管理人さんが帰ってくるまでの仮まとめです

彼女が私の勤める靴屋にやってきたのはまだ年端もいかない中学生の頃でした。
まだ慣れぬセーラー服が初々しい頃でした。

「娘のために靴をオーダーメイドしたいのです」

セーラー服にビーチサンダルという不思議な格好でやってきた彼女の母はそう言いました。
彼女は足の形が非常に不格好でした。
その足で学校指定のローファーを無理に履き続けた結果、
いたる所が擦り剥け腫れ上がってしまったのです。
ただ歩くことさえ痛いのか彼女はヨチヨチと子供のように歩きます。
「どうぞお掛けください」
彼女は恥ずかしそうに頭を下げると椅子に座りました。
「裸足で歩く時も痛みがあったりするのかな?
腫れた所や傷のある所以外で痛みが走るとかはないかい?」
「いえ、裸足の時は……痛くないです」
「そう、良かった。じゃあこの機械の上に乗ってくれるかな、
これは足の裏にどんな風に体重がのっているか調べる機械なんだ」
彼女が乗ると足の裏全体で身体を支えていないことがわかりました。
痛む足を庇って妙な体勢で立ったりしていたのでしょう。
「小学生の頃は足が痛くなったりすることはなかった?」
「小学生の頃はなかったです」
 原因はやはり靴でした。
私は彼女の足の型をとり、歩き方の癖を見抜き、
今後の学生生活を楽しく過ごせるような靴を作り始めました。

その間彼女がこれ以上困らなくてすむように、よく行く病院で
『学校指定の靴では骨に異常が出て今後の生活に多大な支障をきたす可能性がある。
専用の靴が出来るまでは運動靴を履かせるように』という旨の
診断書を書かせ学校に提出させました。
靴の制作には一ヶ月以上掛かりましたが、満足いく靴が完成しました。

「こんにちは」
 靴の完成を知らせると、彼女は土曜日にやってきました。
足の怪我はだいぶ良くなったのか足を庇うような歩き方もしておらず、
元気そうにしていました。
「履いてみて下さい」
私の作った靴に彼女は恐る恐る自らの足を入れました。
そして彼女は一度小首を傾げ呟いたのです。
「あれ、痛くない……」
「さぁ立って歩いてみて下さい」
彼女は立ち上がり歩くと満面の笑みで言うのです。
「わ……わ、すごいよお母さん!痛くない、全然痛くないのこの靴!すごいよ!」
彼女は初めて飛ぶことが出来た雛鳥のようにはしゃぐのです。

これが私と喪子の馴れ初めでございます。
 

喪子が高校生になる時に靴を新調したのも私でした。
私の靴が彼女の足を守っていることに私はとても誇りを持っていました。
その頃には喪子も私を非常に慕ってくれるようになっていました。

そして彼女はそのまま順調に大学生へとなったのです。
春から夏にかけてアルバイトを頑張ったという喪子が
一人で私のもとへやってきたのはまだ残暑の厳しい九月の頃でした。

「作って欲しい靴があるんです」

喪子の希望の靴はシンプルで可愛らしいものでした。
一般的な靴屋に行けば希望に近いデザインの靴を入手するのは簡単だったでしょう

しかし喪子の足ではそれを履くことが出来ないため私に靴の制作を頼んできたのです。
大学で同期生に触発されてお洒落な格好をしたいという要求が出てきたのでしょう。
私はただの仕事という以上の気持ちをもって、その依頼を引き受けました。
それから喪子は月に何度か店に顔を出すようになったのです。
初めてオーダーした靴の出来が気になっているようでした。

「出来上がるのが楽しみ?」
「はい、この靴があれば私もお洒落が出来るんです。
そしたら合コンとか行ってみるんです」

私はその時の言葉に冷たい水を掛けられたような、
硬い石で殴られたような衝撃を受けました。
合コン? 私がいるのに?
私はその時自分自身が抱いた感情にも戸惑いを覚えました。
恋仲でもない、ただの靴屋とお得意様という関係のはずなのに。
この感情は嫉妬だろうか。
その時は戸惑いを悟られぬよう平静を保つのが精一杯でした。
それからというもの寝ても覚めても頭の中は喪子のことばかり。
靴を完成させて喜ぶ喪子の笑顔を一日でも早く見たいという気持ちと、
この靴が完成したとしても合コンなんてものには
なんとか参加させたくないという気持ち。
私は元来自分は大人しい性格で感情に振り回されることなんて一生ないと思っていたために、
喪子への感情で日常が崩れていくのを打つ手を見つけられぬまま見ていることしか出来なかったのです。
そしているうちにも靴は完成してしまい喪子が受け取りにやってくる日がきてしまいました。

