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最終回の、そのあとは


改札を出たところに彼はいた。
柱に寄りかかり、茫、と空を眺めている小鳥遊を見て、伊波は少し立ち竦む。
彼の見る空には、厚く雲が垂れ込めている。寒冷前線の南下に伴う、冬の始まり。
感傷など入る余地もなく、この街は雪にうずもれてゆくのだろう。
今夜から雪が降りだし、明日には積雪が観測できるだろうとも、今朝のニュースでは伝えていた。
小鳥遊はまだこちらに気づかない。だから伊波は、もう少しだけ彼の姿を眺めていた。


来年の春から、伊波は大学生になる。
なる、といっても、彼女の高校は元々、エスカレーター制の学校なので、受験勉強にあくせく追われることもない(まじめな彼女は優秀な成績を維持し続けていたが)。
だから、こうして年の瀬になっても、街を出歩いている。
アルバイトは、続けている。あの不思議な店で、おかしな店員たちと。

「たかなしくん。」

そして、毎週日曜日には、彼と出歩いていた。
「最終目標」を、何度も何度も続けている。
伊波の声を聞き(そこで初めて)彼女に気づいたように小鳥遊は視線を戻し、
それから、おはようございます。といった。伊波も答える。
それから、差し出された手をつなぐ。
二人でこうして会うときは、必ず手をつなぐ。
どちらかといえば、小鳥遊が気にしているようだった。
大義名分…というほどでもないが、建前上は、
この行為自体は最終目標なのでやはり必要だろう、と小鳥遊は思っている。

そして歩き出す。
意識せずにつなげるようになったのは何度目のデートからだったろう。
つい最近だったようにも、ずっと昔からだったようにも思える。
そのどちらでもあったのかもしれない。
小鳥遊の手は冷たく、(冬場の家事のためか)少しざらりとしている。
伊波の手より大きく、節々が硬い手。この手に引かれるのが、伊波は好きだ。
さて、どうしましょうかね、という小鳥遊の呟きを、半ば上の空で伊波は聞いていた。



二人で過ごすときは、特に何も決めずに過ごす。
そのまま、ちょっとしたカフェに行くこともあれば、そのときその時の流行りの映画を見たりもする。
たいていは、そのままあてどもなく商店街やモールをふらつき、雑貨やウインドを観ている。
日曜日の朝なので、閑散として人通りは少ない。
普通の高校生なら学校の帰り際、こんな風に友人と、あるいは親しい異性と、街に繰り出して遊ぶのが正しい姿なのだろうが、小鳥遊の身の上ではそうも行かず、
今日も早朝から家事、食事の準備、姉妹の世話を一通りこなし、こうして、夕方買い物に行くまでのわずかな間、彼に存在する休日を伊波と過ごしている。
男の子と女の子が付き合う、ということをたゆまずやっている。
彼が、何のため、だれと、どこに行くのかなどとっくの昔に気づいている彼の姉妹は、朝から煩(うるさ)かった。長女には責任を連呼され、次女には行かないでと纏わりつかれ、三女にはからかわれ、そして末の妹は朝から機嫌が悪かった。
彼女らのことを思うと気が重くはなるのだが、でもまぁ、それはそれ、と小鳥遊は気を取り直す。
少なくとも、今ここには自分が気持ちを向けている人がいる。
つないだ手の先の彼女は、彼の心の去就には露と気づかず、楽しそうにモールを眺めていた。
彼女の手は冬場でも暖かい。
本当に初めのころの(最終目標を始めたころの)、不必要なまでの力みもない。
彼女の歩みにあわせ、緩(ゆる)やかに歩く。それだけの時間でも、よいと思う。

小鳥遊の視線に気づいたのか、つと伊波は小鳥遊を見やる。
穏やかな、優しい顔つきをしていた。
自らの、屈折した父親の愛情を受けた境遇を分かり、解ってくれた人。
私を理解し、そして変えようとしてくれた人。
どこか、自分と境遇の似ている人。
今日のカッコ、可愛いですね。と伝えられる。
顔が真っ赤になるのが自分でも感じられる。
心持たっぷり三秒かけて、…うん、ありがとう。とだけ、ようよう言葉を返す。そこで初めて、手を握り締めていたことに気づいてあわてて力を緩める。痛くなかっただろうか。
ほめてもらいたくて、一生懸命選んだ服。
一番最初のデートの時もほめてくれた。だから、毎回一生懸命選んでいる。
そうやって、どんどんどんどん好きになる。

