最終更新: voice_text 2018年04月22日(日) 23:01:52履歴
概要 | ||
架空の世界。童話風。 | ||
公開日 | カテゴリ | 字数 |
2018/02/27 | 朗読 | 1059字 2000字未満 |
音声作品 | ||
磨迦。ちゃんねる様 https://youtu.be/XolxUX-UDB0 |
昔々、世界にはいくつもの国がありました。
喜びの国は、喜びに水を差す、妬みの国が苦手です。
妬みの国は、自分達を差し置いて笑顔の絶えない、楽しみの国が苦手です。
楽しみの国は、楽しい雰囲気を一瞬で壊してしまう、怒りの国が苦手です。
みんながみんな、お互いが苦手です。
いなくなってほしい。
自分達の邪魔をしないでほしいと思っています。
そんな中、一際勢力を伸ばす大国がありました。
それは、悲しみの国です。
悲しみの国は、強くはありません。
けれど、悲しみの国が攻め込まれると、民はより悲しみ、一層その地盤と領土を強固なものにしていきます。
ある日、ついに悲しみの国を壊して、ばらばらにしました。
するとどうでしょう。
喜びの国からは笑い声が消えました。
妬みの国は自分の事に精いっぱい、誰にも会わなくなりました。
怒りの国は、もう立ち上がる力さえ残ってはいません。
ばらばらにされた悲しみの国。
そこから流れてきた、悲しみの民。
行く先々で、悲しみは、じわりじわりと伝染していきます。
こうして、壊れた悲しみの国はより広く、大きく、甦りました。
これは大変だ。
みんな、喧嘩をしている場合じゃない。
悲しみに蝕まれた国々が声を上げます。
みんなで協力して、悲しみを閉じ込めよう!
多くの国がその意見に賛同しました。
しかし、かつて悲しみの兄弟であった寂しさの国だけが、首を縦には振りません。
悲しみだけ仲間外れにするなんて、可哀想だ。
じゃあどうすればいいんだろう。
一日、二日、三日……
意見がまとまらないまま時間だけが過ぎていきます。
気が付けば、話し合いの場には誰も来なくなっていました。
みんなの心は悲しみに包まれ、自宅で一人、ずっと泣いているからです。
もう誰も、悲しみの国には立ち向かえません。
小さな男の子が、泣きながら聞きました。
ボクの国も、お隣の国も、みんな悲しくなっちゃうの?
それを想像すると、男の子はますます悲しくなり、涙が止まらないのです。
泣いている人達も気持ちは同じで、男の子が求めるような答えは返ってきません。
男の子は泣きました。
悲しくて悲しくて泣きました。
男の子のお父さんも。
男の子のお母さんも。
お隣さんも。お向かいさんも。先生も。お友達も。
見渡す限り、みんな、みんな、悲しんでいました。
みんな、みんな、泣いていました。
男の子が失敗しても、誰も怒りません。
みんな悲しんでばかりで、羨む相手もいません。
辛いのを隠して笑う必要もありません。
悲しみが大地を埋め尽くした時、男の子は安心しました。
安心して、また泣きました。
傍らには、寂しさが寄り添っていました。
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