マスカレード8話

「行くよ!レイジングハート、クロックアップ!」
なのはの指令通りにクロックアップを発動させるレイジングハート。
それにより周囲の速度は限りなく静止状態に近い状態となった。

「ライダーキック!」
「ライダースラッシュ!」
『Rider Kick(ライダーキック)』
『Rider Slash(ライダースラッシュ)』
ガタックのベルトから走った電撃が頭へと上り、そして右足へと駆け巡る。
「どぉぉおりゃぁあああ!!!」
一気に飛び上がったガタックは、電撃によって光り輝く右足をランピリスワームへと叩き込んだ。

サソードは毒液の滴るサソードヤイバーを構え、ガタックのライダーキックにより吹っ飛んだランピリスワームを待ち構える。
「はぁ!ふん!はっ!せやっ!」
そしてサソードのレンジへと飛び込んだランピリスワームをメッタ斬りにする。
凄まじい速度で切り付ける刃からは、紫の毒が飛び散る。まったくもって痛々しい。
そして……
「ディバィィィィン……バスタァーーーーーーッ!!」
トドメに上空からのディバインバスター。轟音を放ちながらランピリスワームを飲み込んだ閃光は地面に直撃する。

『Clock Over(クロックオーバー)』
サソード&ガタックゼクター、そしてレイジングハートが同時に告げる。
それと同時に三人を除く世界は元の時間の流れを取り戻した。

そしてなのはは地面へ降りて、サソードとガタックを見据えた。
「私は時空管理局嘱託魔導師……高町なのは。」
「ナノハーヌ!キミもワームと戦う存在だったのかぁ!」
「ちょ、ちょっと待て剣!これは一体どういうことなんだ?なのはちゃん。
時空管理局とか魔導師とかって……」
サソードヤイバーからはサソードゼクター、ガタックのベルトからはガタックゼクターがそれぞれ離れ
二人の装甲は消えていった。
なのはに駆け寄ろうとする剣を制止し、問い掛ける。
「詳しい説明はアースラでします。ついてきてくれますか?」
二人は「アースラ?」という表情をしながら顔を見合わせた。


数十分後、アースラ。

「わかって貰えたかしら?」
「…………。」
時空管理局や魔導師についての一通りの説明を終えたリンディ。
だが説明されても加賀美の頭はこんがらがっていた。異世界や魔法なんてそう簡単に信じられる訳が無い。

「(あの加賀美って人、前に来たダディアナさん?とかいう人よりも物分かり悪そうだね)」
小声でコソコソと失礼な事を言うエイミィ。
「(キミは黙ってろ。それと橘さんだ。だんだん間違い方が酷くなってるぞ。)」
正直自分もフルネームで言えるかどうかは微妙だが、一応突っ込むクロノ。
「……確か……『橘さくら』さんだったかな……?)」
……おいおい。お前もか、クロノ。
ちなみにエイミィの中では「橘ギャレン」という名前で記憶されているが、
もう突っ込むのが面倒臭いのでそれについてはこれ以上言及しないでおこう。

「じゃあ俺達の世界での時空管理局の役割は、だいたいZECTと同じってことでいいんですか?」
「ええ。人々を守りたいと願う気持ちは貴方達ZECTと相違無いわ。」
「…………。」
普段あまり考えるということをしない加賀美にとってこの状況は苦痛だ。頭の中がこんがらがっている。

そしてリンディは「良ければZECTとも協力したい」という旨を伝える。
「わかりました。とりあえず、この件は上司に報告します」
「そう。わかったわ。剣君はどうかしら?」
リンディの質問に剣は「ふふん。」と笑った。
「いいだろう!俺は協力することにおいても頂点に立つ男だ!全てのワームは俺が倒してやろう!」
キョトンとするリンディ他局員達。「協力においても頂点」ってどんなだよ、と突っ込みたくもなるがあえてスルーしよう。
剣の答えに一同は「はぁ……」となるが、一人だけ神妙な面持ちの男がいた。
「(戦いの神……ガタックに選ばれし人……か)」
立川だけは冷静な瞳で加賀美を見つめていた……。



