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研修旅行

「研修旅行?東田のバイト先が?」
「だってさ…週末に二日も店を閉めて…豪気な店だよなぁ」
「それなんてエロゲ?」
岩崎に話した俺がバカだった…岩崎を無視して、帰りの支度をして廊下に出た。

 ところが岩崎が追っかけてきて捕まってしまった。階段を下りながら話す。
「なぁなぁ、どこに行くんだ?」
「なんでも山の温泉に行くらしい」
「店のみんなでか?」
「店を閉めて行くんだからそうだろ」
「いいなぁ…おまえも行くってことは、バイトの女の子も行くんだろ?想像したら…」
「勝手に興奮してろ」
「せっかくのチャンスじゃないか」
「なにが?」
「ほら、おまえ店の女の子とつきあっているんだろ?一歩進むチャンスじゃないか」
「こっちにはそんな気はこれぽっちもないんだけどなぁ…」
「まぁ、週明けの報告を聞かせてもらうわ。じゃ、俺は部活行くな」
そう言うと岩崎は体育館の方に向かった。俺は生徒用玄関に向かい、そのまま外へ出た。

「ああ、東田君…ちょうどいいところに…」
店に入り、休憩室へ行くと岡さんがいた。
「なんですか、マネジャー」
「遅くなってごめんなさい。これ研修旅行の詳しい案内ね」
ワープロ書きの紙を渡された。まるで遠足のしおりだ。
「明日は結構早い目に集合するから、遅れないでね。あと、バーベキューもやるから、
汚れてもいい格好を持っていく方がいいわね…」
「ご丁寧にありがとうございます」
俺は礼を言ってから、更衣室へ入った。例の紙はあとで見よう。そのまま着替えて、
シフト通りの時間に入った。


「なぁ、東田」
「何ですか宮越さん」
「ゲームは誰が持って来るんだ?」
「河野さんがそういうのの係りじゃないんですか?」
「そっか、じゃ聞いてくる」
宮越さんは早くも浮かれているらしい。ほかのフロアスタッフは、いつも通り
淡々と仕事をこなしているのに…こんなところにも宮越さんらしさが出るんだな。

「聞いてきた!」
「どわっ!」
突然宮越さんが現れるから、びっくりしてしまった。
「ちゃんと遊び道具は河野が用意してるってさ」
「そうですか。予想通りだな…」
「東田、ついでに言っておくが、明日は卓球で勝負だぞ!」
「はぁ…イヤだと行っても決定してるんでしょう?」
「当然だ!わたしたちはライバルだろ!」
「俺たちそんな関係でしたっけ…」
そんな会話をしながらも、時間は過ぎていった。

 翌日…遅刻だけはさけるために、集合時間の二十分前には駅前に着くように
した。すでに店長や岡さん、村主さんたちが来ていた。
「おはようございます。店長」
「やぁ、東田君…早いね」
そんな挨拶を交わしているうちに、続々と集まってきた。
「じゃあ、しゅっぱーつ!!」
妙にテンションの高い宮越さんの声にあわせて、みんなぞろぞろと歩きだした。



「ここで一発ホームラン 燃えろ燃えろ 宇野!!」
「河野…わざわざ『ウノ』のコールするのにそんな手間をかけるな…ていうか、
おまえって中日ファンだったのか?」
電車の中では、はしゃぐ河野さんに、つっこむ足立さんという漫才が繰り広げられていた。
はじめからこんなテンポで持つのかね…村主さんや妃さん、斉木さんは相変わらず
淡々としている。宮越さんもはしゃぎながらウノに参加している。店長は姫ちゃんの
相手をしているけど、まるで本当の親子のようだ。鎌倉さんと進藤さん…鎌倉さんの
ポケットマネーでグリーン車へ行ったようだけど、どうなっているのか…深く考えないことに
した。そうこうしているうちに、駅に着いた。

