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  • 60名無し - 18/03/21 09:33:12 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※下の続きです

    「待っていたのじゃ〜」と、猫松さんが私に寄りかかる。ここは誰も見ていないプライベート空間だ。だからこそ、国王という立場を忘れられる存在に、私がなれているという事実は嬉しい。女性を見るとすぐにへらへらとしてしまったり、そんな時は嫉妬してしまうけれども、こんな表情を見せてくれるのは私だけなのだろう。「渡しも、猫松さんに会いたかったですよ」そう言って、指先で彼の頭を撫でる。もう少し、この時間に浸ろう…。

    こういう時間はゆったりと流れる。既に切り捨てた、戦闘に明け暮れた過去と同じ時間の流れだとは、にわかに信じがたいぐらいに、緩やかで暖かい時間だ。応接間の窓から春の日差しが差し、窓の外を花が揺れる。そんな柔らかさに包まれながら、今日話したいと思っていたこと口に出す。会う前は、何から話そうかと散々迷ったが、一番大事な事を最初に話す事にした。「聞いてください猫松さん。私、辛かった過去を断ち切れたんです」

    突然の話題に一瞬驚いた猫松さんは、ぱちくり目を瞬かせたあと、ぱあっと笑顔になった。「良かった〜、実はずっと心配してて…」彼は、自分の語尾すら忘れてほっとしている。気に掛けてくれていたのだろう。元戦闘用アンドロイドだなんて、録な過去を持っていないものだ。中には、エラー品として処分されそうになった所から逃げ出した個体だって居る。私がそうだったし、私が安全に過ごせるように全力を尽くしてくれたのも彼だ。

    とはいえ、猫松さんが私を保護してくれた理由に、若干の下心が入っていた事に、最近気付いた。逃げ出した時には、感情を覚えたてで、そんな事には気付かなかったのだ。どちらにせよ、今の私にとって彼が大事な存在であることに変わりはない。理由がどうであれ、たくさん支えてもらったのだ。「ありがとうございます、猫松さん♡」そう言うと猫松さんは露骨にどぎまぎし始めた。「あ、ありがとうなのじゃ…」照れてしまったようだ。

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