雑貨屋で、彼女に似合いそうなヘアピンを買ってあげた。
彼女は悦ぶ。大切にとっておいて、それから使うらしい。
小鳥遊は少し照れた。
ハンバーガーショップで、子供向けのセットを二つ頼む。
(子供向けの)おまけをあげると彼は喜ぶ。
相変わらずだと伊波は少し呆れた。



小鳥遊は伊波の部屋にいる。
彼女の母は、毎週日曜日には遠方の、彼女の父親のところへ出かけてゆく。
伊波は、大丈夫、と胸をはっているが、おそらくうすうすは感づいている、と小鳥遊は思っている。
伊波は、ベッドに座ったままこちらを見つめている。

彼女とはもう、キスも、その先も経験している。
伊波は、両腕を体の後ろに回し、腰のややしたのあたりで両手をタオルで縛られている。
室内なので、今まで着ていたコートは着ておらず、シャツとスカートをはいている。
男を殴ることが好きで(だいぶ落ち着いたとはいえ、今も治っているとは言いがたい。現に相馬は相変わらず餌食となっている)、
一方で彼女は小鳥遊に抱かれるときはもう必要ないのに、こうして拘束されることを求めた。
小鳥遊が膝立ちでベッドに乗ると、伊波は薄く目を閉じる。
彼女の両の二の腕に手をかけ、彼女の、やや開いた唇に口をつける。
少しついばみ、感触を楽しんだ後、彼女の髪に手をやり、指を通し、愛でる。
ヘアピンを、カチリ、と音を立ててはずすと、ぁ…とつぶやき、伊波が目を開ける。
小鳥遊が、ヘアピンをはずすと、伊波は待って…と彼に伝え、彼の肩に体を寄せ、腰を少し浮かせた。
どうするのか…と小鳥遊が思っている間に、彼の顔に口を寄せ、
そのまま彼のメガネの蔓を唇でくわえ(歯を、けして立てずに)、小鳥遊のメガネを器用にはずした。
 メガネを、小鳥遊の顔から取り去った後、伊波はボールを取ってきた子犬のような目で彼を見やった。
その目がなんとなく、ほめてほめて、といっているようで、内心少し噴き出しながら、
小鳥遊は彼女の口からメガネを受け取り、ありがとう。と伝える。
彼女の頭を少しなでると、気持ちよさそうに伊波は目を細めた。
メガネと、ヘアピンをサイドテーブルにおいてから、もう一度、今度はややゆっくりとキスをする。
薄く唇を開かせ、舌をゆるくからませ、息を継ぐ。
伊波の体が、こわばらないよう、背や、首筋や、二の腕などに手を回し、ゆるりと撫で、髪に指を通し、決して力の入らぬようにしてゆく。
 シャツのボタンに手をかけ、はずしてゆく。種類が少ない、と嘆いていたブラジャーが露になる。
シャツの内側から手を回し、そのままホックをはずすと、伊波が小さく震えた。
小鳥遊は、彼女をベッドに寝かせ、彼女の両腕が体の下敷きにならないよう注意を払った上で、彼女の下着に指をかけ、上にひきあげる。
伊波の、小さな胸が露になり、伊波はぅぅ…と少しうめいた。
かまわず、小鳥遊は乳首に人差し指を這わせ、なでる。彼女の胸は小さい代わりに、とても敏感で、先端の乳首からその周りを、つつと人差し指でなぞってやると、ぁぁ…と伊波が小さく嬌声をあげる。
かわいい…とつぶやくと、うー、と伊波が抗議の声を挙げる。
彼女は胸に対するコンプレックスが強く、そういってもなかなか信じず、
ほめるたびに拗ねるので苦労するのだが、本当に、小鳥遊は彼女のおっぱいと、そこを攻められているときの彼女はすごくかわいらしいと思っている。
伊波さんかわいい…、というと、今度は顔を真っ赤に(もともと少し赤かったのを、さらに)して、今度は沈黙する。
この年上の女性は、彼と接しているときだけは、ひどく幼く(十二歳以下云々、ではなく、彼に心を預けきっている、という意味で)感じられる。
何か、年上なのにほうっておけないところがあり、対男性恐怖症以外のところでもひどく危なっかしいところがある、
そんなところに、自分は惹かれているのだろう、と小鳥遊はぼんやりと思う。



