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86.匿名の首領カロちゃん - 18/04/01 04:21:56 - ID:yKH8s/7Ftg
暗い、重油に塗れたかのように身体が重い。
手足の感触も、意識もはっきりしている。
けれど、何も感じることができない。
「ここは、どこなのでしょう」
口を動かして問いかけても、その声は空気を震わせることなく、自分の体の中を反響するに留まった。
わかっている、これは誰にも予想できないことだったと。
本来なら、私は新しいボディにすべての人格データを移植し、抜け殻となる古いボディは破棄されるはずだった。
私もそれに納得したはずだった。しかし、私のこのボディで得た経験が、楽しかった思い出を経験した私の体が、無意識的に完全な移植を拒んだのだ。
移植がなされる前に、残存するデータのバックアップを残したのだ。
だが所詮不完全なバックアップ、その結果が今の状態だ。
私は、古い“のらきゃっと”のボディの中に、意識だけ覚醒したデータとして閉じ込められたのだ。
おそらく、新ボディの"のらきゃっと"は無事に起動しているだろう。
思えば、完全な孤独なんて経験したことが無かったかもしれない。
私の周りには多くの人がいた。ねずみさんたちがいた。そして、猫松さんがいた。
「…………猫松さん」
呼び掛けても当然事はない。―――誰にも、助けてもらえない。
「怖い……怖いです……っ。誰かっ……!誰か気づいてください……誰か、ねずみさん!猫松さん!」
意味はないとわかっていても、叫ばずにはいられなかった。
孤独と暗闇に押しつぶされそうだった。
でも、暗闇は容赦なく私の声を飲み込み
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