ACT.8「暴走の赤い靴」



翌日、サル。

ここは天道や加賀美達も行きつけのレストラン。

「師匠!できましたぁ!」
そう言いながら何かが乗った皿を持ってくる蓮華。
「……なんだ、コレは?」
「カレーに漬け物です!」
「…………。」
天道は「カレーに漬け物」とやらをスプーンですくい、口に運ぶ。……が、やはり食べずに諦めた。
剣は興味津々といった感じでカレーに漬け物をジロジロと見ている。
「……で、加賀美。話というのは何だ。」
うまくカレーに漬け物から話題を反らす。

「ああ、時空管理局の話なんだけど……」
「……時空管理局だと?」
天道は「なんだと?」といった表情で加賀美を見つめる。
「時空管理局ってのは、簡単に説明すると俺達ZECTと同じで人々を守るための組織らしいんだ。」
まぁ少し違うが、天道にもわかるように説明する加賀美。

加賀美は昨日聞いた次元世界や魔導師といったファンタジーな話を天道にも聞かせた。
「……なるほどな。」
「どう思う?天道」
「……その時空管理局とやらもZECTと同じだ。胡散臭い組織だという事に変わりは無い。」
「……けど……!」
「だいたい、そんな訳のわからん組織に協力してやる義理は無いな。」
天道はそう言い席を立つ。そんなにカレーに漬け物が食べたくないのか。
「ちょ、ちょっと待て天道!」
「くどい。これ以上俺に同じ事を言わせるな。」
そうして天道はサルを後にした。
「……ったく、天道の奴何考えてんだ……!」
落胆しながらガタッとイスを引き出し、座る加賀美。

「ほっとけよ、んな奴。」
すると加賀美の近くでコーヒーを飲んでいた長髪の青年が話しかけてくる。
「何だ、あんた?」
「…………。」
長髪の青年に話し掛けるが、青年はコーヒーを「ふーふー」するのに集中しているのか加賀美の問い掛けを無視する。
「あ、彼は乾くん。たまにコーヒー飲みにくるのよ」
「弓子さん。」
そこで店長の『竹宮弓子』が説明に入る。

「……何か知らねぇけど、やる気の無い奴に何言っても無駄だろ。相手にとっちゃかえって迷惑なだけなんだよ」
「…………。」
乾−巧−は自分の境遇と重ねながら言った。
確かに巧の言い分にも一理ある。天道の性格を考えれば有り得ない話じゃない。

「うまぁーい!!」
「な、なんだ!?」
「あちっ!」
しかし、突然の大きな声に加賀美と巧は驚く。さらに巧は「ふーふー」していたコーヒーまで口にヒットし、ダブルパンチだ。
一同は声の主を見る。
「繊細にして大胆!始めての味だぁ!!」
蓮華の作った「カレーに漬け物」を美味しそうに頬張る剣が、あまりの美味しさに感動しているのだ。
「ホントですか!おかわりならたくさんありますよ♪」
「ああ!それも頂こう!」
剣と蓮華のコントに「はぁ……」とため息をつく加賀美。
ちなみに巧は「カレーに漬け物」の異様な外観を見て少し驚いている。
「お、おい……あいつの味覚大丈夫なのかよ?」
巧は剣の食べっぷりに感服する。いや、色んな意味でだ。
「……ああ。あいつはいつもこうなんだ。気にしないでくれ」
「……あんたもいろいろ大変そうだな……」
加賀美に少し同情する巧であった……。


天道は一人、海鳴市を歩いていた。目的地は……ZECT本部。
「ネイティブ……時空管理局……それにあの立川とかいう男……一体何者なんだ?」
天道はそう呟いた。事の発端は数日前に遡る。

………………
…………
……。
その日天道は一人で夜道を歩いていた。
「……天道総司。」
「……!?」
突然話し掛けられ、身構える天道。物影から謎の男が現れる。
「……光を印せし太陽の神、カブトに選ばれし人よ。」
「……お前は何者だ?」
「……時空……管理局。」
「なに?」
「あなたはカブトとして戦い続けて下さい。我々ネイティブの為にも……」
「ネイティブだと?……お前、ZECTの人間か?」
次の瞬間、空を裂き現れた赤いゼクター。
天道は『カブトゼクター』をつかみ取ろうとするも、その手をすり抜けてしまう。
「な……!?」
そして謎の男−立川−の手に納まるカブトゼクター。
「……それはあなたの大切な人のためでもある……」
立川は言いながら天道にカブトゼクターを手渡し、立ち去ろうとする。
「待て!大切な人とはまさか……ひよりのことか!?」
だが立川は天道の質問に答えること無くそのまま夜の闇に消えていった……。