彼女の胸を攻める。
舌を這わせ、親指と人差し指で乳首をつまみ、
こすり合わせるようにし、あるいは両手で包むようにし、
決して彼女が痛がらないように、注意を払いながら、胸を口に含み、吸う。
「ぁっ…、ん…」
伊波は、小さく漏らす。
伊波の両胸に五指を這わせ、ゆっくりとなでながら、そのまま小鳥遊は舌を彼女の胸の中心から、臍の辺りまで這わせてゆく。
彼の教育と調教の賜物か、彼女はもうかばんの中に鉄板も重りも仕込んではおらず、
ここ最近ではだいぶ筋力も衰え(つまり、普通の女の子に近づき)つつある。
それでも、往年のトレーニングの成果のためか、スタイルはとてもいい。
すらりとしたおなか、お臍の周りに舌を這わせ、
胸においていた片方の手で彼女のわき腹を少しなで、腰骨のあたりも指でなぞる。
伊波は目を瞑ったまま、口を半開きにして荒く息をついた。

ふと、伊波の体から小鳥遊の感触がなくなり、すっと視界が暗くなる。
不思議に思い、伊波が目を開けると、彼女の顔を覗き込むように小鳥遊がいて、
少しいたずらっぽく、伊波さん、すごいやらしい顔してた。といった。
恥ずかしさで伊波がふぇ、と泣きそうになると、
俺は好きですけど、と伊波にだけ伝わるように小鳥遊がつぶやき、
それから彼女の唇を吸い、彼女の目じりに舌をつたわせ、なぞった。
それから、彼女に腰を浮かさせ、スカートを脱がせ、下着を脱がせる。
両足を上げさせ、下着を腿から膝の辺りまでずらし、両の足首から引き抜く。
下着を脱がせた後、彼女の両膝の後ろ辺りに手をかけ、
そのまま両足を抱え込ませるように引き上げる。
太ももをなで、力が決して入らないようにしたまま、両足を開かせた。
股の付け根のところに手をやり、親指と中指で、女の子の大切なところをあける。
ぅぅ…と伊波が漏らす。目が、少し涙でにじんでいる。
伊波の、女の子のところはうっすらと湿っている、
人差し指で入り口をなぞると、伊波が震えた。
そのまま敏感なところへ指を置くと、背をそらせる。
 一度、小鳥遊は伊波の足を下ろしてやり、自分の服を脱いだ。
彼のものは固く、屹立していて、伊波はそれをみてまた少し涙を目に溜める。

 それから、彼女をうつぶせの状態にさせ、(手は拘束されたままなので)肩の辺りに枕をおいてやり、
苦しくないようにしてから、彼女の膝を立たせ、背を弓なりに、お尻が上向くような態勢にさせる。
 この格好だと、彼女の大切なところはすべて見えてしまう。女の子のところも、小さなお尻のあなも。
 伊波のからだは震えている。小鳥遊に大切なところを観られてしまっている恥ずかしさで、心のしんとは別の場所で震えていた。
だから、小鳥遊は伊波のおへその辺りを、彼女が落ち着くまでなでていた。
おなかや、背中をゆったりとなで、彼女が落ち着くようにする。
余計な力が入らぬよう、おなかの中心に手のひらを合わせ、ただ慈しむようになでていた。
 やがて、落ち着いたのか、それとも小鳥遊にすべてを預ける意思が勝ったのか、伊波の震えが落ち着く。
伊波の髪を撫で、こめかみにキスをすると、
それが合図のように伊波は目を閉じた。



