管理人さんが帰ってくるまでの仮まとめです

私たちはまるで似ていない双子といわれた。

どこもかしこも無駄に太くて、雑なつくりの私。
対して弟のヤンは、華奢で、繊細。
私は愚鈍だけれど、ヤンはとても賢い。

私にはほとんど弟に勝るものはないけれど、
たったひとつだけ。

弟の目は色素が薄いらしくて、あまり目がよくない。

「だから、喪子ちゃんはヤン君の目になってね」と
小さいころから、お母さんに言い聞かせられていた。
私もずっとそのつもりでいた。

幼稚園や小学校のころは、ヤンをからかう男子を追い払うちょっとしたナイト気取りだった。
中学になって、ヤンはずっと嫌がってた手術を受けることになって、
ほとんど普通の生活を送れるようになった。

そして、ヤンは私以外の人としゃべるようになった。
もともと頭がよくて美しいヤンは、あっという間にクラスの子と打ち解けるようになった。
寂しかったけれど、私もヤン離れをしないといけなくなったのだ。

とはいえ、ヤン以外の人とほとんどまともなコミュニケーションをとったことがない私は
友達を作ろうといっても挨拶のあとに何を話したらいいかさえわからない。
結局、ヤンに頼ってばっかりだった。

それでも、この間友達ができた。
友達といっても、クラス移動を一緒にするグループに入れてもらっただけなのだけれど。
それでも、次の土曜にご飯を食べに行こうって話をしていた…はずだった。

「喪子」
ヤンの美しい顔が暗く翳っている。
私はなんとなく、その次の言葉を予感していた。
「言いづらいんだけど…あの子たち、喪子のこと馬鹿にしてて」
「あー…」
「腹が立って言い返しちゃったんだけど…喪子の立場とか考えられなくて。ごめん」
「あ、ありがとう。いいんだよ。だってほら、私こんなだしさ」
「喪子、そういうこといわないで。僕ならそばにいるよ」
「うん…ありがとう…」

やっぱりそうか、と思う。
私にも友達ができるかもなんて希望を抱くんじゃなかった。
私は馬鹿で不細工だし、友達なんてできるわけない。わかってたのに。
こうやって嫌われるのはこれで何度目だろう?
毎回ヤンに本当のことを聞かされて、次の日からうまく笑えなくなるのだ。
仕方ない。私が悪いんだ。
でも、とても、悲しい。

「喪子…」
うつむいてぼたぼた涙を流す私の肩をヤンがそっと抱いた。
そのときの私はみじめさとかなしさと、ヤンの温かさでいっぱいで
肩越しにヤンが心底うれしそうに笑ってることに、まるで気がつかなかった。

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