玄冬素雪 | ゲントウソセツ | 指示 | 速度 | 調性 | 拍子 | 備考 | |
1 | 熊人 | クマビト | Andante | 4分音符=72ca. | ロ短調 | 3/4 | |
2 | 雪煙 | ユキケブリ | Andantino | 4分音符=80ca. | ト長調 | 3/4 | Baritone or Bass Solo |
3 | 冬至前後 | トウジゼンゴ | Andante | 付点4分音符=72ca. | ト短調 | 6/8 | |
4 | 雪に立つ竹 | ユキニタツタケ | Allegretto | 4分音符=120ca. | ト長調 | 4/4 | |
5 | 雪暁 | セツギョウ | Andante | 4分音符=72ca. | ニ短調 | 4/4 | Tenor Solo |
6 | 雪後 | セツゴ | Andantino | 4分音符=80ca. | 変ロ長調 | 4/4 |
初演団体:OSAKA MEN'S CHORUS
初演指揮者:安井直人
初演年月日:2013年5月25日
OSAKA MEN'S CHORUS 創立50周年記念 第38回リサイタル(於いずみホール)
※同年4月13日のコーラスめっせ2013において第1曲、第2曲、第4曲、第6曲の4曲が全曲初演に先立って演奏された。
初演指揮者:安井直人
初演年月日:2013年5月25日
OSAKA MEN'S CHORUS 創立50周年記念 第38回リサイタル(於いずみホール)
※同年4月13日のコーラスめっせ2013において第1曲、第2曲、第4曲、第6曲の4曲が全曲初演に先立って演奏された。
『玄冬素雪』とは「冬の白い雪」という意味で、冬と雪を主題にした北原白秋の六篇の詩に作曲されている。第1曲「熊人」の吹き荒ぶ雪に立ち向かう白熊は、苦しみの中で「新生」を夢見るかつての白秋自身の姿であり、第2曲「雪煙」への鮮やかな転換は、苦悩に満ちた白秋が、満ち足りた閑寂の世界へ「夢が飛ぶ」ごとく「新生」する様を表現している。(コーラスめっせパンフより)
組曲の大題「玄冬素雪」は、初演指揮者による命名。
組曲の大題「玄冬素雪」は、初演指揮者による命名。
白き熊 幽かなり。
極光を戴けり。
人かとも、白き熊。
白き熊 凍え立ち、
氷原にひとり在り。
見はるかし、白き影。
白き熊 飢迫れリ。
荒天の雪に、ああ
吹きつつむ白き雪。
白き熊 聴けり、今、
声のなき声のうち、
繁み澄む白き色。
白き熊 まじろがず、
ひたと立ち、息つがず、
神去ると、白き息。
白き熊 輝けリ。
氷原や、涯知らず、
夢は飛ぶ、白く飛ぶ。
極光を戴けり。
人かとも、白き熊。
白き熊 凍え立ち、
氷原にひとり在り。
見はるかし、白き影。
白き熊 飢迫れリ。
荒天の雪に、ああ
吹きつつむ白き雪。
白き熊 聴けり、今、
声のなき声のうち、
繁み澄む白き色。
白き熊 まじろがず、
ひたと立ち、息つがず、
神去ると、白き息。
白き熊 輝けリ。
氷原や、涯知らず、
夢は飛ぶ、白く飛ぶ。
枯れがれの孟宗竹に
陽はあたつても、
輝くほどにも明ろうとせず、
こまかに枝葉はそよめいても、
風が出たとも思はれぬ、
明るいようでも寒むざむと暮れ、
かげるようでも透きとほつた、
ああ、この冬至前後の日の入り、
枯れがれのあの黄色な笹の葉に
陽はあたつても。
陽はあたつても、
輝くほどにも明ろうとせず、
こまかに枝葉はそよめいても、
風が出たとも思はれぬ、
明るいようでも寒むざむと暮れ、
かげるようでも透きとほつた、
ああ、この冬至前後の日の入り、
