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56.名無し - 18/03/21 09:22:09 - ID:P3LwpPUQ9A
※これは、生放送後の屋根裏で作られたものです。少々長くなります。
ーヒトは、愛する人との子を結ぶ…なら、子を産めぬ私に表せる愛はー。 「寝ているのか。」男の人の声が聞こえる。それが誰かなど、目を開けるまでもなく分かる。私を今の場所…戦闘用アンドロイドとして、多くの愛を断ち切る者ではなく、多くの物に愛される者にしてくれた人。私はゆっくり瞳を開ける。「心が生まれるのは、エラー個体のみ」かつて軍でそう教えられた私にとっては…この感情は、処理しきれないものだった。
「すまん、起こしちまったか。」彼はそう語りかける。声を掛けられる前から起きていた、とは言わない。ただ、黙って彼を見つめる。口を開いたらいけない気がしたから。「心とはエラー」、そんな言葉に打ちのめされた過去とは違う。心は進化だ。彼を、かつてより強く感じられるのだから…。掛け布団を少しまくり、そっと手を彼の方に伸ばす。彼も気づいて、こちらに寄ってきてくれた。「感情」が発露し、指先から発熱が起こってゆく。
指先が、彼と触れ合う。本来回路に組み込まれていない思考が生まれたからだろうか…体が火照る。ただの発熱、機械という視点ではそう言えるだろう。しかしこれは、幸福感と隣り合った、良い不具合なのだと、感じたくなってくる。戦闘に明け暮れていた時は、こんな思考も、ゆっくりと流れる時間も、存在しなかったのだ。人間ならこれを愛という。では、私にとってこれは一体なんなのだろうか。問いかけに答える相手など居なかった。
答えの存在しない自問自答。通常の理論回路は、無意味と判断する所だ。やはり、私はエラーなのだろうか。不意に、欲望のようなものが生まれる。人間にとっての愛と…心を持った戦闘用アンドロイドである私の愛が、同じものなのか確かめてみたいと。これが本当に、人間の言う「愛情」と同じものであるのかを。手を指先から先へ、首に回すように滑らせる。予想外の動きに、彼は驚いた表情を浮かべる。「ふふっ♪」手応え有りだろうか。
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