「わぁ素敵!やっぱりお願いして良かった!」
今までは喪子のこの笑顔は私の心を癒していたのに、
今は何故か神経をザラザラと逆撫でていくようでした。
心が冷たくなり、やり場のない怒りが私を支配していきました。
「ヤンさん大好き!」
えぇ、私も。
ですが、私は君以上に君のことを。

朝と夜が涼しくなってきた頃、喪子は店に顔を出さなくなりました。
他の人間は気楽に「ついに男でも出来たのかなぁ」なんて笑って
話題にしていましたが、私の心ははそれどころではありませんでした。
悔しい、憎たらしい、いるのかいないのかも分からない男に対して
私は憎悪の念を抱いていました。
昼休み、私が気晴らしに外を歩いていると横から腕をひかれました。

「ヤーンさん」

「あぁ喪子ちゃん」
勝手に喪子を抱き締めそうになった腕と止めて、柔らかな肩へと手を置きました。
「久しぶりだね」
「はい。ヤンさんお元気でしたか?」
君に会うまでは気が狂ってしまいそうで困っていました。
「えぇ元気でしたよ、喪子ちゃんも元気でしたか?」
「はい、おかげさまで。そうだヤンさん、この格好どうですか?」

喪子の格好はとても可愛らしいものでした。
オープンバストの黒いミニ丈のワンピース、フリルのついたシャツ、
膝より少し上まで隠せる黒い靴下、そして私が作った靴。
「とても可愛いよ。でもスカートの丈が少し短くないかい?」
少しでも捲れたら下着が見えてしまうんじゃないかという長さ。
これではただ町中を歩かせるのだって心配でした。

「あう、やっぱりそう思いますか?服屋の店員さんにデートで
彼のハートを鷲掴める服下さいって言ったら
こうなっちゃったんですよね。男は太腿で落とせって……」
「なッ……」
デート、彼女の愛らしい唇はそう言っただろうか。
「ちょっと早いけど山奥に紅葉を見に行くんです、車で」

喪子は男を知らない。
疑うことを知らない喪子は紅葉を観るコースから離れても気付かないだろう。
車が密室だということも、山奥では悲鳴をあげても誰も助けに来ないことも。
「会話が続かなかったらどうしようとか色々心配なこといっぱいなんですよね」
不安がるポイントはそこじゃない。
まったく君は昔から妙なところで抜けたことを言う。
「じゃあ私と先にデートをしてみようか」
「えっ」
「一度行っておけばどんなものかわかっていいだろう?」
「行きます、是非。お願いしますね」
ほら単純だ。
こんな罠のような誘いに簡単にのるなんて。
「楽しみにしているといい」
君に男という生き物を教えてあげますよ、一からね。



喪子とのデートを取り付けたあと、私は年甲斐もなく浮き足だっていました。
スーツにしようか、もっとカジュアルな方がいいのか。
ネクタイは、ベルトの色は、車は日本車も外車も持っているが
どちらの方が好きなのか。
喪子のことを思うだけで頬が緩んでしまいます。

「ついに明日……いや、やっと明日か。
まだ何も決っていないのに明日が来るのがこんなに待ち遠しいとは」
今頃喪子はどうしているのか。
私と同じように胸が高鳴って眠れなくなっていたりするのだろうか。
「あぁ喪子! ……今頃どうしているんだろうか」
結局デートへの準備が終わったのは
日付がかわってだいぶ経ってからのことでした。

朝、デート当日。
天気予報ではこの辺りは雨の心配はなさそうでしたが、
デートで行こうと思っている所は大雨になる心配があるようでした。
「雨か……」
とは言っても、基本は車で移動のデートです。
目的地で急に雨が降ってきたとしても特に困ることはありません。
大きめの傘を一本後部座席に乗せ、喪子を迎えに行きました。