枯れがれのあの黄色な笹の葉に
陽はあたつても。
聖らかな白い一面の雪、その雪にも
平らな幅のかげりがある。
幽かな緑とも、また、紫ともつかぬ、
なんたるつめたい明りか。
竹はその雪の面に立ち、
ひとつひとつ立つ。
まつすぐなそれらの幹、
露はな間隔の透かし画。
実にこまかな枯葉であるが、
それにも明日の芽立がある。
影する雲の藍ねずみにも
ああ、豆ほどの白金の太陽。
かうした午後にこそ閑けさはあれ、
光と影とのいい調和が、
湿つて、さうして安らかな慰めが、
おのづからな早春の息づかひが。
聖らかな白い一面の雪、その雪にも
平らな幅のかげりがある。
雪に立つひとつひとつの竹、
それにも緑の反射がある。
平らな幅のかげりがある。
幽かな緑とも、また、紫ともつかぬ、
なんたるつめたい明りか。
竹はその雪の面に立ち、
ひとつひとつ立つ。
まつすぐなそれらの幹、
露はな間隔の透かし画。
実にこまかな枯葉であるが、
それにも明日の芽立がある。
影する雲の藍ねずみにも
ああ、豆ほどの白金の太陽。
かうした午後にこそ閑けさはあれ、
光と影とのいい調和が、
湿つて、さうして安らかな慰めが、
おのづからな早春の息づかひが。
聖らかな白い一面の雪、その雪にも
平らな幅のかげりがある。
雪に立つひとつひとつの竹、
それにも緑の反射がある。
この毛糸の上着の真赤さ、
髪毛の黒い、眼の大きい童子よ、
これがわたしの子であったか
雪のふかい枇杷の木の根を
いつだか手を引いたことがあつたよ。
すべては前の世の夜明けのやうで、
ああ、今、この世でまた抱いたよ。
その雪がふつてゐる、
ああ 今朝もその雪がふつてゐる
髪毛の黒い、眼の大きい童子よ、
これがわたしの子であったか
雪のふかい枇杷の木の根を
いつだか手を引いたことがあつたよ。
すべては前の世の夜明けのやうで、
ああ、今、この世でまた抱いたよ。
その雪がふつてゐる、
ああ 今朝もその雪がふつてゐる
安らかな雪の明かりではないか、
ようも晴れた蒼穹である。
ほう、なんといふかはいらしさだ、
あの白い綿帽子をいただいた一つ一つの墓石は。
樋の上の雀よ、あの隣の閑けさをご覧、
海近いあの丘の陽だまりに、早や、
栗も梅も雪をふかぶかとかむったまま、
しかも耀く縁から雫してゐる。
なんだかいい知らせでも来そうな気がする。
かうした眺めの朝は、
藍紫に凪ぎ沈んだ海、あの遠くに
正しい潮の調律もととのってきた。
安らかだ、まことによう晴れた空だ。
ほら、山鳩が来た、何の木か揺すってゐる。
雀よ、さあ出て揺すったがよい。
幽かな雪煙ならかへって親しい。
すべては耀いてる、
よい歓びにある。
すべては単純だ、雪と光だ。――
幼い木魚が鳴りはじめた。
ようも晴れた蒼穹である。
ほう、なんといふかはいらしさだ、
あの白い綿帽子をいただいた一つ一つの墓石は。
樋の上の雀よ、あの隣の閑けさをご覧、
海近いあの丘の陽だまりに、早や、
栗も梅も雪をふかぶかとかむったまま、
しかも耀く縁から雫してゐる。
なんだかいい知らせでも来そうな気がする。
かうした眺めの朝は、
藍紫に凪ぎ沈んだ海、あの遠くに
正しい潮の調律もととのってきた。
安らかだ、まことによう晴れた空だ。
ほら、山鳩が来た、何の木か揺すってゐる。
雀よ、さあ出て揺すったがよい。
幽かな雪煙ならかへって親しい。
すべては耀いてる、
よい歓びにある。
すべては単純だ、雪と光だ。――
幼い木魚が鳴りはじめた。
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