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七つ星

ふと休憩室にはいると、懐かしい感覚にとらわれる
とても愛しくてそして重たくドロドロと矛盾した思いに
休憩室の中では佐藤君がいつものように煙草を吸っていた。
だがそこには彼が愛煙しているものではない
手にはいつものパッケージとは違う箱が見えている。

「佐藤君ここにいたんだ!」

「なんだ、相馬か」

俺が声をかけると佐藤君はひとりでいたかったらしく面倒くさそうに俺をみる。
この様子だとまた轟さんに惚気話を聞かされていたのだろう・・・
机の上にある頭痛薬が彼の心情を物語っていた。
だが今はこの話題に触れるとまたフライパンで殴られるのでやめとく
あれで殴られると痛いし、しばらく頭がガンガンするし
それよりも今の俺の好奇心は佐藤君をからかうより、彼の手の中にあるものに向けていた。

「どうしたの?
いつもと違う煙草を吸っているけど、煙草の種類変えた?」

「別に・・・ただ昨日たまたま煙草がきれて買いに行こうとしたら売り切れていたから
 メンドくせーから適当に買っただけだ。」

「そっか・・・」

佐藤君は淡々と言いながら短くなった煙草を灰皿に押しつける、
煙草の煙は細くなりやがて室内の空調の風によって
すっと消えていく様子を俺はまじまじ見ていた。

「なんだ、煙草に興味あんのか。」

「うーん・・・ちょっとね。」


過去を思い出す・・・
いつもの場所といつもそこにいた彼女・・・近藤さんを・・・

「一本やる・・・」

「えっ?どうしたの、急に?
 俺、煙草吸わないのを知っているはずじゃ。」

「さあな、単なるきまぐれだ。」

「それにライターなんて持ってないし。」

「貸してやる・・・あとで返せ。」

佐藤君は席を立って机の上に煙草一本とライターを置く

「俺は戻るからな
 相馬・・・おまえも店が暇だからってぶらぶらしてねーで
 頃合いをみて戻れよ。」

休憩室は俺ひとりだけになった。
佐藤君が言っていたように今日はとても暇なのは事実だ
それぞれ皆暇をつぶそうとそれぞれの場所をうろうろしていて
俺はたまたま休憩室に来たところ佐藤君と鉢合わせになっただけだ。
何もすることがないので机の上にある煙草に火をつけた。
煙草を別に吸いたいとも思わない、
ただ、この煙草の香りを彼女が纏っていたのを思い出す。

俺が高校生の頃、学校の屋上でいつも授業をサボっていた近藤さん、
素行も悪いし、年上の男とふしだらな関係を持っていたのも知っていた。
威圧的でいつも無愛想な表情をしている近藤さんに
俺はひどく興味を持ったのがすべての始まりだった。
近藤さんのことを知りたくて
いつも屋上に行っては彼女に嫌がられながらも一緒の時を過ごし
いろんなことたくさん話した。


彼女の事・・・
俺の事・・・
彼女の家族との関係・・・
俺の周りの人間関係・・・
彼女が関係を持っている年上の男に対する想い・・・
そして俺が彼女に対する想い・・・

知れば知るほど近藤さんに惹かれている自分がいた。
からかったり、冗談を言ったりしてとても楽しかった。
近藤さんも俺も決して実るはずない想いをそれぞれ持ちながら・・・

「・・・・あっつ!!」

掌から突然の熱さに過去から現在へ引き戻される。
握りしめられたこぶしの中を開くとその中には火が消えて折れた煙草が一本
煙草を灰皿に捨てるがやけに自分が冷静なのは過去にも同じ行為を
何度もやっているせいなのかもしれない。

彼女の口に咥えられた煙草を
俺は体に悪いからという理由でいつも奪って火を消していた
もちろん素手で・・・
当時、風紀委員をやっていたので
うちの学校の生徒が煙草を吸うのを注意しなければならない立場だったし、
それに煙草によって彼女の体に害を及ぼすのが嫌だったのか
自然と体が動いて何度も何度も同じ行動を繰り返した。
毎回、俺が火傷しながら煙草を止めようとした姿を見て近藤さんは煙草を止めた
理由は俺が火傷して熱い熱いって言っている姿がウザいからだと
それでも自分のために煙草を止めてくれたのは嬉しかった。
俺でも近藤さんの心を動かせることがわかったから

ふと窓を見たら空が茜色になっていたので
随分と時間がたっていた事に気づく
どうやら俺はかなり長い時間、思い出に浸っていた。
いいかげんそろそろ戻らないとね
佐藤君から借りたライターを手に持ち椅子から立ち上がると
厨房にいき佐藤君にライターを返して持ち場に戻った。
店内は徐々に人が多くなって騒がしくなっていくのを感じながら
俺の脳は過去の思い出から現在のやるべきことに移行していった。



 ・
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 ・

近藤さんと今は疎遠になっている。
きっかけは彼女が失恋したことで俺たちの関係が大きく動きすぎたことだった。
別に嫌いになった訳ではない
それどころか時を重ねるごとに想いが大きくなっていた。
これからも俺は近藤さんに想いを寄せ続けるだろう
そして・・・

彼女とまた同じ場所で一緒に過ごせることを
いつもいつまでも願っている。


<終わり>
2010年06月12日(土) 20:40:33 Modified by kakakagefun




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