ここで回想シーンは終わりとする。

そしてZECT本部。

「あんたに聞きたいことがある」
「……ほぅ。一体、何かな?」
ZECT総統、『加賀美陸』を前にした天道は、真実を聞き出すために陸に迫る。
「ネイティブとは一体何だ?」
「…………。」
「時空管理局とは、一体何者なんだ?あんたなら知っているだろう」
「……何の、話かな?」
「……とぼけても無駄だ。知らないとは言わせん。」
「……知らない、と言ったら?」
挑発的な態度をとる陸。
「……とぼけるな!言っておくが、俺が今その気になればZECTを潰すこともできる!」
天道は珍しく冷静さを欠いた大声で陸に詰め寄った。
すると……
「暴走スイッチ。」
「……!?」
陸独特の喋り方で天道を制した陸。
「赤い靴を……知っているかね?」
「なに?」
天道だって赤い靴くらい知っている。
確か赤い靴を履いた少女が、靴が脱げなくなり踊り続けるというような話だ。
「……カブトとガタックは自らの意思に関係無く、全てのワームを倒すまで戦い続ける……」
「…………。」
天道は今は何を聞いても無駄だと悟り、陸に対し苛立ちの念を表しながら部屋を後にした。
しかし、扉を開けた瞬間一人の男とぶつかりそうになる。
「…………。」
「…………。」
しばらく睨み合う二人。だが天道は何を言うことも無く立ち去っていった。

男は陸の部屋を「コンコン」とノックする。
「入りたまえ。」
「失礼します。」
男は陸の部屋に入る。陸は男の姿を見るや否や口を開いた。
「本日付けで……」
「ダイアの、エース……。」
「は?」
「……何でもない。続けたまえ。」
「……はい。本日付けでZECT所属となりました橘朔也です。」
陸は橘を見つめ、不適に笑ったという……。


調度その頃……。
空から小さな光が降り注いでいた。
「うわぁーーーーーーー!」
ここに自転車に乗り、大声で叫ぶ少年がいた。
「たーすーけーてーくーだーさーい!!」
少年は自分でも自転車の制御が効かずに、そのまま加速を続ける。
「ちょ、ちょっとアレ、危ないんちゃう!?」
「……アレは……激突ルートですね……」
大きな声に気付いたはやてとシャマルの二人は、現場に駆け付ける。シャマルは何やら不吉な事を言っているが……

そして自転車が走っていった方向で「ガシャン!」という不吉な音が鳴る。
「あちゃあ……」
「やっちゃった……?」
二人は走って現場に到着。目の前にはどう考えても有り得ない光景が繰り広げられていた。

「こ……これは……!!」
「ありえん……」
自転車に乗った少年は自転車ごと十数メートル上の木に乗っかっているのだ。
「あうう……」
少年は木の上で目を擦っている。
「大丈夫ですかー?」
シャマルはこの世で最も不幸な少年−野上良太郎−に話し掛ける。
「はい。大丈夫です。いつものことですからぁ」
おっとりとした口調で喋る良太郎。
その後、はやて達の協力でなんとか降りる事に成功。
「もう!あんな危ない運転して、事故でも起こしたらどうするの!もっと安全運転を心掛けて下さい!」
「うぅ……ごめんなさい」
「もう事故ってると思うけど……」
泣きそうな顔でシャマルに謝罪する良太郎。さらにはやてははやてでツッコミのタイミングは逃さない。
さすが関西人……といった所か?
しかしその時、良太郎の体から白い砂が零れ落ちたことには誰も気付かなかった……。

