蒼空のリベラシオン(ソクリベ)【iOS/Android対応のスマートフォン向け協力アクションRPG】の非公式攻略wikiです。有志によって運営されているファンサイトで、ソクリベに関する情報を収集しています。

 流水の都ラグーエルの詰所は、慌ただしい空気に包まれていた。
 帝国軍の支配下にある街としては珍しい光景である。
 こうした件は大抵、余所者か異常者が原因となり引き起こされるもので、今回の件も漏れなくその前者にあたる余所者による騒ぎのようだ。
 否。
 見るものによってはその両方と取れるのかもしれない。

 調書を取るラグーエル兵士の前で、土下座するガルムの男。
 そして、その隣で顔を引きつらせながらも頭を下げ続けるエルフの女性。

 二人の言い分はチグハグとしていて、結局何が本当なのか分らない。
 この手の尋問では良くある事なのだが、話を聞いていくと事件性と言うには乏しく、更には帝国に喧嘩を売ってきた模様。
 今のラグーエルは帝国の介入は出来るだけ避けたい。
 この二人を匿っているとでも思われたら面倒な事この上ない事案になる。

「もう!なんで付いてくるんですか!?カイザーさん!」

 解放された二人は、見慣れない街を歩いていた。
 行く当てと言えば、実家のあるラキラの街以外にはないのだが、帝国が進軍した今は危ないと詰所で言われてきたばかり。
 途方にくれながらも今日の宿を探していると、横にあの男が並んで歩いていた。

「何を言う?我輩とアマナちゃんはすでに婚礼の約束を交わした仲ではないか?いや、今はもう夫婦であったか?」

「ふざけないでください!!いきなり変なこと言い出して!!」

 事の発端は、花の都ラキラが帝国軍に襲われたことに始まる。
 店だけは守ろうと、外に出している鉢などを片づけていると、帝国兵の小隊がやってきた。
 その中の一人がカイザーだった。
 万事休すと思われたが、あろうことかアマナに一目ぼれしたカイザーはその場でアマナに求婚。
 対するアマナは、敵でもある帝国軍兵士と結婚したいはずも無くこれを拒否。
 するとカイザーは周りにいた兵士達を薙ぎ倒し、アマナを抱えて逃亡したのだった。

 道中、目についたラグーエルへと入ったカイザーだったが、嫌がっている様子のアマナを抱きかかえたガルムの男は当然目を引くもので、すぐさま街の兵士に不審人物として連行された。

「吾輩の気持ちに嘘偽りはないのだ!大きな船に乗ったつもりで我輩に付いてくるといい!!」

「イヤです!何を勝手な事ばかり言っているのですか!」

「ナハハハ!そう照れなくても良いのだぞ!」

「照れてなんていません!!」

 出会った当初から勝手な暴走を続けるカイザー。
 彼から離れたいのはやまやまだが、走ったところで彼の脚から逃げられるはずもない。

「どうしよう……ラキラのことも気になるし……」

「そうなのか?だが、先程の兵士は今のラキラは危険だと申しておったぞ?」

「それはそうですけど……う〜ん……」

 突然、どこからか小さな声が聞こえる。

「うぇ〜ん!」

「え?今の声?」

「どうやら子供が泣いておるようだ。あちらの公園からだな」

 踵を返して真っ直ぐに視線を向けるカイザー。

「よくそこまで分かりましたね……」

「我輩だからな!」

 声の元へと駆けだしたアマナは、通りの傍にあった公園のベンチに座り、一人泣きじゃくる子供の姿を見つけた。

「どうしたの?大丈夫……?」

「サンタさんが!サンタさんがぁ〜!!びぇえええええええ!!」

 泣き喚きながらも、ポツリポツリと単語を発する子供。
 それらを拾い集めて解読してみると、どうやらクリスマスなのに自分の家にはサンタが来ないことを悲しんでいるようだった。

 粗方の事情を察したアマナ。
 この街に限らず、帝国軍の影響で不安定な情勢にある街の多くでは貧富の差が一つの大きな問題となっており、こうした現場を目にすることも決して初めてのことではなかった。
 だが、小さな子供の悲愴な表情と溢れる涙は、アマナの心を痛く絞め付ける。

「今のわたしにできることなんて……」

 つい自身も目から涙が溢れそうになったところを踏み堪えるアマナ。
 その様子をカイザーは見逃さなかった。

「我輩に任せるのだ!!」

「え!?ちょっと!カイザーさん!?」

 それだけを口にして、アマナと子供を公園に残したまま、何処へともなく走り去っていったカイザー。
 しばらくその場で待ち続けたが、終ぞ彼が戻ってくることはなかった。

 陽も落ちてきた頃に子供を家へと送り届け、そのままその日の宿をラグーエルで取ったアマナ。
 疲れ果てた彼女の身体には安宿のベッドさえも雲のように感じられ、横になってすぐに眠りへと誘われていった。



