の動作に感心する。
「寝そべって…。ええそうです。イイコ。ほら、足開きなさい。」
強く張られた太股に大きな紅葉の葉が落ちた。
言われた通り足を開いたのにヤン男はせせら笑う。
「すごい、いつもよりぐちゃぐちゃしてて。何にそんな感じたんですか。」
「うあっ。」
指で肉芽弾かれた喪子は電流を通したかのようにびくびく反応する。
一本二本と入れられた指は鉤型になりざらりとした喪子のうち壁を刺激した。
するとずっと焦らされたのもあったのかあっさりと達してしまった。
「まだ挿入れてないのに…。でも今挿入すると喪子さんイイ反応しますよね。お尻こっちに向けなさい。」
「こう、ですか。」
「そうですよ。足がくがくですけど大丈夫ですか?滑らないよう手は突っ張っていてくださいね。」
言いながらヤン男は歯でコンドームの袋を破り怒張した自らのモノに装着した。
喪子の腰に手を掛け一気に突いた。
喪子はこの膣内の広げられていく感覚は嫌ではなかった。
だが遠慮なく自分の一番奥を突かれると痛いので勘弁してほしかった。
肌の打ち合う音も自分の喘ぐ声もヤン男の息使いも全部風呂場では反響する。
大嫌いで大好きな音。
手を握りしめ這いつくばり噛み締めた歯の隙間から息を吐き突かれている様は
さながら犬の交尾を見ているようである。
早く射精してくれないかなと思い喪子はヤン男の名前を連呼する。
「ヤン男さ、ヤン男さんっ。す、スキです。スキ…。」
「私も、好きですよ…っ。」
目を開ける。
喪子は布団に寝ていた。
あの牢屋内の低い天井ではなくて自分が軟禁される前に
ヤン男と共に寝ていた部屋の天井だ。
夢を見ていたのか、長い夢の上悪夢だったなあと鼻の奥がツンとした。
「目が覚めました?」
「ヤン男さん?」
「はい。」
悪夢の中のヤン男とはまるで別人かと思うほど
天使のように微笑するヤン男がそこにいた。
「よかった…。」
「悪い夢でも見ていたんですか?」
「うん。でも、もう大丈夫だよ、ほら!」
ジャラリ、鎖の音、違和感のある首。
「あ、れ…?」
「買ってきましたよ、喪子さんに似合う首輪。」
「そうなの、アリガトウ…っ。」
今までの出来事は悪夢なんかじゃなかったのだ。
障子から漏れる光が、眩しすぎた。
目がしみる…。
「泣くほど喜んでくれるなんて。贈り物のし甲斐があります。」
「ウン。」
「ペットショップの方に教えていただきまして…。
犬のリードは短い方がいい、と。」
喪子さん、もこさんならこのイミ、わかりますよね―――?
冷たい頬はそのままに、喪子は笑った。
22: 彼氏いない歴774年 10/01/13 23:53 ID:0QD5piJJ(13/13) AAS
すいません誤字がありました。
五番目
「これは役がではないだろうか。」→「これは訳が逆ではないだろうか」
でした。
失礼しました。
23: 彼氏いない歴774年 10/01/14 00:06 ID:cPfI0T9l(1/9) AAS
また誤字…というか脱字です
五番目
「片膝を抱えたヤン男は御馳走を残さず食べ尽くすように、喪子の頭の先から爪先を貪る。」の
「貪る」の後に「ように眺めるのだ。」を入れてお読みくださいませ、
なんで脱字があるんだ。
改行もおかしくなるし…やっぱヤンデレの仕業か!
もっと精進するため頑張ります…!