ちなみに二人は家の洗濯機が壊れたため、近所の老舗クリーニング屋に洗濯物を出しにいく途中だ。

と、いうわけで数分後、「西洋洗濯舗 菊地」。

「ここ?シャマル?」
「ええ、ご近所さんの話だとそのはずなんだけど……」
はやてが聞いていたのは「創業百年を迎える老舗クリーニング店」のはずなのだが……
店番をしているのがあまりやる気がなさそうな男一人。
「一応……入ってみるか」
「そうですね。外見だけじゃわからないもの」
そう言い、店のドアを開ける二人。
「……いらっしゃいませ。」
「「(うわぁ何コレこの顔やる気なさそー……)」」
二人は明らかにやる気のなさそうな店員の態度に「ガビーン」という表情になる。
「え〜と、これ、クリーニングお願いしてええかな?」
「ああ。」
言いながらはやてから服を受け取る店員。本当に無愛想な店員だ。はやて達も絡みにくい。
すると……
「まったく、無愛想だねぇ……」
「草加……。」
奥から現れた男は独特の口調で喋り出した。店員こと巧は、男を草加と呼ぶ。
「せっかく珍しくお客が来てくれたのに、そんな態度でいいのかな?」
「…………。」
「ま、キミじゃそんなもんか。」
草加−雅人−はそう言った後「フン」と鼻で笑い、再び奥へと戻っていった。
はやては「あの人……一々嫌味言いに来たんやろか?」と疑問を口にする。
「ほっとけ。あいつはあんな奴だ。」
巧はサラっと言った。全く悔しく無いと言えば嘘になるが、一々相手にするのも面倒だからだ。

数日後、海鳴市のとある廃工場。

飛び交うピンクの閃光と、ワームを切り裂く青い閃光。
高町なのはと仮面ライダーガタックこと加賀美新は今日も現れたワーム群を薙ぎ倒していた。
「なのはちゃん!遠距離のワームは任せた!」
「うん、わかった!」
二人は連携で次々とワームを倒していく。ガタックはガタックダブルカリバーで近くの敵を切り裂き、
なのははディバインバスターで遠くの敵を吹っ飛ばす。
毎度の事ながらキリが無い。

そこへ、工場の入口から堂々と一人の男が入ってくる。
二人にとってはかなり見覚えがある男、天道総司だ。
「天道か!」
「もしかして……天道さんも……」
なのははこの展開は間違いなくライダーに変身だろうと予想する。
すると案の定、工場の屋根を突き破りカブトゼクターが飛来、前回のガタックゼクター同様ワームに体当たりをしかける。
そして天道の手に「パシッ」と納まったカブトゼクターは、天道のベルトに装填され……
「……変身。」
『Henshin(ヘンシン)』
ベルトから延びた銀色のアーマーが天道の全身を包む。
仮面ライダーカブト マスクドフォームだ。
「やっぱり、ライダー……」
なのはは想像通りの展開にそう呟いた。
カブトは黙ってワームの大群へと歩いていく。
そしてやはりサリスの大群は、なんとかの一つ覚えのように歩いていくカブトに群がり、爪での攻撃を繰り出す。
「はぁっ!」
だがカブトの半径2m以内に入ったワームは斧状の武器、『カブトクナイガンアックスモード』により即効で爆砕される。
凄まじい強さだ。たいていのサリスは一撃で倒している。
「すごい……強い……!」
なのはもカブトの戦いを見て、ポカンとしている。

カブトの登場によりワームも残り少なくなり、その中の3匹が赤く変色し始める。
「脱皮しちゃう!」
なのははあわててレイジングハートを向けるが、それよりも早くカブトが行動を開始した。

「させるか。」
『Cast off(キャストオフ)!』
銀のアーマーが弾け、脱皮をしようとしていたワームに直撃する。
『Change beatle(チェンジビートル)!!』
カブトムシの角のような形をした『カブトホーン』が頭に装着され、そのフォルムは赤いカブトムシを思わせる
『仮面ライダーカブト ライダーフォーム』となる。
「……クロックアップ。」
『Clock up(クロックアップ)』
次の瞬間、カブトの速度は例によって光速を越えた。
ゆっくりと脱皮途中のワームへと近寄るカブト。
そしてカブトはカブトクナイガンをクナイモードへと変形させ……

ザシュ! ザシュ! ザシュ!