喪子には前回会った時と同じ服装で来るようにと言っておいたので、
約束の場所で待っている喪子をすぐに見つけることが出来ました。
「お待たせ」
「いえ、私も今来たとこで」
車に乗った喪子は子供のようにキョロキョロと中を見ていました。
「もしかして緊張してる?」
「えっやっ……ちょっとだけ。高そうな車だったからちょっと驚きました」
「ははは。家と職場を往復するだけの毎日だからね、
車は少し奮発して買ったんだ」
「カッコイイー」
座席が大きめに作られているのが気に入っていました。
仕事が遅くになった時もこの車で少し休めば
事故を起こすことなく帰ることが出来たのです。
「退屈になったら眠ってもいいからね」

温暖化のせいか紅葉を観るには少し時期が早いようでした。
ですが観光客がやってきそうな店は例年通り営業を始めていました。
「まだちょっと早かったみたいだね」
「このままだと今度の時もまだ早そう。でも空気が澄んでて気持ち良い!」
ぐっと喪子が伸びをするとスカートが上がって下着が見えそうになりました。
観光客が少ないからまだいいものの、この無防備さはどうにかしなきゃいけません。
「ヤンさん、向こうでリスに餌があげられるみたいなんです。行ってみませんか」
「いいですよ、行きましょう」

リスに餌をあげてみようと看板が掲げられているものの、
肝心のリスは広い小屋の中どこにいるのかすぐにはわかりませんでした。
小屋の中に無造作に丸太がいくつも置いてあるだけのようでした。
「ヤンさんいたいた、リス!」
小屋の隅で何かをかじるリスが一匹。
丸太や壁とほぼ同じ色で同化してしまっていました。
「こんにちは、リスちゃんに餌あげてみませんか?」
飼育員がやってきて喪子に話し掛けてきました。
「あげてみたいです」
「ではこちらへどうぞ」
「ヤンさん行きましょう」
小屋の中での注意を一通り聞いて、分厚い手袋をはめて中へ入ります。
飼育員が丸太の上に餌をやるとどこからともなく
何匹ものリスが現れて餌を食べ始めました。
「手袋をした方の手を出して頂けますか?」
手を出すとその上に餌を置かれました。
「近くに持っていってあげてください。最初は警戒しますがすぐに乗ってきます」
言われた通りにするとリスはすぐに手に乗って餌を食べ始めました。
「可愛い〜」
このリスたちよりも君の方がずっと可愛らしいのに、
そう言いかけた台詞を飲み込むのは大変でした。
「いいなぁリス」
「え」
「一回でいいから動物みたいにのんびりと過ごしてみたい。
明日終わったら月曜だーとか、レポート書かなきゃとか、
テストが近いとか、全部全部忘れて」
「ーーいいですよ」
喪子の言葉に消え入るような声でした応えてあげることが出来ませんでした。
私の心は歓喜に満ちあふれていて
上手く声を出すことが出来なくなっていたのです。
現状から喪子を解放する、私にとっては簡単なことです。
曜日も大学もすぐに忘れさせてあげましょう。
それは簡単、非常に簡単なことなのです。

昼過ぎになると天気が急に悪くなってきました。
山の気紛れな変化なのか、天気予報でやっていた雨のための変化なのか、
空は暗雲で覆われていきました。
「一度車へ戻りましょうか。落雷でもあったら大変だ」
落雷なんて滅多に起きることではありません。
しかし、もしもの事が起きる可能性だってあるのです。
私は落雷よりもこの暗闇の中で喪子と車内という密室の中にいたいのもあったのですが。