「じゃ、ここからは迎えのマイクロで移動ね」
マネジャーの引率で改札を出ると、バスが待っていた。そこから山道を揺られること、
小一時間も山道を揺られていくと、現地に着いた。山奥にしては…と言っては失礼
だが、立派な旅館だ。俺にでも、そこそこの格があるんだろうと言うことがわかる。
女将に迎えられて玄関に入る。
「ようこそ…遠いところをお越しくださいまして、ありがとうございます。」
ロビーでしばらくボケッとしていると、チェックインの手続きを終えたマネジャーが
やってきた。
「部屋割りは…わたし、近藤さんと姫ちゃんが501号室、鎌倉さん、村主さんと
宮越さんが502号室、榊君と進藤君、斉木君が503号室、河野君と足立君、東田君が
504号室ね。じゃ、荷物を置く時間などを考えて…三十分後に、バーベキュー場に集合ね」
マネジャーにそう言われて、みんなぞろそろと移動した。


「じゃ、俺たちは用意があるからお先に行くよ」
足立さんがそう言うと、手早く荷物をまとめて立ち上がった。
「え…そんな、店でも忙しいのに、ここでも料理の準備だなんて」
「東田君…宮越さんが何かをする前に手を打たないとね…」
「そういうこと!もう慣れっこだからまかしておきなよ!」
河野さんまでそう言うので、お二方に任せることにした。
「じゃ、俺は鍵を閉めてから行きますね」
「うん。東田君頼むよ、さ、河野行くぞ」
そう言うと二人は出ていった。

「さて…俺も行くか…」
鍵を閉めて振り返ると、宮越さんたちの姿が見えた。
「鎌倉さん、村主さん、宮越さん…これから移動ですか?」
「おう東田!楽しみだな!」
「足立君たちは先に行ったの?」
「うふふふ、志保小学校以来だから楽しみー」

 相変わらずにぎやかな人たちだなと思いながら移動した。バーベキュー場では、
すでに足立さん、河野さんや店長が準備を住ませて、野菜や肉を切っていた。
「あ、ひでーなー、河野…人の楽しみをとりやがって…」
宮越さんがブーブー言う。そこを河野さんが言いくるめる。
「いや、宮越さんには大役があるよ。米をといで炊いてくれなきゃ。ご飯を炊くのって
難しいんだよ?腕の見せ所じゃないか」
「よーし、それなら任せておけ」

 宮越さんは喜々として飯ごうをかかえて走っていった。
「河野さん?」
「なに?東田君」
「あんな大役を任せてもいいんですか?」
「まさかご飯を炊くので失敗しないだろう…もし失敗しても、お粥かリゾットかチャーハンに
すりゃ、何とか格好はつくし…ま、一応東田君見張りに行ってよ」
「わかりました。じゃ、ここはお任せします」


 俺はそう言うと流しへ向かった。
「あ、ちゃんとといでいますね…宮越さんのことだから洗剤を使って米をとぐかと思ったけど」
「東田…おまえわたしをバカにしているだろう」
そんなことを話しながら、準備をした。いよいよ火にかけるとき、宮越さんが次から次へと
薪をくべようとしたのには閉口したが…

「それじゃ、みんなそろったところで、かんぱーい」
店長の音頭取りで食事が始まった。店でまかないを食べるときと違って、屋外で
食べるのは普段と違ってなんかうきうきした気分になる。河野さんが焼肉番長ぶりを
発揮して、肉や野菜を取り分けていってくれるけども…
「進藤君!野菜も食べなきゃ」
「あら、犬にはタマネギを与えちゃダメなのよ!」
進藤さんと鎌倉さんは相変わらずだし…
「宮越さん、ピーマンを入れるよ?」
「ピーマン嫌いだからパスな」
宮越さんは相変わらずマイペース…
「村主さん!!ビールを冷やしていた氷を入れないで!!!」
村主さんと足立さんはいつものコントだ。結局、いつも店で見られる光景が
場所を変えただけにすぎなかった。

「ふー…満腹満腹…ごちそうさまでした」
なんだかんだいいながらも、楽しいひとときが過ぎた。そこへ店長の声が聞こえる。
「後かたづけにはいる前に確認するけど、晩の六時から宴会場で食事だから、
それまでは自由時間ね。温泉に入るなり、散歩に行くなり、各自でゆっくり過ごして」
「はーい」
と言う声とともに、各自で後かたづけに入った。すると河野さんが声をかけてきた。
「東田君?」
「はい、何ですか?」
「温泉で作戦会議な?」
「えっ?作戦って…」
「まぁ、来ればわかるよ。五時には温泉においでよ」
そう言うと、河野さんは今度は斉木さんに声をかけていた。俺は首をひねりながらも、
食器をかかえると炊事場へと向かった。