鋭い効果音と共に切り裂かれたワーム3匹。
『Clock over(クロックオーバー)』
そしてクロックオーバーの電子音と共に時間は元の流れを取り戻し、ワームは3匹揃って緑の炎と化す。
「つ、強い……これが、天道さん……?」
現れてから数分でワームを殲滅したカブトに、なのはは少し恐怖にも似た驚きを感じた。
そして廃工場の入口付近、ここにいる一人の男、立川もなのはと同じような感覚を覚えていた。
「これが太陽の神、カブトの力……」

「立川……さん?」
そしてそれに気付いたなのはも「何故立川がここに?」という表情をする。
『マスター、ワームが一匹残っています。』
「え!?」
レイジングハートの警告によりワームに気付いたなのはは咄嗟にレイジングハートを構える
……が、最後のワームはすぐに人間の姿に戻った。
「た、助けて下さい!お願いします!」
「え……?」
突然頭を下げたワーム男に驚いたなのははレイジングハートを下ろす。
「もう悪さはしませんから……どうか見逃して下さい!」
男も泣きながら頭を下げ続ける。
男が可哀相に思えてきたなのはは「それなら……」とレイジングハートを納めようとした。
その時……
『One』
「「え?」」
突如聞こえる電子音に振り向く。そこにはベルトの『フルスロットル』を押しながらゆっくりと歩いてくるカブトの姿が。
「ちょ、ちょっと天道さん!?」
「……ひ、ひぃぃ!ごめんなさい、ごめんなさい!」
何をするのかと驚くなのは。一方男は本気で泣きながら謝り続けている。そんなにカブトが怖いのか……
『Two』
だがそれでもカブトは歩き続ける。
「お願いします!許して下さい!!」
男は尻餅をついて後ずさりながら命ごいを続ける。こうなるとワームといえど本当に不憫だ。
「やめて、天道さん!もうこのワームは……」
『Three』
「う……うわぁぁああああああ!」
すでに天道は男の眼前まで迫り、
『Rider Kick(ライダーキック)!!』
「駄目ーーーーっ!」
ドカァン!
轟く爆音。叫ぶなのはを無視し、すでに戦う意思を無くしたワームに浴びせたライダーキック。
ワームは悲痛な断末魔の叫びと共に爆砕した。

「……どうして……?あのワームはもう……戦う意思を無くしてたのに……」
「…………。」
なのはは悲しい顔で天道に詰め寄る。何も殺す必要は無かった。恐らくあのワームは本気で
改心しようとしていた。見逃してやっても良かったのでは無いだろうか?
ガタックも黙って見ているしかできなかった。

「……ためらいは、こっちがやられる。」
「でも!……可哀相とか思わないの!?あのワームは……」
「くだらん!!」
「……!?」
言いかけたなのはだが、突如大声を出した天道に制される。さらに天道の剣幕になのはは一瞬「ビクッ」とした。
「……相手がワームなら、俺は非常に徹する。そして……倒す……!」
「そんな……ワームだって生きてるのに……」
天道は拳をにぎりしめて言う。ワームを憎んでいるかのように……
「甘いな。お前のような子供は帰って勉強でもしてるんだな。」
「……っ!私は皆を守りたいだけ……!あなたに言われてやってるんじゃない!」
「…………。」
言うだけ言ってなのはをキレさせた天道は、後は何も言わずに立ち去ろうとした。……その時。
「う……ぐうう……!」
「天道!?」
突如苦しみ出した天道。
だんだんと天道の意識が遠退いていく。
そんな天道が最後に見た物は、入口付近に佇む立川の姿だった……。

「うおぉぉぉぁぁああ!」
カブトは凄まじい声で咆哮し、一気に立川との距離をつめた。
「……カブト!?」
「うぉぉおお!」
そして立川に重いパンチを叩き込むカブト。
「く!」
「天道!おい、何してんだ天道!」
「天道さん!やめてください!」
ガタックとなのはも突然の出来事に驚いている。なのはにしてみれば自分の仲間が突如襲われているのだから。
「なんで……天道さん……あの時の優しい顔は、嘘だったの!?」
かつて屋上にてなのは達にパンをわけてくれた時の優しい笑顔を思い出したなのはは本当に悲しそうな顔で天道を呼び掛ける。
「あぁ!……うぁあああ!ぉおおおああああ!」
もはやカブトに言葉は通じないのか、ひたすらに立川を殴り続ける。
「くっ……ドレイクゼクター!」
『Henshin(ヘンシン)』
しかし立川も防戦一方では無く、ドレイクゼクターを呼び出し『仮面ライダードレイク』へと変身。
「な……!なんでドレイクになれるんだ!?」
「立川さんもライダーに!?」
もう加賀美もなのはも−特になのはは−頭の中が混線状態だ。