「さぁ入って」
我々が車に戻って一息つくかつかないかのうちに
大粒の雨が空から降ってきました。
ガラスに叩きつけられる雨音のせいで車内にいても会話が難しくなってきました
そこで私は喪子の肩を抱き寄せ喪子に山から降りることを耳元でそっと告げました。
「山から降りよう、すぐに良くはなりそうにない」
喪子は何故か怯えた様子で頷くだけでした。
山道を駆け抜け始めると雷が光りました。
「きゃあああッ!」
喪子の悲鳴に驚き、車を路肩に停車させました。
「もしかして雷が苦手かい?」
「小さい頃から……雷は……」
「車の中にいれば大丈夫だよ」
「はい……」
運転を再開しようとしましたが、震える手が私の服の袖を掴んで離さないのです。
「そんなに怖いか」
「……子供みたいって思いましたか?」
「男は雷とかに弱い女の子に弱いものだよ。可愛い可愛い」
喪子は雷が光るたびに身体を跳ねさせて怯えていました。
次第に怯え疲れ、顔が青白くなってきました。
「しょうがないな」
助手席のリクライニングを限界まで倒し、喪子の視界を遮るように上に覆い被さりました。
「ヤン……さん……?」
「雷が怖いなら他のことで気を紛らわせればいいんだよ」
憔悴しきった喪子の顔を撫でる。
今からどんなことが起きるのか想像もつかないのか、
今から起きることなどはたまた想像もしていないのか、
喪子は状況に流されるままでした。
「口を開けてごらん。ほら、いいこだ、あーん」
気怠そうに開かれた口に私は唇を重ね、口内へと舌を挿入しました。
生暖かいが緊張で少し乾いた口内。
夢にまで見た喪子の唇を貪っていると、
状況が掴めたのか喪子が細い腕で懸命に私の胸を押してきました。
「んっ! んぅ……んうう!」
そんな抵抗も上顎を一舐めしてやればまたたく間になくなっていくのです。
私を突き飛ばそうとしていた腕は力が抜け、
せめて最後の抵抗と力を入れてジャケットを掴むも
それはまるで続きを要求するような仕草にしかなりえませんでした。
「は……あ、…んん……」
喪子の口から漏れる甘い吐息は私の劣情を簡単に煽りました。
初めて他人から与えられた快楽にのまれてしまい、法悦に浸っているのです。
「何も怖いことなんかない。優しくするからね」
ブラウスのボタンを外す指先が震えました。
この薄い布を剥がしてしまえば他の男がまだ目にしたことがない肌が
視界に入ってくるのですから。
桃色に染まった肌に真っ白なブラジャー、性急になって手荒にならぬように
自制するのが大変でした。
フロントホックを外すと大きな乳房が零れ、
掌で持ち上げるとマシュマロのような柔らかさです。
「ん……」
「あぁ喪子、今日がやってくるのをどんなに待ったことか。
もし痛かったり怖かったりしたら噛んでもいいからね、
それくらいされないと止まりそうにないんだ」
乳房を揉みながら無防備な首筋に舌を這わせると、
喪子はぶるりと身体を震わせてモジモジと脚を悩まし気に絡ませるのです。
「は……あぁ……」
「感度が良いね。ちゃんと初めてなのか不安だな」
本気で不安であるわけではありませんでした。
中学生の頃から喪子のことを知っているわけですから、
彼女がいかに異性に対して耐性がないのかはよく知っていたからです。
教室で友人と集まって談笑している方がずっと似合っているのです。
短いスカートはたくし上げる必要などなく、
忍び込ませた手はあっさりとショーツに届きました。
「やっ!」
私の手に驚いたのか今まで半ば放心状態だった喪子が驚いた声をあげました。
そして自分の状況にさらに驚いたのか
露になっていた乳房を隠すように背を向けて丸くなったのです。
「やっだぁ……なんで、なんでヤンさんが……こんなこと……」
喪子の声は震えていました。
たしかに喪子が言うようにここは車内であり、
蜜事をするには手狭でしかも他人に覗かれる心配もあります。
喪子はそれに驚いたんでしょう。
紳士である私がこんな所でことに及ぶはずがないと。
ですが今は喪子の苦手な雷が鳴り響いている山の中、
匿ってやれる場所はどこにもありません。
今の私に出来るのは喪子を快楽の海の中で誘い、
雷雲が去っていくまでの時間稼ぎをするぐらいなのです。
「君が雷を怖がるからだよ」
「かみ……なり……?」
「すぐに分からなくなるようにしてあげよう」
背を向けただけでは隠しきれなかったお尻から指を差し込むと
そこはすでにしっとりと濡れていました。
一瞬もしやと不安になったのですが、それは杞憂で
処女独特の狭さで私の指を締め付けるのです。
ですが喪子は一層酷くなった雷に怯え暴れるので、
私は喪子の口の中に指を入れ蹂躙していきます。
「あう、ん……ぐ」
柔らかな頬の肉、ザラついた上顎、指で舌を挟まれるのが好きなのか
そのまま指を擦るように動かすと喪子の身体から力が抜けていきました。
「そうやって身体の力を抜いていてごらん、息を止めたりしてはいけないよ」
狭かった膣も指を動かしているうちに柔らかくなってきて、
指二本までならすんなりと挿るようになりました。
ねっとりとした愛液が指に絡み付き、
甘酸っぱい香織が鼻孔をくすぐっていきます。
「あ、あ、あ、んぅっ……ふぁ……」
「喪子……君はどうしてそうはしたない声を……」
車の中では最後までするつもりなど毛頭なかったのに。
初めて聞く喪子の艶っぽい声に
私の砂の城のような理性はボロボロと崩れていくのです。「ヤンさ……ん……ッ」
名前を呼ばれ涙で潤んだ瞳で見つめられると
自制なんて出来るはずもありませんでした。
私は喪子の脚を片方持ち上げると、
熱く蕩けた膣の中に私自身を挿入したのです。
「いぎぃッ……!はッ、い、た、い、はめッ……!」
「やっぱり処女だったね。嬉しいよ、私が君の最初の男だ」
「むり、だか…抜い…て……」
「もう根元まで挿ってるから大丈夫、
これ以上苦しくなることはないからね。さぁ息を吐くんだ喪子」
喪子が懸命に息を吐き楽になろうとしている時も、
膣はキュウキュウと私を締め付け早く構って欲しいとねだるのです。
「は……あッ……」
「上手だね喪子。焦らなくて良い、その調子で身体の力を抜くんだ」
「ん……ふ……ぅ、はぁ……ぁ……」
男を知らなかった喪子の身体も、
私の身体に慣れてくると奥から涎を垂らすようになってきました。
「喪子、少し動くよ」
ゆっくりと腰をひいただけで喪子は背を撓らせ、
また奥まで昂りを押し込む声にならない喘ぎ声も漏らすのです。
「はあぁッ……お、お腹…熱い…ッ……」
「喪子のことを思うと熱くなるんだよ。
正気を失いそうなぐらい誰かに恋い焦がれたことなんてこれが初めてなんだ。愛してるよ私の可愛い喪子」
「やん…あ…おなか変にッなるのぉ!ダメダメぇッ……!」
「そのまま変になってしまっていいんだよ、私はその姿が見たいんだ」
腰を強く打ちつけると喪子は膣を一際締め付け、
それから私から逃げようとするのです。
「だっだめ、今は、今はやめッ……」
「あぁイッたのか。じゃあ私もイかせてもらおうかな」
喪子の最奥に昂りを押し込みそのまま熱い精液を流し込みました。
「やッ……なかなんか出て……るッ……」
「全部受け止めるんだ、一滴も零してはいけないよ」
震える喪子の身体に全てを注ぎ込むと、
膣は出された精液を飲み込むように受け入れました。
そのまま喪子は目を閉じ眠るように意識を手放したのです。
喪子の服を整える頃には雲間から太陽光が差し込んできていました。
私の家に連れ帰っている途中、喪子は目を覚まし力なく私の服を掴んで言うのです。
「わたし……初めて……だった、のに……」
「大丈夫、最初からそのつもりだったよ。
喪子が変な男に食べられてないのはちゃんと分かったよ」
家に戻り、喪子を風呂にいれて一度綺麗にしてから、
喪子のために用意していた特注のネグリジェに着せ替えます。
それから喪子のために準備しておいた部屋へ連れていきました。
全面を水槽にみたて、幻想的な青の空間を作り出しました。
私が仕事でいない時に喪子が寂しい思いをしないように
魚もちゃんと泳がせています。