小鳥遊は、伊波のお尻の谷間をつ、と人差し指でなぞった。
そのまま、お尻のあなの中心に人差し指をあて、円を描くようになぞる。
伊波はふぁ、と泣きそうになりながら耐える。
 一度、人差し指をお尻からはなし、今度はもう片手の人差し指を伊波の女の子のところの入り口に差し入れ、
ゆっくりとなじませながら、奥に沈めてゆく。
「ふ……、うぅ…」
と小さく息を伊波は漏らす。
奥の、コリッとあたる壁のようなところに指を置いたまま、
しばらくなじませ、もう一方の手を伊波の、小さなお尻の穴に沿え、
くっと力をいれ、開かせるようにし、それから舌をつたわせる。
舌を、お尻の穴に突き立てるようにし、おしいれるようにする。
「ぁぁ…、ぅ…」
伊波が喘ぐ。そのまま、口を離し、もう一度、人差し指を、お尻のあなに沿え、
今度は手首全体を使って、くっくっと人差し指全体をお尻に埋めてゆく。
伊波は耐えている。やがて、両手の人差し指が両方とも伊波の中に埋まり、
それをこすり合わせるように、ゆるやかに動かす。
「うぁ…、あ…、…あぁっ…」
伊波は啼き、泣きながらゆるやかな波に身を任せている。
彼女の中で、小鳥遊が人差し指と人差し指を合わせてこすり上げ、
そのたびにこちゅ、こちゅっ、と音を立て、つゆがあふれる。
小鳥遊は、そうやってしばらく、伊波のお尻のあなの中とおんなのこのところを触わり、
それから両指をゆっくり引き抜いた。
伊波の、おんなのこのところはてら、と光り、伊波はくた、と腰を落とし、脱力した。

小鳥遊はそのまま、伊波の手の拘束を解いてあげ、伊波が肩にまとっていたシャツと、ブラジャーを脱がせ、
伊波をあおむけの状態にし、その上に覆いかぶさるようになる。
伊波の、おんなのこのところと、自分のちんちんを近づけ、その間に、
伊波は小鳥遊の首に手を回し、顔と顔が近づくような体勢になる。
目をあわせ、いいよ、大丈夫、と無言の会話をしたあと、小鳥遊は、伊波の入り口に手を沿え、
自分のものをそこにあてがい、少しなじませ、それからゆっくりと押し入れた。
少し、伊波がこわばり、それから力を抜くように、伊波は目を閉じ、長い息をはいた。

 小鳥遊のからだに自らを寄せる。小鳥遊のにおいがし、それだけで自分が昂ぶるのを伊波は感じる。
喘ぎ、嬌声を上げる自分を、もはや伊波は止められない。
「あっ…ふっ…んっ…」
 伊波は小さく声を挙げ、小鳥遊の首に縋り、啼き、そして小さく震えた、
小鳥遊は、腰を挙げ、伊波のおんなのこの奥のほうをこするように自分のものを引き上げ、
入り口でこすり、また挿入し、一方で彼女の胸を、掌で包み、いとおしく撫でる。
何度か、挿入を繰り返し、そして自分がこれ以上は長く保たないと思い、
強く、彼女を掻き抱き、伊波が何度目かにうち震えたとき、いっそう昂ぶり、強く彼女の中に精を放った。
 とく、とく、と彼女の中に精が送られ、やがて小鳥遊は自分のものを引き抜く。
彼女の中からはこぷ、と小鳥遊の精が零れ落ちた。
伊波は、もう一度だけ、ん、と小鳥遊にキスをねだった後、
小鳥遊と目をあわせ、恥ずかしそうにし、しばらく寄り添っていた。




「たかなしくん。」

伊波は、彼の名を呼んだ。彼は答える。
先週の日曜日から降り積もり始めた雪は、今週の日曜日には見事に積もっていた。
冬が始まり、街の装いは一変する。
彼に手を引かれ、駅構内のコーヒーショップに入る。
値段表をみながらふと、イブ、どうしましょうか?と彼が尋ねてくる。
さすがに何も決めないのもどうかと思いますし。

そうか、来週の日曜日はクリスマスイブなんだ。と伊波は思い当たる。
できるはずないと思っていた恋人と過ごす、生まれてはじめてのクリスマスイブは、どんな風になるんだろうか。
どこか遠くへ出かけてもいいかもしれない。
普段はできないけど、イブくらい、私から手をつないでみたい。
お父さんやお母さんの追及を考えると気が重いけど、でもまぁ、それはそれ。

だから。
「えっとね。」
どうしよっか。伊波は微笑って、そんなふうに答えた。
2006年12月12日(火) 16:38:24 Modified by ID:Bgf4UKA6nQ




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