なのはStS×SIREN3話

 ―Lylycal Nanoha StrikerS × SIREN 〜Welcome to Hanyuda vil〜― part3


 フェイト・T・ハラウオン  合石岳/三隅林道上空
                前日/23時58分24秒

 何となくではあったが……嫌な予感はした。
 なのはは心配しすぎだよなんて諌めてくれたものの、念のために私も第97世界に飛び立つことにした。
 なんでもあの子達は4手に分散して、レリックの探索に当たっているという。
 今のところ、レリックらしき反応は第97世界の中では見受けられない。

 これまでの調査結果では、反応は1秒も立たないうちに消滅したという。
 単なる誤感知か、それとも本当に存在しているのか……。
 前者ならともかく、後者ならスカリエッティが黙っているわけが無い。
 あの幼い召喚師や戦闘機人らを向かわせている可能性が高い。
 ミッドチルダならともかく、なのはやはやての故郷である、あの世界で争いをさせることはできれば避けたい。
 それに、彼らだけに連中の相手をさせるのはあまりに危険だった。

 だが……正直な所、私の心の中にはそれ以上の不安が渦巻いていた。

 彼らが出動した後で判明したのだが、反応が見つかったのは日本の某県三隅郡羽生蛇村付近。
 その場所に関して、ロングアーチや無限書庫の司書長のユーノが下調べをした資料に目を通した際、気になることがあった。
 過去より、羽生蛇村では土石流災害や地震が頻発しているということ。
 さらに、変な怪奇系の噂話が後を絶たないところ……。
 なんでも、過去に一人の村人が、村民全員を虐殺して、その亡霊が今でも漂っているのであるという。
 それだけでは、なんともいえないのではあるが……地元の民俗に関する記述、心の引っ掛かりはさらに増した。

 ――海送り、海還り――神に近づくための行事……

 ――現世と常世――神の恩恵を受けて復活する……

 土着の宗教的行事で、別に何とでもないのかもしれない。
 だが……私にとって……何かが引っ掛かる。

 常世に行って……復活する……。

 まるで……『あの時』のことではないか。
 そう……私となのはが最初に出会った、あの事件の……。

 さすがに、最初はその可能性はない……と思っていたが……

 次に示された、過去の羽生蛇村付近の時空間の状況に関するレポートを見た際、その引っ掛かりは不安へと変貌した。
 過去……微かではあるものの、時空間の歪みが生じていたのだという。
 しかも、その時期は過去の村を襲った災害の時期とほぼ一致しているという!

 私はいてもたってもいられず……第97世界に飛び立った。


 三隅郡の郡境あたりにたどり着いた時は、すでに日は暮れていた。
 若年層の都会への流出が続いている為、過疎化が進んでいるのだろう……。
 人家の明かりはまばらにしかない。
 上空は全面が雲に覆われていて、星は一つも見えない。

 低空飛行しながら、探索を続けていると……突如としてガジェットの大群の気配を感じた。
 私はすぐさまその方向へと向かう。

 ちょうど問題の羽生蛇村付近の上空に差し掛かった時、私は目にした。

 空を飛び交う数多のガジェット。
 その中心にいる、数人の戦闘機人。

 そして……奴らに向けて炎を吐いている……主を乗せていないフリードリヒ!
 その脇腹には人型の虫のような生物がぶつかり、フリードリヒは姿勢をふらつかせていた!

 キャロは……どこへ!?
 私はすかさず気配を探った。
 だが……彼女の魔力反応はどこにも感じられない。
 振り落とされたの……!?

 そう思っているうちにも、私の気配を連中は察したらしい。
 ガジェットの大群……さらには戦闘機人が猛スピードでこちらに向かってくる!

 すぐさま、私はバルディッシュを構えて、雷撃魔法の詠唱を行おうとした……その時!

 ウォォォォォン!

 サイレンの音が何処からとも無く、周囲に響き渡った。
 普通のサイレンとは違う……低く、どこか不気味さを感じさせる響き。
 思わず、身の毛がよだちそうだった……。

 異変は……その時起こった。

『System down!! Condtion red……』 

 バルディッシュがそんな声を発すると同時に……デバイスから光が消えた。
 そして……空に浮いていた私の体は、重力に従って……下へと落ちていく!

 な、なぜ……?

 私は戸惑いを隠せない。
 地面が間近へと……迫ってくる!
 その時ふと目にしたのは……地面へと向かって落ちていく数体の戦闘機人の影……。
 
 次の思考に移る前に……背中全体に痛みを伴う感触。
 森の木の枝々に体が突っ込んだ。枝や葉が容赦なく私の体を引っ掻く。
 多少落下する勢いは緩和されたものの……すぐさま私の体は地面へと叩き付けられる。

 衝撃による痛みが全身に走るとともに……そこで私の意識は途絶えた……。 


 ※※※※

 トーレ  上粗戸/眞魚岩
       初日/0時43分41秒

 うう……何が……起こったのか……?