「アマナちゃ〜〜〜〜んは、ここかぁ!!!!」

 けたたましい轟音と共に部屋の扉がけ破られ、思わず飛び起きるアマナ。
 何事かと驚くアマナの前に顔を突き出したのはカイザーだった。

「カイザーさん!?一体今までどこで……じゃなくて、何やってるんですか!!」

「アマナちゃん……良い香りがするな。やはりこの香りを追ってきて正解であった!」

「な!?やめてください!よくわかりませんが恥ずかしいです!」

「そうだアマナちゃん!話を聞いてくれ!!我輩は…………くんくん……」

「匂いを嗅がないでください!!さっきお風呂に入っただけですから!!それより顔が近い!近いです!!」

「風呂か!良いな!我輩も頂くと……ではない!話を聞いてくれアマナちゃん!」

「だから近い!近い!近い!いい加減にしないと怒りますよ!!」

 突然の事で話など聞ける状態ではなかったアマナだが、部屋の隅でカイザーがしょぼくれている隙に、なんとか平静を取り戻す。

「それで、お話とは?」

「そうであった!我輩とサタンをしよう!!」

「……もう一度お願いします」

「む……?我輩と一緒にサタンをしよう!アマナちゃん!」

「サンタ……ですか?」

 つまりは、自分達がサンタ役となり、街中の恵まれない子ども達にプレゼントを配ろうということだった。
 彼は彼で昼間に出会った子どもを見て、思うところがあったのだろう。

「それは良い考えかもしれませんが……」

「どうしたのだ!?我輩はまたアマナちゃんを困らせてしまうようなことを言ったのか!?」

「いえ。そうではありません。本当に良い考えだと思います」

「そうであろう!?」

「ですが……わたし達にはそんなお金……」

 プレゼントを用意するにはどうしたって金が必要になる。
 一人、二人ならばなんとかなるかもしれないが、今回の思い付きを実行するとなると、どれだけのプレゼントを用意すればよいかもわからない。

「なんだ。そんなことであるか!それなら心配は無用であるぞ?」

 いぶかしむアマナを宿の外へとおもむろに連れ出すカイザー。
 そこには、壊れたり古くなったために捨てられたと思われる大量のおもちゃ。
 他にも布切れや木材、鉄材などが山のように積まれていた。

「どうしたんですか!?これ……」

「うむ!とりあえず使えそうな物を拾えるだけ拾ってきた!」

 公園を飛び出してから今の今まで、ずっと街を駆け回っていたようだ。
 ざっと目を通しただけだが、簡単な修繕を施せば立派なプレゼントになりそうなものも多い。

「これなら……できるかもしれません」

 行き当たりばったりで突拍子もない行動ばかりのカイザーだが、がむしゃらに何かのために頑張る様は、確かにアマナの心を打つものがあった。

「やれるだけやってみましょう!」

「うむ!クリスマスまであと…………すぐだ!!」

「三日です。しっかりしてください!」



――クリスマス当日。

 この日のために三日間ほぼ徹夜で用意した大量のクリスマスプレゼント。
 並べられた自分達の努力の結晶を目の前にし、得も言えぬ喜びが込み上げる。

「やりましたね!カイザーさん!」

「うん?あぁ、そうであるな!!」

「どうかしましたか?」

 何やら落ち着きのないカイザー。
 普段の彼の素行を考えれば、小躍りの一つでも披露してくれそうなものだが。

「ア、アマナちゃん……これを受け取って欲しいのだ!」

「……婚約指輪なら受け取りませんよ?」

「しまったぁああああ!!その手があった!!!!それも後で用意しよう!だが、今日の所はひとまずはこれを!」

「何ですか?」

 綺麗に包装された小包を手渡されるアマナ。
 少し警戒しつつ、ゆっくりとその封を開けてみる。

「……何ですか?これ」

「無論!サタンクロースの衣装だ!」

 違う。
 それっぽくは仕上げられているが、フリフリのミニスカートが可愛らしいぴちぴちコスチューム。
 こんな破廉恥なサンタクロースを子供達の目に触れさせるわけにはいかない。

「着ませんよ!?絶対に着ませんから!!」

「何故だ!?サタンになるのであろう!!」

「だったらちゃんとしたサンタさんの服を用意してくださいよ!というか、こんなものいつの間に用意したんですか!?」

「安心して良いぞ!絶対に似合う!我輩が保証する!!」

「嫌ですってば!!!!」

 その後、諦めずに食い下がるカイザーにとうとう押し切られ、嫌々ながらもそのコスチュームを着せられてしまったアマナ。
 プレゼントの入った袋を抱え、いざ出発せんという今になっても彼女の表情は雪の舞う曇天と同じ色をしていた。

「これを機に、そろそろ我輩も計画的に生きようと思うのだがどうだろうか?」

「そうですね……それは良い事ですね……」

「であるな!では式はいつにする?」

「そんな予定はありません!!」


 こうして、プレゼントを配る本物の可愛いサンタが現れたと、ラグーエルの街に暖かい話題が飛び込むこととなった。
 コスチュームの件では頬を膨らますアマナだったが、結果的には子ども達の明るい笑顔を見られた事に満足していた。


――そしてまた、クリスマスがやってくる


「さぁ、アマナちゃん!今年はこのイエルの街に素晴らしいサタンを呼び寄せようではないか!!」

「そんな悪魔召喚みたいなイベントではありません!サンタです!いい加減覚えてください!って……またやるんですか!?」

「当たり前であろう!我輩は思ったのだ……夫婦として協力するクリスマスは素晴らしいものだと!!」

「夫婦なんかじゃありません!!」

「またまた……そんなに照れなくても良いではないか!」

「そういう事じゃありません!!」

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