「さて、五時前だし…温泉に行くか…」
着替えと浴衣をかかえて温泉へ向かった。
「あ、東田君も来たか…これでそろったな」
河野さんが声をかけてきた。見渡すと、すでに男の店員はすべて集合していた。
足立さんが河野さんに聞く。
「なぁ、作戦会議ってなんだよ」
「このあと宴会だろ?そのあとだ…」
「そのあとって?」
「せっかく旅行に来ているのに、温泉につかって飯を食っておしまいというわけには
行かないだろ?当然二次会だ」
「まぁ、そう言う流れになるかもな」
「二次会では当然王様ゲームだ…そこでたとえば東田君…『店長とキスしろ』とか
言われたら?」
「それは勘弁して欲しいですね」

 河野さんは続けた。
「そこでだ、あらかじめサインを決めておこう。単純に手をどこにやるかと言うことで。
右手を頭の後ろに回したら一番、左手を頭の後ろに回したら二番、と言う形だ。」
「なるほど、それなら男同士でキスとかの変なことというのはさけられますね」
俺は納得して頷いた。河野さんもうなずいて続ける。
「そう。みんなもわかってくれたか?じゃあ、詳しいサインは…」
河野さんの音頭取りで打ち合わせは決まっていった。

 あらかた打ち合わせが決まると、河野さんたちは先にあがっていった。
俺は一番遅く来たので、もう少し残ることにした。ふと奥の方を見ると、
『露天風呂はこちら』という看板が見えた。
「ふーん。露天風呂もいいかも…」
そうつぶやくと露天風呂に移動した。
「あー…いいねぇ…こう雄大な景色の中に一人ポツンといるというのも…」
肩まで湯に浸かると、俺はそうつぶやいた。しばらくすると、隣…つまり女湯から
妃さんたちの声が聞こえてきた。


「うーん。たまには温泉もいいよなぁ。そして湯船で杯を傾けるのも」
「妃ったら、『露天風呂に酒持ち込み禁止』って書いてあるのに…」
「堅いことを言うな村主…鎌倉もどうだ」
「うーん。志保は宴会でユータ君に注いでもらうまではいいわぁ」
「じゃあ、宮越…は未成年だからダメだな。しかし、宮越…おまえ結構いいスタイル
しているなぁ」
「妃…ジロジロ見るなよ。おまえだって、一児の母のくせに、肉もたれてないし、
大人の色気があるじゃねぇか」
「ふっありがとよ、最近は少し太ったけどな…鎌倉や、村主も、服を脱いで見れば、
スレンダーでうらやましいよ」
「ううん。志保、妃さんみたいなボンキュッボンの大人な体型には憧れるけどな…」
「そうかい?しかし、村主…腰が細いなぁ…ねたましいったらありゃしないね」
「その分バストがないから…」
「大丈夫だよ。最近は貧乳萌えのオトコも多いし、足立も普通の男じゃないから、
確実な需要はあると思うけどな」
「なんで足立君の話が出てくるのよ…」
「時々一緒に帰ったりしているんだろ?隠すなよ」
「隠すなって…そう、一緒に帰ると言えば、宮越さん、あなたと東田君は最近どうなの?」

 突然俺の話が出たからドキッとした。のぼせそうだから湯から上がろうかとしたけども、
今動くと物音がして、女湯に聞こえるかも知れない…
「別に…おごってもらったりとか…送ってくれたりとか…今までとかわりはねえな」
「おまえらそれでつきあってと言えるのかよ…」
妃さんのあきれた声が聞こえてきた。
「しょーがねぇなぁ。それじゃあこの後ふたりっきりにしてやろうか…」
「おう、妃。そうしてくれるか!」