 全身に走る痛みをこらえながらも、私はゆっくりと体を起こす。
 ぼんやりとした頭で、今起こったことを思い起こす。

 管理局の局員をガリューが迎撃したが……直後のサイレン……。

 あれが鳴りだしてから、おかしくなった。
 発動させていたISが突然、機能停止……そのままなぜか落下して……。
 妹達も……お嬢様も同じように下へと落ちて……。
 私は……落ちる途中で気絶した……?
 それで、今はこんなザマというわけか……。

 全身の痛みは相変わらず治まらない。時折ふらつき出したりもする。
 どうやら、激しく全身を叩き付けられたな。
 外傷はあまり無いものの……内部の機器は多少なりとも損傷があるかもしれない。

 私はゆっくりと立ち上がると、周囲を見回した。

 人の姿は今のところ……ない。
 お嬢様や妹達の姿も……なかった。

 すぐさまモニターでの通信を試みた……が。

 ――!?

 全く動作しない。
 いや……画面自体が出現しない。
 ただ静寂と……湿度の高い不快な空気がその場に漂うのみ。

 どうなっているのだ……故障か……それとも何か障害でも起こっているのか?

 私は訳がわからないと思いを抱きながらも、何度もそれを試みるのは無駄だと思い、とにかく周囲の状況の把握を行う。
 原始的な工事用らしき機械に……鉄製の家屋……。
 とにかく、お嬢様や妹達と合流するのが先決だな。
 私は近くに走っている道へ向かって歩き出そうとした。

 その時――。

「……誰だぁ……こんなところで……何をしてるんだぁ……」

 突如、右の方からまぶしい光が目に差し込み、低いしわがれた声がした。
 すかさず、その方向を向くと……そこには懐中電灯を手にした人影があった。

「貴様こそ誰だ」
 私はすかさず問いかけを返すが……相手はただ私に懐中電灯の光を向けるのみ。
 それも光線はゆらゆらと揺れていて、時折その人影の全貌が見える。

 服装からして、現地の警官らしい。
 魔力反応は無い。どうやら人間のようだ。

 が……様子が何か変だ。

 服装は所々汚れて、破れもあり……。
 姿勢もどこかふらふらしていて、今にも倒れそうであった。

 さらに、懐中電灯の光を遮るようにして右手をかざし、目を凝らして見たが……。
 ――明らかにおかしい!!

 青地のシャツにおびただしく広がっている……赤いシミ。
 右手には……おそらく拳銃!

 そして、顔は青白く、目からは赤い液体を流していて……白目を剥きながらへらへらと笑っている!
 最初こそ現地の人間はこんなものかと一瞬思ったのだが……どう見てもその顔に生気は感じられない!

 何をされるか分かったものじゃない。
 すかさず、ISがいつでも発動できるように体勢を整えた。

「……怪しいやつだなぁ……」
 警官はそんな事をしわがれた声で呟きながら……拳銃の銃口を私に向けた!

 まずい!
「IS、ライドインパルス!」
 声を発するとともに、私の腰と足首から翼状の紫色光が発生する。

「……了解……射殺します……」
 そう言うとともに、乾いた音ともに銃弾が銃口から発射された!

「アクション!」
 すかさず瞬間移動を試みた。
 私の体はすぐさま後方に飛び、直後、銃弾が私の鼻先を掠めた!

 ――!!
 異変は起こった。

 ライドインパルスの翼が即座に消滅したかと思うと、突如、全身が気だるくなり、息苦しくなる。
 呼吸が異様に荒くなり、胸のあたりが激しく痛み出す。
 思わず私はその場に蹲った。

 な、なぜ?
 私は戸惑いを隠せなかった。

 ライドインパルスを発動させれば、少なくとも1キロ以上は移動できる。
 が……先程の移動はせいぜい1メートル弱しか移動していない!
 銃弾はおろか、警官の視線の届かない所まで行けるはずなのに!
 そして、この異様なまでの体の疲れは何だ!

 今、自分自身に起こった事象を理解できないまま、激しい動悸のあまり、その場から動けずにいた。
 そう――私を狙った警官に十分なまでの隙を与えて……。

 しまった――と思ったときにはすでに遅かった。
 乾いた音ともに、左腕が異様に熱くなり、激痛が襲った。
「あぐっ!」
 思わずうめいてしまう。
 撃たれた左腕をすかさず目にする。

 そこには小さな穴が開いていて、血が流れ出していた。
 さらには打ち抜かれて破損した機器の破片が少し突き出ていた。
 ショートしているらしく、時折火花が散っている。

「……無駄な抵抗はやめなさい……」

 警官は不気味ににたにたと笑いながら……私の頭に銃口を向けていた。

 意識が朦朧としてきた。
 私は逃げ出そうと思いながらも……その場から動けずにいた……。

 ―to be continiued―

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2007年07月27日(金) 17:26:42 Modified by beast0916




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