作曲家・多田武彦〔通称・タダタケ〕のデータベース。

男声合唱組曲「中勘助の詩から」(作詩:中勘助)

中勘助の詩からナカカンスケノシカラ指示速度調性拍子備考
1絵日傘エヒガサやや早く、素朴に4分音符=120ヘ長調2/4Tenor Solo
2椿ツバキやや早く、わらべ唄風に4分音符=104ト短調4/4
3四十雀シジュウカラ早く、優しく4分音符=132変ロ長調4/4
4ほほじろの声ホオジロノコエゆっくりと、孤独の感情を以て2分音符=40ニ短調3/2
5かもめカモメやや早く、可愛いらしい表現で4分音符=104ヘ短調4/4Tenor Solo
6ふり売りフリウリゆっくりと、のどやかに付点4分音符=48ト短調6/8呼び声
7追羽根オイバネ語る如くに、しみじみとした感情を以て4分音符=116ホ短調4/4Tenor Solo

作品データ

作品番号:T05:M05n
作曲年月日:1958年?月?日
関西学院グリークラブによる委嘱

初演データ

初演団体:関西学院グリークラブ
初演指揮者:根津弘
初演年月日:1959年1月31日
関西学院グリークラブ第27回リサイタル(於神戸国際会館)

楽譜・音源データ

作品について

多田家の三兄が関学グリーにいる縁で委嘱。委嘱の際、関学グリー側は高村光太郎「智恵子抄」による作品を提案したが、「智恵子抄」は清水脩によって既に作曲されているものが多いという理由で多田が断った。

ソロが多く、立ち位置を指定するものもある。

『絵日傘』の冒頭“軒につるした傘の”の“傘”は、七五調で統一されるように“からかさ”と読むのが正しいと思われるが、歌詞は現時点でも“かさ”である。また同様に“源氏香と…”は“源氏模様と…”が正しいのでは、という指摘もある。
『ふり売り』のソロは、音程のない呼び声である。
『追羽根』前半のTenor Soloは長大で技量を問われる。
詩の出典
「絵日傘」「かもめ」……『海にうかばん』(岩波書店、1936年)
「椿」……『沼のほとり』(岩波書店、1922年)
「四十雀」……『琅玕』(岩波書店、1935年)
「ほほじろの声」……『しづかな流』(岩波書店、1932年)
「ふり売り」……『機の音』(岩波書店、1936年) 
「追羽根」……『飛鳥』(筑摩書房、1942年)

歌詩

絵日傘
とほりすがりのからかさ屋
軒につるした傘の
渋の匂が気にいつて
子供の絵日傘かつてきた
みいちやんよつちやんいらつしやい
絵日傘さして遊びましよう
ぱつと開けば麻の葉に
黄色い雲や赤い雲
ところどころの櫛形は
源氏模様といふもんよ
さしてまはせば朝蔭の
風も涼しいかざ車
横にまはせばくるくると
淀の川瀬の水車
おててつないで歌うとて
うちのお庭で遊びましよ
椿
わしがとこから五ちよべえくれば
音に名だかい久兵衛さんの椿
まはり六尺背は二十二尺
枝もさかえりや葉もしげる

しげる葉陰にさかりの花が
二百三百しん紅に咲いて
おちたその実が目笊に五百
安いときでも一両二分にやなるとさ
四十雀
白いほをしてたづねてきたは
どこのこがらか四十雀か
ちいくる びいくる ちいくる びい
松にうもれたこのわが宿に
ぬしと住もやれ千代までに
ちいくる びいくる ちいくる びい
まつの葉のよにこんこまやかに
ふたりすもやれ千代までに
ちいくる びいくる ちいくる びい
ほほじろの声
ほほじろの声きけば
山里ぞなつかしき
遠き昔になりぬ
ひとり湖のほとりにさすらひて
この鳥の歌をききしとき
ああひとりなりき
ひとりなり
ひとりにてあらまし
とこしへにひとりなるこそよけれ
風ふきて松の花けぶるわが庵に
頬白の歌をききつつ
いざやわれはまどろまん
ひとりにて
かもめ
ゆりかもめ
鷗のはしはなぜ紅い
あなかしこ
ほそら姿がかはいとて
都乙女がくちつけた

ゆりかもめ
鷗のはしはなぜ紅い
あなかしこ
都乙女に逢ひにいて
つい紅皿につまづいた
ふり売り
鯖よしかねー   かん鯛安いよー
帰りくる     海べのそばぢ
すれちがふ    賎の女が
肩なる籠に    はねるいろくづ
かははぎ     かさご
かん鯛      ぶだひ
いさぎよき    魚のかずかず
宿六が      けふの海さち
山かげに     姿はきえて
潮風に      のこるよびごえ
さばよしかねー  かん鯛安いよ
追羽根
五月の病気このかた引籠つてた姉もこの頃は不自由ながら家のなかの用が足せるやうになつた。で、いよいよ足ならしに外へ出ることになり、第一日は筋向ふのお稲荷さんへお詣りと話がきまつた。姉は附添ひに□□さんをつれて出かけた。すぐ戻るといつたのが思ひのほか暇がかかるのでどうかと気づかつてるところへベルが鳴つた。急いで玄関に出迎へる。××さんがあけた格子から競技に勝つた子供みたいに得意にはひりながら、境内をまはつてきた といふ。上出来だ。後につづいた□□さんが これおみやげに と手にもつた羽根をすこしあげるやうにして私にみせた。露店で買つてきたのだ。

いち夜あければ初春の
夢を追羽子いたしましよ
羽子板もつて紅つけて
ひとりきなきなふたりきな
ふるや振り袖裾模様
帯は金襴たてやの字
黒のぽつくり鈴ちろり
見にもきなきなよつてきな
まるいむくろじ白い羽根
蘂のすが絲青や赤
それ花のよに実のやうに
ちよんとつかれて空高く
あがるとすれどくるくると
つちにひかれて舞ひおつる
乙女の夢の追羽子を
吹きてちらすな春の風

参考文献

なまずの孫 1ぴきめ 「VII 中中勘癇哥盡―『中勘助の詩から』を歌うために―」

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