 思わず俺は、『なんだってー』と叫びそうになった。でも、
「あいつとは卓球で勝負をつけないとな!」
と言う宮越さんの声が聞こえてきたので、『ああ、良くも悪くも宮越さんらしい…」と
思った。女湯はしばらく沈黙に包まれた。それを鎌倉さんがうち破る。
「だめよ宮越さん。あんないい物件はとっつかまえておかないと…」
「そうか?」
「宮越さんから告白したんでしょ?」
村主さんが追い打ちをかける。とどめは妃さんだ。
「おまえらキスとかはしてないのか?」
「しようと思ったら逃げられたけど…」
「やっぱ、おまえら何とかしないとな…ちょっと話があるから耳を貸せ」
「いいけど利息は高いぞ」
その後はヒソビソ話に切り替わったようで、良く聞こえない。女性陣が話しに集中
しているうちに、俺は静かに湯船から出た。


宴会の方は、いかにも温泉宿の食事という感じだった。いつも不思議に思うんだが、
なぜ山奥でも刺身が出るんだろうね…二十歳以上には酒が出て、盛り上がってきている
ようだ。河野さんがカラオケのマイクを握りしめて『大都会』を絶叫していたり、
その後に妃さんにマイクを渡そうとして、妃さんの全力での抵抗が見られたり…
きがつけば、俺や宮越さんにも酒がつがれていた。なんだかからだがポカポカしてきた。

「それじゃあ、中締めと言うことで…二次会は五〇四号室で二〇分後ね」
河野さんの合図で宴会は終わった。
「東田君…荷物持ちを手伝って」
「あ、はい」
河野さんや足立さんと一緒に、売店で飲み物やお菓子を買って、五〇四号室に運び込む。
部屋には布団が敷かれていたが、いったん隅へ追いやった。そうこうしているうちに
みんながゾロゾロと集まってくる。

「では、拡大二十歳同盟の会を初めまーす」
「河野…拡大って何だ?」
足立さんのツッコミに河野さんが答える。
「だって、いつものメンバー以外の人もいるし。堅いこと言うな…じゃ、飲み物を配って、
食べ物も、そうそう…」
河野さんのしきりで始まった。まずはババ抜きからスタートしたが、相変わらず宮越さんは
トランプゲームが弱い。注いで語尾を言い終わる前のしりとり。これまた、宮越さんの
前でつっかえる。ダメだよ河野さん…こういう頭を使うゲームは…

 でも、みんなキャッキャいいながら結構盛り上がってきた。そして俺や宮越さんも、
河野さんに勧められてアルコールを口にしていた。暑くなってきたので上着を脱ぐ。
「さぁ、ではいよいよ王様ゲーム!」
河野さんはそう言うと、鞄の中から割り箸をとりだした。おやつの入っていた小さな瓶に
割り箸を入れると、軽くシャッフルしてみんなの前に置いた。みんな順番に引いてゆく。




「あ、俺が王様だ…」
「東田君…お手柔らかに頼むよ…」
足立さんがそう言いながらサインをだす。右手で頬杖だから三番か…ほかのみんなの
サインもチェックした上で命令を出す。まずは無難に…進藤さんなら許してくれるだろう。
女の番号がわからないのはつらいけど、肩もみくらいなら…
「よし、五番が六番の肩をもめ!」
「うふふふ。志保がユータ君の肩を揉めばいいのね…」
ユラリと鎌倉さんは立ち上がると、進藤さんの背後に回る。
「ちょ、志保ちゃん、やめて、そこ肩じゃ…」
「ゴメン…進藤さん」
俺はつぶやいた。

 次は村主さんが王様だった。表情が読めない。
「七番の人…ワインを一気飲みね…」
村主さんにしてはひどい命令って、七番って俺じゃないか!河野さんや妃さんがあおる。
「さぁ、東田君。王様の命令だ!GO!」
「東田…ちゃんとやらないとわたしが女王になったら…」
ええい、しかたがない!一気にあおる。また、体が熱を持つ。こんなことを繰り返して
いるうちに、頭が回らないようになってきた。



もう何回王様ゲームをやったのだろう…なんかいろいろと凄いものを見たけどなぁ…
村主さんに膝枕される足立さんとか、河野さんが斉木さんの頭にナニを乗せて
『お殿様』とか、斉木さんと妃さんの二人羽織とか、店長の裸踊りとか…
俺にはなぜか知らないけど、『飲め』だとか『ダッシュで××を買ってこい』など
の、悪酔いをさせようとしか考えられないものがまわってくる。おかげで正常な思考が
できなくなってきた。