そして中央に真っ白なベッド。
そのベッドには喪子が喜ぶように真っ赤な薔薇を敷き詰めました。
本来はここで喪子の処女を散らせる予定だったのが少し狂ってしまったので、
このことを喪子が知ったら怒るかもしれません。
「ん……」
「起きたかい、喪子」
「ヤン……さん……?」
「身体の調子はどうだい?少し辛いかな」
「どういう…うっ…たぁ……」
身体を起こそうとした喪子は腹部に痛みが走ったのか
眉間に皺を寄せて身体を丸めました。
「無理はしない方がいい。
少し血が出ていたようだから傷付けてしまったかもしれない。
痛いようなら喪子がいつも使ってる鎮痛剤をのむといい」
薬をのませるために喪子の身体を起こすと、
内装に驚いたのか不安そうな顔をして身を寄せてきました。
「あれ……わたし、どしてこんなトコに……ここどこですか?」
「ここは君の部屋だよ。喪子は水族館が好きだっただろう、
だから海の中にいるように感じられる部屋を作ってみたんだ」
「なんで知って……」
「小さい頃に言ってただろう。喪子のことならちゃんと覚えてるよ」
好きな場所も好きな食べ物も、
まだ喪子を意識はしていなかった頃の会話も全て覚えていました。
「お気に召したかな」
「あ、はい……」
「良かった、拘った甲斐があったよ」
「あの、ここ私の部屋?なんですよね?どうして……」
「変なことを言うな喪子は。
自分の家に自分の部屋がないのはおかしいじゃないか。
ここ以外にも空いてる部屋はいくつもあるから好きなように使っていいよ」
「私の、家?」
「そうだよ、私と喪子は愛し合う者同士なんだから」
 こういったことを口に出してみるのは私の年齢ではもう恥ずかしいものです。
「あぁそうだ忘れないうちにこれを渡しておこう」
「?」
「左手を出してごらん」
 薬指に戯れに作った指輪をはめる。
銀色の輪に当時の私の片思いを込めたピンクダイアモンド、
こういったのを渡すのはもう少し先だと思っていたのに全てが前倒しになり始めた。
このままでは喪子は学生のうちに結婚したいと言うかもしれない、
ハネムーンは夏休みと春休みはどちらがいいだろうか。
「指輪」
「婚約指輪だよ、それは男除けにしなさい。
結婚指輪は喪子の好きなデザインで作らせるよ」




