その他13

『許さない…許さない…何故貴女だけが…許さない…。』
「キャァァァ! 何なの!? 何なのこれぇぇ!」
ある日を境にアリサは幽霊に襲われる様になった。しかもその幽霊はアリサ本人にそっくり。
幽霊に襲われる事だけでも嫌だと言うのに、その上自分そっくりの幽霊に襲われると言うのは
心底気持ちの良い物では無く、アリサは日に日にやつれて行った。

「なのは…フェイト…助けて…。」
幽霊に悩まされ続けて早一週間、もうげっそりとやつれていたアリサがなのはとフェイトに
助けを求めるのは当然の事だった。しかし…
「幽霊って本当?」
「まさか幽霊なんて…信じられないよ。」
「え!? 魔法はアリで幽霊はダメって変じゃない!?」
意外な事に二人はアリサの話をまともに聞いてくれなかった。
残念な事だが、如何に魔法技術の発達したミッドチルダであろうとも霊の解明は進んでいない。
実際霊が解明されているならあのプレシアもアリシアの霊を呼び出す事をやっていても
おかしくないはずである。そして実際はそうしなかった。それが全てを物語っているのである。
頼みの綱だったなのはとフェイトも役に立たないとなると…このままアリサは
幽霊に呪い殺されてしまえと言うのか…

「嫌! 嫌! こんな事で幽霊に憑り殺されるなんて嫌! 何とかして! 何とかしないと!」
どうあっても死にたくないアリサはあの手この手で幽霊を何とかする方法を探した。
その結果、ある事実を突き止めるのである。
「妖怪ポスト!?」
インターネット上の小さなHPでその様な記述を見つけた。
日本各地の山々に妖怪ポストと言う物があり、妖怪や幽霊に関する悩みを持った人が
その妖怪ポストに手紙を入れると、鬼太郎と言う不思議な少年が助けてくれると言うのである。
「何かまゆつばだけど…もうこれでもいい! 私が助かるなら…。」
ワラをも掴む思いでアリサは手紙を書き、妖怪ポストのある山に登って手紙を入れた。

それから数日、またもアリサは自分そっくりの幽霊に襲われた。
『許さない…許さない…何故貴女だけが…許さない…。』
「何で私ばっかりこんな目にあわなきゃならないの!?」
アリサは手近の棒を掴んで振り回すが、幽霊にはすり抜ける様でまるで当たらない。
であるにも関わらず幽霊はアリサに触れる事ができ、ついには彼女の首を締め上げ始めた。
『許さない…許さない…何故貴女だけが…許さない…。』
「う…う…うあああ!」
もうダメか…そう思われた時だった。突然何処からか飛んで来たゲタが幽霊を叩き飛ばしたのである。
「え…。」
突然ゲタが飛んで来た事も驚きだが、自分が触れる事の出来なかった幽霊を叩き飛ばすなど
明らかに普通のゲタではない。そしてカランコロンとゲタの音と共に黄色と黒のシマシマの
チャンチャンコを着て、髪の毛で左目の隠れた少年が現れた。
「あ…貴方は…。」
「危なかったね。僕はゲゲゲの鬼太郎。アリサ=バニングスさんだね? 助けに来たよ。」
「え…よ…妖怪ポストって本当だったの…。」
鬼太郎と名乗る少年は唖然とするアリサを守る様に幽霊の前に立った。
するとどうだ。今度は鬼太郎の髪の中から手足の生えた目玉が飛び出して来たのである。
「鬼太郎! この幽霊はこの世界の者では無いぞ!」
「きゃ! 目玉がしゃべったぁ!」
「アリサさん、こちらは僕の父さんだよ。そして父さん、あの幽霊がこの世界の者では無いと言う事は?」
アリサは目玉の親父に驚き腰を抜かしてしまったが、目玉の親父は言った。
「世界と言うのは人間達が住んでいる世界以外にも沢山あるのは鬼太郎も知っていよう。」
「はい。妖怪横丁のある世界や死者の行く天国や地獄など色々ありますね。」
「そうじゃ。そしてあの幽霊はこの人間が住む世界に限りなく近く、限りなく遠い、
いわば並行世界からやって来たのじゃ!」
「並行世界!?」
『その通り…私の名はアリサ…アリサ=ローウェル…。私は…並行世界の貴女だよ…。』
「え!? 私!?」
なんと言う事であろうか。その幽霊もまたアリサと言う名で、しかも並行世界における
アリサだったのである。
「何故じゃ! 何故並行世界とは言え、同一人物とも言える相手を襲う!?」
『許せなかった…。同じアリサなのに…私はあんな目にあったと言うのに…世界が違うだけで
こんなにも境遇の違う貴女が許せなかった…。』
「え!?」
『私はあんな見ず知らずの男達に囲まれてあんな酷い事をされた挙句に殺されてしまったと言うのに…
貴女は裕福な家庭に生まれて…何不自由なく育って…沢山の友達を持って…羨ましい…何て羨ましい…
だから許せない! 同じアリサなのに…何故私ばっかりこんな目にぃぃぃぃぃ!!』
「きゃぁぁ!」
怒り狂った末に狂気の目となった幽霊アリサ=ローウェルはアリサ=バニングスに襲い掛かった。
が、しかし、それより先に鬼太郎のチャンチャンコが幽霊アリサを押さえ込んでいた。
「悪いね。そう言うのは逆恨みだと思うんだ。とりあえずこの子は僕があの世に連れて行くから
安心してアリサさん。それじゃあ…。」
「え…あ…。」
こうして幽霊を取り押さえた鬼太郎は何処へと消え去り、一人残されたアリサは呆然とするしか無かった。

この日を境にアリサは幽霊に悩まされる事は無くなった。しかし、あれは一体何だったのか…
もしかしたら一生涯理解出来る様な事では無いのかもしれない…。ただ分かる事があるとするなら…
この世にはまだまだ自分達の想像を超越する謎があると言う事である。
                    おわり

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2007年05月31日(木) 22:30:02 Modified by beast0916




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