「スミマセン…俺、気分が悪くなってきたんですけど…」
ギブアップを伝えると妃さんが言った。
「じゃあ、女王権限でこれがラストな…一番と八番…キスをしろ!!」
って、一番って俺じゃねーか…八番はだれだろう。もうろうとしながら見渡すと、
宮越さんが元気良く手を挙げていた。
「八番はわたしだ!!」
「えっ…」

絶句する瞬間とはこのときだろう。前のファミレスでは無事逃げ切ったのに、今度は
周りを店のみんなに囲まれて…逃げ場がありません。どうしましょう。そこで俺は
この際合法的な手段を使うことにした。

クラッ

「東田!!」
「東田君!」
みんなの声が聞こえるが、目の前が真っ暗になった。

 気がつくと部屋は真っ暗だった。部屋も冷え切っている。でも、頭の部分だけは
妙に暖かい。
「ん?」
頭を起こすと声が聞こえた。
「気がついたか、東田…」
「宮越さん…まさか、膝枕…」



 二次会はいつの間にか終わっていたらしい。部屋はきれいに片づけられている。
この部屋には俺たちだけだ。
「あれ、みんなは…」
「酔い覚ましにまた風呂に行っているよ」
「そうか…ゴメン宮越さん…寒かったでしょ」
「まぁな…でも東田の寝顔を見られたから、面白かったよ。おまえ結構かわいい顔
してるんだな…」

 一番見られたくない人に見られてしまった…顔が真っ赤になる。
「ところで東田…」
「なんですか」
「おまえ、まだ命令を実行していないぞ」

 立ち上がって逃げようとしたが、まだ酔いが醒めてないのか、足がもつれて
盛大に転んでしまった。
「ふっふっふっ…もう逃げられないぜ」
「うわーん、犯されるぅー!!」
「人聞きの悪いことを言うな…それに…女に恥をかかせるな」
どんどん宮越さんの顔が近づいてくる…体は金縛りにあったように動けない。

 気がついたときには、唇に暖かいものが触れていた。ああ、もうお嫁にいけない…
長く感じた十数秒が終わると、宮越さんが叫んだ。
「やったー!!見事に成功」
とたんに、控えの間のふすまが開いてみんなが顔を出した。妃さんがたばこの煙を
吹き出すとつぶやく。
「作戦通りだな…宮越…」
「妃…頼りになるぜ…」



 我に返った俺は妃さんに尋ねた。
「それって、どういう…」
「んー?おまえたちのいままでの関係を温泉で聞いてな。いっそ背中を押してやろうと思って。
河野の考えたサインなんて単純だから見破るのは訳ねーよ。だから、女グループは
おまえらを上回るサインをつかって、とにかくおまえを酔いつぶすことにしたのさ…」

 そうか…妃さんの方が一枚上手だったか…何よりも店の人全員に知られたのが
まずい…これからどうしよう…
「からかうつもりはないから、安心しなよ」
「河野さん…もしかして、最初からグルだったんじゃないでしょうね」
「まさか…妃の姉御に逆らった俺たちがバカだったのさ。ゴメンね」

「東田君…宮越さんの気持ちをわかってあげて…」
「村主さん…」
「前に、あなたがキスをしてあげなかったて言っていたときの宮越さん、本当に
寂しそうな顔をしていたんだから…女の子を泣かせちゃダメよ」
どうあっても外堀を埋められてしまったようです。俺は軽くため息をつくと、
宮越さんに向かって尋ねた。

「宮越さん…」
「何だ東田」
「あらためて聞きますけど、俺とつきあっていて楽しいですか?」
「んー、まぁまぁかな」
「わかりました…今度は俺がイニシアチブをとりますけど…たまには宮越さんが
おごってくださいね」
「えー、男がおごるのが当たり前じゃんか」
「じゃ、公平に勝負して決めますか?」
「勝負か?わかった!よし、卓球場に行くぞ!!」
宮越さんは立ち上がると、俺の手を引っ張って走り出した。これからも彼女に
引っ張り回されるんだろうなぁ…でも、最終的には俺の思うとおりに動かしてやろう…
と思いながら、みんなの拍手に送られて部屋を出た。
2007年02月08日(木) 14:51:53 Modified by uronnuronn




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