その他77

東京都葛飾区亀有公園前派出所に両津勘吉と言う名の名物お巡りさんが勤務している。
「両津! また勤務中にプラモを作りおってぇ!」
「部長〜!」
そんな彼は今日も勤務をサボっている所を上司の大原部長に見付かって雷を落とされていた。
しかし、そこからが少し何時もと違っていた。
「ま…まあそれは一まず置いておくとして…また特殊刑事課から新しい特殊刑事が来るらしい…。」
「ま…またですか!?」

「特殊刑事課」
警視庁の誇るエリート刑事集団…と聞けば聞こえは良いが、その実態はただの変態刑事集団である。
一年中海パン一丁の海パン刑事や、ティーガー戦車に乗ったタイガー刑事など、
本当にこんな刑事がいて良いのか分からない様な変態刑事ばっかりが所属している。
彼等には両津も度々酷い目にあわされ、苦手としていた。

「…で…今度はどんな刑事が来るんですか? 部長…。」
「う…うむ…。それなのだが…。」
特殊刑事課の特殊さは大原部長も理解している為、口調も気まずくなる。
「今度来る特殊刑事は…何でも魔法少女刑事と言うらしい…。」
「魔法少女刑事!? あの…部長…以前来た美少女刑事みたいに
魔法少女のコスプレをしただけの男だったりしませんよね!?」
特殊刑事課には既にその様なパターンがあった。両津の口から出た美少女刑事は
バレリーナの格好をした男であるし、某セーラー戦士みたいな格好をした
月光刑事と美茄子刑事(勿論男)なんてのもいる。
この傾向からして、その魔法少女刑事もただ魔法少女のコスプレをしただけの
男なんじゃないかと両津は考えていた。
「いや…報告によるとちゃんとした女性らしい。」
「へ〜…連中にしては珍しい事もあるもんですね?」
しかし、特殊刑事課の刑事であるからして何が飛び出してくるか分からない。
そうやって両津も大原部長も自然と身構えていたのだが…そんな時だった。

「あの〜済みません…。亀有公園前派出所はここですか?」
「はいここですけど…って…。」
亀有公園前派出所の正面入り口の前に白い変な服を着た一人の女性が立っていた。
「ま…まさか…。」
両津と大原部長に戦慄が走った。そして…そのまさかであった。
「特殊刑事課から来ました魔法少女刑事こと高町なのはと申します。」
「…………!!」
驚愕の余り両津と大原部長は声が出ない。そして10秒間位の沈黙の後、両津がやっと口を開いた。
「と…所でお前…何歳だ?」
「19です。」
「じゅ…19で魔法少女は無いだろ?」
「ハイ…私もそう思います。」
「自覚してたのか…。」
19歳なのに何故か魔法「少女」な変な特殊刑事に両津は呆れてまた声が出なくなった。
しかし…やはり変でなければ特殊刑事では無いのであろう。
「ま…まあ百歩譲ってお前が魔法少女として…当然魔法が使えるんだよな?」
「ハイ使えますよ。」
魔法少女刑事は即答するが、それに対して両津は一つの空き缶を机の上に置いた。
「それじゃあこの空き缶を魔法でダイアモンドに変えてみろ。それが出来たら認めてやる。」
「あ…あの〜…済みません…。私は物質変換の魔法は使えないんです…。」
「何だ!? 大した事無いな〜!」
両津は他にも魔法を使える連中を知っている。それで両津自身が魔法でトキに変えられて
しまったりなど、大変な目にあったのだが、それと比べて魔法少女刑事が
大した事無く感じてしまうのは仕方の無い事だった。
それ故両津も大原部長もすっかり冷めてしまっていたが、そんな時に突如電話がなった。
「はいこちら亀有公園前派出所…何!? 銀行強盗!?」
その電話によると、近所の銀行に武装した銀行強盗が襲撃し、大金を強奪して車で逃走中との事。
当然両津達も出動する事になるのだが、その時に魔法少女刑事の目の色が変わった。
「私も行きます!」
「え!? ってわっ! 飛んだ!」
魔法少女刑事は物凄い速度で飛び上がり、そのまま飛んで行ってしまった。

その頃銀行強盗が乗った車が高速道路を逃走していた。
拳銃や機関銃で武装した銀行強盗は追跡しているパトカーを撃つ。
まさにやりたい放題だったのだがその時、銀行強盗の車の正面に魔法少女刑事が現れた。
「な!? 何だ!?」
「レイジングハート! アクセルシューター!」
「うわぁぁぁ!!」
魔法少女刑事の握る杖からエネルギー弾が発射され、銀行強盗の車のタイヤを撃ち抜いた。
忽ち車はスピンして引っくり返る。そしてそれに魔法少女刑事が近寄った。
「どうしてそんな事するのかな…。貴方のお母さんも悲しむよ?」
「うるせぇこのガキ!」
車から這い出た銀行強盗が魔法少女刑事に対し発砲する。
しかし、魔法少女刑事の正面空間に魔法陣の様な物が現れ、弾丸が止められてしまった。
「え!?」
意味が分からず立ち尽くす事しか出来ない銀行強盗に対し、魔法少女刑事は指差した。
「少し…頭冷やそうか…。」
「ヒ!」
魔法少女刑事の指先からビームの様な物が発射され、銀行強盗を飲み込んだ。
とはいえ力を加減していたのか、銀行強盗は気絶するだけで怪我は無かった。
「なるほど…あいつは戦いに関する魔法専門なんだ…。
これじゃあ魔法少女刑事じゃなくて魔砲少女刑事だな…。」
やっと駆け付けて来た両津もそう言うしか無かった。

数日後、特殊刑事の一人海パン刑事が亀有公園前派出所にやって来た。
「やあ両津。久し振りだな。」
「ゲゲ! 海パン刑事。」
年がら年中海パン一丁の海パン刑事の異様に両津もついつい後に下がっていたのだが、
そこでふとこの間の魔法少女刑事の事を思い出して訪ねてみた。
「そういえば…この間ここに来たあいつはどうなったんだ?」
「ああ…魔法少女刑事の事か。彼女ならやめたよ。」
「え!? やめたのか!?」
「やめたって言うのは言い方が悪かったが…彼女は元々別の場所から出向して
来た人だからね。出向期間を終えて元の勤務先に戻ったんだよ。」
「そ…その元の勤務先ってのは?」
「さあ…それは私にも分からない。」
「分からない!? お前も分からないのか!?」
「うむ。おっと! 栄養補給の時間じゃないか。」
海パン刑事は履いている海パンの中からバナナを取り出し、食べ始めた。
それには思わず両津も退いていた。
「うわっ! 前も言ったがそんな所にバナナ入れとくなよ!
しかし…アイツは結局何者だったんだろうな〜…。」

「出向先から帰って来てからなのはさんが何か変なんです。」
「そうです。訓練が終わった後も一人訓練場に残って空き缶相手に何かやってるんです。」
「え?」
ミッドチルダの時空管理局にて、なのはの教え子であるスバルとティアナに言われて
フェイトがなのはの身に起こった異変と言うのを確認しに行く事になった。
「なのは、何やってるの?」
「空き缶よダイアモンドになれ! 空き缶よダイアモンドになれ!」
「何…やってるの…。」
両津に言われた事を未だに気にしていたなのはは物質変換魔法を身に付けようと
闇雲に空き缶相手にその様な事を延々とブツブツ言い続け、その異様には
フェイトも退いてしまう程だった。
                  おわり

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2007年07月20日(金) 19:20:18 Modified by beast0916




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