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127.名無しの天狗 - 18/07/27 17:34:38 - ID:RDSFIzoSpA
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戦争で荒廃していく世界ではあるがそこには確かに笑顔があった。…もし人類が存続
するとしたら後世では笑いの種となっているかもしれないが。
当然ともいうべきか、のらきゃっと達のほとんどはそれを口にすることはなかった。
「それでも、あの子の好物でしたね。」
程よく撹拌されて全体が均等になったのらショットを眺めて、そう呟いた。それはカオス
と呼ばれる、果汁を含んだタイプのモンスターエナジーを使用したのらショットである。
完成品の薄気味悪さもあり、不毛だと唱えた上層部の一部がモンスターエナジー自体の
種類を増やした。男達は大層喜んだ。そして当然のようにミルクティーを混ぜたという。
特に害は無いとして放置された。
「どうにかならなかったのでしょうか…。」
彼女はのらきゃっと隊でも数少ないのらショット愛飲家の一派と知られている。紅茶に
対する冒涜だと主張する集団とのらショットを広めようとする集団の議論もよく見かけた。
私は個人の趣向を尊重し適度な距離を保ちましょう、とする中立派だった。
私達は万全な状態で戦場に立つために感情等を抑制されているが、長く生き残り経験を
積んだ者ほど精神が成長していくように思われる。ある程度感情を知ったのらきゃっとは、
自由奔放に振る舞う彼女らに一度は憧れるものだ。そして過熱した論争にて罵詈雑言まで
浴びせ合う古参ののらきゃっと達に幻滅するまでがテンプレートである。
「…っとと。」
グラスの縁に飾られたオレンジがつぅっと滑る。
彼女は基本的にはオレンジを使ってのらショットを作っていた。六分の一に切った内の
一欠片はこのように添えられ、残りは絞り汁として混ぜられる。気分によってはオレンジ
ピールを追加する。そしてミルク多め、これが彼女のレシピだ。
なぜそのようなことをするのですか、と聞いたことがある。あの頃の私にはこの飲み物に
ついても、手間をかけた製法も全く理解できていなかったからだ。彼女は言った。いつか
分かるようになるよ、と。
その後ミルク多めにしたせいで余計に分離物が発生するこのレシピを勧められた時は
思わず引いたものだ。感情の芽生えの一端である。喜ぶに喜べない気がした。
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