天道もいよいよもって立川にトドメを刺すつもりらしく……
『One,Two,Three!!』
「おぁぁあああああ!!」
『Rider Kick(ライダーキック)』
「やめろぉぉぉぉ!!」
加速されたタキオン粒子が駆け巡る、まさに稲妻の如きライダーキックは立川に向けて振り下ろされた。
……はずだった。
「ぐ……ぅ……て、天道……!」
だがそこにいたのはドレイクでは無く、ガタックだった。咄嗟にドレイクの前に飛び出し、カブトのライダーキックを受け止めたのだ。
「なのはちゃん……今のうちに……この人を連れて、ここから離れるんだ!……早く!」
「う、うん!わかった!」
なのははすぐに立川ドレイクの手をつかみ、走り出した。途中、なのはは3人の男とすれ違うが慌てていたためかその3人の顔を確認することは無かった……。

同刻、海鳴某所。

「…………。」
「く……う……。」
一人戦う黒いライダー。相手の怪人−オルフェノク−は既にボロボロだ。
「……ふん」
黒いライダーはベルトからチップ状の物体−ミッションメモリー−を取り出し、腰から取り外した双眼鏡にセット。
『Ready』
機械音声と共に双眼鏡−『カイザポインター』−は変形、そして黒いライダー−仮面ライダーカイザ−の右足にセットされる。
『Exceed Charge』
カイザはベルトに装着された『カイザフォン』を開き、ENTERボタンをプッシュ。
すると、ベルトから黄色い光がフォトンストリームを通してカイザポインターへと伝達される。
「……ふん!」
そして敵にむけてキックのモーションを見せるカイザ。同時にカイザの
足から飛び出した光弾はオルフェノクに直撃、その動きを拘束し、さらに黄色の円錐が現れる。
「はぁっ!」
そして飛び上がったカイザは円錐に向けてライダーキック。
体ごと円錐に入りオルフェノクに直撃、貫通する。この技の名前はゴルドスマッシュ。
カイザがオルフェノクの後ろに着地するとが同時に
ゴルドスマッシュの直撃を受けたオルフェノクの体に『Χ(カイ)』の文字
が浮かび上がり、そのまま灰となった。

「……ふん。ま、こんなもんか……」
カイザはベルトからカイザフォンを取り出し、変身を解除。そのまま専用バイク『サイドバッシャー』に跨がり、いずこかへと立ち去っていった。


「……あれがスマートブレインのライダーズギアの一つ……カイザか。」
「はい……データの収拾は完了しました。」
「そうか。……帰るぞ。」
サングラスに黒いコートを羽織った怪しげな男が部下と思しき男と共に
カイザの戦闘を記録していた事を、カイザこと草加雅人は知る由も無かった……。



「天道ぉ!正気を取り戻せ!天道!」
「うぁぁぁあああ!うわぁぁあーーーっ!」
ガタックの言葉に全く聞く耳を持たずに暴れ続けるカブト。
「うわぁ!」
カブトの猛攻にまたしても弾き飛ばされるガタック。だがその時、ガタックの目に3人の男が写った。

「へっへっへ……」
「影山……さん?」
不気味な笑い声に気付いた加賀美は思い当たる名前を呟いた。

「どうせ俺達は……日なたの道を歩けない……」
「ククク……落ちたもんだなぁ?……太陽さんもよ……なぁ、兄弟?」
「あぁ浅倉。……あんな太陽……俺が汚してやるっ!」

三人は……地獄三兄弟は不適に笑う……。
特に浅倉は……ようやく再開したカブトへの喜びの笑いか、満面の笑みだ。
「ククク……ブッ潰してやるよ……カブトぉ!!」

次回予告

果たして突如自我を失ってしまった天道は再び天の道を歩めるのか……

そして現れた新たな『ギア』。

Dead or Alive 痛みだけの
時間を巻き戻せ
そのために僕らは 未来を見てる……

今こそ未来を掴みとれ、カブト!

次回、魔法少女リリカルなのはマスカレード
ACT.9 「最強の刃!パーフェクトゼクター!」

Open your eyes for the first 555.

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2007年07月25日(水) 18:21:26 Modified by beast0916




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