白き異界の魔王8話

秋葉原のマンション:フェイト・T・ハラオウン
軽く周囲に探査をかける。
予想通り周囲に結界が張られている。
ここに閉じこめて確実にしとめるつもりなのだろう。
一般人が少年をのぞいて誰もいないのが救いだ。
この少年が結界内に取り残された理由は不明だが追求は後にすることにする。
「エリオ、キャロ行くよ」
二人がうなずく。
「フリード、ブラストレイ」
フリードが部屋の中で体を無理矢理回しながら首を外に向ける。
部屋の中は取り返しがつかないほどになっていくがそんなことを言っている場合ではない。
フリードの鼻先に火球ができる。
「ファイア!」
火球は窓から出た直後に爆発。
イナゴのいない空間ができる。
「あなたはここから動かないで」
「おい、待てよ」
壊れた窓を守れば少年は守れそうだ。
フェイトは窓から飛び出す。
「サンダーレイジ!」
雷がはしる。
イナゴの群れを焼き尽くしていく。
「フェイトさん」
キャロが見上げている。
「フリードが・・・」
すぐにわかった。おびえている。
イナゴの群れが割れた。
バスほどもある巨大なイナゴが顎を広げてフリードに食いつこうとする。
「キャロ!」
巨大イナゴに飛ぼうとする。
イナゴの羽音が大きくなった。
群れが一斉にフェイトに襲いかかる。
イナゴの群れがバリアジャケット破ってフェイトの体を削っていく。
「うう・・・キャロ・・・エリオ」
群れがフェイトの視界をふさいだ。

秋葉原のマンションの外:エリオ・モンディアル
「やぁあああああっ!」
フリードを足場にエリオが飛び出す。
ストラーダから魔力を吹き出し加速。
巨大イナゴに向けストラーダを突く。
「うわぁあっ」
顎に挟み込まれ止められた。
巨大イナゴの力が強い。
これ以上無理矢理突き込むことはできないし、引き抜くこともできない。
それどころか少しずつストラーダごとエリオを飲み込もうとしている。
「くうっ・・・」
ストラーダは手放せない。
ここで手放せば巨大イナゴはフリードに襲いかかる。
キャロの援護は・・・これも無理だ。
おびえるフリードを落ち着かせるので精一杯。
「さっきので、そいつを押し込め!」
「は、はいっ」
再びストラーダから魔力を吹き出す。
ストラーダはイナゴの顎の中に押し込まれる。
完全にストラーダの穂先はイナゴの口の中に入ったが、イナゴは口を閉められない。
魔力の噴射が顎を押さえつけている。
エリオの横に影かが出た。
さっきフェイトといた民間人だ。
身長ほどもある剣を持ち、それを一気に振り上げた。
剣はイナゴの顎を砕き散らせる。
エリオはイナゴの叫びを初めて聞いた。
巨大イナゴが体を震わせ、剣もストラーダも届かない場所へ離れていく。
「逃がすねえよ!」
エリオと同じくフリードを足場に民間人が剣を上段に持ち上げる。
「エア・ブレード」
剣を巻き込むように風が起きる。
その風は徐々に強く、濃くなっていく。
剣が振り下ろされた。
剣は届かない。
が、剣にまとわりつくように吹き荒れる風が伸びる。
風は巨大イナゴの殻を引き裂く。
風がやんだ。
巨大イナゴが身をよじり苦しみだす。
直後、内側から風を吹き出してバラバラになった。

秋葉原のマンションの外:フェイト・T・ハラオウン
再びイナゴの羽音が大きくなった。
急に視界が晴れる。
イナゴの群れの黒い固まりが空の闇に消えていくのが見えた。
フリードの方を見ると、剣を持った少年が巨大イナゴを粉砕しているのが見える。
キャロとエリオが少年を見ていた。
なのはが模範を見せた時に二人はあんな顔をすることがある。
空の色が変わっていく。
月が欠けた黄色に戻っていた。

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2007年07月21日(土) 17:57:34 Modified by beast0916




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