ヤンさんとデートの予行練習というお出掛けをした日に
何か大変なことが起こったはずなのに、
なんだかその全てが夢のような非日常感しかない。
ただ私の記憶がかろうじて現実だと思わせるのは薬指の指輪だった。

『それは男除けにしなさい』

暗に先輩とのデートは断れと言われたような気がした。
あの日のヤンさんは様子がおかしかった。
私とヤンさんが両思いだとか、ヤンさんの家が私の家だとか、
この指輪が婚約指輪だとか。
ヤンさんは私が家に帰ろうとするのを何度も引き止めていた。
帰る必要はないとか言っていたが、大学には通わなければいけない。
とりあえず枕が変わると眠れないとか、
部屋にあるヌイグルミを連れてきたいとか言って、
なんとか脱出したもののわけがわからない。
「やっぱり夢?」
もしくはヤンさんは失恋したばかりだったのかもしれない。
これを渡そうと思っていた先に破局してしまった。
そのまま傷心のヤンさんを私が連れ出してしまったから
勘違いしておかしなことが起きた。
「でもだからって……」
失恋の痛手があったとしてもヤンさんがやったことを許容出来るわけではない。
会うのは控えようとは思うものの、指輪をこのまま持っておくわけにはいかない。
「はぁ、どうしよ……」
なんだか出掛けるのが億劫になってしまった。
今度の先輩とのデートも行く気が引ける。

「喪子ちゃんめっけ。なんやお疲れな顔やね」
まだ人の少ない昼前の食堂で悩んでいると、
金髪にパーカーをラフに着こなした病田(やまいだ)先輩がやってきた。
「せ、先輩……」
「そうしたん、後期の講義つまらん?」
「いえ講義は順調です」
「そ?良かった。そうや来週のデートの件やけど」
「あっあの、その日ちょっと用事が出来ちゃって……別の日に変更出来ませんか……?」
ヤンさんに言われた通りにやる必要なんてどこにもないのだが、
今どこかへ男の人と二人で出掛けようなんて気持ちにはならない。
「…………。靴屋にそう言うように言われたん?」
真顔になった病田先輩が呟くように言った。
どうしてそんなことを知っているのか。
友人にもヤンさんのことは話したことないのに。
「えっ?」
「その指輪、靴屋のおっさんにプレゼントされたもんとちゃうん?」
指輪をコンコンと突かれてどう答えればいいのかわからない。
「え……と……」
プライベートをズバリ言い当てられると驚きよりも恐怖が先に立つ。
「まぁええわ、俺心が広いし。淡路島ぐらい」
「…………」
「今のボケねー。それゆうなら大阪湾やろーってツッコミいれんと。ハハハハハ」
「あ、はい」
「んじゃ、デートは今からにしよか」
「えっ?」
「講義一回休むぐらいなんともないて、行こ行こ」
腕を強く引っ張られそのまま大学の敷地内から出ていく。
「どっどこに行くんですか?」
「んぅ?デートだよーん、黙ってエスコートされとき」

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